不貞慰謝料の裁判で証拠を自分で提出する方法|証拠説明書の書き方
不貞慰謝料の裁判で証拠を自分で提出する方法|証拠説明書の書き方
不貞慰謝料を請求する訴訟を自分で進めている方から、「LINEの画面や写真は集めたけれど、裁判所にどう出せばよいのかわからない」というご相談をいただくことがあります。証拠は、封筒に入れて裁判所に送れば当然に評価されるというものではありません。民事訴訟には証拠の出し方のルールがあり、そこから外れると、せっかくの資料が審理に活かされないまま終わることがあります。
この記事では、本人で訴訟を進める方に向けて、証拠(書証)の提出方法、裁判所が提出を求める「証拠説明書」の書き方、2026年5月21日に始まった民事訴訟手続のデジタル化で何が変わったのかを、条文と裁判所の公表資料に沿って整理します。訴訟そのものの起こし方は、不貞慰謝料を自分で請求する訴訟の起こし方もご覧ください。
不貞慰謝料の裁判で「証拠を提出する」とはどういうことか
民事訴訟法219条は、「書証の申出は、文書を提出し、又は文書の所持者にその提出を命ずることを申し立ててしなければならない」と定めています。手元にある書面やLINEの印刷物を証拠にする場合は、その文書を裁判所に提出することが「書証の申出」にあたります。不貞慰謝料請求では、不貞行為があったことを原則として請求する側が証拠で示す必要があり、裁判所は口頭弁論の全趣旨と証拠調べの結果をしん酌して自由な心証により事実を判断します(同法247条)。
なお、図面・写真・録音テープ・ビデオテープなど、文書ではないが情報を表すために作成された物件には書証の規定が準用されます(同法231条)。実務ではこれらを「準文書」と呼び、書証と同じ要領で提出します。どのような資料が証拠として意味を持つかは、不貞行為の証拠として有効なもの一覧で整理しています。
書証の作り方と証拠番号(甲号証)の付け方
裁判所が公表している案内によれば、書証は次の要領で準備します。
- 写しを提出し、原本は期日に持参する……原本がある資料は写しを裁判所に提出し、原本は証拠調べの期日に持参します。
- 用紙はA4に統一する……支障がない限りA4に揃え、記録につづる関係で書面の左側に3センチ程度の余白を作ります。
- 重要部分にラインを引く……書面の一部分のみが証拠として意味を持つ場合は、その部分に蛍光ペン等でラインを引きます。
- 符号と番号を右上の余白に記載する……原告は「甲」、被告は「乙」、参加人等は「丙」。被告が複数いる場合は「乙A」「乙B」などとします。
- 番号は提出する順に付ける……甲1号証、甲2号証と順に付します。関連する文書には枝番号(甲1号証の1、甲1号証の2)を付けることができます。
- マイナンバーの記載がないものを出す……個人番号が記載された書類は、その部分を除いて提出します。
証拠説明書の書き方と記載例
民事訴訟規則137条は、文書を提出して書証の申出をするときは、文書の記載から明らかな場合を除き、文書の標目・作成者・立証趣旨を明らかにした証拠説明書を提出しなければならないと定めています。裁判所の案内では、次の6項目を記載するよう求めています。
| 記載事項 | 書き方のポイント |
|---|---|
| ①符号及び番号 | 甲1号証、甲2号証の1など。枝番も含めて記載します。 |
| ②文書の標目 | 標題のある文書はそれで特定します。標題のない文書は形状や書き出しの内容で特定し、同じ標題が複数あるときは区別できる要素を加えます。 |
| ③文書の作成者 | 作成した人や機関。複数人が作成した文書は全員の氏名を書きます。 |
| ④作成年月日 | その文書が作成された年月日。 |
| ⑤原本又は写しの別 | 原本を所持し期日に提出できるなら「原本」、写しのみ所持しているなら「写し」。 |
| ⑥立証趣旨 | その証拠によって証明したい事実。裁判所が証拠調べの必要性を判断する材料になります。 |
立証趣旨は「被告が令和○年○月○日に原告の配偶者と宿泊を伴う外出をした事実」のように、認定してほしい具体的な事実の形で書きます。「不貞行為があったこと」とだけ書くと、その証拠から何が読み取れるのかが伝わりにくくなります。
写真や録音には特則があります。裁判所の案内では、写真を提出する際は撮影方向を示した図面を添付すること、会話を録音したテープ・電子データを提出する際は必ず反訳書(録音内容を文字に起こした書面)を提出することが求められています。証拠説明書にも、撮影・録音の対象とその日時・場所を記載します。
提出の通数と、相手方への直送
紙で提出する場合、書証も証拠説明書も、1通を裁判所に提出し、1通を相手方に直送するのが原則です。直送できない場合は、相手方の数の分だけ通数を追加して裁判所に提出します。あらかじめ郵送費用を納めておけば、裁判所から相手方へ送付してもらえる運用もあります。相手方に弁護士が就いている場合は、その事務所宛てに直送します。いつ・どの証拠を・どこへ送ったかの控えは必ず残してください。
2026年5月21日から始まった民事訴訟のデジタル化と証拠の提出
2026年5月21日、改正民事訴訟法・改正民事訴訟規則が全面施行され、民事訴訟手続がデジタル化されました。証拠の提出では次の点が重要です。
証拠をオンラインで提出できるようになった
裁判所の説明によれば、全面施行後も書証や準文書を提出できること自体は変わりませんが、訴えの提起と同様に、書証の写しに代わる画像情報(PDF形式)をオンラインで提出することができるようになりました。利用するのは民事裁判書類電子提出システム(mints)で、あらかじめ利用者登録が必要です。申立手数料は原則としてペイジーで現金納付する方式になり、従来別に予納していた郵便費用は申立手数料に一本化されました。
