タングラム法律事務所

契約書のひな形・テンプレートを自分で使うときの注意点|弁護士が解説

契約書のひな形・テンプレートを自分で使うときの注意点|弁護士が解説

契約書のひな形・テンプレートを自分で使うときの注意点|弁護士が解説

契約書のひな形・テンプレートを自分で使うときの注意点|弁護士が解説

契約書のひな形・テンプレートを自分で使うときの注意点|弁護士が解説

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年9月29日 最終更新日:2026年9月29日

「ネットで見つけた契約書のひな形をそのまま使ってよいのだろうか」――法務担当者のいない中小企業や個人事業主の方から、このようなご相談をよくいただきます。インターネット上には多くのテンプレートが公開されており、上手に使えば手間を大きく減らせます。

一方で、ひな形は「誰にでも当てはまる最大公約数」として作られているため、自社の取引内容に合わない条項や、法改正に対応していない古い条項が紛れ込んでいることも少なくありません。この記事では、契約書のひな形を自分で使う場合に必ず確認したいチェックポイントと、自分で対応できる範囲の見極め方を、横浜の弁護士が解説します。

結論として、契約書のひな形は「そのまま使う」のではなく、①自社の取引内容(当事者・目的物・代金・期間)に合わせて書き換え、②損害賠償・契約不適合責任・解除などのリスク配分条項を自社の立場から見直し、③2020年施行の改正民法や2026年1月施行の取適法などの法改正に対応しているかを確認したうえで使うことが大切です。金額が大きい取引や継続的な取引、相手方が用意したひな形に署名する場面では、弁護士のチェックを受けることを検討してください。

契約書のひな形を使う前に知っておきたいこと

ひな形は、契約内容の叩き台にすぎません。多くのひな形は、どちらか一方の当事者に有利な内容になっていたり、特定の業種を前提にしていたりします。たとえば、発注者向けに作られた業務委託契約書のひな形を受注者が使うと、自社に不利な損害賠償条項や検収条項をそのまま相手に示してしまうことになりかねません。

まずは、使おうとしているひな形が「誰が作ったものか」「いつ作られたものか」「どちらの立場を想定したものか」を確認しましょう。作成時期が古いまま更新されていないテンプレートもあります。

ひな形を自社用に書き換えるときの基本チェックポイント

最低限、次の項目は自社の取引に合わせて必ず確認・修正してください。

項目確認すること
当事者正式な商号・所在地・代表者名になっているか(屋号や略称のままにしない)
目的物・業務内容何を納品し、どこまでの作業を行うのかが具体的か(「別途協議」だらけになっていないか)
代金・支払条件金額(税込・税別)、支払期日、支払方法、振込手数料の負担者が明記されているか
納期・検収納期、検査の期間、検査に合格したものとみなす時期が定まっているか
契約期間・更新期間満了時に自動更新されるか、更新しない場合の通知期限はいつか
解除どのような場合に契約を解除できるか、解除した場合の精算方法はどうなるか

特に「業務内容」は、ひな形のままでは抽象的な記載にとどまりやすく、後日の争いの原因になります。業務委託契約の条項の組み立て方は、業務委託契約書の作り方と必ず入れるべき条項でも詳しく解説しています。

見落としやすい「リスク配分」の条項

最も注意したいのが、トラブル時の責任分担を決める条項です。立場によって有利・不利が大きく分かれます。

  • 損害賠償の範囲・上限:受注者なら賠償額の上限(例:受領済みの委託料の額)を設けるか、発注者なら上限が低すぎないかを確認します。
  • 契約不適合責任:納品物に不備があった場合に、修補・代金減額・損害賠償・解除のどれをいつまで請求できるかを定めます。詳しくは契約不適合責任と通知期間の解説をご覧ください。
  • 知的財産権の帰属:成果物の著作権がいつ・どちらに移転するのかを確認します。
  • 合意管轄:紛争時にどの裁判所で訴訟をするかの合意です。第一審の管轄裁判所は、書面による合意で定めることができます(民事訴訟法11条)。遠方の裁判所が指定されていないかを確認しましょう。

また、契約を途中で終わらせたいときの手順は、条項の書き方次第で大きく変わります。解除の要件や通知の出し方については、契約解除の進め方(催告解除と通知書の書き方)もあわせてご確認ください。

古いひな形に注意――法改正に対応しているか

ネット上には法改正前の内容のままのひな形もあります。次の点は特に確認してください。

2020年4月施行の改正民法

改正民法により、売買や請負の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に改められました。ひな形に「瑕疵担保責任」「隠れた瑕疵」という表現が残っていれば、改正前に作られた可能性が高いといえます。また、個人が根保証(継続的な取引から生じる債務の保証など)をする場合、極度額(保証の上限額)を書面等で定めなければ効力を生じないとされています(民法465条の2)。連帯保証条項のあるひな形を使うときは注意が必要です。

