不貞慰謝料の準備書面を自分で書く方法|本人訴訟の書き方と提出
不貞慰謝料の準備書面を自分で書く方法|本人訴訟の書き方と提出
執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年9月28日 最終更新日:2026年9月28日
不貞慰謝料の裁判を弁護士に頼まずに進めていると、第1回の期日のあとに裁判官から「次回までに準備書面を出してください」と指示されることがあります。何を・どの形式で書けばよいのか分からず、手が止まってしまう方は少なくありません。
この記事では、原告・被告のどちらかとして本人で訴訟を進めている方に向けて、準備書面に書くべき内容(認否と反論)、書式、提出の時期と方法、2026年5月21日に始まった民事訴訟のデジタル化による変化を、条文と裁判所の公表資料に沿って整理します。
結論として、準備書面は「相手の主張のどこを認め、どこを争うか(認否)」と「自分の主張とその裏付けとなる証拠」を書く書面であり、争う事実は理由を付けて明確に否認しておかないと、自白したものとみなされるおそれがあります。提出は裁判長が定めた期間内に行い、同じものを相手方にも直送するのが原則です。
準備書面とは|不貞慰謝料の裁判における役割
民事訴訟法161条1項は「口頭弁論は、書面で準備しなければならない」と定めています。この「書面」が準備書面です。同条2項により、準備書面には、自分の攻撃または防御の方法(主張と証拠)と、相手方の請求や攻撃防御の方法に対する陳述(認否・反論)を記載します。
口頭弁論は、提出済みの準備書面を「陳述します」と述べる形で進むのが通常です。つまり、準備書面に書いていないことは、裁判官に主張として伝わりにくいと考えてください。さらに、相手方が在廷していない口頭弁論では、相手方に送達された(または相手方が受領した)準備書面に記載した事実でなければ主張することができないとされています(同条3項)。
訴えを起こすまでの流れは不貞慰謝料を自分で請求する訴訟の起こし方で、訴状が届いた側の最初の対応は不貞慰謝料の訴状が届いたときの対応手順と答弁書の書き方で解説しています。準備書面は、その次の段階で繰り返し提出していく書面です。
準備書面に書くこと|認否と反論・主張の書き方
①相手方の主張に対する認否
まず、相手方の訴状・答弁書・準備書面に書かれた事実の一つ一つについて、次のいずれかで態度を示します。
- 認める……その事実に争いがないとき
- 否認する……その事実は存在しないと争うとき
- 不知(知らない)……自分が関与しておらず、真偽が分からないとき
- 争う……事実ではなく、相手方の法的な評価や意見を争うとき
民事訴訟法159条1項は、相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合、弁論の全趣旨から争ったと認められるときを除き、その事実を自白したものとみなすと定めています。認否の漏れが、そのまま不利な事実認定につながることがあります。
また、民事訴訟規則79条3項は、準備書面で相手方の主張する事実を否認する場合には、その理由を記載しなければならないと定めています。「否認する」と一言書くだけでなく、「その日は出張で県外にいた」「会ったのは同僚数名を含む食事の席である」のように、なぜ違うのかを具体的に書きます。
②自分の主張と証拠の引用
次に、自分の言い分を事実として整理して書きます。立場ごとの典型的な主張は次のとおりです。
| 立場 | 典型的な主張 |
|---|---|
| 請求する側(原告) | 不貞行為の具体的な日時・場所・回数、相手方が既婚者であることを知っていた事情、発覚前の夫婦関係が円満だったこと、精神的苦痛の内容と程度 |
| 請求された側(被告) | 肉体関係がないこと、既婚者と知らず、知らなかったことに過失もないこと、交際開始時に婚姻関係がすでに破綻していたこと、慰謝料額が高すぎること、消滅時効(民法724条) |
民事訴訟規則79条4項は、準備書面で証拠を引用する場合、立証を要する事由ごとに証拠を記載するよう求めています。実務では、主張の文末に「(甲3)」「(乙2)」のように証拠番号を括弧書きで付けます。証拠の番号の付け方や証拠説明書については、不貞慰謝料の裁判で証拠を自分で提出する方法をご覧ください。
準備書面の書式|事件番号・当事者・日付の書き方
準備書面に決まった様式はありませんが、裁判所が本人向けに公表している書式では、次の事項を記載するよう案内されています。
- 事件番号(「令和8年(ワ)第○○○号」など)と事件名
- 原告・被告の氏名
- 作成日付と提出先(「○○地方裁判所第○民事部 御中」など)
