タングラム法律事務所

誹謗中傷の損害賠償を民事調停で請求する方法|自分で申し立てる手順

誹謗中傷の損害賠償を民事調停で請求する方法|自分で申し立てる手順

誹謗中傷の損害賠償を民事調停で請求する方法|自分で申し立てる手順

誹謗中傷の損害賠償を民事調停で請求する方法|自分で申し立てる手順

誹謗中傷の損害賠償を民事調停で請求する方法|自分で申し立てる手順

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年9月28日 最終更新日:2026年9月28日

発信者情報開示で誹謗中傷の投稿者の氏名・住所が分かったものの、「いきなり裁判を起こすのは負担が大きい」「できれば話し合いで解決したいが、相手と直接やり取りするのは怖い」と感じている方は少なくありません。そのようなときの選択肢の一つが、簡易裁判所の民事調停です。

この記事では、ネット誹謗中傷の損害賠償(慰謝料)を民事調停で請求する方法について、申立先・手数料・申立書の書き方・当日の流れ、調停が成立しなかった場合の対応までを、自分で申し立てる方向けに解説します。あわせて、自分で行う場合の限界と、弁護士に依頼した場合の違いにも触れます。

結論から言うと、民事調停は、投稿者の氏名・住所が判明している場合に、訴訟より安い手数料で、裁判官と調停委員を間に入れて損害賠償や投稿の削除・再発防止を話し合える手続です。ただし相手が出頭しなければ成立しないため、支払う意思がない相手には訴訟のほうが早いこともあり、時効との関係にも注意が必要です。

民事調停とは|誹謗中傷の損害賠償で使える話し合いの手続

民事調停は、民事に関する紛争について、裁判所で話し合いによる解決を図る手続です(民事調停法2条)。裁判所の説明によれば、通常は裁判官1人と調停委員2人からなる調停委員会が、当事者双方の言い分を聴きながら合意をあっせんします。勝ち負けを決める手続ではなく、非公開で行われます。

裁判所の案内では、通常は申立てから2〜3回の調停期日が開かれ、おおむね3か月以内に調停が成立するなどして終了するとされています。誹謗中傷の事案では、慰謝料の金額だけでなく、投稿の削除、今後同様の投稿をしない約束、口外禁止など、判決では命じてもらいにくい内容を合意に盛り込めるのが特徴です。

誹謗中傷で民事調停が向いているケース・向かないケース

民事調停は相手方の協力があって初めて成立する手続です。誹謗中傷の事案で向き・不向きを整理すると、次のとおりです。

向いているケース向かないケース
相手が投稿を認めており、金額や条件で折り合えそうな場合相手が投稿自体を否認している、または連絡を無視し続けている場合
相手と直接交渉するのが心理的に難しい場合時効の完成が近く、確実に判断を得る必要がある場合
削除・再発防止・口外禁止など金銭以外の約束も求めたい場合名誉毀損の成否など法的な争点で真っ向から対立している場合

相手が支払いに応じる余地がない場合には、民事調停を経ずに、誹謗中傷の損害賠償を自分で提訴する方法や、支払督促で慰謝料を請求する方法を検討したほうが、結果的に早く解決する場合があります。

民事調停を自分で申し立てる手順と費用

1.申立先の簡易裁判所を確認する

民事調停は、原則として相手方の住所・居所・営業所等の所在地を管轄する簡易裁判所に申し立てます(民事調停法3条1項)。当事者が合意で定めた地方裁判所・簡易裁判所に申し立てることもできますが、誹謗中傷の相手方と事前に合意ができていることは通常ありません。横浜にお住まいの方でも、相手方が遠方に住んでいれば、相手方の住所地の簡易裁判所に出向くことになる点に注意が必要です。

2.申立書と証拠を準備する

簡易裁判所の窓口や裁判所ウェブサイトに申立書の書式があります。裁判所の案内では、申立書とその副本(相手方の数)、証拠となる文書の写しなどが必要とされています。申立書には主に次の事項を記載します。

  • 申立ての趣旨:例「相手方は、申立人に対し、金○○万円を支払うこと」「相手方は、別紙投稿目録記載の投稿を削除すること」
  • 紛争の要点:いつ、どのサイトに、どのような投稿がされたか、それによりどのような被害を受けたか、相手方が投稿者であると判明した経緯
  • 証拠:投稿のスクリーンショット(URL・日時が分かるもの)、発信者情報開示で得た資料、通院や休業の資料など

3.手数料と郵便切手を納める

申立手数料は請求額に応じて決まり、訴訟の手数料の半額程度です。裁判所の手数料額早見表によると、主な金額は次のとおりです。

請求額民事調停の手数料(参考)訴え提起・書面
30万円1,500円3,000円
50万円2,500円5,000円
100万円5,000円10,000円
200万円7,500円15,000円

このほか、呼出状の送付などに用いる郵便切手(または現金)を予納します。金額は裁判所ごとに異なるため、申立先の簡易裁判所に確認してください。

調停期日の流れと当日の注意点

申立てが受理されると第1回の調停期日が指定され、相手方に呼出状が送られます。期日では、調停委員が申立人と相手方から交互に話を聴くのが一般的で、相手方と同席せずに進められることも少なくありません。

