ウェブ魚拓・アーカイブに残った誹謗中傷の削除方法を弁護士が解説
ウェブ魚拓・アーカイブに残った誹謗中傷の削除方法を弁護士が解説
掲示板やSNSの誹謗中傷の削除にようやく成功したのに、検索すると「ウェブ魚拓」や「アーカイブ」と書かれたページに、削除したはずの投稿がそのまま残っている——。ネット誹謗中傷のご相談では、こうした状況に直面して途方に暮れる方が少なくありません。元の投稿を消しても被害が終わらないという点で、負担は大きいものです。
この記事では、魚拓・アーカイブが残る仕組み、サービスごとの削除依頼の方法、任意の削除に応じないときの法的手段、そして魚拓を証拠として活かす考え方を、横浜で発信者情報開示請求・削除請求を扱う弁護士の視点から整理します。
なぜ投稿を削除しても魚拓・アーカイブに残るのか
ウェブ魚拓やアーカイブサービスは、ある時点のウェブページの表示内容を取得し、そのサービス自身のサーバーに複製して保存する仕組みです。元のページを参照して表示しているのではなく、保存した時点のデータをそのまま配信しています。したがって、元の投稿が削除されても、アーカイブ側のデータは何の影響も受けません。
検索エンジンのキャッシュは再クロールによって更新・消滅していきますが、アーカイブサービスは「その日時にその内容が公開されていたこと」を記録として残すことを目的としているため、放置しても自然に消えることは期待できません。
また誹謗中傷の事案では、削除を見越して加害者側があらかじめ魚拓を取得し、そのURLを別の掲示板に貼り付ける行為もしばしば見られます。削除請求と開示請求のどちらを優先すべきかについては、削除請求と発信者情報開示請求の違いを解説した記事も参考にしてください。
主なアーカイブサービスと削除の可否
日本語圏で問題になりやすい主なサービスと、削除を求める際の窓口の有無は、おおむね次のとおりです。
| サービス | 運営 | 削除申出の窓口 |
|---|---|---|
| ウェブ魚拓(megalodon.jp) | 株式会社アフィリティー(日本国内) | 魚拓ページ上の「削除」ボタン。弁護士を通じた連絡も可能とされている |
| Internet Archive(Wayback Machine) | Internet Archive(米国カリフォルニア州の非営利団体) | 公式ヘルプで著作権に関する申出先としてinfo@archive.orgが案内されている |
| archive.today系のサービス | 運営主体が公表されていない | 削除の申出先が明らかにされていない |
| まとめサイト等への転載 | サイトにより異なる | 各サイトの削除依頼フォーム・送信防止措置依頼 |
重要なのは、運営者を国内で特定できるかどうかで取り得る手段が大きく変わるという点です。運営主体が公表されていないサービスでは、誰に請求すればよいのかという入口で行き詰まります。
ウェブ魚拓(megalodon.jp)への削除依頼
ウェブ魚拓は公式のQ&Aにおいて、該当する魚拓ページ上の「削除」ボタンから削除を依頼するよう案内しています。理由が複雑な場合や弁護士を通じて連絡する場合には、別途の問い合わせ窓口からの連絡も可能とされています。
もっとも同サービスは「ウェブ魚拓の考え方」と題するページで、一度公開された情報について言及する権利は万人にあるという立場を明らかにしており、申出があれば常に削除するという運用ではありません。同ページでは、情報を公開した本人からの依頼と、情報を公開された本人(被害者)からの依頼とを区別し、後者は状況を加味して判断する旨が述べられています。申出にあたっては、自分が権利を侵害された当事者であること、どの記述が名誉毀損・プライバシー侵害に当たるのかを具体的に説明することが重要です。
ウェブ魚拓の公式Q&Aによれば、2024年5月以降、robots.txtのnoarchive指定による取得禁止は行われていません。人間による取得かどうかを判定する仕組みを導入したことが理由とされています。閲覧可能な状態に置く以上、第三者による保存を完全に遮断することはできません。
海外のアーカイブサービスへの対応
Internet Archive(Wayback Machine)は、米国カリフォルニア州サンフランシスコに所在する非営利団体が運営しています。公式ヘルプでは、著作権を侵害するコンテンツを同団体のポリシーに従って削除する旨と連絡先(info@archive.org)が案内されており、著作物を無断で転載された事案であればこの窓口への申出が第一手となります。他方、名誉毀損やプライバシー侵害を理由とする削除について定型の手続が用意されているわけではなく、応じるかどうかは運営者の判断に委ねられます。
archive.today系のサービスのように運営主体も所在地も公表されていない場合は、申出先が分からないだけでなく、裁判手続の相手方を特定することもできません。この場合は、アーカイブ自体の削除にこだわるよりも、そのURLを貼り付けて拡散している国内の掲示板・SNSの投稿を削除し、投稿者を特定する方向に切り替えるほうが、結果的に被害の抑止につながることが多いといえます。サイトごとの進め方は、掲示板・SNS別の削除・投稿者特定のページにまとめています。
任意の削除に応じない場合の法的手段
人格権に基づく削除請求・削除仮処分
