タングラム法律事務所

誹謗中傷の損害賠償を自分で請求する「少額訴訟」の進め方|手続と限界を解説

誹謗中傷の損害賠償を自分で請求する「少額訴訟」の進め方|手続と限界を解説

誹謗中傷の損害賠償を自分で請求する「少額訴訟」の進め方|手続と限界を解説

誹謗中傷の損害賠償を自分で請求する「少額訴訟」の進め方|手続と限界を解説

誹謗中傷の損害賠償を自分で請求する「少額訴訟」の進め方|手続と限界を解説

発信者情報開示請求を経てようやく投稿者の氏名・住所が判明したものの、示談交渉では相手が応じてくれない——。そんなとき、「弁護士に頼むほどの金額ではないが、泣き寝入りもしたくない」と感じる方は少なくありません。数万円から数十万円程度の慰謝料であれば、比較的簡易な「少額訴訟」という手続を自分で利用して損害賠償を請求する道があります。

この記事では、ネット誹謗中傷の損害賠償を自分で請求したい方に向けて、少額訴訟の仕組み・使える場面・手続の流れ・費用を、裁判所の公式情報にもとづいて整理します。あわせて、本人で進める場合に注意すべき点や限界にも触れ、弁護士に依頼した場合との違いも解説します。横浜で誹謗中傷対応を扱う弁護士の視点から、実務的なポイントをお伝えします。

少額訴訟とは?誹謗中傷の損害賠償に使えるのか

少額訴訟は、60万円以下の金銭の支払を求める訴えについて、原則として1回の審理で紛争解決を図る、簡易裁判所の特別な訴訟手続です(民事訴訟法368条1項)。通常の訴訟と比べて手続が簡素化されており、法律の専門家でない一般の方でも利用しやすいよう設計されている点が特徴です。

誹謗中傷の被害では、投稿による精神的苦痛に対する慰謝料などを損害賠償として請求します。請求する金額(訴額)が60万円以下に収まるのであれば、少額訴訟の対象となります。個人に対するSNS投稿1件あたりの慰謝料が数万円から数十万円程度にとどまるケースでは、少額訴訟が現実的な選択肢になり得ます。

ただし、少額訴訟を起こすには、訴える相手(被告)の氏名・住所が特定されていることが前提です。匿名の投稿者に対しては、まず発信者情報開示請求によって投稿者を特定する必要があります。特定の手続については投稿者を特定した後の損害賠償請求・訴訟の流れを解説した記事もあわせてご覧ください。

少額訴訟を使えるケース・使えないケース

少額訴訟には利用できる範囲に明確な制限があります。誹謗中傷事案で使えるかどうかは、次の点で判断します。

項目内容
請求額(訴額)60万円以下の金銭請求であること。慰謝料・調査費用などを合算した請求額で判断する
請求の内容金銭の支払を求めるものであること(投稿の削除そのものは対象外)
相手方氏名・住所が判明していること(発信者情報開示等による特定が前提)
利用回数同じ簡易裁判所で1人につき年間10回まで

逆に、次のような場合は少額訴訟にはなじみません。慰謝料に加えて発信者情報開示にかかった調査費用(弁護士費用相当額)まで請求し、合計が60万円を超える場合は、通常訴訟によることになります。開示費用を損害として請求できるかどうかについては、開示にかかった弁護士費用の加害者請求を解説した記事で詳しく取り上げています。また、投稿の削除を求めたい場合は損害賠償とは別の手続(削除請求・仮処分)が必要で、少額訴訟の対象ではありません。

複数の投稿による被害で損害額が大きくなりそうな場合や、相手方が争ってくることが予想される場合は、はじめから通常訴訟を選んだほうが結果的にスムーズなこともあります。金額の見通しと相手の対応姿勢を踏まえて手続を選ぶことが大切です。

少額訴訟の進め方——本人でできる手続の流れ

ここでは、自分で少額訴訟を起こす場合の基本的な流れを説明します。

1. 管轄の簡易裁判所を確認する

少額訴訟は、原則として相手方(被告)の住所地を管轄する簡易裁判所に起こします。金銭の支払を求める請求では、支払をすべき場所を管轄する簡易裁判所に起こすこともできます。管轄については裁判所ウェブサイトの「申立書提出先一覧」で確認できます。

