トレント開示請求の弁護士費用と費用倒れの判断基準|意見照会対応
トレント開示請求の弁護士費用と費用倒れの判断基準|意見照会対応
プロバイダから意見照会書が届き、対応を調べているうちに「弁護士に頼んだほうがよさそうだ」という結論にたどり着いた——けれども、いくらかかるのか分からない。そもそも弁護士費用を払ってまで依頼する意味があるのか、いわゆる「費用倒れ」にならないのか。ここで手が止まってしまう方は、とても多くいらっしゃいます。
この記事では、BitTorrent(トレント)による著作権侵害を理由とする発信者情報開示の意見照会について、①弁護士費用がどのような体系で決まるのか、②発信者側の事案で「費用倒れ」をどう判断すべきか、③見積りを取るときに必ず確認しておくべき項目、を順に整理します。金額そのものよりも、何と何を比べれば判断できるのかという考え方をお持ち帰りいただくことを目的としています。
1. 意見照会段階で弁護士に依頼すると、費用の対象は何か
費用の話をする前に、その費用が何に対する対価なのかを確認しておく必要があります。この類型で弁護士が行う作業は、大きく次の3つに分かれます。
- 事実関係の確認と方針の決定——発信日時・IPアドレス・ポート番号・作品名を確認し、その時刻に当該回線が使われていた可能性や、家族・同居人の利用可能性を整理します。
- 理由回答書の作成・提出——情報流通プラットフォーム対処法6条1項に基づく意見聴取に対し、開示に同意しない旨とその理由を書面で述べます。
- 開示された後の示談交渉——権利者側の代理人から損害賠償請求の通知が届いた場合に、請求額の根拠を検討し、交渉して解決を図ります。
重要なのは、この3つが一続きの流れであるということです。意見照会に不同意と回答しても、裁判所が開示を認めれば発信者情報は開示されます(「「開示に同意しない」と回答した後の流れ」で解説しています)。費用を比較する際は、どこまでの範囲がその金額に含まれているのかを必ず揃えて比べてください。
2. 弁護士費用の体系——定額型と着手金・報酬金型
弁護士費用は、かつて日本弁護士連合会が定めていた報酬等基準規程が2004年に廃止されて以降、各事務所が自由に定めることとされています。したがって「トレントの意見照会対応はいくら」という一律の相場は存在しません。実際の設定は、おおむね次の2つの型に分かれます。
| 型 | 費用の決まり方 | 依頼者から見た特徴 |
|---|---|---|
| 定額(パッケージ)型 | 回答書作成から示談交渉までを含めた総額をあらかじめ定める | 総額が最初に確定する。交渉が長引いても金額が変わらない設計であることが多い |
| 着手金・報酬金型 | 依頼時に着手金、解決時に成果に応じた報酬金を支払う | 初期費用は抑えられることがあるが、最終的な総額は解決時まで確定しない |
着手金・報酬金型の場合、発信者側の事案では「減額できた金額」を基準に報酬金を計算する設定がよく用いられます。この場合、何を基準額とするのか(当初請求額との差額か、想定される裁判上の認容額との差額か)で結論が大きく変わるため、契約前に確認が必要です。
なお、弁護士費用は原則として各自の負担であり、相手方に請求できるものではありません。むしろ、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟では、認容額の1割程度が弁護士費用相当額として損害に加算される取扱いがされる傾向にあります。これは請求を受ける側にとっては負担が増える方向に働くため、訴訟に至る前に解決することの経済的な意味は小さくありません。
3. 発信者側の事案で「費用倒れ」をどう判断するか
「費用倒れ」という言葉は、本来は回収額よりも弁護士費用のほうが大きくなる状況を指します。しかし意見照会を受けた発信者側は、お金を取り戻す立場ではなく、支出を抑える立場です。したがって、被害者側の事案とは判断の枠組みが異なります。比較すべきは次の2つです。
- A:弁護士費用 + 最終的に支払う示談金の見込み額
- B:自分で対応した場合に、最終的に支払うことになる金額の見込み
