タングラム法律事務所

子どもの投稿で意見照会書が届いたら|親の責任と対応を弁護士が解説

子どもの投稿で意見照会書が届いたら|親の責任と対応を弁護士が解説

子どもの投稿で意見照会書が届いたら|親の責任と対応を弁護士が解説

子どもの投稿で意見照会書が届いたら|親の責任と対応を弁護士が解説

子どもの投稿で意見照会書が届いたら|親の責任と対応を弁護士が解説

プロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」が世帯主宛てに届き、家族に尋ねると中学生・高校生の子どもが心当たりを口にした——。横浜の当事務所にも、こうしたご相談が寄せられます。見慣れない法律用語が並ぶうえ、回答期限も2週間程度と短いことが多く、手をつけられないまま日が過ぎがちです。

本記事では、なぜ親宛てに書面が届くのかという仕組みから、親がどこまで責任を負うのか、刑事責任の扱い、回答書で述べるべきことまでを整理します。

なぜ子どもの投稿で親に意見照会書が届くのか

投稿によって権利を侵害されたとする人は、投稿者を特定するため、情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法。2025年4月1日施行。旧プロバイダ責任制限法)5条に基づき発信者情報の開示を請求できます。同法6条1項は、開示請求を受けたプロバイダは、発信者と連絡することができない場合その他特別の事情がある場合を除き、開示の可否について発信者の意見を聴かなければならないと定めており、この意見聴取のために送られてくる書面が意見照会書です。

問題は、プロバイダが把握している情報が「回線の契約者」のものでしかない点にあります。家族全員で1本の回線を使っている以上、契約者と実際の投稿者が一致するとは限りませんが、プロバイダには家庭内の誰が投稿したかを確かめる手段がないため、契約者を発信者として扱って書面を送ります。

意見照会書が届いたこと自体は、開示が決まったことを意味しません。書面の読み方や回答の選択肢は、発信者情報開示請求に係る意見照会書が届いたときの対処法もあわせてご覧ください。

回答書を書く前に確認すべきこと

回答の方針は、事実関係が固まらないと決められません。無理に問い詰めると事実があいまいになるため、次の点を落ち着いて聴き取ってください。

確認する事項確認する理由
照会書記載の日時に、その投稿をしたか発信者が誰かという最も基本的な事実
どの端末・どの回線から行ったか学校・公衆Wi-Fi・携帯回線なら別人の可能性がある
投稿の前後の経緯違法性阻却事由や慰謝料額を左右する事情につながる
同種の投稿が他にもあるか別の開示請求が続く可能性を把握するため

「自分ではない」という答えでも、その日時に誰が在宅していたかまで確認してください。共有回線では、契約者でも子どもでもない第三者が使っていたという事態も起こり得ます。

子どもの投稿について親が損害賠償責任を負うか

親がまず心配されるのは、開示後に自分が賠償を求められるのかという点でしょう。民法の枠組みは、お子さまに「責任能力」があるかどうかで分かれます。

責任能力がない場合——民法714条1項

民法712条は、未成年者が自己の行為の責任を弁識するに足りる知能(責任能力)を備えていなかったときは賠償責任を負わないと定めています。責任能力の有無は年齢だけで決まるものではなく、環境・発育の程度・行為の種類などから個別に判断されますが、おおむね11歳から12歳程度が一つの目安とされています。

責任能力がないとされた場合、代わりに監督義務者である親が民法714条1項によって責任を負うのが原則ですが、同項ただし書は監督義務を怠らなかったときは免責されると定めます。最高裁平成27年4月9日第一小法廷判決(民集69巻3号455頁。サッカーボール事件)は、通常は人身に危険が及ぶとみられない行為について、具体的に予見可能な特別の事情がない限り監督義務を尽くさなかったとはいえないと判断しました。家庭で利用のルールを定めて注意していた事情は、免責を基礎づける方向に働き得ます。

責任能力がある場合——民法709条

責任能力がある場合、賠償責任を負うのは本人であり、親が民法714条1項によって責任を負うことはありません。ただし最高裁昭和49年3月22日第二小法廷判決は、未成年者が責任能力を有する場合であっても、監督義務者の義務違反と結果との間に相当因果関係が認められるときは、監督義務者について民法709条に基づく不法行為が成立すると判示しており、親自身の監督のあり方が問われる余地は残ります。

お子さまの状況本人の責任親の責任
責任能力なし(12歳程度まで)負わない714条1項。監督義務を怠らなかったことを立証できれば免責
責任能力あり709条により負う監督義務違反と結果に相当因果関係があれば709条

実際には、お子さまに資力がないことが多く、相手方が親に支払を求めてくる場面は少なくありません。被害者側から見た構成は未成年者によるネット誹謗中傷への法的対処法で解説しています。