2. 訴状を作成する

訴状には、当事者(原告・被告)、請求の趣旨(いくらの支払を求めるか)、請求の原因(どの投稿によってどのような損害を受けたか)などを記載します。少額訴訟であることを表示する必要もあります。裁判所ウェブサイトには少額訴訟用の定型書式が用意されており、これを利用すると記載しやすくなります。令和8年5月21日以降は、書面による提出に加え、民事裁判書類電子提出システム(mints)を用いたオンラインでの申立ても可能です。

3. 証拠を準備する

少額訴訟は原則として1回の期日で審理を終えるため、最初の期日までに、言い分と証拠をすべて提出しておく必要があります。誹謗中傷事案では、投稿のスクリーンショット(URL・投稿日時が分かるもの)、開示決定書や相手方の特定に関する資料、精神的被害を裏づける資料などが証拠になります。証拠は当日その場で調べられるものに限られるため、事前の証拠保全が重要です。証拠の残し方は慰謝料の増額・減額を左右する要素を解説した記事も参考になります。

4. 申立ての費用を納める

裁判所に納める申立手数料は、訴額に応じた収入印紙で、目安は次のとおりです。従来別途必要であった郵便費用は申立手数料に一本化され、訴え提起手数料と郵便費用相当額(定額)を合わせて納める扱いになっています。

訴額(請求金額)申立手数料(収入印紙)の目安
10万円1,000円
20万円2,000円
30万円3,000円
60万円6,000円

このほか、証拠書類のコピー代や裁判所への交通費などの実費がかかります。費用を支払う資力が乏しい場合には、訴訟費用の支払を猶予する「訴訟上の救助」の制度や、法テラスの民事法律扶助による立替制度を利用できる場合があります。

5. 期日に出頭し、判決を受ける

訴状が受理されると審理の期日が指定されます。少額訴訟では、裁判所は原則として1回の期日で審理を終え、その日のうちに判決を言い渡します。審理の中で話合いによる解決(和解)が成立することもあります。なお、原告の言い分が認められる場合でも、判決言渡しの日から3年を超えない範囲で、分割払や支払猶予、訴え提起後の遅延損害金免除の判決がされることがあります。

少額訴訟のメリットと注意すべきデメリット

少額訴訟には迅速・簡便という大きな利点がある一方で、手続の性質に由来する注意点もあります。通常訴訟との違いを整理します。

比較項目少額訴訟通常訴訟
対象金額60万円以下制限なし
審理回数原則1回・即日判決複数回にわたることが多い
不服申立て異議申立てのみ(控訴不可)控訴が可能
証拠提出初回期日までに一括提出期日を重ねて提出可能

とくに注意したいのが、被告(相手方)の申立てによって通常訴訟に移行し得る点です。相手が「少額訴訟ではなく通常訴訟で争いたい」と申し立てると、事件は通常訴訟へ移ります。紛争が複雑であるなどの理由から、裁判所の判断で通常訴訟に移行することもあります。また、少額訴訟判決に不服がある場合、控訴はできず、判決を受け取った日の翌日から起算して2週間以内に同じ簡易裁判所へ異議を申し立てることしかできません。証拠は初回に出し切る必要があり、後から追加で立証する余地が乏しい点も、通常訴訟との大きな違いです。

勝訴しても支払われないとき——判決後の回収

判決で支払が命じられても、相手が任意に支払うとは限りません。その場合、確定した判決や和解調書を債務名義として、強制執行を申し立てることができます。少額訴訟では、判決をした簡易裁判所において、給料や預金などの金銭債権に対する強制執行(少額訴訟債権執行)を申し立てることも可能で、地方裁判所の通常の民事執行より手続が身近です。

もっとも、強制執行は相手方の財産(勤務先・預金口座など)が分からなければ実効性が乏しく、財産の把握が回収の成否を分けます。相手の財産が不明な場合には、財産開示手続などの制度もありますが、手続は複雑になりがちで、この段階で弁護士に相談する方も多くいます。