AがBを下回る、あるいは差が小さいのであれば、費用倒れとはいえません。ここで見落とされがちなのが、Bは固定値ではないという点です。示談金の額は、作品の性質、送信可能化の態様、期間、件数、権利者側の方針といった要素で変動します(具体的な算定要素は「トレントの示談金はどう決まるのか」で解説しています)。交渉によって動く余地がある以上、AとBを同じ数字と考えるのは適切ではありません。
金額以外に考慮すべき3つの負担
費用の判断は金額だけでは完結しません。次の3点も、実質的なコストとして計算に入れる必要があります。
- 期限管理の負担——回答期限は書面到達後おおむね2週間です。仕事や学業と並行して調べながら期限内に回答書を仕上げるのは、想像以上に負荷が高い作業です。
- 不可逆な失敗のリスク——提出した回答書は撤回できません。事実関係の整理を誤った回答は、その後の交渉や訴訟で不利な材料として引用される可能性があります。
- 精神的な負担——権利者側の代理人と直接やり取りをすること自体が、現実には最も重い要素になることが少なくありません(「トレント開示請求は会社・学校・家族に知られるのか」もご参照ください)。
4. 自分で対応した場合に生じやすい追加コスト
費用を抑えるためにご自身で対応される方もいらっしゃいます。その選択自体は否定されるものではありませんが、次のような点で結果的に負担が増えることがあります。
- 回答内容の誤り——「使っていない」と書くべき場面と、「送信の事実は争わないが損害額を争う」と書くべき場面は異なります。方針の誤りは、後の交渉の出発点そのものを不利にします。
- 相場観がない状態での交渉——権利者側の代理人は同種案件を多数扱っており、提示額の根拠や交渉の余地を熟知しています。比較対象を持たないまま交渉すると、妥当性の判断ができません。
- 複数件・複数権利者への対応——照会が1通で終わるとは限りません。全体を見通した方針を立てないと、個別対応の積み重ねで不利益が拡大します。
- 訴訟への移行——交渉が決裂して訴訟になれば、費用も労力も大きく増えます。交渉段階で解決できる可能性を高めること自体に経済的な意味があります。
意見照会を受けた方向けの手続全体の流れは、意見照会対応の取扱分野ページでも整理しています。
5. 見積りを取るときに必ず確認すべき項目
複数の事務所を比較する場合、提示された金額だけを並べても意味がありません。次の項目を揃えて確認することで、はじめて比較が可能になります。
| 確認項目 | 確認のポイント |
|---|---|
| 対応範囲 | 回答書の作成・提出のみか、開示後の示談交渉まで含むか |
| 追加着手金 | 交渉が長期化した場合に追加費用が発生するか |
| 成功報酬 | あるとすれば、何を基準額として何%か |
| 実費・消費税 | 提示額に含まれるか、別途請求か |
| 「1件」の単位 | 照会書1通ごとか、権利者ごとか、著作権侵害行為ごとか |
| 訴訟に発展した場合 | 含まれるか、別途委任契約か。別途の場合の目安 |
| 支払方法・時期 | 着手時一括か。クレジットカードや分割の可否 |
| 連絡方法 | オンライン完結か、来所が必要か。書類の送付先に配慮できるか |
とくに「1件」の単位と「訴訟に発展した場合の扱い」は、総額に最も影響する項目でありながら、見積書に明記されていないことがあります。口頭でも構いませんので、必ず確認しておいてください。
6. 当事務所の費用の考え方
タングラム法律事務所では、BitTorrent(トレント)の意見照会対応について、著作権侵害行為1件あたり実費・消費税込みで99,000円の定額としています。①打合せ、②意見照会書への対応(理由回答書の作成・提出)、③開示された場合の権利者との示談交渉が、この金額に含まれます。交渉が長期間に及んだ場合の追加着手金も、示談が成立した場合の成功報酬もいただいておりません。訴訟(損害賠償請求訴訟等)に発展した場合の対応は含まれず、別途の委任契約となります。費用の詳細は意見照会書が届いた方向けの特設ページに掲載しています。事務所全体の料金体系については弁護士費用のページをご覧ください。
