BitTorrent 損害賠償請求の通知書が届いたら最初にすべきこと
BitTorrent 損害賠償請求の通知書が届いたら最初にすべきこと
聞いたこともない法律事務所の名前で封書が届き、開けてみると数十万円、場合によっては百万円を超える金額が記載されている——。BitTorrent(トレント)による著作権侵害を理由に発信者情報が開示された後、著作権者側から損害賠償請求の通知書を受け取った方の多くが、この瞬間に強い動揺を覚えます。すでに氏名も住所も把握されている以上、逃げ場がないようにも感じられるかもしれません。
しかし、通知書の金額はあくまで相手方の主張です。届いた直後にどう動くかで、その後の展開は変わります。この記事では、最初に確認すべきこと、避けるべき対応、請求額の算定根拠、そして時効の考え方までを、横浜で発信者情報開示請求への対応を扱う弁護士の立場から整理します。
なぜあなたに通知書が届いたのか——手続の位置づけを確認する
通知書が届いたということは、前段階の手続がすでに完了していることを意味します。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| ①調査 | 著作権者側が、BitTorrent上で自社作品を送信している端末のIPアドレスと日時を記録する |
| ②開示手続 | 著作権者がプロバイダに対し、発信者情報の開示を求める手続をとる |
| ③意見照会 | プロバイダから契約者に対し、開示に同意するかを尋ねる意見照会書が送付される |
| ④開示 | 手続の結果、契約者の氏名・住所等が著作権者側に開示される |
| ⑤請求 | 著作権者またはその代理人弁護士から、損害賠償を求める通知書が届く(現在ここ) |
押さえておきたいのは、相手方はすでに交渉のカードを揃えている点です。氏名と住所を把握している以上、交渉が決裂すれば訴訟を提起できる状態にあります。この段階の対応は、開示前の意見照会の段階とは意味合いが異なります。まだ意見照会の段階の方は、BitTorrentで開示請求を受けたときの対処法もあわせてご覧ください。
通知書のどこを確認すべきか
まず通知書を落ち着いて読み、次の項目を書き出してください。対応方針を決めるうえで必要になります。
- 差出人——著作権者本人か、代理人弁護士か
- 対象となる著作物——作品名と作品数。請求額は作品数に影響されることが多い
- 侵害の日時——記録された発信日時。古い場合は後述の時効の検討対象になる
- 請求額とその内訳——総額だけでなく、どのような算定根拠が示されているか
- 回答期限——2週間程度が設けられていることが多い
- 管理番号・整理番号——問い合わせや回答の際に必要になる
届いた直後にやってはいけない3つのこと
1. その場で電話に応じ、事実を認めてしまう
相手方から直接電話がかかってくることもあります。しかし電話でのやり取りは記録が残りにくく、「確かに自分がやりました」「支払います」といった発言が、後の交渉の前提として扱われるおそれがあります。相手方は交渉の専門家であり、こちらは初めての経験です。詳しくは相手方弁護士との直接交渉が不利になりやすい理由で解説しています。
2. 通知書を無視する
意見照会書とは異なり、この段階での無視は状況を悪化させます。相手方はすでに住所を知っており、交渉を経ずに訴訟を提起できます。訴訟に至れば、認容額に加えて遅延損害金や訴訟費用の負担が生じることもあります。請求を無視し続けた場合に訴訟へ発展するまでの流れも参考になります。
3. 提示された示談書に、内容を確認せず署名する
早く終わらせたい一心で、送られてきた示談書にすぐ署名してしまう方がいます。しかし清算条項——「本件に関し、当事者間には本示談書に定めるほか何らの債権債務が存在しないことを相互に確認する」といった条項——が含まれている場合、その示談は終局的なものとなり、後から内容を覆すことは原則としてできません。金額の妥当性を検討する機会は、署名の前にしかありません。
請求額はどのように算定されているのか
著作権法114条は、著作権侵害における損害額の立証を容易にするための規定を置いています。同条1項は、侵害行為を組成する公衆送信(送信可能化を含む)が行われた場合について、一定の数量に権利者の単位数量当たりの利益の額を乗じた額を損害額とすることができる旨を定めています。また同条3項は、著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を損害額として請求できるとしています。
ここで理解しておくべきなのは、これらは損害額の算定方法に関する規定であり、権利者が主張する金額がそのまま認められることを保証するものではないという点です。実際の交渉や訴訟では、侵害の態様、送信された期間、著作物の性質や単価といった事情が検討されます。通知書の金額と、最終的に合意される金額とが一致しないことは珍しくありません。