任意の削除に応じない場合、名誉権やプライバシー権といった人格権に基づく妨害排除請求として削除を求めることが考えられます。緊急性があるときは、訴訟ではなく削除仮処分命令の申立てによるのが一般的です。手続の流れや担保金は、削除仮処分を自分で申し立てる方法の記事で解説しています。
ただしアーカイブサービスを相手方とする場合、運営者の特定という前提が重くのしかかります。国内法人であれば法人登記により特定できますが、外国法人の場合は資格証明書の取得や訳文の準備、送達の手配を要し、通常の削除仮処分より負担が大きくなります。
情報流通プラットフォーム対処法の位置づけ
2025年4月に施行された情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)は、大規模特定電気通信役務提供者に対し、送信防止措置の申出を受け付ける方法を定めて公表すること(22条)、申出を受けたときに遅滞なく必要な調査を行うこと(23条)、申出を受けた日から14日以内の総務省令で定める期間内に判断の結果を申出者に通知すること(25条)を義務づけています。
もっとも、これらの義務が課されるのは総務大臣の指定を受けた大規模な事業者に限られます。魚拓サイトやアーカイブサービスが該当することは通常想定されないため、情プラ法を根拠に迅速な対応を求めることは基本的に期待できません。
他方、同法3条1項は、権利侵害を知っていたとき等でなければ事業者は損害賠償責任を負わない旨を定めています。裏を返せば、権利侵害の事実を具体的に通知した後もなお放置した事業者は、自ら責任を問われ得るということであり、この点が任意の削除申出の実務的な意義を支えています。
削除を急ぐ前に——魚拓は証拠にもなる
見落とされがちですが、魚拓やアーカイブは被害者側にとって有力な証拠にもなります。投稿者が自ら書き込みを削除した場合でも、魚拓が残っていれば、その日時にその内容が公開されていたことを示す資料として使えるからです。
ウェブ魚拓は、削除された魚拓の内容についても、弁護士や裁判所からの要請を前提として照会に応じる場合がある旨を公式Q&Aで案内しています。削除後に「あの投稿の文面が確認できない」という事態を避けるため、削除を申し出る前に、魚拓のURL・取得日時・表示内容を自分の側で必ず保全しておくことが重要です。証拠の残し方は、誹謗中傷の証拠保全とスクリーンショットの撮り方の記事もあわせてご覧ください。
投稿者への損害賠償請求を視野に入れる場合、アクセスログの保存期間という時間的な制約もあります。投稿者の特定を含めた進め方は発信者情報開示請求のページで、SNSでのなりすましや中傷が絡む事案はSNSなりすまし・誹謗中傷への対応の特設ページでご案内しています。
よくある質問
元の投稿が削除されれば、魚拓も自動的に消えますか。
自動的には消えません。魚拓やアーカイブは、取得した時点のページ内容を各サービスのサーバーに複製して保存する仕組みであるため、元のページが削除されても保存データは残ります。消すには、そのサービスの運営者に対して別途、削除を求める必要があります。
自分のサイトを魚拓に取られないようにできますか。
完全に防ぐことは困難です。ウェブ魚拓は公式のQ&Aで、2024年5月以降、robots.txtのnoarchive指定による取得禁止を行っていない旨を説明しています。閲覧できる状態に置く以上、第三者による保存を技術的に完全に遮断することはできません。
魚拓が残っていること自体を理由に、投稿者へ損害賠償を請求できますか。
魚拓が残り権利侵害の状態が続いていることは、損害の算定において考慮され得る事情です。ただし魚拓を取得したのが第三者である場合、その行為まで当然に投稿者の責任となるわけではなく、誰のどの行為を問題とするのかを整理する必要があります。
削除を求める前に、まず何をしておくべきですか。
魚拓のURL・取得日時・表示内容を記録して保全してください。削除に成功すると内容を確認できなくなり、損害賠償請求や刑事告訴の場面で立証が難しくなることがあります。削除と証拠保全は同時に進めるのが原則です。
まとめ
元の投稿を削除しても、ウェブ魚拓やアーカイブに複製されたデータは自動的には消えません。対応の可否は運営者を特定できるかどうかで分かれ、国内事業者であれば所定の窓口への申出と、応じない場合の削除仮処分という道筋が描けます。運営主体が公表されていないサービスでは、アーカイブ自体の削除に固執するより、そのURLを拡散している国内の投稿への対応と投稿者の特定に力点を移すほうが有効です。
また、魚拓は被害者にとっての証拠でもあります。削除を急いだ結果として立証手段を失わないよう、証拠の保全を先に済ませる段取りが欠かせません。どの手段をどの順序で用いるかは事案ごとに異なりますので、拡散の状況と手元の資料を踏まえて弁護士にご相談ください。
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タングラム法律事務所では、ネット誹謗中傷の削除請求・発信者情報開示請求について豊富な実績を有しております。元投稿の削除後も残る魚拓・転載への対応、証拠の保全、投稿者の特定まで、横浜の弁護士が一貫してお手伝いします。
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