タングラム法律事務所

誹謗中傷の裁判で自分で証拠を出す方法|証拠説明書の書き方を解説

誹謗中傷の裁判で自分で証拠を出す方法|証拠説明書の書き方を解説

誹謗中傷の裁判で自分で証拠を出す方法|証拠説明書の書き方を解説

誹謗中傷の裁判で自分で証拠を出す方法|証拠説明書の書き方を解説

誹謗中傷の裁判で自分で証拠を出す方法|証拠説明書の書き方を解説

発信者情報開示によって投稿者を特定し、いよいよ損害賠償請求の裁判を自分で起こそうというとき、多くの方が最初につまずくのが「証拠の出し方」です。スクリーンショットも開示決定書も手元にあるのに、それを裁判所にどう提出すればよいのかがわからない——訴状の書き方を解説した情報は多くても、証拠の提出方法まで説明したものは意外に見当たらないためです。

この記事では、ネット誹謗中傷の民事裁判を本人で進める方に向けて、甲号証の付け方、証拠説明書の記載事項、そして2026年5月21日施行の改正民事訴訟法で証拠の出し方がどう変わったのかを、横浜の弁護士が解説します。

誹謗中傷の裁判で「証拠」はどのように提出するのか

文書を証拠として提出することを「書証(しょしょう)」といい、書証の申出は、原則として文書を提出する方法で行います(民事訴訟法219条)。契約書や診断書のほか、投稿画面を印刷したものも含まれます。

重要なのは、文書をただ束ねて出せばよいわけではないという点です。民事訴訟規則137条1項は、文書の記載から明らかな場合を除き、文書の標目、作成者及び立証趣旨を明らかにした「証拠説明書」の提出を求めています。誰が作った書類で、何を証明するために出されたのかが一覧でわからなければ、裁判所は証拠の位置づけを把握できないためです。本人訴訟で用意するものは、次の3点です。

  • 証拠となる文書そのもの(写し)
  • 証拠説明書
  • 期日に持参する原本(原本を持っている場合)

2026年5月21日から変わった証拠提出のルール

2026年5月21日、民事訴訟手続を全面的にデジタル化する改正民事訴訟法・改正民事訴訟規則が施行されました。裁判所の説明によれば、この改正により誰でも、裁判所のシステム(mints)を通じてオンラインで訴えを提起し、書面や証拠を提出できるようになっています(改正民事訴訟法132条の10第1項)。訴訟代理人にはオンラインによる手続が義務づけられていますが(同法132条の11第1項1号)、本人が訴訟を追行する場合は電子・紙のいずれも可能です。

1. 書証の写しをPDFでオンライン提出できる

従来どおり紙の文書を提出することもできますが、書証の写しに代わる画像情報(PDF形式)をオンラインで提出することもできるようになりました。投稿のスクリーンショットのように、もともとデータで保有している証拠との相性はよいといえます。

2. 電磁的記録そのものを証拠調べの対象にできる

改正法では、新たに「電磁的記録に記録された情報の内容に係る証拠調べ」の規定が設けられました。この申出をする場合はあらかじめ電磁的記録の複製を提出する必要があり、ファイル形式は原則としてPDF・MP4・MP3・JPEG・PNGとされています。動画や音声を伴う誹謗中傷では、この規定の活用が考えられます。

3. 予納郵券が不要になった

申立手数料は、収入印紙の貼付ではなくペイジーによる現金納付が原則となり、送達のための郵便費用(予納郵券)は申立手数料に一本化され、別に納める必要がなくなりました。手数料は書面申立てより電子申立てのほうが低額です。

請求額(訴額)書面申立て電子申立て
30万円5,500円4,400円
100万円12,500円11,400円

※裁判所「手数料額早見表」による。被告が2名以上の場合、1名増えるごとに2,000円が加算されます。

全面施行前に提起された訴えは、引き続き書面により審理・送達が行われます。係属中の事件では担当書記官に取扱いを確認してください。

甲号証の付け方——番号と枝番のルール

証拠には、誰が提出したかによって符号を付けます。原告が提出する証拠は「甲」、被告が提出する証拠は「乙」です。誹謗中傷の被害者として損害賠償を請求する側は原告になりますので、「甲第1号証」「甲第2号証」のように番号を振っていきます。

裁判所の案内では、物理的に1個の文書を単位として、提出する順に番号を付けるとされています。関連する文書には枝番号(甲第1号証の1、同の2……)を付けることができ、同じスレッド上の複数の投稿をまとめる使い方が考えられます。提出する写しの右上などの余白には「甲第1号証」と記載します。

証拠説明書の書き方(記載例つき)

証拠説明書には、裁判所の案内によれば次の項目を記載します。

  • 符号及び番号(枝番を含む)
  • 文書の標目(表題。表題がない文書は「『○○』で始まる文書」等と特定する)
  • 文書の作成者
  • 作成年月日
  • 原本又は写しの別
  • 立証趣旨(その証拠で何を証明しようとするのか)

