タングラム法律事務所

不貞慰謝料の裁判で本人尋問はある?流れと準備を弁護士が解説

不貞慰謝料の裁判で本人尋問はある?流れと準備を弁護士が解説

不貞慰謝料の裁判で本人尋問はある?流れと準備を弁護士が解説

不貞慰謝料の裁判で本人尋問はある?流れと準備を弁護士が解説

不貞慰謝料の裁判で本人尋問はある?流れと準備を弁護士が解説

不貞慰謝料の訴訟が続くなかで、裁判所から「次回は本人尋問を実施します」と告げられ、急に不安が大きくなった方は少なくありません。法廷で裁判官の前に立ち、最もつらい出来事について質問されると聞けば、相手方の代理人から厳しく追及されるのではないか、うまく答えられなかったら負けてしまうのではないかと、身構えてしまうのは当然のことです。

しかし本人尋問は「やりこめられる場」ではなく、書面だけでは伝わりきらない事実を、裁判官が当事者の口から直接確かめるための手続です。この記事では、不貞慰謝料の裁判における本人尋問について、実施されるかどうかの見通し、当日までの流れ、法廷での進行と聞かれる内容、出頭しなかった場合や虚偽の陳述をした場合のリスクまでを、横浜の弁護士が順を追って整理します。

不貞慰謝料の裁判で本人尋問は必ず行われるのか

結論から申し上げると、不貞慰謝料の訴訟で本人尋問が必ず行われるわけではありません。訴訟が提起されても、審理の途中で裁判所から和解が勧められ、尋問に至る前に訴訟上の和解で終了する事件は相当数あります。当事者双方が金額の点だけを争っている場合や、LINEのやり取り・写真・報告書といった書証で事実関係を十分に認定できる場合も、尋問を経ずに判決に進むことがあります。

本人尋問が実施されやすいのは、次のように書面だけでは判断しきれない争点が残っている場合です。

  • 不貞行為(性的関係)の有無そのものが争われている
  • 不貞相手が「既婚者とは知らなかった」と主張し、故意・過失の有無が争点になっている
  • 「不貞の時点で夫婦関係はすでに破綻していた」という抗弁が出され、夫婦の実態が問題になっている
  • 不貞の期間・回数や、被害を受けた側の精神的苦痛の程度が慰謝料額に直結している

不貞行為は密室で行われるため直接証拠が乏しく、間接証拠の積み重ねで判断せざるを得ない事案が多くあります。そのため、当事者本人の説明の一貫性や具体性が心証形成に与える影響は大きいといえます。裁判全体にかかる時間や費用の見通しについては、不貞慰謝料の裁判にかかる期間と費用の目安もあわせてご覧ください。

本人尋問(当事者尋問)とは|証人尋問との違い

本人尋問は、法律上は「当事者尋問」と呼ばれる手続です。裁判所は、申立てにより又は職権で、当事者本人を尋問することができ、その当事者に宣誓をさせることができるとされています(民事訴訟法207条1項)。原告・被告という訴訟の当事者そのものから話を聞く点が、第三者から話を聞く証人尋問との違いです。

不貞慰謝料の事件では、当事者本人に加えて、不貞をした配偶者が証人として呼ばれることがあります。証人と当事者本人の双方を尋問するときは、まず証人の尋問を行うのが原則です(民事訴訟法207条2項)。

項目本人尋問(当事者尋問)証人尋問
対象原告・被告本人当事者以外の第三者
根拠条文民事訴訟法207条〜211条民事訴訟法190条〜206条
宣誓裁判所が宣誓させることができる原則として宣誓させる
虚偽の陳述10万円以下の過料(209条1項)偽証罪(刑法169条)
不出頭の効果相手方の主張が真実と認められうる(208条)過料・勾引等の制裁

本人尋問までの流れ|陳述書の提出と集中証拠調べ

証人及び当事者本人の尋問は、できる限り、争点及び証拠の整理が終了した後に集中して行わなければならないとされています(民事訴訟法182条。集中証拠調べ)。実務でも、書面のやり取りで争点を絞り込んだ最終段階で、当事者双方の尋問を1回の期日にまとめて実施するのが一般的です。

尋問期日が決まると、その前に次のような準備が進みます。

  • 尋問の申出と尋問事項書の提出:尋問を求める側が申出書とともに、予定している質問の内容を記載した尋問事項書を提出します(民事訴訟規則107条)。
  • 陳述書の作成・提出:本人が経緯や心情を時系列でまとめた書面を、書証としてあらかじめ提出するのが実務上の一般的な運用です。主尋問を補い、尋問時間を短縮する役割を果たします。
  • 打合せ(リハーサル):代理人がついている場合は、陳述書をもとに想定問答を確認します。
陳述書は、後の尋問での供述と食い違うと、そのこと自体が信用性を疑わせる材料になります。記憶があいまいな部分を無理に断定的に書かず、「時期は覚えていないが、○○の前後だった」といった正確な表現にとどめることが大切です。

本人尋問当日の流れ・所要時間と聞かれること

当日は、法廷の証言台に立ち、宣誓書を読み上げてから質問が始まります。尋問は、①主尋問(尋問を申し出た側からの質問)、②反対尋問(相手方からの質問)、③再主尋問、④裁判官による補充尋問という順序で行うのが原則です(民事訴訟法210条・202条1項)。事案にもよりますが、不貞慰謝料の事件では、当事者1名につき全体で30分から1時間程度で行われることが多い傾向にあります。

請求する側(不貞をされた配偶者)が聞かれやすいこと

  • 不貞を知った経緯と時期(時効の起算点にも関わります)
  • 不貞が発覚する前の夫婦関係の実態(同居・会話・家計の状況など)
  • 発覚後の心身の変調、通院の有無、仕事や育児への影響
  • 相手方や配偶者とのやり取りの経過、示談交渉の状況