- 原告・被告の別と、作成者の氏名(押印)
- 相手方の主張に対する認否・反論と、自分の主張(証拠番号を括弧書き)
表題は「原告第1準備書面」のように提出順の番号を付け、本文は「第1 答弁書に対する認否」「第2 原告の主張」のように項目を立てると、対応関係が明確になります。
準備書面の提出時期と提出方法・相手方への直送
提出期間を守る
民事訴訟法162条1項により、裁判長は準備書面を提出すべき期間を定めることができます。期間を過ぎて提出する場合は、期間内に提出できなかった理由を説明しなければなりません(同条2項)。期間の指定がない場合でも、民事訴訟規則79条1項は、相手方が準備をするのに必要な期間をおいて裁判所に提出するよう求めており、実務では期日の1週間前程度を指示されることが一般的です。
相手方に直送する
民事訴訟規則83条により、準備書面は相手方に直送(当事者が相手方に直接送付すること)するのが原則です。直送はファクシミリで行うこともできます(同規則47条1項)。相手方に弁護士がついている場合は、その弁護士の事務所宛てに送ります。提出通数や記載方法は、担当書記官の指示を確認してください。
2026年5月21日以降のデジタル化と準備書面の提出
2026年5月21日、改正民事訴訟法・改正民事訴訟規則が全面施行され、民事訴訟手続がデジタル化されました。裁判所の説明によれば、誰でも裁判所のシステム(民事裁判書類電子提出システム「mints」)を通じてオンラインで訴えの提起や書面の提出を行うことができ、準備書面もオンラインで提出できます。弁護士などの訴訟代理人はオンラインでの手続が義務化されていますが、本人で訴訟を追行する場合は、これまでと同様に紙の書面を提出することも可能とされています。
オンラインで提出するにはmintsの利用者登録が必要です。なお、2026年5月21日より前に提起された事件の扱いは異なる場合があるため、担当書記官に確認してください。
本人で準備書面を書くときの注意点と限界
- 安易に「認める」と書かない……いったん自白した事実を後から撤回するのは簡単ではありません。記憶が曖昧な事実は、手元の資料で確認してから認否します。
- 主張は早めに出し切る……時機に後れた攻撃防御方法は、訴訟の完結を遅延させるときは却下されることがあります(民事訴訟法157条1項)。
準備書面は、書式を整えることよりも「どの事実を主張し、どれを争点にするか」という組み立てが難しい書面です。主張の整理が進むと、本人尋問や和解の協議に進むのが一般的です。途中からでも弁護士に依頼することは可能で、当事務所の対応内容は不貞慰謝料請求・減額交渉の取扱分野ページでご案内しています。
よくある質問
準備書面の提出期限を過ぎてしまったらどうなりますか?
民事訴訟法162条2項により、裁判長が定めた期間を過ぎて提出する場合は、期間内に提出できなかった理由を説明しなければなりません。また、時機に後れた主張は同法157条により却下されることがあります。遅れそうなときは、早めに担当書記官に連絡してください。
相手方の準備書面に反論しないとどうなりますか?
民事訴訟法159条1項により、口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしないときは、弁論の全趣旨から争ったと認められる場合を除き、その事実を自白したものとみなされます。争う事実は、準備書面で明確に否認しておくことが重要です。
相手方に弁護士がついている場合、準備書面はどこに送ればよいですか?
相手方に訴訟代理人がいる場合は、代理人である弁護士の事務所宛てに直送するのが通常です。送付先の住所やファクシミリ番号は、相手方の訴状や答弁書に記載された送達場所・連絡先を確認してください。
まとめ
- 準備書面は口頭弁論を準備するための書面で、自分の主張・証拠と、相手方の主張への認否・反論を書く(民事訴訟法161条)
- 相手方の主張を争わないと自白とみなされることがある(同法159条1項)。否認するときは理由を書く(民事訴訟規則79条3項)
- 主張には証拠番号を括弧書きで付け、立証を要する事由ごとに証拠を対応させる(同規則79条4項)
- 裁判長が定めた期間内に提出し、相手方にも直送する(同法162条、同規則79条1項・83条)
- 2026年5月21日以降はmintsでオンライン提出もできる。本人は紙での提出も可能
相手方に弁護士がついた、争点の立て方に自信が持てないといった状況になったら、一度弁護士にご相談ください。横浜のタングラム法律事務所でも、訴訟の途中からのご相談を承っています。
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