不倫慰謝料の内容証明を無視されたら?請求する側の次の手段を解説
不倫慰謝料の内容証明を無視されたら?請求する側の次の手段を解説
執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月16日 最終更新日:2026年10月16日
配偶者の不倫相手に慰謝料を請求する内容証明郵便を送ったのに、回答期限を過ぎても何の連絡もない。電話にも出ず、メッセージも既読にならない。そのような状況で「このまま泣き寝入りするしかないのか」「もう一度送ればよいのか」と悩んでいる方は少なくありません。
この記事では、不倫慰謝料の内容証明を無視された場合に、請求する側がまず確認すべきこと、時効との関係で特に注意すべき点、そして再請求・調停・支払督促・訴訟という次の手段の選び方を、横浜の弁護士が解説します。
結論として、内容証明が無視されても慰謝料を請求する権利がなくなるわけではありません。ただし、内容証明(催告)による時効の完成猶予は6か月間の一度きりで、内容証明を送り直しても時効は延びないため、時効が迫っている場合は裁判所の手続(訴訟・支払督促など)に進む必要があります。相手が争う見込みがあるかどうかで、選ぶべき手続は変わります。
内容証明を無視されても慰謝料請求権は消えない
内容証明郵便は、「いつ、どのような内容の文書を、誰から誰に送ったか」を郵便局が証明する制度にすぎず、それ自体に相手へ支払いを強制する効力はありません。
一方で、相手が無視したからといって、不貞行為による損害賠償請求権(民法709条・710条)が消えるわけではありません。次の手段は、裁判所を通じた手続に移ることが中心になります。
内容証明の作り方や送り方については、不貞慰謝料の内容証明を自分で作成・送付する方法で詳しく解説しています。
まず確認すべきこと|本当に相手に届いているか
「無視された」と感じたら、最初に確認すべきなのは、内容証明が相手に到達しているかです。配達証明を付けていれば、配達された日を書面で確認できます。返送されてきた場合は、封筒に貼られた付箋などで理由を確認します。
| 状況 | 考え方 | 次の対応の例 |
|---|---|---|
| 配達済み(配達証明あり) | 到達しており、相手は内容を知り得る状態 | 手続の選択へ進む |
| 受取拒絶で返送 | 正当な理由なく受領を拒んだ場合、到達したとみなされることがある(民法97条2項) | 普通郵便等での再送、訴訟手続の検討 |
| 不在・保管期間経過で返送 | 到達が認められるかは事情によって判断が分かれる | 普通郵便・特定記録郵便等での再送 |
| あて所に尋ねあたらず | 住所が誤っているか、転居している可能性 | 住所の調査 |
そもそも相手の正確な住所や氏名が分からない場合は、弁護士会照会(弁護士法23条の2)などで調査できる場合があります。連絡先がLINEしか分からない相手への対応については、LINEしか知らない相手の特定(弁護士会照会)のページで案内しています。
時効との関係|内容証明の再送では時効は延びない
請求する側が最も注意すべきなのが時効です。不貞慰謝料の請求権は、損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき、または不法行為の時から20年間行使しないときに、時効によって消滅します(民法724条)。
内容証明による請求は、法律上の「催告」にあたり、催告があった時から6か月を経過するまでの間は時効が完成しません(民法150条1項)。しかし、催告によって時効の完成が猶予されている間にした再度の催告には、完成猶予の効力がありません(同条2項)。つまり、内容証明を何通送っても、時効を先延ばしできるのは最初の1回の6か月だけです。
時効の止め方全般については、不貞慰謝料の時効を止める方法|完成猶予と更新もあわせてご覧ください。
次の手段①|再度の連絡・交渉
時効まで十分な余裕がある場合は、再度の連絡を試みる余地があります。たとえば、本人が弁護士に依頼したうえで、弁護士名義の書面で改めて請求すると、相手が事態を深刻に受け止めて連絡してくることがあります。
ただし、相手の職場に押しかける、家族や勤務先に不倫を知らせると告げるといった方法は、名誉毀損や脅迫などとして逆に責任を問われるおそれがあるため、避けるべきです。
次の手段②|民事調停・支払督促・訴訟の比較
相手が無視を続ける場合、裁判所の手続を利用することになります。主な選択肢の特徴は次のとおりです。
| 手続 | 特徴 | 無視が続く相手への向き不向き |
|---|---|---|
| 民事調停 | 簡易裁判所で調停委員を交えて話し合う。合意できれば調停調書が作成される | 相手が出頭しなければ不成立で終わるため、無視を続ける相手には不向き |
