タングラム法律事務所

削除請求と発信者情報開示請求の違い|どちらを選ぶべきか弁護士が解説

削除請求と発信者情報開示請求の違い|どちらを選ぶべきか弁護士が解説

削除請求と発信者情報開示請求の違い|どちらを選ぶべきか弁護士が解説

削除請求と発信者情報開示請求の違い|どちらを選ぶべきか弁護士が解説

削除請求と発信者情報開示請求の違い|どちらを選ぶべきか弁護士が解説

ネット上で誹謗中傷を受けたとき、対処法を調べると「削除請求」と「発信者情報開示請求」という二つの言葉に必ず突き当たります。名前が似ているうえ、どちらも「ネットの投稿への対応」であるため、同じものだと思ってしまう方も少なくありません。しかし、この二つは目的も相手方も進め方も異なる、まったく別の手続きです。

本記事では、削除請求と発信者情報開示請求が具体的にどう違うのか、自分のケースではどちらを選ぶべきか、両方を行う場合の順序と注意点までを、横浜のタングラム法律事務所の弁護士が整理して解説します。手続き選びを誤ると投稿者を特定できなくなることもあるため、着手前に全体像を押さえておきましょう。

削除請求と発信者情報開示請求は「目的」が違う

まず結論から押さえます。二つの手続きは、次のように目的が異なります。

  • 削除請求……問題の投稿そのものを消し、被害の拡大を止めるための手続き
  • 発信者情報開示請求……その投稿を誰が行ったのか、投稿者を特定するための手続き

言い換えれば、削除請求は「これ以上見られたくない・広まってほしくない」という将来に向けた被害の防止であり、発信者情報開示請求は「投稿した本人に責任を追及したい」という過去の行為に対する責任追及の入口です。目的が違うため、投稿を消すだけでは投稿者はわかりませんし、投稿者を特定しても投稿が自動的に消えるわけではありません。この点を混同しないことが、正しい手続き選びの出発点になります。

なお、二つの手続きは相手方も異なります。削除請求はサイト運営者やサーバー管理者などのコンテンツ側に投稿を消すよう求めるのに対し、発信者情報開示請求は最終的に投稿者が契約する通信会社(アクセスプロバイダ)にまで手続きを及ぼして、氏名・住所の開示を求めていきます。

削除請求とは|投稿を消して被害を止める手続き

削除請求は、名誉権やプライバシー権といった人格権が侵害されていることを理由に、その侵害状態を取り除く(投稿を消す)よう求めるものです。法的には、人格権に基づく妨害排除・差止請求として位置づけられます。方法は大きく三段階に分かれます。

1. 任意の削除申請(送信防止措置依頼)

各プラットフォームの通報フォームや、いわゆるテレサ書式(送信防止措置依頼書)を使って、サイト運営者に任意で削除を求める方法です。費用を抑えやすく、投稿内容が明らかに違法・有害である場合には、これだけで削除される例もあります。2025年4月1日に施行された情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)により、大規模なプラットフォーム事業者には削除申請の窓口整備や、原則として一定期間内に対応結果を通知することなどが求められるようになり、任意削除の実効性は以前より高まっています。自分で削除依頼を送る手順については、送信防止措置依頼書の書き方を解説した記事もあわせてご覧ください。

2. 削除仮処分

任意の申請で応じてもらえない場合、裁判所を通じて削除を命じてもらう手続きです。仮処分は「仮」の手続きですが、実務上はこれで削除が実現することが多く、通常の訴訟より短い期間で結論に至る傾向があります。申立てには担保金の供託が必要となる点に注意が必要です。

3. 削除請求訴訟

仮処分になじまない事案や、確定的な判断を求める場合には、削除を求める本訴訟を提起することもあります。時間はかかりますが、判決という形で確定的に削除義務を認めさせることができます。

削除請求は投稿者が誰かを問わずに行える手続きです。匿名の相手であっても、投稿を消すこと自体は可能です。書き込まれた側の対応の全体像は、当事務所の発信者情報開示請求・削除請求のご案内ページもご参照ください。

発信者情報開示請求とは|投稿者を特定する手続き

発信者情報開示請求は、匿名で投稿した人物の氏名・住所などの情報を開示させ、投稿者を特定するための手続きです。根拠となるのは情プラ法(旧・プロバイダ責任制限法)で、権利侵害が明らかであることなどの要件を満たす場合に、発信者の情報の開示を求めることができます。特定した後に、損害賠償請求や刑事告訴、示談交渉といった責任追及につなげていくのが一般的な流れです。

投稿者の特定は、通常二段階で行われます。まずサイト運営者(コンテンツプロバイダ)に投稿時のIPアドレス等の開示を求め、次にそのIPアドレスから判明した通信会社(アクセスプロバイダ)に契約者の氏名・住所の開示を求めます。現在は、これらを一つの手続きで進められる「提供命令」を用いた発信者情報開示命令という非訟手続も整備されています。

ここで極めて重要なのが、時間の制約です。通信会社が保有するアクセスログには保存期間があり、期間を過ぎるとログが消去され、投稿者を特定できなくなってしまいます。そのため発信者情報開示は「時間との勝負」と言われ、投稿を見つけたら早期に着手する必要があります。

