チケジャムから開示請求を受けたら|意見照会書への対応と注意点
チケジャムから開示請求を受けたら|意見照会書への対応と注意点
チケジャム(チケットジャム)にチケットを出品したところ、後日、携帯電話会社から「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いた。あるいは、チケジャムの登録メールアドレスに、開示請求がされた旨の連絡が入った——2024年末以降、この経路でのご相談が増えています。
この記事では、チケジャムの出品を理由とする発信者情報開示請求について、興行主側がどのような手続をとっているのか、チケジャムにどのような記録が残っているのか、書面が届いたときに何を確認し、どう回答すべきかを、横浜の弁護士が公表資料に基づいて整理します。
チケジャムに残っている記録
チケジャムは、エンターテイメント株式会社が運営するチケットの二次流通サイトです。同社の利用規約は、取得した個人情報および利用履歴について、本人の同意がある場合のほか、裁判所その他の公的機関の命令があった場合、発信者情報の開示に関する法律に基づく請求があった場合、不正転売に関する調査が必要な場合などには、本人の同意なく提供できる旨を定めています。
また、チケジャムでは、代金を運営会社がいったん預かり、取引の成立後に出品者へ支払う仕組みがとられています。この構造の結果として、誰が、いつ、いくらで、何件出品し、いくら受け取ったのかが、運営会社側に一体の記録として残ります。開示請求は、この記録を出発点として進みます。
各サイトにどの情報が残り、どこまでが開示の対象になるのかは、チケット流通センター・チケジャムの出品者情報はどこまで開示されるかで整理しています。
興行主側は何をしているのか
チケジャムに対する開示請求として公表されているもののうち、規模が大きいのは株式会社STARTO ENTERTAINMENTによるものです。同社の2025年2月17日付の公表によれば、経過は次のとおりとされています。
| 時期 | 手続 | 件数・結果 |
|---|---|---|
| 2024年12月13日 | 東京地方裁判所へ発信者情報開示命令の申立て | コンサートチケット17件。うち出品情報が開示され、複数の人物が特定されたとされる |
| 2025年2月14日 | 東京地方裁判所へ発信者情報開示命令の申立て | 1,589件について申立て |
17件から1,589件へと、二か月で規模がおよそ100倍になっています。同社は、特定した人物に対して通知書を送付するとともに、順次ファンクラブの退会措置を実施しており、法的な責任の追及も検討しているとしています。
「開示命令」とはどのような手続か
ここで用いられている発信者情報開示命令は、裁判所が行う手続です。任意の請求と異なり、サイト運営者が拒んでも、裁判所が要件を満たすと判断すれば開示が命じられます。手続の中では、サイト運営者が把握している接続先の通信事業者の名称を先に開示させる仕組み(提供命令)も用意されており、興行主側は一つの手続の中でサイトから通信事業者へと段階を進めることができます。
制度全体の流れはチケット転売の開示請求が情プラ法でどう進むのかで解説しています。なお、チケット流通センターについては、転売出品が興行主の営業権を侵害するとした東京地方裁判所の判決が2026年3月18日に出されたと公表されており、その経緯はチケット流通センターから開示請求を受けたらにまとめています。
意見照会書が届いたら最初に確認すること
1. 差出人と段階
差出人がチケジャム(エンターテイメント株式会社)であれば、サイト側の記録についての照会です。差出人が携帯電話会社や光回線の事業者であれば、サイト側からの開示が既に済み、氏名・住所の開示が求められている段階です。後者のほうが手続は進んでいます。
2. 回答期限
回答期限は2週間程度に設定されていることが多く、郵送で届いた場合、手元で検討できる日数はさらに短くなります。期限の日付を最初に押さえてください。期限内に方針が固まらない見込みであれば、延長の可否を照会元に確認するという方法もあります。
3. 対象となっている出品
書面には、対象となる出品の日時や公演名が記載されています。チケジャムの取引履歴と照らし合わせ、その出品が定価を超えていたか、何件行ったか、実際にいくら入金されたかを確認してください。この確認は、後の交渉で請求額を検討する際の土台になります。
回答書で述べる意味のある事情
