チケット流通センター・チケジャムの出品者情報はどこまで開示されるか
チケット流通センター・チケジャムの出品者情報はどこまで開示されるか
「転売サイトは出品者を守ってくれるのではないか」「サイトが情報を渡さなければ特定されないのでは」。チケット転売の開示請求について、こうした期待を持たれる方は少なくありません。
しかし、実際に何が起きてきたのかを時系列で追うと、その期待が成り立たないことが分かります。この記事では、主要な転売サイトで行われた開示請求と開示命令の経緯、サイトが保有している情報、サイト側が争った場合にどうなるのか、そして出品者のもとに書面が届くタイミングを、弁護士が整理します。
2つのサイトで実際に起きたこと
株式会社STARTO ENTERTAINMENTが公式サイトで公表している内容を時系列に並べると、次のようになります。
| 時期 | 対象サイト | 内容 |
|---|---|---|
| 2024年9月5日 | チケット流通センター | 明らかに不正転売と思われる出品299件について、プロバイダ責任制限法に基づく開示請求を実施。調査では契約タレント出演イベントのチケット転売が約1万件確認されたとされる |
| 2024年12月13日付 | チケットジャム | 17件の転売出品について発信者情報開示命令を申立て。17件すべての情報が開示されたとされる |
| 2025年2月14日付 | チケットジャム | 1,589件の転売出品について発信者情報開示命令を申立て |
| 2025年3月10日付 | チケット流通センター | 東京地方裁判所が16件について発信者情報開示命令を発令 |
| 2026年3月13日付 | チケット流通センター | 運営会社に対する不当利得返還請求等の訴訟、および出品者に対する2,000万円超の損害賠償請求訴訟を提起 |
| 2026年3月18日 | チケット流通センター | 東京地方裁判所が、転売出品は興行主の営業権を侵害すると判断した判決を言渡し |
件数の規模に注目してください。299件、1,589件という単位で請求が行われています。「自分ひとりくらいは対象にならないだろう」という前提が成り立つ数字ではありません。
転売サイトが持っている情報
開示の対象になり得るのは、サイトが実際に保有している情報です。主に次のものが考えられます。
- 会員登録の情報:氏名、メールアドレス、電話番号、振込先口座など
- 本人確認に関する情報:確認のために提出・登録した情報
- 出品の情報:公演名、座席、出品価格、出品日時、取引の成立状況
- 通信の記録:出品やログインの際のIPアドレス、ポート番号、タイムスタンプなど
チケット流通センターは、公式サイトの案内において、本人確認情報と異なる氏名・住所での利用や、本人確認情報と異なる情報で購入したチケットの出品を禁止する旨を示しています。本人確認の仕組みが設けられているということは、その情報がサイト内に保有されているということでもあります。
サイトが争った場合はどうなるか
転売サイトが「開示には応じられない」という立場をとることはあります。実際、チケット流通センターの運営会社は開示命令に対して争ったと報じられており、その結果として2026年3月18日の判決に至りました。
ここで押さえておきたいのは、サイトが争うことは、手続の終わりを意味しないという点です。発信者情報開示命令の決定に不服がある当事者は、情報流通プラットフォーム対処法第14条により、決定の告知を受けた日から1か月の不変期間内に「異議の訴え」を提起できます。訴訟の中であらためて権利侵害の有無が審理され、判決で決定が認可されれば、開示が命じられることになります。
この判決の意味についてはチケット転売が営業権侵害と初認定で詳しく解説しています。サイトが争ったことで時間はかかりましたが、結論として権利侵害が認められた、というのが現在の到達点です。
出品者に書面が届くタイミング
「サイトに開示請求がされたなら、まず自分に連絡が来るはずでは」と考える方がいます。この点は、正確に理解しておく必要があります。
同法第6条第1項は、開示請求を受けた事業者に対し、発信者と連絡することができない場合その他特別の事情がある場合を除き、発信者の意見を聴かなければならないと定めています。転売サイトも開示関係役務提供者にあたりますので、サイトの段階でも、登録したメールアドレス宛に意見照会が行われることがあります。