どちらを選ぶべきか|目的別の考え方

削除と開示のどちらを選ぶべきかは、「あなたが何を実現したいのか」で決まります。目的別に整理すると、次のようになります。

実現したいこと 適した手続き
とにかく投稿を消して、これ以上広まるのを止めたい 削除請求
投稿した人物を特定し、損害賠償や謝罪を求めたい 発信者情報開示請求
刑事告訴して加害者の責任を問いたい 発信者情報開示請求(+刑事手続)
投稿を消したうえで、投稿者にも責任を追及したい 両方(順序に注意)

被害の拡大防止だけが目的で、加害者の責任追及までは考えていないのであれば、削除請求のみで足りることも多くあります。反対に、繰り返される悪質な投稿に対して損害賠償や再発防止を求めたい場合は、投稿者を特定する発信者情報開示が必要です。多くのケースでは、まず被害を止めつつ投稿者も特定したいというニーズがあり、両方を視野に入れて手続きを組み立てることになります。

両方を行う場合の順序と注意点

削除と開示の両方を行う場合、実は順序が結果を左右します。最大の注意点は、投稿が削除されると、そのままでは開示請求の前提となる投稿の存在・内容を示せなくなるおそれがあることです。削除を急ぐあまり、証拠を残さずに投稿を消してしまうと、後から投稿者を特定しようとしても立証に支障が出かねません。

そこで実務では、次の順序で進めるのが基本です。

  • ①証拠保全……投稿のURL・投稿日時・アカウント名・本文が確認できるスクリーンショットを、削除申請の前に必ず取得する
  • ②開示手続に着手……ログの保存期間があるため、特定まで行う場合は開示(またはログの保全)を早めに進める
  • ③削除……開示手続の道筋をつけたうえで、あるいは並行して、削除を実現する

ログの消去を防ぐための消去禁止命令や、提供命令を組み合わせることで、特定と削除を並行して進めることも可能です。どの手続きをどの順序で組み合わせるべきかは、投稿されたサイトの種類や残された時間によって変わるため、判断に迷う場合は早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。投稿者を特定した後の流れは、特定後の損害賠償請求の進め方を解説した記事が参考になります。

費用・期間の違い

費用と期間も、削除だけで済ませるか、特定まで行うかで大きく変わります。あくまで一般的な傾向としては、次のように整理できます。

項目 削除請求 発信者情報開示請求
主な相手方 サイト運営者 サイト運営者+通信会社
手続きの段階 比較的少ない 二段階に及ぶことが多い
期間の目安 短めになりやすい 長くなりやすい(数か月に及ぶことも)
費用の目安 抑えやすい 大きくなりやすい

具体的な弁護士費用は、対象となるサイト、投稿の数、任意で応じてもらえるか裁判手続まで必要かなどによって変動します。当事務所の費用については弁護士費用のご案内ページをご確認ください。なお、投稿者を特定して損害賠償請求まで進めた場合、開示にかかった弁護士費用の一部を加害者に請求できる余地もあります。この点は事案ごとの判断となるため、見通しを含めて弁護士にご相談ください。

よくある質問

削除請求と発信者情報開示請求は両方できますか?

両方行うことができます。投稿を消したいなら削除請求、投稿者を特定して損害賠償や謝罪を求めたいなら発信者情報開示請求を行います。両者は目的が異なる別の手続きであり、被害の内容や目的に応じて、一方のみ、または両方を並行して進めます。

削除だけを先に行うと投稿者を特定できなくなりますか?

投稿が削除されても、事前に投稿日時やURLを含む証拠を保全していれば、その後に発信者情報開示請求を行うことは可能です。ただし削除の前提として投稿の存在と内容を示す必要があるため、削除申請の前にスクリーンショット等で証拠を確保しておくことが重要です。また通信ログには保存期間があるため、特定まで行う場合は早めの着手が求められます。

投稿者を特定せずに投稿を消すことはできますか?

できます。削除請求は投稿者が誰かを問わず、サイト運営者やプロバイダに対して行う手続きのため、投稿者が匿名のままでも投稿の削除を求めることが可能です。損害賠償や刑事責任の追及までは考えておらず、まず被害の拡大を止めたいという場合は、削除請求だけを行う選択もあります。

どちらの手続きが費用も期間もかかりますか?

一般的には、投稿者を特定して損害賠償まで求める発信者情報開示のほうが、削除のみの場合より費用も期間も大きくなる傾向があります。開示はサイト運営者とアクセスプロバイダの二段階で手続きを重ねることが多く、投稿者の特定までに数か月を要することもあります。具体的な費用や見込みは事案により異なるため、弁護士にご確認ください。

まとめ

削除請求と発信者情報開示請求は、名前は似ていても目的がまったく異なる手続きです。削除請求は投稿を消して被害の拡大を止めるための手続き、発信者情報開示請求は投稿者を特定して責任を追及するための手続きであり、投稿を消すことと投稿者を特定することは別問題だという点を押さえておく必要があります。

どちらを選ぶべきかは、被害を止めたいのか、加害者の責任を追及したいのか、その両方なのかという目的によって決まります。特に両方を行う場合は、証拠保全を先に済ませ、ログの保存期間を意識して開示手続に早めに着手する順序が重要です。ネット上の誹謗中傷でお困りの際は、どの手続きが最適かの見立てを含め、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

削除・投稿者特定のどちらから進めるべきか、迷ったらご相談ください

タングラム法律事務所(横浜)では、ネット誹謗中傷の削除請求・発信者情報開示請求について豊富な実績を有しております。証拠保全から手続きの選択・順序の判断まで、被害の状況に応じた最適な進め方をご提案します。

法律相談の予約はこちら

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

発信者情報開示請求・削除請求について見る

費用と手続の流れを確認する

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。