請求額の妥当性をどう検討するかについては、BitTorrentの示談金相場と減額交渉のポイントで詳しく扱っています。
発信日時が古い場合——消滅時効の検討
通知書の侵害日時が数年前である場合、消滅時効を検討する余地があります。不法行為に基づく損害賠償請求権は、民法724条により、被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間、または不法行為の時から20年間行使しないときに、時効によって消滅します。
ただし注意が必要です。3年の起算点である「加害者を知った時」とは、賠償請求が事実上可能な程度にこれを知った時を意味すると解されています。BitTorrentの事案では開示によって初めて氏名・住所が判明することが多く、その時点が起算点と評価される可能性があります。発信日時が古いことだけを理由に、時効が完成していると即断することはできません。
初動として取るべき手順
以上を踏まえた現実的な手順は次のとおりです。
- 通知書と封筒を保管する——記載事項と到達時期を確認できる状態にしておく
- 回答期限を確認する——期限までに何日あるかを把握する
- 直接の返答を保留する——電話・メールでの即答は避ける
- 事実関係を整理する——当該日時に自宅の回線を誰が使っていたか
- 期限に余裕をもって弁護士に相談する——受任通知を送付すれば、以後の窓口は弁護士となる
弁護士に依頼した場合、まず受任通知を送付して連絡窓口を一本化します。当事務所のように横浜に事務所を置く場合でも、やり取りはオンラインで完結し、来所は必要ありません。そのうえで請求内容の妥当性を検討し、交渉を進めます。
よくある質問
通知書に書かれた金額は、必ず支払わなければならないのですか?
通知書の金額は、現時点では著作権者側の一方的な主張にとどまります。裁判所が認定した金額ではありません。著作権法114条は損害額の立証を容易にするための規定を置いていますが、これは権利者の主張がそのまま認められることを意味するものではなく、侵害の態様や期間、著作物の性質等を踏まえた検討の余地があります。
通知書を無視した場合、どうなりますか?
著作権者側は、すでに氏名・住所を把握しているため、交渉を経ずに訴訟を提起することが可能な状態にあります。無視しても請求が消えるわけではなく、訴訟に至れば認容額に加えて遅延損害金や訴訟費用の負担が生じる可能性があります。
著作権者の代理人から直接電話がありました。話してもよいですか?
その場での回答は避けることをお勧めします。電話でのやり取りは記録が残りにくく、侵害の事実を認める発言や支払いを約束する発言が、後の交渉における前提として扱われるおそれがあります。弁護士が受任した場合、以後の連絡窓口は代理人となります。
何年も前の日時が対象とされています。時効は主張できませんか?
不法行為に基づく損害賠償請求権は、被害者が損害および加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で消滅時効にかかります(民法724条)。もっとも、発信者情報開示によって加害者を知った時期が起算点となる可能性があり、発信日時が古いことだけを理由に時効が完成しているとは限りません。個別の検討が必要です。
家族に知られずに解決することはできますか?
弁護士が受任すると、以後の連絡窓口は弁護士となり、ご自宅への直接の連絡を避けられる場合があります。書類の送付先やご連絡方法についても、ご事情に応じて配慮することが可能です。
まとめ
通知書が届いた段階では、相手方はすでに氏名・住所を把握しています。しかし記載された金額は相手方の主張にすぎず、算定根拠を検討する余地は残されています。重要なのは、感情的に反応せず、放置もせず、回答期限を確認したうえで記録の残る形で対応を進めることです。
特に避けるべきは、電話での即答、無視、内容未確認のままの署名です。清算条項を含む示談書に署名した後では、金額を検討する機会は失われます。回答期限には限りがありますので、早めに弁護士へご相談ください。
権利者から損害賠償請求(示談金請求)の通知が届いた方の対応については、こちらのページで詳しく解説しています。BitTorrent示談金請求への対応について詳しくはこちら
プロバイダから意見照会書が届いた段階の方は、こちらのページをご参照ください。
損害賠償請求の通知書が届き、対応にお悩みではありませんか。
タングラム法律事務所では、BitTorrent(トレント)に関する発信者情報開示請求・損害賠償請求への対応について、豊富な実績を有しております。請求内容の妥当性の検討から示談交渉・示談書の締結まで、ITエンジニアの経験を持つ弁護士が対応します。
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