STARTO社のチケット転売対策|開示請求・訴訟の経緯と出品者の対応
STARTO社のチケット転売対策|開示請求・訴訟の経緯と出品者の対応
チケットの二次流通サイトに出品したことについて、突然、身に覚えのある公演名が書かれた意見照会書が届く。調べてみると、興行主が大規模な開示請求を行っているという記事が出てくる——2024年以降、この分野の相談が急に増えた背景には、特定の興行主が方針を大きく変えたという事情があります。
この記事では、株式会社STARTO ENTERTAINMENTが公表している一連の措置を時系列で整理し、それが出品者にとって何を意味するのか、書面が届いた方は何をすべきかを、横浜の弁護士が公表資料に基づいて解説します。
公表されている経緯
同社および株式会社ヤング・コミュニケーション(公演の主催者)の公表を並べると、対応の規模が段階的に拡大してきたことが分かります。
| 公表日 | 内容 |
|---|---|
| 2024年9月5日 | チケット流通センター上の出品のうち、明らかに不正転売と思われる299件について開示請求を行ったと公表。同サイト上で契約タレント出演イベントのチケットの転売出品が約1万件確認されたとされる |
| 2025年2月17日 | チケットジャム(チケジャム)について、2024年12月13日に17件、2025年2月14日に1,589件の発信者情報開示命令を東京地方裁判所に申し立てたと公表。17件は開示され複数の人物が特定されたとされる |
| 2025年3月19日 | 2025年3月10日、東京地方裁判所がチケット流通センターの16件の出品について発信者情報開示命令を出したと公表。2025年2月末までに4,342件について開示請求を行ったとされる |
| 2026年3月13日 | チケット転売の出品者に対して2,000万円を超える損害賠償を求める訴訟を提起し、あわせてチケット流通センターの運営会社に対しても不当利得返還請求等の訴訟を提起したと公表 |
| 2026年4月20日 | 2026年3月18日、東京地方裁判所が、転売出品によりヤング・コミュニケーション社の営業権が侵害されたと判断したと公表。コンサート主催者に対する権利侵害を認めた日本で初めての事例とされる |
この経緯が出品者にとって意味すること
1. 「1件だけ」でも対象から外れるとは限らない
当初は「明らかに不正転売であると思われる出品」に絞られていましたが、その後の公表では件数が4,342件、さらに1万件以上へと拡大しています。件数が増えるほど、選別の基準は緩やかにならざるを得ません。出品の回数が少ないことは請求額を検討する場面で意味を持ちますが、それだけで対象外になるという前提は立てにくくなっています。
出品回数と開示の関係はチケット転売は1回だけでも開示請求されるのかで整理しています。
2. 開示の入口が通った
2026年3月18日の判決が意味するのは、興行主が「自分の権利が侵害された」と言えるかどうかという入口の問題に、一つの答えが出たということです。開示請求は自己の権利を侵害されたとする者が行うものですから、この点が争えるうちは請求が通りにくかった。判決の位置づけはチケット転売が営業権侵害と初認定された東京地裁判決の意味で解説しています。
3. 請求は金銭にとどまらない
公表によれば、特定された人物に対しては通知書の送付とともに、順次ファンクラブの退会措置が実施されているとされています。今後の公演に参加できなくなるという不利益は、金額には現れませんが、ご本人にとっては重い場合があります。
2,000万円という数字をどう見るか
2026年3月13日の公表にある「2,000万円を超える損害賠償」という数字は、多くの方を驚かせました。もっとも、この請求は多数回の出品が問題となった事案とみられ、すべての出品者に同じ規模の請求が向けられるという意味ではありません。
この類型で請求の根拠となり得るのは、転売によって得た利益の返還、興行主に生じた営業上の損害、調査に要した費用などです。どの項目がいくらで積み上げられているのかは、届いた書面を見なければ分かりません。請求額の考え方はチケット転売の損害賠償はいくらかで整理しています。
サイトごとの違い
同じ興行主による請求でも、出品したサイトによって手続の進み方が違います。
- チケット流通センター:判決および開示命令が公表されており、開示が認められた実例がある。チケット流通センターから開示請求を受けたら