誹謗中傷の損害賠償請求訴訟であれば、次のような記載になります(日付・作成者は例示です)。

号証標目作成者作成年月日原本/写し立証趣旨
甲1投稿画面の写し原告2026年◯月◯日原本被告が本件各投稿を行った事実及びその内容
甲2発信者情報開示命令申立事件の決定書東京地方裁判所2026年◯月◯日写し本件投稿の発信者情報が開示された経緯
甲3診断書◯◯医院医師◯◯2026年◯月◯日原本原告が本件各投稿により精神的苦痛を受けた事実
甲4請求書◯◯法律事務所2026年◯月◯日原本原告が発信者の特定に要した費用の額

「原本」と記載した文書は、期日に必ず原本を持参する必要があります。コピーしかない書類まで「原本」と書くと、期日で原本を示せず、成立の真正について争われるきっかけになりかねません。

立証趣旨は、証拠説明書のなかで最も手間のかかる部分です。「投稿の内容」といった漠然とした書き方ではなく、訴状で主張した事実のどれを裏づける証拠なのかが対応する形で書きます。訴状の組み立て方は誹謗中傷の損害賠償を自分で提訴する方法(訴状の書き方と流れ)をご覧ください。

誹謗中傷事件で提出する主な証拠

立証したい事項主な証拠
投稿の存在と内容投稿画面の写し(URL・投稿日時・アカウント名入り)
投稿者が被告であること発信者情報開示命令の決定書、プロバイダからの開示回答書
自分のことだとわかること(同定可能性)実名・勤務先・写真等が記載された投稿、周囲から指摘された経緯
精神的損害診断書、通院履歴、陳述書
調査費用・削除費用弁護士費用の請求書・領収書、委任契約書、振込明細

投稿の記録は、時間の経過とともに削除されて取得できなくなることがあります。保存の方法は誹謗中傷の証拠保全(スクリーンショットの正しい撮り方)、請求できる損害の範囲はネット誹謗中傷で請求できる損害で解説しています。

陳述書の作り方と注意点

本人訴訟でとくに重要になるのが「陳述書」です。当事者や関係者の言い分をまとめ本人が署名した書面で、実務上は書証として提出し、原告が出すものには甲号証の番号を付けます。投稿を目にしたときの状況、周囲の反応、生活や仕事への影響といった、書類だけでは表れない事情を裁判所に伝える役割を担います。

  • 時系列に沿って、日付を特定しながら記載する
  • 他の証拠と矛盾しないようにする(診断書の日付と体調不良の時期など)
  • 感情的な表現よりも、具体的な出来事を淡々と記載する
  • 末尾に作成年月日を記載し、署名する

なお、陳述書を提出しても本人尋問が不要になるわけではなく、争点が残れば、その内容について法廷で質問を受けます。

本人で証拠を出すときにつまずきやすい点

第一に、立証趣旨と争点の対応づけです。被告から「投稿したのは自分ではない」「意見の表明にすぎない」といった反論が出れば争点は移っていきます。その都度どの証拠でどの争点を潰すのかを組み替える判断は、訴訟の見通しがなければ難しい作業です。

第二に、証拠の不足に気づけないという問題です。投稿の写しはそろっていても同定可能性を裏づける資料が抜けており、判決の段階で初めて足りなかったとわかることは起こりえます。裁判所は本人サポートの態勢を設けていますが、書記官が案内できるのは手続の進め方までで、証拠の中身や主張の当否の助言は受けられません。

弁護士に依頼した場合は、証拠の選別と立証趣旨の設計、被告の反論を想定した追加立証までを一貫して組み立てます。開示請求の段階から依頼していれば、開示手続で得た資料をそのまま損害賠償請求の証拠に活用できる利点もあります。横浜の当事務所の発信者情報開示請求・削除請求への対応のページでは開示から損害賠償請求までの流れを、弁護士費用のページでは費用の考え方をまとめています。

よくある質問

スクリーンショットだけで証拠になりますか。

書証として提出できますが、投稿日時・URL・アカウント名が写り込んでいないと、いつ誰がどこに投稿したものかを裁判所に示せません。画面全体を撮影し、URLバーと日時が確認できる形にしておくことが望まれます。

証拠説明書を出さないとどうなりますか。

民事訴訟規則137条1項は、文書の記載から明らかな場合を除き、文書の標目・作成者・立証趣旨を明らかにした証拠説明書の提出を求めています。直ちに証拠が却下されるわけではありませんが、補正を促されて審理が遅れることがあり、何を立証したい証拠なのかが伝わらないまま判断されるおそれもあります。

開示請求にかかった弁護士費用も証拠で示せますか。

発信者情報開示に要した費用を損害として請求する場合は、その支出を裏づける請求書・領収書・委任契約書等を書証として提出します。もっとも、どの範囲が賠償の対象になるかは事案ごとに判断されるため、金額の相当性を説明できる資料もあわせて準備しておくことが重要です。

まとめ

誹謗中傷の裁判を自分で進める場合、証拠の提出は「文書の写し+証拠説明書」が基本形です。原告の証拠には甲号証の番号を順に付け、証拠説明書には符号・標目・作成者・作成年月日・原本または写しの別・立証趣旨を記載します。2026年5月21日の全面デジタル化で、本人でもPDFによる電子提出ができるようになり、予納郵券も不要になりました。

他方で、どの証拠をどの主張のために出すのかという判断は、デジタル化で簡単になるものではありません。証拠がそろっているか不安がある、予想外の反論が出て対応に迷っている——そうした段階でご相談いただければ、残された手段を整理してお示しできます。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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