もっとも、登録メールアドレスが使われていない、退会済みで連絡がつかないといった場合には、この照会が届かないまま手続が進むことがあります。その結果、最初に届く書面が、携帯電話会社からの意見照会書だったという展開になります。
| 段階 | 誰から届くか | 届かないことがある理由 |
|---|---|---|
| 第一段階 | 転売サイトの運営会社(多くはメール) | 登録アドレスが使われていない、退会済みなど |
| 第二段階 | 携帯電話会社・接続業者(多くは郵便) | 契約者の住所に届くため、通常は到達する |
退会や出品削除に意味はあるか
書面が届いてから、あるいは不安になってアカウントを削除する方がいます。しかし、画面から出品が見えなくなることと、サイトが保有する記録が消えることは別です。
むしろ、退会してしまうと、自分がいつ・いくらで・どの公演のチケットを出品したのかという記録を、自分の側で確認できなくなります。出品価格が定価以下だったこと、単発の譲渡だったことを示す資料は、いずれも自分に有利な材料です。これを失うことの不利益のほうが大きいのが実情です。
価格の要素をどう争うかはチケットを定価以下で譲るのは違法かで整理しています。
書面が届いた出品者ができること
サイトからのメールでも、携帯電話会社からの郵便でも、届いた段階でできることは共通しています。
- 書面に記載された対象の出品(公演名・出品日時・IPアドレス)を確認する
- 退会・削除の前に、取引履歴と入金記録の画面を保存する
- 回答期限の日付を控える
- 回答内容を決める前に、争える点があるかを検討する
具体的な回答の進め方はチケット転売で意見照会書が届いたらを、当事務所の対応の流れと費用はチケット転売の発信者情報開示請求への対応ページでご案内しています。
よくある質問
転売サイトは出品者を守ってくれないのですか。
サイトが開示に応じない姿勢をとることはありますが、最終的に開示するかどうかは裁判所が判断します。サイトが争っても、判決で決定が認可されれば開示が命じられます。サイトの姿勢に期待して対応を先送りすることは、おすすめできません。
サイトから何の連絡もありませんでしたが、なぜですか。
発信者と連絡することができない場合などには、意見の聴取が行われないことがあります。登録メールアドレスを使っていない、すでに退会しているといった事情があると、サイトの段階での照会が届かないまま手続が進むことがあります。
他の転売サイトを使っていた場合はどうなりますか。
手続の枠組みは、サイトが変わっても同じです。サイトに対する開示請求で通信記録を取得し、そこから回線の契約者をたどるという流れになります。公表されている事例が特定のサイトに集中しているのは、対策の対象となった興行に関するものだからです。
アカウントは残しておいたほうがよいのですか。
ご自身の取引履歴を確認できる状態を保つという意味では、残しておくほうが有利に働くことが多いといえます。少なくとも、退会する前に取引画面や入金記録を保存しておいてください。
まとめ
- チケット流通センターでは299件・16件、チケットジャムでは17件・1,589件という規模で請求や申立てが行われている
- サイトは会員情報・本人確認情報・出品情報・通信記録を保有し、これらが開示の対象になり得る
- サイトが争っても、異議の訴え(情プラ法第14条)を経て開示が命じられることがある
- サイト段階の意見照会は、連絡がつかない場合には届かないことがある
- 退会や出品削除は記録を消すものではなく、自分に有利な資料を失う不利益のほうが大きい
出品したサイトの名前で検索してこのページにたどり着いた方は、すでに何らかの書面を受け取っているか、その可能性を感じておられるのだと思います。手元の資料を保存したうえで、横浜のタングラム法律事務所までご相談ください。オンラインで全国から対応しています。
転売サイトの出品で書面が届いた方へ
タングラム法律事務所(横浜・山下公園)は、チケット転売を理由とする発信者情報開示請求について、意見照会書への回答書作成から、開示後の損害賠償請求への対応・示談交渉まで取り扱っています。オンラインで全国からご相談いただけます。回答期限がある場合は、その日付をお知らせください。
法律相談の予約はこちら※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。