当日は、投稿の内容と被害の具体的な状況を、証拠に沿って落ち着いて説明できるよう準備し、請求額の根拠(精神的苦痛の程度、拡散状況、開示請求の費用など)も整理しておきましょう。

なお、呼出しを受けた当事者が正当な理由なく出頭しないときは、5万円以下の過料の制裁があります(民事調停法34条)。もっとも、出頭を強制する手続ではないため、相手方が欠席を続ければ調停は成立しません。

調停の結果|成立・17条決定・不成立の後にすること

調停が成立した場合、合意内容が調書に記載され、その記載は裁判上の和解と同一の効力を持ちます(民事調停法16条)。相手方が約束どおりに支払わないときは、調停調書に基づいて強制執行を申し立てることができます。

調停に代わる決定(17条決定)がされることもあります。裁判所が、合意に至らないものの相当と認めるときに、解決案を決定として示すものです(同法17条)。当事者が決定の告知を受けた日から2週間以内に異議を申し立てれば決定は効力を失い、異議がなければ裁判上の和解と同一の効力を持ちます(同法18条)。

調停が成立しなかった場合(同法14条)や、17条決定が異議により失効した場合でも、申立人がその通知を受けた日から2週間以内に同じ請求について訴えを提起すれば、調停の申立ての時に訴えを提起したものとみなされます(同法19条)。この場合、調停で納めた手数料は訴えの手数料に充てることができ、差額を納めれば足ります(民事訴訟費用等に関する法律5条1項)。

時効に注意:誹謗中傷の損害賠償請求権は、損害と加害者を知った時から3年で時効にかかります(民法724条1号)。民事調停の申立ては時効の完成猶予事由とされていますが、調停が不成立などで終了した場合、猶予されるのは終了の時から6か月を経過するまでです(民法147条1項3号)。調停の結果を待つうちに時効が完成しないよう、期限を必ず確認してください。

自分で民事調停を行う場合の限界と弁護士に依頼する違い

民事調停は法律知識がなくても申し立てられる手続ですが、誹謗中傷の事案には次のような難しさがあります。

  • 相手方から「名誉毀損にはあたらない」「投稿は正当な批判だ」と反論されたとき、法的な見通しを踏まえて判断することが難しい
  • 慰謝料の金額や、開示請求にかかった費用を請求できるかの見通しが立てにくく、低すぎる金額で合意してしまうおそれがある
  • 削除・口外禁止・違約金などの条項を、後で争いにならない文言で合意するには専門的な検討が必要
  • 不成立となった場合に、2週間以内の提訴や時効の管理を自分で行う必要がある

弁護士に依頼した場合は、調停・示談交渉・訴訟のどの手続を選ぶべきかの判断から、期日への出席、合意条項の作成までを代理人として一貫して担当できます。示談で合意する場合の条項については誹謗中傷の示談書を自分で作る方法も参考にしてください。投稿者の特定から損害賠償請求までの当事務所の対応は、発信者情報開示請求・削除請求の取扱分野ページで詳しくご紹介しています。

よくある質問

相手が調停に出てこなかったらどうなりますか?

正当な理由のない不出頭には5万円以下の過料の制裁がありますが(民事調停法34条)、出頭を強制することはできません。相手方が欠席を続けると調停は不成立で終了するのが通常であり、その場合は通知を受けた日から2週間以内に訴えを提起するなど、次の手続を検討することになります。

相手の住所が分からなくても民事調停を申し立てられますか?

申立書には相手方の氏名・住所の記載が必要です。匿名の投稿者が相手の場合は、まず発信者情報開示請求で氏名・住所を特定することが前提になります。

調停で決まった慰謝料を相手が払わない場合はどうすればよいですか?

調停調書の記載は裁判上の和解と同一の効力を持つため(民事調停法16条)、調停調書に基づいて相手方の給与や預金などの差押え(強制執行)を申し立てることができます。

民事調停を申し立てれば時効は止まりますか?

民事調停の申立ては時効の完成猶予事由です(民法147条1項3号)。ただし、調停が不成立などで終了した場合は、終了の時から6か月を経過すると時効が完成し得ます。不成立の通知を受けたら、速やかに訴訟の準備に取りかかることが大切です。

まとめ

民事調停は、投稿者の氏名・住所が判明している誹謗中傷の事案で、訴訟より安い手数料で、裁判所を間に入れて慰謝料や削除・再発防止を話し合える手続です。申立先は原則として相手方の住所地の簡易裁判所で、成立すれば調停調書に基づく強制執行も可能です。

一方で、相手方が出頭しなければ成立せず、不成立後の2週間以内の提訴や時効の管理にも注意が必要です。どの手続を選ぶべきか迷う場合や、相手方から法的な反論が予想される場合は、早めに弁護士に相談することで、見通しを持って手続を進めることができます。横浜の弁護士事務所として、当事務所でも投稿者の特定後の損害賠償請求のご相談をお受けしています。

誹謗中傷の損害賠償請求でお悩みの方へ

タングラム法律事務所では、ネット誹謗中傷の発信者情報開示請求から損害賠償請求まで、数多くの案件に対応してまいりました。民事調停・示談交渉・訴訟のどの手続が適しているかも含めて、事案に即してご提案します。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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