意見照会は、発信者の言い分を聴くための手続です。回答しなければ開示が止まるというものではありませんが、述べるべき事情があるのに何も述べなければ、その事情は判断の場に出ないまま結論が出ます。この類型で意味を持ちやすいのは、次のような点です。
- 価格:手数料を含めて定価以下であったか
- 件数と期間:単発の譲渡か、継続的な出品か
- チケットの性質:本人確認や同行者登録が必要な公演のものであったか
- 発信者の同一性:回線の契約者と出品者が同じか
- 経緯:行けなくなって手放したものか、当初から転売目的か
回答書に記載すべき事項は意見照会書の回答書を自分で書く方法にまとめています。回線の契約者と出品者が異なる場合は家族名義の回線に意見照会書が届いた場合もあわせてご覧ください。
この段階の全体像は当事務所の意見照会対応のページ、サイトごとの取扱いはサイト別の削除・投稿者特定のページで扱っています。
開示された後に何が起きるか
開示が認められると、興行主側は氏名・住所を把握し、通知書や内容証明を送ってきます。請求の内容は、転売差額の返還、営業上の損害の賠償、調査費用など、事案によって組み立てが異なります。請求額の考え方はチケット転売の損害賠償はいくらか、書面が届いた段階の対応は内容証明が届いたときの対応手順をご覧ください。
金銭の請求のほかに、ファンクラブの退会措置がとられることも公表されています。今後の公演に参加できなくなるという不利益は、金額に現れない部分ですが、ご本人にとっては大きい場合があります。
意見照会から示談交渉までを弁護士に依頼した場合の取扱いの範囲と費用は、チケット転売の発信者情報開示請求への対応のページにまとめています。費用と依頼の判断基準は弁護士に依頼する費用と判断基準で整理しています。
よくある質問
チケジャムのアカウントを削除すれば、記録も消えますか。
消えるとは限りません。運営会社は取引の記録を一定期間保存しており、アカウントの削除と保存された記録の消去は別のものとして扱われるのが通常です。むしろ、書面が届いた後にアカウントを削除すると、ご自身が出品内容を確認できなくなり、反論の材料を失うことになります。
チケジャムから直接、開示に同意するかを尋ねられました。
サイト運営者が発信者に意見を聴く手続です。同意すれば、その時点でサイト側が把握している情報が開示されます。同意しない場合でも、開示命令の手続に進めば、裁判所の判断で開示されることがあります。ここで述べた内容は後の手続にも残りますので、回答の前に内容を検討することをお勧めします。
定価以下で譲っていれば、開示されませんか。
定価以下であることは、争ううえで重要な事情です。もっとも、開示の可否は、興行主が主張する権利侵害の内容と、出品の態様を総合して判断されます。定価以下であれば必ず開示されないと言い切れるものではありません。
出品しただけで、購入者がつかなかった場合はどうなりますか。
取引が成立していない場合、実際に得た利益はありません。損害賠償の場面では、この点は請求額に影響し得る事情です。他方、開示の可否については、出品行為そのものをどう評価するかという問題になり、取引の成立とは別に判断されることがあります。
まとめ
- チケジャムは代金を運営会社が預かる仕組みのため、出品・取引・入金の記録が一体で残る
- 利用規約は、法令に基づく請求や不正転売の調査の場面で、同意なく情報を提供できる旨を定めている
- 興行主側は裁判所の発信者情報開示命令を用いており、公表されている申立ては17件から1,589件へ拡大した
- 回答期限は2週間程度と短い。差出人がサイトか通信事業者かで、手続の進み方が違う
- 回答書の記載は撤回できず、開示後の交渉の前提になる
ご自身の出品がどの程度の問題になるのか、争える事情があるのかが分からない段階でも構いません。回答期限の日付をお知らせいただければ、対応の可否をその場で判断しやすくなります。横浜のタングラム法律事務所まで、オンラインで全国からご相談いただけます。
チケット転売を理由とする発信者情報開示請求について、対応の流れと弁護士費用はチケット転売の意見照会対応の詳細をご覧ください。
チケジャムの出品について書面が届いた方へ
タングラム法律事務所(横浜・山下公園)は、チケット転売を理由とする発信者情報開示請求について、意見照会書への回答書の作成・内容確認から、開示後の損害賠償請求への対応・示談交渉まで取り扱っています。オンラインで全国からご相談いただけます。回答期限がある場合は、その日付をお知らせください。
法律相談の予約はこちら※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。