BitTorrentの意見照会書が複数届いたら|何通も届く理由と対応
BitTorrentの意見照会書が複数届いたら|何通も届く理由と対応
執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年9月29日 最終更新日:2026年9月29日
プロバイダから「発信者情報開示請求に係る意見照会書」が届き、どう対応しようかと考えているうちに、2通目、3通目が届いた――BitTorrent(トレント)に関するご相談では、このような状況が決して珍しくありません。封筒が増えるたびに「いったい何件あるのか」「全部に答えなければならないのか」と不安が大きくなる方も多いと思います。
この記事では、BitTorrentの意見照会書が複数届く理由、1通ごとに回答が必要な理由、期限の管理と回答内容の一貫性、そして開示後に予想される損害賠償請求・示談の考え方まで、発信者側の立場から横浜の弁護士が解説します。
結論として、BitTorrentの意見照会書は、権利者(作品の制作会社等)ごと・作品ごと・問題とされた通信ごとに届くため、複数通届くことは珍しくなく、今後さらに届く可能性もあります。照会書は1通ごとに回答期限があるため、まず全体を一覧にして期限を管理し、照会ごとに矛盾のない回答をすることが重要です。
BitTorrentの意見照会書が複数届くのはなぜか
BitTorrentは、ファイルをダウンロードしている間も、同じファイルの断片を他の利用者にアップロードする(送信可能な状態にする)仕組みです。このため、動画などの著作物を共有した場合、著作権者の公衆送信権(自動公衆送信の場合の送信可能化を含む。著作権法23条1項)を侵害したとして、権利者から開示請求を受けることがあります。
開示請求は、権利を侵害されたと主張する者が、自らの権利ごとに行うものです。そのため、次のような事情が重なると、意見照会書は複数通になります。
| 複数届くパターン | 典型的な状況 |
|---|---|
| 権利者が複数 | 異なる制作会社の作品を共有していたため、会社ごとに開示請求が行われた |
| 同じ権利者で作品が複数 | 同じ会社の複数作品について、作品ごとに請求が行われた |
| 同じ作品で通信が複数 | 別の日時・別のIPアドレスでの通信が、それぞれ問題とされた |
| 時期がずれて届く | 権利者側の調査・申立ての時期が異なるため、数週間~数か月おいて追加で届いた |
| 回線が複数 | 自宅の固定回線とモバイル回線など、利用していた回線ごとに別のプロバイダから届いた |
複数届いたからといって「特に悪質と判断された」とは限りません。開示請求の全体像は、BitTorrent(トレント)で開示請求を受けたときの対処法もあわせてご覧ください。
意見照会書は1通ごとに回答が必要な理由
意見照会は、情報流通プラットフォーム対処法(正式名称「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」)6条1項に基づく手続です。同項は、開示の請求を受けたプロバイダ(開示関係役務提供者)は、発信者と連絡できない場合などを除き、開示の請求に応じるかどうかについて発信者の意見(応じるべきでない旨の意見の場合はその理由を含む)を聴かなければならないと定めています。
プロバイダは開示の請求ごとに意見を聴くため、照会書にはそれぞれ整理番号、対象となる通信の日時やIPアドレス、回答期限が記載されています。同じ会社からの照会であっても、「1通にまとめて回答したから他は不要」とは扱われない可能性があるため、照会書1通ごとに回答書を作成し、それぞれの期限までに返送するのが基本です。
なお、発信者が開示に同意しなくても、裁判所が要件を満たすと判断すれば開示が命じられることがあります(同法8条)。回答は開示を止める決定打ではありませんが、発信者側の事情を伝える唯一の機会です。意見照会を含む手続の全体像は、当事務所の意見照会書への対応(発信者情報開示請求を受けた方へ)のページで解説しています。
複数届いたときにまずやるべきこと|一覧表で期限を管理する
照会書が何通もあると、期限の見落としや、どの照会に何を答えたかの混乱が起こりがちです。まずは届いた照会書をすべて手元に集め、次の項目を一覧表にまとめることをおすすめします。
- 照会書の到着日と回答期限
- 差出人のプロバイダ名と整理番号
- 請求者(権利者)の名称
- 対象とされた作品名・ファイル名(記載がある場合)
- 問題とされた通信の日時・IPアドレス
- 対象となった回線(自宅の固定回線か、モバイル回線か)
一覧にすると、同じ権利者から何件か、どの時期の通信が問題とされているか、家族など他の人が利用していた時期と重ならないかが見えてきます。期限の早いものから対応し、照会書や封筒は保管してください。
回答書は一通ずつ、ただし内容の一貫性を保つ
同意・不同意の判断は照会ごとに行います。複数の照会のうち一部にだけ心当たりがある、という状況もあり得ます。ただし注意したいのは、回答書の内容が照会ごとに食い違うことです。