- チケジャム:裁判所の発信者情報開示命令が用いられており、代金を運営会社が預かる仕組みのため取引記録が一体で残る。チケジャムから開示請求を受けたら
どの情報がどこまで開示されるのかはチケット流通センター・チケジャムの出品者情報はどこまで開示されるかをご覧ください。
書面が届いた方がすべきこと
報道や公表を読んで不安になった段階と、実際に書面が届いた段階では、やるべきことが違います。書面が届いている方は、次の順で進めてください。
- 期限の確認:意見照会書の回答期限は2週間程度のことが多く、郵送の日数を差し引くと検討できる日数は短い
- 差出人の確認:サイト運営者からか、携帯電話会社等からか。後者であれば手続は進んでいる
- 出品記録の確認:件数、価格、入金額。定価以下であったか、単発であったか
- 回答方針の決定:開示に同意しないと回答したうえで、述べるべき事情を整理する
意見照会書が届いた直後の全体像はチケット転売で意見照会書が届いたら、回答書の記載事項は意見照会書の回答書を自分で書く方法にまとめています。この段階の取扱いは当事務所の意見照会対応のページ、サイトごとの取扱いはサイト別の削除・投稿者特定のページで扱っています。
依頼するかどうかの判断材料と費用は、チケット転売の発信者情報開示請求への対応のページと、弁護士に依頼する費用と判断基準にまとめています。
よくある質問
報道を見て不安ですが、まだ何も届いていません。何かすべきですか。
書面が届いていない段階でできることは限られます。出品履歴や取引記録を確認し、手元に残しておくことが有用です。アカウントを削除しても運営会社側の記録が消えるとは限らず、かえってご自身が内容を確認できなくなります。
ファンクラブを退会させられることは避けられますか。
ファンクラブの入会・退会は、運営会社と会員との契約に基づく問題であり、開示請求や損害賠償とは別の判断になります。措置の可否について確約できるものではありませんので、事実関係を整理したうえで個別にご相談ください。
公式のリセールがあると聞きました。今後は使えばよいのですか。
2025年3月19日の公表では、行けなくなった方のチケットを希望者へ定価で販売する公式のリセールサイトを立ち上げる予定とされていました。公式の仕組みを利用することは、定価を超える価格での譲渡を避ける手段になります。もっとも、既に行った出品についての責任がこれによってなくなるわけではありません。
過去に出品したものも、いまから請求されますか。
公表された件数の規模からすると、過去の出品が対象に含まれている可能性は否定できません。他方、通信事業者に残る接続記録には保存期間があり、期間の経過によって発信者にたどり着けなくなることもあります。届いた書面に記載された出品日を確認したうえで判断することになります。
まとめ
- 公表されている開示請求の規模は、299件から4,342件、さらに1万件以上へと拡大している
- 2026年3月18日の東京地裁判決により、興行主の権利侵害という入口が認められた
- 2,000万円を超える損害賠償請求は多数回の出品が問題となった事案とみられ、一般的な水準ではない
- 金銭の請求だけでなく、ファンクラブの退会措置も実施されていると公表されている
- 書面が届いた方は、期限・差出人・出品記録の3点を最初に確認する
ご自身の出品がどの程度の問題になるのか、争える事情があるのかが分からない段階でも構いません。回答期限がある場合はその日付をお知らせいただければ、対応の可否をその場で判断しやすくなります。横浜のタングラム法律事務所まで、オンラインで全国からご相談いただけます。
チケット転売を理由とする発信者情報開示請求について、対応の流れと弁護士費用はチケット転売の意見照会対応の詳細をご覧ください。
興行主から開示請求・損害賠償請求を受けた方へ
タングラム法律事務所(横浜・山下公園)は、チケット転売を理由とする発信者情報開示請求について、意見照会書への回答書の作成・内容確認から、開示後の損害賠償請求への対応・示談交渉まで取り扱っています。オンラインで全国からご相談いただけます。回答期限がある場合は、その日付をお知らせください。
法律相談の予約はこちら※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。