定額型としているのは、この類型の相談者の多くが「総額がいくらになるか分からない」という不安を抱えて来られるためです。方針を決める段階で総額が確定していれば、示談金の見込みと合わせて落ち着いて検討できます。お支払いはクレジットカードにも対応しています(当事務所での分割払いの取扱いはありません)。
なお、収入・資産が一定の基準以下であるなどの要件を満たす場合には、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助を利用できることがあります。要件の審査があり、事案の性質によっては対象とならない場合もありますので、利用の可否は法テラスにご確認ください。
7. よくある質問
Q. トレントの意見照会書への対応を弁護士に依頼すると、費用はいくらくらいかかりますか。
A. 弁護士費用は各事務所が自由に定めているため、一律の相場はありません。定額(パッケージ)型と着手金・報酬金型に分かれます。当事務所は著作権侵害行為1件あたり実費・消費税込みで99,000円の定額とし、追加着手金や成功報酬はいただいておりません(訴訟に発展した場合は別途委任契約となります)。
Q. 発信者側の事案で「費用倒れ」かどうかは、何と何を比べて判断すればよいですか。
A. お金を取り戻す事案ではないため、回収額と費用を比べる発想は当てはまりません。比べるべきは「弁護士費用+最終的に支払う示談金の見込み」と「自分で対応した場合に支払うことになる金額の見込み」です。あわせて、期限管理の失敗による不利益や、訴訟に発展した場合の追加費用も考慮する必要があります。
Q. 自分で回答書を出して、示談交渉の段階から弁護士に依頼することはできますか。
A. 可能ですが、意見照会の段階で提出した回答書は、その後の交渉や訴訟で相手方に引用されることがあります。事実関係の整理を誤った回答は、後から依頼しても取り消せません。ご自身で回答される場合でも、提出前に一度弁護士に内容を確認してもらうことをおすすめします。
Q. 複数の作品や複数の権利者から照会が来ている場合、費用は倍になりますか。
A. 費用の数え方は事務所によって異なります。「1件」が何を指すのか(照会書1通ごとか、権利者ごとか、著作権侵害行為ごとか)は見積りの段階で必ず確認してください。当事務所は著作権侵害行為1件あたりを単位としています。複数の照会が届いている場合は、その旨をお伝えいただければ全体の費用をご説明します。
Q. 弁護士費用を用意できない場合、法テラスは使えますか。
A. 収入・資産が一定の基準以下であるなどの要件を満たす場合、法テラスの民事法律扶助を利用できることがあります。ただし要件の審査があり、事案の性質によっては対象とならないこともあります。法テラスの利用を取り扱っているかどうかも事務所により異なりますので、利用の可否は法テラスにご確認ください。
8. まとめ
トレントの意見照会に関する弁護士費用は、金額の大小だけで判断できるものではありません。その金額にどこまでの対応が含まれているのかを揃えたうえで、弁護士費用と示談金の合計を、自分で対応した場合の見込みと比較する——これが判断の骨格です。そのうえで、期限管理の負担と、回答内容を誤った場合の不可逆性を、ご自身の状況に照らして重み付けしてください。
横浜のタングラム法律事務所では、BitTorrent(トレント)の意見照会対応に限り、オンライン(Google Meet)による20分程度の法律相談を無料で実施しています(この分野に限った取扱いであり、他の分野のご相談は有料です)。費用の見込みと方針をご説明したうえで、依頼されるかどうかをご判断いただけます。回答期限が迫るほど選択肢は狭まりますので、判断に迷われている段階でご相談ください。意見照会書が届いた方向けの特設ページもあわせてご覧ください。
意見照会書が届き、費用の見込みを知りたい方へ
タングラム法律事務所では、BitTorrent(トレント)の発信者情報開示に係る意見照会への対応について、理由回答書の作成から開示後の示談交渉まで、ITエンジニアの経験を持つ弁護士が一括して対応しています。回答には期限があります。費用と方針をご確認のうえ、落ち着いてご判断ください。
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