請求された側(不貞相手とされた方)が聞かれやすいこと

  • 相手と知り合った経緯、交際の期間・頻度・態様
  • 相手が既婚者であると知った時期、そう認識するに至った事情
  • 「別居している」「離婚間近だ」と説明されていた場合、その内容と裏付け
  • 収入・資産の状況、支払能力に関する事情

提出済みの調査報告書や通信記録について、「この日は誰とどこにいたのか」と具体的に確認されることもあります。報告書の証拠としての扱いは、探偵の調査報告書は不貞の証拠になるかで整理しています。

出頭しない・虚偽の陳述をした場合のリスク

当事者本人を尋問する場合において、その当事者が正当な理由なく出頭せず、又は宣誓若しくは陳述を拒んだときは、裁判所は尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができるとされています(民事訴訟法208条)。「答えたくない」「話せば不利になる」といった事情は正当な理由には当たらないと考えられており、欠席は判断上きわめて不利に働くおそれがあります。

また、宣誓した当事者が虚偽の陳述をしたときは、裁判所は決定で10万円以下の過料に処するとされています(民事訴訟法209条1項)。過料の金額自体は大きくないとしても、供述の食い違いが法廷で明らかになれば、その当事者の説明全体が信用されなくなり、結論に大きく影響する可能性があります。

本人尋問で心がけたいことと、弁護士に依頼した場合の違い

本人尋問を落ち着いて乗り切るために、次の点を意識しておくと役に立ちます。

  • 聞かれたことに答える:説明しすぎると、思わぬ論点を自分から開いてしまいます。
  • 結論から短く:まず「はい」「いいえ」を述べ、必要に応じて理由を補います。
  • 推測と記憶を分ける:覚えていないことは「覚えていません」と答えて差し支えありません。取り繕った説明が反対尋問で崩れるほうが打撃になります。
  • 感情的な応酬を避ける:質問が厳しく感じられても、裁判官に向けて事実を述べる姿勢を保ちます。
  • 陳述書を読み返す:自分が提出した書面の内容は、事前に必ず確認しておきます。

なお、2026年(令和8年)5月21日に施行された改正民事訴訟法により、映像等の送受信による通話の方法(ウェブ会議)で尋問を行うことができる場合が広がりました。遠方に居住している、出頭が困難な事情があるといった場合には、代理人を通じて早めに裁判所へ申し出ておくことが考えられます。ただし、実施するかどうかは裁判所の判断によります。

弁護士に依頼した場合、陳述書の作成、想定問答の準備、当日の主尋問の組み立て、相手方の供述に対する反対尋問といった作業を代理人が担います。とりわけ反対尋問は、事案の全体像と証拠関係を踏まえて質問を設計する必要があり、本人が独力で行うのは容易ではありません。当事務所の取扱いは不貞慰謝料請求のご相談のページにまとめています。なお、尋問を終えたあとに裁判所から和解が勧められることも多く、その場面での判断については不貞慰謝料の裁判で和解を勧められたときの考え方で解説しています。

よくある質問

Q1.本人尋問には必ず出頭しなければなりませんか。

正当な理由なく出頭せず、または宣誓や陳述を拒んだときは、裁判所は尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができるとされています(民事訴訟法208条)。「話したくない」といった理由は正当な理由に当たらないと考えられており、欠席は判断上不利に働くおそれがあります。

Q2.本人尋問で嘘をついたらどうなりますか。

宣誓した当事者が虚偽の陳述をしたときは、裁判所は決定で10万円以下の過料に処するとされています(民事訴訟法209条1項)。当事者本人には刑法上の偽証罪は適用されませんが、過料の制裁があるうえ、供述の矛盾が明らかになると証言全体の信用性が失われ、結論に大きく影響する可能性があります。

Q3.本人尋問はウェブ会議で受けられますか。

2026年(令和8年)5月21日に施行された改正民事訴訟法により、映像等の送受信による通話の方法(ウェブ会議)で尋問を行うことができる場合が広がりました。もっとも実施するかどうかは裁判所の判断によりますので、遠方に居住しているなどの事情がある場合は、代理人を通じて早めに申し出ておく必要があります。

まとめ

不貞慰謝料の裁判における本人尋問は、争点及び証拠の整理が終わった最終段階で、書面だけでは判断しきれない事実を裁判官が当事者から直接確かめるために行われる手続です(民事訴訟法182条・207条)。すべての事件で実施されるわけではなく、不貞行為の有無、故意・過失、婚姻関係の破綻といった争点が残っている場合が中心です。

当日は主尋問・反対尋問・再主尋問・補充尋問の順に進み(民事訴訟法210条・202条1項)、正当な理由のない不出頭には相手方の主張が真実と認められうるという効果が(同法208条)、虚偽の陳述には10万円以下の過料が(同法209条1項)、それぞれ定められています。準備の要は、陳述書と供述を食い違わせないこと、そして推測と記憶を分けて正確に述べることに尽きます。

どの事実を主尋問で引き出し、相手方のどの供述を反対尋問で崩すかという設計は、証拠関係の全体を踏まえた判断を必要とします。訴状が届いた段階から見通しを立てておきたい方は、不貞慰謝料の訴状が届いたときの対応手順もご覧ください。尋問を控えて不安を感じておられるのであれば、期日の前に、できるだけ早い段階で弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

不貞慰謝料の裁判・本人尋問についてお困りの方へ

タングラム法律事務所では、横浜を拠点に、不貞慰謝料を請求する側・請求された側の双方について多数のご相談をお受けしてきました。陳述書の作成から尋問の準備、和解の判断まで、見通しをお示ししながら対応いたします。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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