2026年1月施行の取適法(旧下請法)

2026年1月1日から、下請法は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(通称:取適法)に改められました。従業員数による適用基準が加わり、手形払いが禁止されるなど、発注者の義務が強化されています。適用される取引では、発注内容(給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法等)の明示や、受領日から60日以内での支払期日の設定が必要です。「支払は手形による」「支払期日は検収後90日」といった古いひな形の条項は、そのまま使うと違反となるおそれがあります。

フリーランス法

2024年11月1日に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法により、個人のフリーランス等に業務を委託する場合には、取引条件の明示などの義務が課されています。明示すべき事項が契約書や発注書に漏れていないか確認しましょう。

印紙税と電子契約

紙の契約書には、内容に応じて収入印紙が必要です。たとえば継続的取引の基本となる契約書(第7号文書)は1通4,000円、請負に関する契約書(第2号文書)は記載金額に応じた税額とされています。一方、国税庁は、電子メールで送信された電磁的記録は印紙税の課税対象となる「文書」に含まれないとの見解を示しています。個別の取引の課税関係については、税務署または税理士にご確認ください。

相手方のひな形を示されたときの確認方法

取引先から「当社の標準契約書に署名してください」と求められることもあります。相手方のひな形は、相手方に有利に作られている可能性があります。

  • 自社だけが負う義務(競業禁止、損害賠償の無制限、一方的な解除権など)がないか
  • 相手方の義務(支払期日・検収期間)があいまいになっていないか
  • 「甲の定める規程に従う」など、相手方が後から内容を変えられる条項がないか

気になる条項があれば、修正案を示して協議しましょう。「標準の書式なので変更できない」と言われても、交渉の余地がないとは限りません。

自分で対応できる範囲と、弁護士に依頼した場合の違い

少額・単発で定型的な取引であれば、信頼できるひな形を丁寧に書き換えて対応できる場合もあります。しかし、自分で使う場合には次のような限界があります。

  • 条文の意味や、裁判になったときにどのように解釈されるかを予測しにくい
  • 自社の業種・取引慣行に固有のリスク(IT企業のシステム開発、継続的な製造委託など)がひな形に反映されていない
  • 法改正や行政の運用の変化に気づきにくい

弁護士に依頼すると、取引の実態を踏まえて自社のリスクに応じた条項に調整できます。一度自社専用のひな形を作っておけば、以後の取引で繰り返し使えます。当事務所の取扱内容は企業法務(契約書作成・リーガルチェック)のページでご案内しています。

契約書のひな形に関するよくある質問

ネットで公開されている契約書のひな形をそのまま使っても法的に有効ですか?

当事者が内容に合意して署名・押印(または電子署名)すれば、ひな形を使った契約書であっても契約としての効力は認められるのが通常です。ただし、有効であることと自社に有利であることは別の問題です。自社の取引に合わない条項がそのまま適用されるおそれがあるため、内容を確認して修正したうえで使うことをおすすめします。

ひな形に「瑕疵担保責任」と書かれていたらどうすればよいですか?

2020年4月施行の改正民法以前に作られたひな形である可能性があります。現行民法の「契約不適合責任」の考え方に沿って、修補・代金減額・損害賠償・解除の請求方法や期間を整理し直すことをおすすめします。

契約書のリーガルチェックだけを弁護士に依頼することはできますか?

自社で作成した契約書や、取引先から示された契約書のチェックのみをご依頼いただくことも可能です。費用は契約書の分量や内容によって異なりますので、ご相談時にお見積りをご案内します。

まとめ

契約書のひな形は便利な道具ですが、そのまま使うと自社の取引に合わない条項や、法改正に対応していない条項が残ってしまうおそれがあります。基本事項の書き換えに加え、リスク配分条項を自社の立場から見直し、改正民法・取適法・フリーランス法などへの対応状況を確認することが大切です。

金額の大きい取引や継続的な取引、相手方のひな形に署名を求められた場面では、署名前に弁護士のチェックを受けることで、後日の紛争を予防できる可能性が高まります。横浜で中小企業・個人事業主の契約書作成やリーガルチェックをお考えの方は、お気軽にご相談ください。

契約書のひな形の見直し・リーガルチェックのご相談

タングラム法律事務所では、企業法務(契約書レビュー・労務・法改正対応等)について、中小企業・個人経営の事業者向けに豊富な実績を有しております。ひな形をもとにした自社専用の契約書づくりや、取引先から示された契約書の確認もお任せください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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