タングラム法律事務所

誹謗中傷に言い返すとどうなる?反論・晒しのリスクを弁護士が解説

誹謗中傷に言い返すとどうなる?反論・晒しのリスクを弁護士が解説

誹謗中傷に言い返すとどうなる?反論・晒しのリスクを弁護士が解説

誹謗中傷に言い返すとどうなる?反論・晒しのリスクを弁護士が解説

誹謗中傷に言い返すとどうなる?反論・晒しのリスクを弁護士が解説

事実無根の書き込みを見つけたとき、「このまま黙っていたら本当のことだと思われてしまう」と感じるのは自然なことです。その場で反論を投稿した、相手のアカウント名を挙げて注意喚起した——実際のご相談でも、思わず反撃してしまった後で来られる方は少なくありません。

しかし、ネット上の誹謗中傷に言い返す行為は、状況によってはこちらが名誉毀損やプライバシー侵害の責任を問われる側に回ってしまいます。この記事では、「言論には言論で対抗すればよい」という対抗言論の法理が実際にはどこまで通用するのか、反論投稿や「晒し」がどのような法的リスクを伴うのか、反撃の代わりに取るべき手順は何かを、横浜で発信者情報開示請求を扱う弁護士の立場から整理します。

「言い返せば解決する」とは限らない——対抗言論の法理の限界

裁判例には、インターネット上の表現について「言論による侵害に対しては言論で対抗する」という考え方(対抗言論の法理)を示したものがあります。東京地裁平成13年8月27日判決は、被害者が十分な反論を行い、それが功を奏した場合には社会的評価は低下していないと評価できるとして、表現者の不法行為責任を否定しました。

もっとも、この考え方が誰にでも当てはまるわけではありません。その控訴審である東京高裁平成14年12月25日判決は、言論に対して言論で対処することが望ましいとしても、それは対等に言論を交わせる者同士であるという前提があって初めて言えるとして、被害者側がその掲示板を利用しておらず、自ら批判を誘発する言動もしていなかった事情などを踏まえ、被害者の請求を認めました。

実務的にみると、匿名の投稿者が多数いる掲示板やSNSで、実名で活動する個人や事業者が一人で反論しても、対等な言論の場とは評価されにくいのが実情です。むしろ応酬が長期化して投稿が増え、被害が拡大することのほうが多くみられます。

反論が「効いた」と評価されるかどうかは事後的な判断であり、投稿の時点では誰にも分かりません。対抗言論の法理を当てにして自分で書き込むのは、リスクの高い選択だと考えておくべきです。

反論投稿が名誉毀損罪・侮辱罪になる場合

反撃の投稿であっても、その内容が相手の社会的評価を下げるものであれば、刑事上の責任が問題になります。名誉毀損罪と侮辱罪の違いは、具体的な事実を摘示しているかどうかにあります。

罪名条文中心的な要件法定刑
名誉毀損罪刑法230条1項公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損すること3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
侮辱罪刑法231条事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱すること1年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料

侮辱罪の法定刑は、令和4年法律第67号による改正で「拘留又は科料」から引き上げられました(同改正は令和4年7月7日施行)。また、令和7年(2025年)6月1日からは懲役と禁錮が拘禁刑に一本化されています。いずれも親告罪であり(刑法232条1項)、相手が告訴に踏み切れば捜査の対象となりえます。

「相手が先に書いたのだから」という感覚は、法的には抗弁になりません。また最高裁は、インターネットの個人利用者による表現であっても真実性・相当性の判断基準を緩和すべきではないとしています(最決平成22年3月15日・刑集64巻2号1頁。いわゆるラーメンフランチャイズ事件)。裏付け資料を持たないまま「あの人は詐欺をしている」といった投稿をすれば、被害者側の反撃であっても責任を免れにくいということです。名誉毀損の成否の分かれ目については、誹謗中傷と正当な批判の境界線に関する記事もあわせてご覧ください。

民事上の責任——反論した側が慰謝料を請求される

刑事責任とは別に、民事上は民法709条・710条に基づく損害賠償責任が問題になります。相手方の投稿が違法であることと、こちらの反論が違法であることは別々に判断されるためです。相手を訴えるつもりで相談に来られた方が、こちらも投稿を削除・謝罪する立場になってしまう展開は実際に起こります。応酬の経緯は慰謝料額の判断で考慮されることがありますが、応酬があれば責任がなくなるというものではありません。相手の投稿が侮辱にとどまる場合の評価については、名誉感情侵害と開示・削除の可否を解説した記事も参考になります。

相手の実名・勤務先を「晒す」ことの重いリスク

反論よりもさらにリスクが高いのが、相手の氏名・住所・勤務先・顔写真などを公開する、いわゆる「晒し」です。これらは名誉毀損とは別にプライバシー侵害として不法行為(民法709条)を構成しうるものであり、私的制裁としての晒しは公益目的を主張しても正当化されにくい領域です。公開された側の救済については、個人情報を晒された(ドックス被害)ときの法的対処法で解説しています。

