リース契約は中途解約できない?割賦販売との違いを横浜の弁護士が解説
リース契約は中途解約できない?割賦販売との違いを横浜の弁護士が解説
「使わなくなった複合機のリースを解約したいと申し出たら、残りのリース料を全額払うよう言われた」——リース契約をめぐるご相談は、中小企業の法務相談で繰り返し寄せられます。分割払いで機械を買う感覚で契約し、後になって想定と違っていたという声も少なくありません。
リース契約は「毎月定額を払って物を借りる」契約に見えますが、法律上は賃貸借とも割賦販売とも異なる構造を持っています。この記事では、その法的性質、割賦販売・レンタルとの違い、中途解約が制限される理由と交渉の余地、提携リースのトラブルまでを横浜の弁護士が整理します。
リース契約(ファイナンス・リース)とはどのような契約か
公益社団法人リース事業協会の説明によれば、ファイナンス・リースは、ユーザー(利用する事業者)が導入したい設備と販売会社(サプライヤー)を自ら選び、リース会社がその販売会社から物件を購入してユーザーにリースする取引です。物件はユーザーへ直接搬入され、ユーザーが検査のうえ発行した「物件借受証」をリース会社が受け取った時点でリースが開始します。
要点は、当事者が三者いること、物件を選んだのがユーザー自身であること、リース会社が物件代金を全額支払ってリース料で回収する構造だという点です。なお、ファイナンス・リースは民法の典型契約ではありません。2020年4月施行の改正民法の立案過程で典型契約化が議論されましたが条文化は見送られ、権利義務は第一次的に契約書の定めで決まります。
リース・割賦販売・レンタルの違い——所有権と解約の可否
| 項目 | ファイナンス・リース | 割賦販売 | レンタル |
|---|---|---|---|
| 契約の性質 | 非典型契約(賃貸借を中核とし金融の要素を含む) | 売買(代金の分割払い) | 賃貸借 |
| 物件の所有権 | リース会社に帰属したまま(満了後は返還または再リース) | 最終的に買主へ移転(完済まで所有権を留保する例が多い) | 賃貸人に帰属 |
| 中途解約 | 原則としてできない。解約する場合は残リース料相当額を一括で支払う | 期限前完済は可能なことが多い | 予告期間を置いて解約できるのが通常 |
| 保守・修繕 | ユーザーが負担する | 買主が負担する | 賃貸人が負担する |
| 品質の不適合 | リース会社は責任を負わず、ユーザーがサプライヤーに直接請求する | 売主が契約不適合責任を負う | 賃貸人が責任を負う |
割賦販売は代金を分割で払う「売買」ですから、払い終われば物件は自社のものになります。これに対しリースは、満了しても物件はリース会社のものであり、返還するか比較的低額の再リース料で更新するかを選ぶことになります。契約の名称ではなく実質で法律関係が決まる点は、代理店契約と販売店契約の違いと同じです。
なぜリース契約は中途解約できないのか
リース事業協会が公表する標準的なリース契約書には、契約に定める場合を除き解除できない旨が明記されています。リース会社が契約時に物件代金を全額支払い済みであるという構造に根拠があります。
裁判例もこの構造を前提としています。最高裁は、ファイナンス・リースは形式的には賃貸借であるものの、実質的にはリース業者が利用者に金融の便宜を供与する性質を有すると解しています(最高裁昭和57年10月19日判決)。また、リース料の支払債務は契約の成立と同時に全額について発生し、毎月一定額を支払う約定は期限の利益を与えるものにすぎず、各月の使用と各月のリース料とが対価関係に立つものではないとも判示されています(最高裁平成5年11月25日判決)。「使っていないのだから払わなくてよい」という主張は通りません。
それでも解約したい場合——規定損害金と清算義務
中途解約が絶対に不可能というわけではありません。双方が合意すれば解約でき、その場合は残リース料相当額の違約金を一括して支払うのが通例です。契約違反があれば、リース会社が契約を解除し、物件の返還と規定損害金の支払を求めます。
重要なのは清算です。前掲の最高裁昭和57年判決は、リース業者が期間の途中で物件の返還を受けた場合、その原因が利用者の債務不履行にあるときでも、特段の事情がない限り、返還によって取得した利益を清算する必要があるとしています。協会の標準契約書でも、物件の処分価値と満了時の見積残存価値との差額を清算する旨が定められています。残リース料の計算方法や処分価額の評価には確認と交渉の余地があります(通知の出し方は契約解除の進め方と解除通知書の書き方もご覧ください)。
物件が故障した・説明と違った場合、リース会社に責任を問えるか
標準的なリース契約書では、リース会社は物件の品質等の不適合について責任を負わないとされ、ユーザーはサプライヤーに直接請求することとされています。この場合もユーザーはリース料の支払を免れません。保守・修繕もユーザーの負担で、物件が滅失・損傷したときも原因を問わず支払を拒めないとされています。
