BitTorrent 訴状・支払督促が届いた場合の対応と期限
BitTorrent 訴状・支払督促が届いた場合の対応と期限
裁判所から封筒が届いた。中を見ると「訴状」あるいは「支払督促」と書かれている——。BitTorrent(トレント)の著作権侵害を理由とする損害賠償請求では、交渉がまとまらなかった場合や、通知書に応答しないまま時間が経った場合に、権利者側が裁判手続に移ることがあります。
裁判所からの書面には、いずれも期限があり、これを過ぎると内容を争う機会そのものが失われることがあります。この記事では、訴状が届いた場合と支払督促が届いた場合に分けて、何をいつまでにすべきかを、横浜で発信者情報開示請求への対応を扱う弁護士の立場から整理します。訴訟に至るまでの流れは請求を無視し続けた場合に訴訟へ発展するまでの流れで解説しています。
まず、届いた書面がどちらかを確認する
訴状と支払督促とでは、手続も期限もまったく異なります。同封物を見れば区別できます。
| 届いた書面 | 同封されているもの | 期限 |
|---|---|---|
| 訴状 | 口頭弁論期日呼出状、答弁書催告状、証拠書類の写し | 答弁書の提出期限(裁判所が指定。第1回期日の1週間程度前とされることが多い) |
| 支払督促 | 督促異議申立書の用紙、説明書 | 送達を受けた日から2週間以内(督促異議の申立て) |
いずれの場合も、封筒は捨てずに保管してください。特別送達で届いた日付は、期限の起算点を確認するための資料になります。
訴状が届いた場合
答弁書を提出する
訴状には、口頭弁論期日呼出状と答弁書催告状が同封されているのが通常です。裁判官が訴状を審査し、形式的な不備がなければ口頭弁論期日を指定して当事者を呼び出すという流れは、裁判所の説明でも示されています。
答弁書は、原告の請求に対する認否とこちらの言い分を記載した書面です。作成に時間を要する場合でも、まず請求を争う趣旨を明らかにした答弁書を期限までに提出し、詳細な反論は次回以降に補充するという進め方が一般的です。
何もしないとどうなるか
民事訴訟法は、最初にすべき口頭弁論の期日に当事者が出頭しないときは、裁判所はその者が提出した訴状または答弁書その他の準備書面に記載した事項を陳述したものとみなすことができると定めています(同法158条)。答弁書さえ出していれば、第1回期日に出頭できなくても、その内容を陳述したものとして扱われる余地があるということです。
逆に、答弁書も出さず期日にも出頭しない場合には、相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合として、その事実を自白したものとみなされることがあります(同法159条1項、3項による準用)。裁判所も、被告が欠席し答弁書等で請求を争う意図を明らかにしていない場合には、不利な内容の判決が言い渡される可能性があると説明しています。
遠方の裁判所から届いた場合
財産権上の訴えは、被告の住所地を管轄する裁判所のほか(民事訴訟法4条1項)、義務履行地を管轄する裁判所にも提起することができます(同法5条1号)。そのため、住所地から離れた裁判所に提起される場合があります。もっとも、前述の158条により最初の期日は書面の陳述が擬制される扱いがあり、近年は期日を電話会議やウェブ会議で行う運用も広がっています。代理人を選任した場合、本人が毎回出頭する必要は通常ありません。
支払督促が届いた場合
2週間以内に督促異議を申し立てる
支払督促は、債権者の申立てに基づき、簡易裁判所の裁判所書記官が金銭の支払いを命じる手続です。債務者を審尋しないで発せられるため(民事訴訟法386条1項)、こちらの言い分は聞かれないまま発付されます。債務者は、支払督促を発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所に督促異議を申し立てることができ(同条2項)、裁判所の案内では、受け取ってから2週間以内に申立てができるとされています。
適法な督促異議の申立てがあると、督促異議に係る請求については、その目的の価額に従い、支払督促の申立ての時に、支払督促を発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所またはその所在地を管轄する地方裁判所に訴えの提起があったものとみなされます(同法395条)。異議を出すことは、争いを大きくする行為ではなく、通常の訴訟手続の中で言い分を述べる場に移すための手続です。
2週間が過ぎるとどうなるか
債務者が2週間以内に督促異議の申立てをしないときは、裁判所書記官は、債権者の申立てにより仮執行の宣言をしなければならないとされています(同法391条1項)。仮執行の宣言が付されると、債権者は強制執行を申し立てることができる状態になります。
さらに、仮執行の宣言を付した支払督促の送達を受けた日から2週間の不変期間が経過すると、督促異議の申立てはできなくなり(同法393条)、支払督促は確定判決と同一の効力を有することになります(同法396条)。
確定してしまった場合に残る手段