とりわけ注意が必要なのは、発信者情報開示請求によって判明した相手の情報を公表することです。情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)7条は、次のように定めています。

第五条第一項又は第二項の規定により発信者情報の開示を受けた者は、当該発信者情報をみだりに用いて、不当に当該発信者情報に係る発信者の名誉又は生活の平穏を害する行為をしてはならない。(情報流通プラットフォーム対処法7条)

開示された情報の公表は、この規定に反する行為と評価されうるうえ、その後の示談交渉や訴訟において相手方から反訴や減額の主張を招く要因にもなります。開示によって得た情報は、削除請求・損害賠償請求・刑事告訴といった正規の手続のために使うことが原則です。手続の全体像は発信者情報開示請求・削除請求の取扱分野ページにまとめています。

反撃の代わりに取るべき4つの手順

反撃に使うはずだった時間と気力を次の手順に振り向けたほうが、結果的に被害の回復に近づきます。

  • 1. 証拠を保全する……URL・投稿日時・投稿者名が写る形でスクリーンショットを取得します。相手が削除・編集すると復元は困難です。
  • 2. 削除を求める……サイト運営者への削除申請や送信防止措置依頼、応じない場合は削除仮処分を検討します。
  • 3. 投稿者を特定する……発信者情報開示命令の申立てにより、プロバイダから氏名・住所の開示を受けます。アクセスログの保存期間には限りがあるため、着手の早さが結果を左右します。
  • 4. 責任を追及する……示談交渉や損害賠償請求訴訟、必要に応じて刑事告訴を行います。

被害を受けた直後の動き方は、ネット誹謗中傷の初動対応を解説した記事で整理しています。SNSでのなりすまし・中傷被害の方向けには、SNSなりすまし・誹謗中傷への対応の特設ページもご用意しています。

それでも説明したいときの注意点

取引先や顧客に誤解が広がっているなど、沈黙し続けるわけにいかない場面もあります。その場合は次の点に注意してください。

  • 相手ではなく事実について書く……自分や自社の事実関係を述べるにとどめ、投稿者の人格や属性に踏み込まない。
  • 断定的な決めつけを避ける……「詐欺」「犯罪者」といった評価語は、それ自体が侮辱・名誉毀損の評価を受けやすい表現です。
  • 相手を特定できる情報を書かない……アカウント名であっても、識別可能であれば名誉毀損の対象になりえます。
  • 公表の場を選ぶ……当該掲示板で応酬せず、自社サイトなど管理下の媒体で一度だけ説明する方法が有効な場合があります。

よくある質問

「やめてください」と書き込むだけでも問題になりますか。

投稿の削除や中止を求める意思表示そのものが違法になることは、通常は考えにくいところです。問題になりやすいのは、そこに相手を侮辱する言葉や、相手の属性についての断定的な記述を付け加えてしまう場合です。

相手のアカウント名を挙げて「この人は嘘をついています」と注意喚起してもよいですか。

アカウント名でも、その人物を識別できる状態で社会的評価を下げる事実を摘示すれば、名誉毀損が成立する可能性があります。最高裁は、インターネット上の表現だからといって真実性・相当性の判断基準が緩和されるわけではないとしています(最決平成22年3月15日)。注意喚起の必要性があるときほど、裏付け資料の有無を先に確認すべきです。

こちらが言い返したことは、開示請求や損害賠償請求で不利になりますか。

反論したという事情だけで開示請求ができなくなるわけではありません。もっとも、応酬の経緯は、相手方から「挑発があった」「議論の一部である」といった反論の材料にされることがあり、慰謝料額の判断で考慮される場合もあります。

開示請求で判明した相手の氏名をSNSで公表してもよいですか。

公表は避けるべきです。情報流通プラットフォーム対処法7条は、発信者情報の開示を受けた者は、その情報をみだりに用いて不当に発信者の名誉又は生活の平穏を害する行為をしてはならないと定めています。公表はプライバシー侵害として損害賠償の対象になりうるほか、その後の交渉でこちらの立場を弱めかねません。

まとめ

対抗言論の法理は「対等に言論を交わせる関係」を前提とした考え方であり、匿名の投稿者に対する反論が常に免責されるわけではありません。反論投稿は名誉毀損罪・侮辱罪や民法709条の責任を招きうるものであり、相手の実名や勤務先を晒す行為はさらに重いリスクを伴います。開示によって得た情報の取扱いには、情プラ法7条という明文の規律もあります。

被害の回復に直結するのは、証拠保全・削除請求・発信者情報開示・責任追及という正規の手順です。アクセスログの保存期間には限りがあるため、投稿を見つけた段階で弁護士に相談し、書き込みを続けるかどうかを含めた方針を決めることが、結果的にいちばんの近道になります。

言い返す前に、まず弁護士にご相談ください

タングラム法律事務所では、インターネット上の誹謗中傷について、削除請求・発信者情報開示請求・損害賠償請求の豊富な実績を有しております。すでに反論を投稿してしまった場合の立て直しについても、経緯を確認したうえで方針をご提案します。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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