つまり「物件への不満はサプライヤーへ、支払はリース会社へ」という切り分けです。導入前に保守契約の内容を確認し、性能や保証について受けた説明を書面やメールで残しておくことが後の交渉力を左右します。詳しくは当事務所の企業法務のページもご参照ください。
提携リース(小口リース)のトラブル——事業者に救済の余地はあるか
紛争として目立つのが提携リース(小口リース)です。リース会社と販売店の業務提携により、主に事業者を対象に比較的少額の案件について行われる取引で、電話機、複合機、看板、節電機器などが典型です。リース事業協会も販売方法に起因する苦情を認め、小口リース取引に係る自主規制規則を定めています。
問題となるのは「今の電話機はもうすぐ使えなくなる」といった不正確な説明です。注意すべきは、消費者保護の制度が事業者には原則として及ばないこと。割賦販売法の「抗弁の接続」はリース取引を対象とせず、特定商取引法も「営業のために若しくは営業として締結する」契約を適用除外としています(同法26条1項1号)。もっとも、事業者名義でも対象物が主として個人用・家庭用に使用される実態があれば、なお同法の適用があり得るとの解釈が示されています。勧誘の内容によっては詐欺取消し(民法96条1項)や錯誤取消し(同法95条1項)も検討でき、下級審には、リース会社が販売店の不当な勧誘を防止すべき信義則上の義務を負うとして未払リース料の請求を制限した裁判例もあります。
2027年4月から適用される新リース会計基準と中小企業への影響
企業会計基準委員会は2024年9月13日に企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等を公表しました。借手はオペレーティング・リースを含むすべてのリースについて、原則として使用権資産とリース負債を貸借対照表に計上する取扱いに改められ、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されます(早期適用も可能です)。ただし、会計監査人を設置していない非上場の中小企業は強制適用の対象ではなく、「中小企業の会計に関する指針」等による従来の処理を続けられるとされています。
よくある質問
リース契約にクーリング・オフはできますか。
事業のために締結したリース契約には、原則としてクーリング・オフの適用はありません。特定商取引法26条1項1号が「営業のために若しくは営業として締結する」契約を適用除外とし、割賦販売法にも同様の規定(8条1項等)があるためです。ただし、事業者名義でも主として個人用・家庭用に使われている実態があれば、なお適用の余地があるとされます。
リース料を滞納するとどうなりますか。
リース料の不払いは契約の解除事由とされているのが通常で、リース会社は契約を解除して物件の返還と規定損害金の支払を求めることができます。規定損害金は残リース料相当額を基礎に算定されるため、滞納が長引くほど負担は膨らみます。ただし返還を受けた物件から得た利益は清算する必要があると解されています。
廃業する場合、リース契約はどうなりますか。
廃業や事業縮小それ自体は契約の終了事由ではなく、残リース料相当額の一括請求を受けるのが通常です。会社を解散して清算手続に入る場合には、リース債権も他の債務とあわせて清算の対象となります(手続の全体像は会社の解散・清算手続きの流れで解説しています)。
リース契約書は締結前に弁護士にチェックしてもらえますか。
可能です。リース期間・リース料総額・規定損害金の算定方法・保守や保険の負担・再リースの条件など、事業者にとって重要な条件は別表や特約に置かれています。販売店から受けた説明との食い違いがないかも併せて確認できます(費用感は契約書リーガルチェックの費用相場をご参照ください)。
まとめ
リース契約は、賃貸借の形をとりながら実質的には設備資金の融通に近い機能を持つ契約であり、その構造ゆえに中途解約が強く制限されています。「使っていない」ことを理由に支払を止める対応は取り得ません。
他方で、清算義務、規定損害金の算定、提携リースにおける勧誘の経緯など、検討の余地が残る論点もあります。締結前の確認と締結後のトラブル対応のいずれの局面でも、早い段階で弁護士に相談されることをおすすめします。
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タングラム法律事務所では、企業法務(契約書レビュー・労務・法改正対応等)について、中小企業・個人経営の事業者向けに豊富な実績を有しております。リース契約の中途解約・規定損害金の交渉、提携リースをめぐる紛争、契約締結前のリーガルチェックまで、事業者の立場に立って対応いたします。
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