仮執行の宣言を付した支払督促は、強制執行の根拠となる債務名義にあたります(民事執行法22条4号)。債務名義に係る請求権の存在または内容について異議のある債務者は、その債務名義による強制執行の不許を求めるために、請求異議の訴えを提起することができるとされています(同法35条1項)。
同条2項は異議事由を口頭弁論終結後に生じたものに限っていますが、これは確定判決についての定めであり、支払督促はこれに含まれません。もっとも、実際に争えるかどうかは事案により異なります。2週間の期限内に督促異議を申し立てることが、比較にならないほど確実な対応です。
訴訟になっても、和解による解決の余地はある
裁判所は、訴訟がいかなる程度にあるかを問わず、和解を試み、または受命裁判官もしくは受託裁判官に和解を試みさせることができるとされています(民事訴訟法89条1項)。実務上も、訴訟の途中で和解により解決に至る例は多くあります。
訴訟を提起されたことは、判決以外の解決が閉ざされたことを意味しません。請求額の根拠を争いながら、解決水準について協議することは可能です。金額の考え方は示談金相場と減額交渉のポイントで整理しています。
時効を主張する場合は、手続の中で援用する
対象とされている発信日時が古い事案では、消滅時効が問題になることがあります。ただし、時効は放置すれば効果を生じるものではなく、援用(時効の利益を受ける旨の意思表示)が必要です。訴訟では、答弁書などの書面で明確に主張しなければ判断の対象になりません。支払督促に異議を出さないまま放置することも、時効を主張する機会を併せて失うことにつながります。
時効の考え方と、支払いや分割の申出が承認と評価される危険については、発信日時が古い場合の消滅時効の考え方で詳しく解説しています。訴状や支払督促が届いた段階のご相談を含め、開示請求を受けた側の対応全般については、発信者側のインターネット問題への対応のページをご覧ください。
よくある質問
答弁書の提出期限に間に合いそうにありません。どうすればよいですか?
何も出さずに欠席することは避けてください。答弁書を出しておけば、最初の期日に出頭しなくても記載事項を陳述したものとみなされる扱いがあります(民事訴訟法158条)。まず請求を争う趣旨だけでも期限までに提出し、詳細な反論は次回以降に補充する方法が一般的です。
支払督促に異議を出すと、かえって不利になりませんか?
督促異議は、内容を争うための正規の手続です。適法な異議の申立てがあると、請求額に応じて簡易裁判所または地方裁判所に訴えの提起があったものとみなされ、通常の訴訟手続に移ります(民事訴訟法395条)。異議を出さないまま2週間が経過するほうがリスクとなります。
遠方の裁判所から訴状が届きました。毎回出頭しなければなりませんか?
財産権上の訴えは義務履行地の裁判所にも提起できるため(民事訴訟法5条1号)、遠方の裁判所に提起されることがあります。もっとも、最初にすべき期日は書面の陳述が擬制される扱いがあり(同法158条)、代理人を選任した場合、本人が毎回出頭する必要は通常ありません。
仮執行宣言付支払督促が確定してしまいました。もう争えませんか?
仮執行の宣言を付した支払督促の送達を受けた日から2週間の不変期間が経過すると、督促異議の申立てはできません(民事訴訟法393条)。ただし、請求権の存在や内容に異議がある債務者は、請求異議の訴えを提起できる場合があります(民事執行法35条1項)。個別の可否は事案により異なります。
訴訟になったら、必ず判決まで進むのですか?
そうとは限りません。裁判所は訴訟がいかなる程度にあるかを問わず和解を試みることができるとされ(民事訴訟法89条1項)、訴訟の途中で和解により解決する例は多くあります。
まとめ
訴状にも支払督促にも期限があり、その期限を過ぎることの不利益は、金額の多寡以上に大きくなり得ます。答弁書を出さずに欠席すれば争っていないものとして扱われる余地があり、支払督促に2週間以内の異議を出さなければ仮執行の宣言に進み得ます。
逆に言えば、期限内に手続に乗せてしまえば、請求額の根拠を争うことも、和解による解決を目指すことも、時効を主張することもできます。通知書が届いたら最初にすべきことでも述べたとおり、この分野は初動で選択肢の幅が決まります。当事務所は横浜に事務所を置いていますが、やり取りはオンラインで完結します。裁判所からの書面が届いた場合は、期限を確認のうえ早めにご相談ください。
権利者から損害賠償請求(示談金請求)の通知が届いた方の対応については、こちらのページで詳しく解説しています。BitTorrent示談金請求への対応について詳しくはこちら
プロバイダから意見照会書が届いた段階の方は、こちらのページをご参照ください。
裁判所から訴状や支払督促が届き、対応期限にお困りではありませんか。
タングラム法律事務所では、BitTorrent(トレント)に関する発信者情報開示請求・損害賠償請求への対応について、豊富な実績を有しております。答弁書・督促異議の対応から和解交渉まで、ITエンジニアの経験を持つ弁護士が対応します。
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