タングラム法律事務所

誹謗中傷の裁判で控訴する方法|控訴期間2週間と控訴状の書き方

誹謗中傷の裁判で控訴する方法|控訴期間2週間と控訴状の書き方

誹謗中傷の裁判で控訴する方法|控訴期間2週間と控訴状の書き方

誹謗中傷の裁判で控訴する方法|控訴期間2週間と控訴状の書き方

誹謗中傷の裁判で控訴する方法|控訴期間2週間と控訴状の書き方

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月31日 最終更新日:2026年10月31日

ネットの誹謗中傷について損害賠償を求める裁判を自分で起こし、ようやく判決が出たものの、「認められた慰謝料が思っていたよりずっと低い」「名誉毀損に当たらないとして請求が棄却されてしまった」という結果に納得できない方は少なくありません。

この記事では、誹謗中傷の損害賠償訴訟の判決に不服がある場合に、本人訴訟で控訴する方法を解説します。控訴できる期間、控訴状の書き方と提出先、手数料の目安、控訴審の進み方、そして控訴するかどうかを判断する際のポイントまで、順を追って説明します。

結論から言うと、第一審の判決に不服がある場合は、判決書の送達を受けた日から2週間以内に、控訴状を第一審の裁判所に提出しなければなりません。この期間を1日でも過ぎると判決は確定し、原則として争うことはできなくなります。控訴の理由は控訴の提起後50日以内に書面で提出するのが原則であり、控訴審では第一審の判断のどこが誤っているのかを具体的に指摘する必要があります。

誹謗中傷訴訟の判決に不服があるときは「控訴」で争う

民事訴訟の第一審判決に不服がある当事者は、上級の裁判所に対して控訴をすることができます。誹謗中傷の損害賠償請求訴訟では、たとえば次のような場合に控訴が検討されます。

  • 投稿が名誉毀損・侮辱に当たらない、あるいは被害者を特定できない(同定可能性がない)として請求が棄却された
  • 違法性は認められたが、慰謝料額や弁護士費用・調査費用の認容額が低すぎる
  • 投稿者(被告)の立場で、名誉毀損が成立すると判断されたことや賠償額に納得できない

控訴先は、第一審が地方裁判所であれば高等裁判所、簡易裁判所であれば地方裁判所です。たとえば横浜地方裁判所の判決に対する控訴は東京高等裁判所で、横浜簡易裁判所の判決に対する控訴は横浜地方裁判所で審理されます。

なお、少額訴訟の判決に対しては控訴をすることができません(民事訴訟法377条)。不服がある場合は、同じ簡易裁判所に異議を申し立てる手続になります。少額訴訟の仕組みは「誹謗中傷の損害賠償を自分で請求する「少額訴訟」の進め方」で解説しています。

控訴期間は判決書の送達から2週間|過ぎると判決が確定する

控訴は、判決書(令和8年5月21日施行の改正民事訴訟法のもとでは電子判決書)の送達を受けた日から2週間の不変期間内に提起しなければなりません(民事訴訟法285条)。「判決言渡しの日」からではなく、「判決書の送達を受けた日」から数える点に注意が必要です。期間は送達を受けた日の翌日から数え始めます。

判決は、控訴期間が満了するまでは確定せず、期間内に控訴が提起されると確定が遮断されます(同法116条)。逆にいえば、2週間を過ぎると判決は確定し、強制執行の手続に進むことが可能になります。不変期間は裁判所の判断で延ばすことができないため、「控訴するかどうか迷っている」という段階でも、期限の日付を最初に確認しておくことが重要です。

控訴状の書き方と提出先|第一審の裁判所に出す

控訴の提起は、控訴状を第一審裁判所に提出して行います(民事訴訟法286条1項)。控訴審を担当する高等裁判所に直接出すのではない点が、本人訴訟で間違えやすいポイントです。

控訴状には、次の事項を記載しなければなりません(同条2項)。

記載事項書き方の例・注意点
当事者及び法定代理人控訴人(控訴する側)と被控訴人(相手方)の氏名・住所。第一審での原告・被告の別も併記するのが一般的です
第一審判決の表示「横浜地方裁判所令和○年(ワ)第○○号損害賠償請求事件について、同裁判所が令和○年○月○日に言い渡した判決」のように特定します
判決に対して控訴をする旨「上記判決は全部不服であるから控訴を提起する」など

実務上は、これに加えて「控訴の趣旨」(例:「原判決を取り消す。被控訴人は、控訴人に対し、金○○円を支払え。」)を記載します。控訴審で第一審判決を取り消したり変更したりできるのは、不服申立ての限度に限られる(同法304条)ため、どの部分にどこまで不服があるのかを控訴の趣旨で明確にしておくことが大切です。

控訴状に記載事項の不備があったり、手数料が納付されていなかったりすると、補正を命じられ、補正しなければ控訴状が却下されることがあります(同法288条)。

控訴の手数料(収入印紙)の目安

控訴の提起の手数料は、民事訴訟費用等に関する法律により、第一審の訴え提起の手数料の1.5倍とされています。たとえば裁判所の「手数料額早見表」(令和8年9月15日改訂)では、不服の対象となる額(訴額)が100万円の場合、次のとおりとされています。

事件の区分控訴の手数料(訴額100万円の場合)
旧法適用事件(第一審の訴え提起が令和8年5月21日より前)15,000円
新法適用事件・書面で申し立てる場合16,900円
新法適用事件・電子で申し立てる場合15,800円