本人は紙でも提出できる
裁判所が公表しているQ&Aは、「これまでと同様に、紙の書面を提出することは可能です」としたうえで、弁護士等はオンライン提出を義務づけられており紙の書面を提出することはできない、と説明しています。本人で訴訟を追行する場合は、紙かオンラインかを選べます。
電磁的記録そのものを証拠調べの対象にできる
改正により、電磁的記録に記録された情報の内容に係る証拠調べの規定が新設されました(民事訴訟法231条の2)。この申出をする場合は、あらかじめ電磁的記録の複製を裁判所に提出する必要があり、記録媒体で提出するかオンラインで提出します。裁判所の案内では、複製のファイル形式は原則としてPDF・MP4・MP3・JPEG・PNGとされています。
不貞慰謝料の裁判で証拠を出すときの注意点
出す時期を逃さない
民事訴訟法156条は、攻撃防御方法は訴訟の進行状況に応じ適切な時期に提出しなければならないと定めています。故意または重大な過失により時機に後れて提出した攻撃防御方法は、訴訟の完結を遅延させると認められるときは却下されることがあります(同法157条1項)。「相手の出方を見てから切り札を出す」という進め方は、かえって不利に働くおそれがあります。
文書の成立の真正が争われることがある
文書は、その成立が真正であることを証明しなければならないとされています(民事訴訟法228条1項)。私文書は、本人またはその代理人の署名または押印があるときは真正に成立したものと推定されます(同条4項)。相手方から「この書面は自分が作ったものではない」と争われる可能性も想定し、作成経緯を説明できるようにしておいてください。
証拠の集め方そのものが問題になることがある
配偶者や相手方の端末を無断で操作して取得した資料は、取得方法自体が法的な問題を生じさせることがあり、訴訟でも証拠としての扱いが争われることがあります。証拠は多ければよいというものではなく、適法に取得された、争点に直結するものを選ぶことが重要です。
本人で進める場合の限界
証拠の提出には形式面のルールが多く、さらに「どの事実を、どの証拠で、どう立証するか」という組み立ての問題があります。本人訴訟では、書式を整えることはできても、立証趣旨の書き分けや、相手方の反論を見越した証拠の取捨選択まで手が回らないことが少なくありません。書証を提出したあとには本人尋問が予定されることも多く、そこでの受け答えが心証を左右します(不貞慰謝料の裁判で本人尋問はある?流れと準備)。当事務所の対応内容は不貞慰謝料請求・減額交渉のページでご案内しています。
よくある質問
証拠説明書を出さないとどうなりますか?
民事訴訟規則137条は、文書の記載から明らかな場合を除き、文書の標目・作成者・立証趣旨を明らかにした証拠説明書を提出しなければならないと定めています。提出がないと、裁判所から補正を求められて審理が進まなくなったり、その証拠で何を証明したいのかが裁判官に伝わらず、事実上評価されにくくなったりするおそれがあります。
LINEのスクリーンショットは「原本」と「写し」のどちらになりますか?
証拠説明書の「原本又は写しの別」は、期日に原本を裁判所へ持参できるかどうかで決まります。スマートフォンの画面を印刷したものは、印刷物自体を作成して所持している以上「原本」と記載する扱いが一般的ですが、裁判所の運用により異なる場合があります。トーク画面が残っている端末は期日に持参できるようにしておくと安全です。
相手方が持っている証拠を出させることはできますか?
民事訴訟法220条の要件を満たす文書については、裁判所に文書提出命令を申し立てることができます。また、同法226条により、文書の所持者に文書の送付を嘱託するよう申し立てる方法(文書送付嘱託)もあります。いずれも認められる範囲には限界があるため、申立ての要否は事案ごとの検討が必要です。
証拠はいつまでに提出すればよいですか?
民事訴訟法156条は、攻撃防御方法を訴訟の進行状況に応じ適切な時期に提出しなければならないと定めています。時機に後れた提出は同法157条により却下されることがあるため、手元にある証拠は早い段階で整理して提出するのが原則です。
まとめ
不貞慰謝料の裁判で証拠を自分で提出する場合の要点は、次のとおりです。
- 書証の申出は文書を提出して行う(民事訴訟法219条)。写真・録音なども準文書として同じ要領で提出できる(同法231条)
- 写しを提出し、原本は期日に持参する。A4に揃え、左側に3センチ程度の余白を作り、右上に符号と番号を記載する
- 証拠説明書には、①符号及び番号、②文書の標目、③作成者、④作成年月日、⑤原本又は写しの別、⑥立証趣旨を記載する(民事訴訟規則137条)
- 書証も証拠説明書も、1通を裁判所に提出し、1通を相手方に直送するのが原則
- 2026年5月21日以降に提起された事件では、mintsで証拠をオンライン提出できる。本人は紙での提出も可能
- 証拠は適時に提出する。時機に後れた提出は却下されることがある(民事訴訟法156条・157条)
形式を整えることと、その証拠で何を立証するかを設計することは別の作業です。相手方に弁護士が就いた、証拠の評価に自信が持てないといった段階に来たら、一度弁護士にご相談ください。横浜のタングラム法律事務所でも、不貞慰謝料に関するご相談を承っています。
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