自分で行う限界と、弁護士に依頼した場合の違い

少額訴訟は本人でも利用しやすい手続ですが、誹謗中傷事案では次のような法的判断が求められ、本人だけで進めるには難しい場面もあります。名誉毀損や侮辱が法的に成立するかの評価、適切な損害額(訴額)の設定、相手が通常訴訟移行や反論をしてきたときの対応などです。そもそも投稿者を特定する発信者情報開示の段階でつまずくケースも少なくありません。

弁護士に依頼した場合は、証拠の整え方から訴状の作成、期日での主張立証、相手方が争ってきた際の対応、判決後の回収まで一貫して任せることができます。とりわけ、損害額が60万円を超えて通常訴訟が視野に入る場合や、相手が争う姿勢を見せている場合には、はじめから弁護士に相談したほうが結果的に負担が小さくなることもあります。まずはご自身の事案で少額訴訟が適するのか、通常訴訟を選ぶべきかを見極めるところから、横浜の弁護士にご相談いただくのも一つの方法です。

よくある質問(FAQ)

誹謗中傷の損害賠償は少額訴訟で請求できますか?

請求額(訴額)が60万円以下の金銭請求であれば、少額訴訟を利用できます。慰謝料や調査費用などを合わせた請求額が60万円を超える場合は少額訴訟は使えず、通常訴訟によることになります。また、少額訴訟を起こすには、あらかじめ発信者情報開示請求などによって相手方の氏名・住所が判明していることが前提となります。

少額訴訟の費用はいくらかかりますか?

裁判所に納める申立手数料は、訴額に応じて概ね1,000円から6,000円です(例:訴額10万円で1,000円、60万円で6,000円)。従来別途必要であった郵便費用は申立手数料に一本化され、訴え提起手数料と郵便費用相当額(定額)を合わせて納めます。このほか、証拠のコピー代や交通費などの実費がかかります。

少額訴訟の判決に不服がある場合、控訴できますか?

少額訴訟判決に対しては控訴はできず、判決を受け取った日の翌日から起算して2週間以内に、同じ簡易裁判所へ異議を申し立てることのみが認められています。異議があると、同じ簡易裁判所で通常の手続により改めて審理されますが、その判決に対する控訴は禁止されています。

相手が支払わない場合はどうなりますか?

判決や和解調書に基づいて強制執行を申し立てることができます。少額訴訟の場合、判決をした簡易裁判所において、給料や預金などの金銭債権に対する強制執行(少額訴訟債権執行)を申し立てることも可能です。ただし相手方の財産を把握していないと回収は難しく、財産の調査が課題になります。

少額訴訟は弁護士に依頼せず自分でできますか?

少額訴訟は本人でも利用しやすいよう簡易な手続とされており、自分で進めることは可能です。ただし、相手方の特定(発信者情報開示)、名誉毀損の成否や損害額の主張立証、相手が通常訴訟移行を申し立てた場合の対応など、法的判断を要する場面も多くあります。難しさを感じる場合は弁護士への相談を検討するとよいでしょう。

まとめ

少額訴訟は、60万円以下の金銭請求について原則1回の審理で解決を図る簡易裁判所の手続で(民事訴訟法368条)、慰謝料が数万円から数十万円程度にとどまる誹謗中傷事案では、本人でも利用しやすい選択肢です。一方で、相手方の特定が前提であること、被告の申立てで通常訴訟に移行し得ること、証拠を初回に出し切る必要があること、控訴ができないことなど、押さえておくべき制約もあります。

損害額の見通しや相手の対応次第では、はじめから通常訴訟や弁護士への依頼を検討したほうが良い場合もあります。ご自身の事案でどの手続が適切かの判断に迷われたときは、横浜の弁護士にご相談ください。

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タングラム法律事務所では、ネット誹謗中傷に関する発信者情報開示請求・削除請求・損害賠償請求について、豊富な実績を有しております。少額訴訟が適するのか通常訴訟によるべきか、投稿者の特定から回収まで、事案に応じた最適な進め方をご提案します。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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