このように、令和8年5月21日施行の改正民事訴訟法が適用される事件かどうかによって手数料額が異なります。手数料の額のほか、送達費用の納め方も含め、裁判所ウェブサイトの最新の早見表や提出先の裁判所の窓口で必ず確認してください。

控訴理由書は50日以内に|控訴審で何を主張するか

控訴状に第一審判決の取消し・変更を求める理由を具体的に書かなかったときは、控訴の提起後50日以内に、その理由を記載した書面(いわゆる控訴理由書)を控訴裁判所に提出しなければなりません(民事訴訟規則182条)。控訴状は期限内に簡潔なものを出し、詳しい理由は控訴理由書で述べるのが一般的な進め方です。

控訴理由書では、第一審判決の結論をただ「不当だ」と述べるのではなく、判決理由のどの判断が、どの証拠や法的な考え方に照らして誤っているのかを具体的に指摘します。誹謗中傷の事件であれば、たとえば次のような点が争点になりやすいといえます。

  • 投稿が一般の閲覧者の普通の注意と読み方を基準として、社会的評価を低下させるものといえるか
  • 投稿の対象が自分であると周囲の人が認識できるか(同定可能性)
  • 真実性・相当性など、違法性や責任を否定する事情の判断が適切か
  • 慰謝料額の算定で考慮されるべき事情(投稿の回数・拡散の程度・被害の内容)が十分に評価されているか

主張の組み立て方は第一審の準備書面と共通する部分が多いため、「誹謗中傷の本人訴訟で準備書面を書く方法」もあわせて参考にしてください。また、第一審の訴状でどのような請求の立て方をしたかによって、控訴審で主張できる内容の整理も変わります(「誹謗中傷の損害賠償を自分で提訴する方法|訴状の書き方と流れ」)。

控訴審の進み方と、控訴するかどうかの判断ポイント

控訴審の手続には、特別の定めがある場合を除き、第一審の訴訟手続の規定が準用されます(民事訴訟法297条)。控訴審は第一審の審理を前提として行われるため、第一審で出さなかった証拠や主張を後から大量に追加しようとしても、時機に後れたものとして扱われるおそれがあります。実務上、控訴審では第1回の口頭弁論で審理が終結し、次回に判決が言い渡されることも少なくありません。

控訴するかどうかを決める際には、次の点を検討するとよいでしょう。

  • 費用と時間:控訴の手数料のほか、審理期間が延びることで回収までの時間も長くなります
  • 相手方からの控訴(附帯控訴):こちらが控訴すると、相手方も控訴審の中で不服を申し立て、第一審の認容額そのものが争われることがあります
  • 判決理由の分析:第一審で認められなかった理由が、証拠の不足なのか法的評価の問題なのかによって、控訴審での見通しは大きく変わります

なお、控訴は控訴審の終局判決があるまで取り下げることができます(同法292条1項)。ただし、取り下げると第一審判決が確定する方向に働くため、慎重な判断が必要です。

控訴審での主張立証は、第一審の記録を読み込み、判決の論理に即して反論を組み立てる専門的な作業です。開示請求から損害賠償請求までの全体の流れや、弁護士に依頼した場合の対応範囲については、発信者情報開示請求・削除請求の取扱分野ページでご案内しています。

よくある質問

控訴期間の2週間はいつから数えますか?

判決言渡しの日ではなく、判決書(電子判決書)の送達を受けた日から数えます。送達を受けた日の翌日から起算して2週間以内に控訴状を提出する必要があり、この期間は裁判所の判断で延長できません。

控訴状はどこに提出すればよいですか?

控訴審を担当する裁判所ではなく、判決をした第一審の裁判所に提出します。たとえば横浜地方裁判所の判決に控訴する場合、控訴状は横浜地方裁判所に提出し、審理は東京高等裁判所で行われます。

控訴の理由は控訴状に書かなければいけませんか?

控訴状に具体的な理由を書かなかった場合は、控訴の提起後50日以内に、第一審判決の取消し・変更を求める理由を記載した書面を控訴裁判所に提出する必要があります。まず期限内に控訴状を出し、詳しい理由は後から書面で述べる方法が一般的です。

まとめ|控訴は期限と主張の組み立てが勝負

誹謗中傷の損害賠償訴訟の判決に不服がある場合は、判決書の送達から2週間以内に第一審の裁判所へ控訴状を提出し、50日以内に控訴理由書で第一審判決の誤りを具体的に主張する必要があります。手数料は第一審の1.5倍が基本ですが、改正民事訴訟法の適用の有無で額が異なるため、最新の早見表で確認しましょう。

控訴審は第一審の記録を前提に短期間で終結することも多く、本人訴訟で十分な反論を組み立てるのは容易ではありません。横浜を拠点とするタングラム法律事務所では、弁護士が判決理由を分析したうえで、控訴すべきかどうかの見通しや控訴理由書の作成についてご相談をお受けしています。

誹謗中傷訴訟の判決に納得できない方へ

タングラム法律事務所では、ネット上の誹謗中傷に関する発信者情報開示請求から損害賠償請求訴訟まで、数多くの案件に対応してまいりました。控訴期間は2週間と短いため、判決書を受け取ったら早めにご相談ください。

法律相談の予約はこちら

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

発信者情報開示請求・削除請求について見る

費用と手続の流れを確認する

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。