| 支払督促 | 書類審査のみで裁判所書記官が支払督促を発する。相手の住所地の簡易裁判所に申し立てる | 相手が異議を出さなければ仮執行宣言を得て強制執行できる。異議が出ると訴訟へ移行 |
| 少額訴訟 | 60万円以下の金銭請求で、原則1回の期日で審理する(民事訴訟法368条) | 請求額が限られる。相手の申述で通常訴訟に移行することがある |
| 通常訴訟 | 140万円以下は簡易裁判所、超える場合は地方裁判所(裁判所法33条1項1号) | 相手が欠席を続ければ、請求を認める判決が出る可能性がある |
支払督促が向いているケース
裁判所の案内によれば、支払督促は相手方が受け取ってから2週間以内に督促異議を申し立てなければ、債権者の申立てにより仮執行宣言が付され、強制執行を申し立てられるようになります。不貞の事実を相手が争わず、単に支払いを先延ばししているような事案では、簡便な手段といえます。手続の詳細は不貞慰謝料の支払督促を自分で申し立てる方法で解説しています。
訴訟が向いているケース
相手が不貞の事実や「既婚者とは知らなかった」などと争う可能性がある場合、支払督促に異議が出されれば結局訴訟に移行します。この場合は最初から訴訟を選ぶ方が、時間と手間を抑えられることがあります。訴訟は、不法行為があった地(民事訴訟法5条9号)や、義務履行地としての請求する側の住所地(同条1号、民法484条1項)を管轄する裁判所に提起できる場合があり、横浜にお住まいであれば横浜の裁判所を利用できる可能性があります。
無視を続ける相手に判決が出た後の流れ
訴状の送達を受けた被告が答弁書を提出せず、口頭弁論期日にも欠席した場合、原告の主張した事実を自白したものとみなされ(民事訴訟法159条3項・1項)、請求を認める判決が出る可能性があります。判決が確定し、または仮執行宣言が付されれば、相手の給与や預金などの差押えを申し立てることができます。
もっとも、相手に財産がなかったり、勤務先や口座が分からなかったりすると、判決を得ても回収できないことがあります。請求額や費用とのバランスを踏まえて手続を選ぶことが大切です。不貞慰謝料請求の進め方全体については、不貞慰謝料請求の取扱分野ページもご覧ください。
よくある質問
内容証明を無視されたら、もう一度内容証明を送れば時効は延びますか?
延びません。催告による時効の完成猶予は6か月間で、その間にした再度の催告には完成猶予の効力がないと定められています(民法150条2項)。時効が迫っている場合は、6か月以内に訴訟提起や支払督促など裁判所の手続をとる必要があります。
相手が内容証明を受け取らずに返送されてきた場合はどうなりますか?
受取拒絶か不在による保管期間経過かで評価が異なります。正当な理由なく受け取りを拒んだ場合は到達したとみなされることがあります(民法97条2項)。ただし確実ではないため、普通郵便など別の方法で同じ内容を送り直したり、訴訟手続に進んだりすることを検討します。
支払督促と訴訟はどちらがよいですか?
相手が争ってこないと見込まれる場合は、書類審査のみで進む支払督促が簡便です。ただし相手が督促異議を申し立てると通常訴訟に移行し、申立先は相手の住所地の簡易裁判所に限られます。相手が不貞の事実や金額を争いそうな場合は、最初から訴訟を選ぶ方が結果的に早いことがあります。
相手が無視を続けて裁判にも出てこなかったらどうなりますか?
訴状の送達を受けた被告が答弁書を出さず期日にも欠席した場合、原告の主張を認めたものとみなされ、請求を認める判決が出る可能性があります。判決が確定すれば、給与や預金の差押えなどの強制執行を申し立てることができます。
まとめ|無視されたら「時効」と「手続の選択」を早めに検討する
- 内容証明を無視されても、不貞慰謝料を請求する権利がなくなるわけではない
- まず配達証明や返送理由を確認し、相手に到達しているかを確かめる
- 内容証明(催告)による時効の完成猶予は6か月の一度きりで、再送しても延びない
- 相手が争わない見込みなら支払督促、争う見込みなら訴訟が選択肢になる
- 判決を得ても、相手の財産が分からなければ回収できない場合がある
相手の反応がない状況では、どの手続を選ぶか、いつまでに動くべきかの判断が結果を大きく左右します。弁護士に依頼すれば、時効の管理、相手の住所や財産の調査、訴訟や強制執行までを一貫して任せることができ、相手方が弁護士からの書面を受けて交渉に応じることもあります。
内容証明を無視されてお困りの方へ
タングラム法律事務所では、不貞慰謝料の請求・減額交渉について、横浜を中心に多数のご相談をお受けしております。相手が応じない場合の訴訟・支払督促・強制執行まで、状況に合わせた進め方をご提案します。
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