例えば、ある照会では「その時期はBitTorrentを利用していない」と回答し、別の照会では同じ時期の利用を前提とした説明をしてしまうと、後に損害賠償請求を受けた場面で、説明の信用性が問題になるおそれがあります。複数の照会に回答する際は、全体の事実関係を先に整理し、一貫した説明になっているかを確認してから、1通ずつ回答書を作成することが大切です。
不同意と回答した後の手続の流れは、BitTorrent意見照会に不同意回答した後の流れで詳しく解説しています。
今後さらに届く可能性と、損害賠償請求・示談の考え方
照会書は後から追加で届くことがある
BitTorrentでの共有を停止すれば、新たな通信は生じません。しかし、過去の通信について既に記録された情報に基づく開示請求は、プロバイダがログを保存している期間内であれば、後から届く可能性があります。「今届いている分で終わり」とは限らない前提で、対応方針を考える必要があります。
開示後は権利者ごとに請求を受けるのが一般的
開示が認められると、権利者(または代理人弁護士)から損害賠償請求や示談の提案が届くのが一般的です。請求は権利者ごと・作品ごとに行われることが多く、件数が多いほど総額は大きくなりやすい傾向にあります。
複数の権利者から請求を受けた場合、どの請求から、どの条件で示談するかは慎重な判断が必要です。一つの権利者と示談しても、その示談は通常、その権利者との関係でのみ効力を持つため、別の権利者からの請求は別途対応が必要です。示談金の考え方や減額交渉のポイントは、BitTorrentの示談金相場と減額交渉のポイントをご参照ください。
複数件の対応を弁護士に依頼するメリット
照会書が複数ある場合、弁護士に依頼すると次のようなメリットがあります。
- 全件を一覧で管理し、回答期限の見落としを防げる
- 照会ごとに矛盾のない回答書を作成できる
- 開示後の損害賠償請求について、権利者ごとの交渉窓口を弁護士に一本化できる
- 後から追加で届いた照会や請求にも、同じ方針で対応できる
一方で、件数が多いほど弁護士費用の総額が気になるところです。費用体系は事務所によって異なるため、依頼前に「今後さらに届いた場合の費用」まで確認することをおすすめします。当事務所(横浜)では、BitTorrentの意見照会について、1件ごとの費用方式に加え、件数を問わない定額の方式もご用意しています。内容はBitTorrent著作権侵害の意見照会対応の特設ページでご案内しています。
よくある質問
同じ会社から意見照会書が複数届きました。まとめて1通の回答書で済ませてよいですか?
意見照会書には照会ごとに整理番号や対象となる通信(日時・IPアドレス等)、回答期限が記載されています。プロバイダは照会ごとに手続を進めるため、原則として照会書1通ごとに回答書を作成し、それぞれの期限までに返送するのが安全です。
一部の照会だけ心当たりがあり、他は覚えがない場合はどうすればよいですか?
同意・不同意の判断は照会ごとに行います。ただし、回答書の内容は後の損害賠償請求の場面で参照される可能性があるため、照会ごとに説明が食い違わないよう、全体を整理したうえで回答することが重要です。心当たりがないものは、その理由をできる限り具体的に記載します。
これ以上意見照会書が届かないようにすることはできますか?
BitTorrentでの共有を停止すれば新たな通信は生じませんが、過去の通信について既に記録された情報に基づく開示請求は、プロバイダがログを保存している期間内であれば、後から届く可能性があります。これ以上届かないと保証する方法はありません。
意見照会書が何通もあると、弁護士費用も件数分かかりますか?
費用体系は法律事務所によって異なり、1件ごとに費用が発生する方式もあれば、件数に上限を設けたり件数を問わない定額の方式を用意している事務所もあります。複数通届いている場合は、今後さらに届く可能性も踏まえ、依頼前に総額の見通しを確認することをおすすめします。
まとめ
BitTorrentの意見照会書は、権利者ごと・作品ごと・通信ごとに届くため、複数通になることは珍しくありません。照会書は1通ごとに回答期限があるため、まずは一覧表で全体を把握し、期限の早いものから、照会ごとに矛盾のない回答をすることが大切です。また、開示後は権利者ごとに損害賠償請求を受ける可能性があり、今後追加で照会書が届くことも想定しておく必要があります。
件数が多いほど、回答の一貫性や示談交渉の進め方が結果に影響しやすくなります。早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
意見照会書が複数届いてお困りの方は、BitTorrent著作権侵害の意見照会対応の詳細はこちらをご覧ください。
BitTorrentの意見照会書が複数届いてお困りの方へ
タングラム法律事務所では、BitTorrent(トレント)に関する発信者情報開示の意見照会対応・示談交渉について多数のご相談をお受けしております。複数通の照会書が届いている場合も、全体を整理したうえで対応方針をご提案します。
法律相談の予約はこちら※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。