刑事責任はどう扱われるか

刑法41条は14歳に満たない者の行為は罰しないと定めており、14歳未満のお子さまに刑罰が科されることはありませんが、児童相談所の措置や家庭裁判所の審判の対象となることはあります。14歳以上20歳未満であれば、少年法に基づき事件は家庭裁判所に送致されます。

問題となり得る犯罪は、名誉毀損罪(刑法230条1項。3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)、侮辱罪(刑法231条。1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料)、無断アップロードの場合の著作権法119条1項(10年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金、またはその併科)などです。

意見照会書にどう回答するか

回答の選択肢は、開示に同意する・同意しない・回答しないの3つです。

回答その後の扱い
同意する任意に開示される可能性が高い。開示後は損害賠償請求などに進むことが想定される
同意しない(理由を述べる)任意開示が見送られることが多い。請求者は発信者情報開示命令の申立て等に移行し得る
回答しない開示を拒む理由がないものとして扱われ、任意開示につながりやすい

押さえておくべきなのは、情プラ法にはプロバイダが発信者の意見に拘束される旨の規定が置かれていない点です。同意しないと回答しても開示されることはあり得ますし、裁判所が開示を命じれば情報は開示されます。それでも理由をきちんと書く意味は小さくありません。任意開示を見送る判断材料になるほか、裁判手続に移った際のプロバイダ側の反論の土台になるからです。

お子さまの事案に特有の論点は、契約者である親自身は発信者ではないという点をどう扱うかです。有力な反論になり得る一方、家庭内の誰が発信者かを明らかにすれば、その後の請求がお子さまに直接向かうことも意味します。書き方の基本は意見照会書の回答書を自分で書く方法で整理していますが、発信者が未成年者である場合は個別性が高いため、当事務所の意見照会対応のページもご覧ください。

著作権侵害(BitTorrent等)で届いたケース

お子さまが関係する意見照会には、誹謗中傷型のほか、ゲーム・アニメ・漫画などをBitTorrent(トレント)でダウンロードしたことを理由とする著作権侵害型があります。BitTorrentはダウンロードと同時に同じファイルを他の利用者へ送信する仕組みであるため、「アップロードした」という自覚がないまま公衆送信権侵害として扱われることが少なくありません。

心当たりがない場合の考え方はBitTorrent開示請求に心当たりがない時の対処法で、意見照会段階から示談交渉までの対応はBitTorrent著作権侵害の意見照会対応のページでご確認いただけます。

よくある質問

子どもが投稿したのに、なぜ親の名前で意見照会書が届くのですか。

プロバイダが把握しているのは回線の契約者情報だからです。家庭の回線では契約者が親、発信者が子どもというずれが生じますが、プロバイダには家庭内の誰が投稿したかを確かめる手段がないため、契約者宛てに意見照会書が送られます。

子どもがした投稿について、親が損害賠償責任を負うことはありますか。

あり得ます。子どもに責任能力がない場合は、監督義務者である親が民法714条1項により責任を負うのが原則です。責任能力がある場合でも、親の監督義務違反と結果との間に相当因果関係が認められるときは民法709条により親自身が責任を負うとした最高裁判例(最判昭和49年3月22日)があります。

子どもが14歳未満なら刑事責任は問われないのですか。

刑法41条により14歳未満の者の行為は罰しないとされているため、刑罰を科されることはありません。ただし児童相談所の措置や家庭裁判所の審判の対象となることはあり、民事の損害賠償責任とも別の問題です。

意見照会書に「発信者は子どもである」と書いてしまってよいのでしょうか。

事案によります。契約者自身が発信者でないことは重要な反論になり得る一方、家庭内の誰が発信者かを明らかにすれば、その後の請求が子どもに直接向かうことにもなります。開示後の展開を見据えた判断が必要です。

まとめ

子どもの投稿を理由とする意見照会書が親宛てに届くのは、プロバイダが回線契約者の情報しか持っていないという構造上の理由によります。まずは事実関係を確認し、お子さまに責任能力があるか、親自身の監督義務違反が問われ得るか、刑事手続の対象となり得るかを切り分けて考えることが出発点です。

この類型が難しいのは、回答書の一文がお子さま本人への請求を引き寄せることもあれば、逆に何も述べないことで親が発信者として扱われ続けることもある点にあります。書面が届いたら、期限に余裕があるうちに弁護士へご相談ください。

お子さまの投稿で意見照会書が届いた方へ

タングラム法律事務所では、横浜を拠点に、インターネット上の誹謗中傷・著作権侵害に係る発信者情報開示について、請求を受けた側のご相談にも数多く対応しております。回答書の作成から開示後の示談交渉までお任せいただけます。

法律相談の予約はこちら

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

発信者情報開示請求・削除請求について見る

意見照会書や損害賠償請求の通知が届いた方へのご案内

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。