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侮辱罪の罰金はいくら?法務省の統計と検討会報告書から見る実態

侮辱罪の罰金はいくら?法務省の統計と検討会報告書から見る実態

侮辱罪の罰金はいくら?法務省の統計と検討会報告書から見る実態

侮辱罪の罰金はいくら?法務省の統計と検討会報告書から見る実態

侮辱罪の罰金はいくら?法務省の統計と検討会報告書から見る実態

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月16日 最終更新日:2026年10月16日

SNSや掲示板で「バカ」「気持ち悪い」「消えろ」といった言葉を繰り返し浴びせられ、「侮辱罪で訴えたら、相手はどのくらいの罰を受けるのだろう」と調べている方は少なくありません。2022年に侮辱罪が厳罰化されたことは広く報じられましたが、実際にどの程度の刑が科されているのかは、あまり知られていません。

この記事では、法務省が設置した「侮辱罪の施行状況に関する刑事検討会」の公表資料(統計・事例集)と、2026年2月に取りまとめられた報告書をもとに、侮辱罪の罰金の実態、不起訴の割合、刑事告訴と損害賠償請求の違いを、横浜の弁護士がわかりやすく解説します。

結論として、ネット上の侮辱で有罪となった事案の約7割は罰金10万円以上20万円未満で、上限の罰金30万円や科料にとどまる例もあり、確定事例に拘禁刑は見当たりません。他方で、ネット事案の半数超は不起訴となっており、また罰金は国に納められるため、被害の回復には刑事告訴とは別に損害賠償請求を検討する必要があります。

侮辱罪の法定刑と2022年の厳罰化

侮辱罪は、事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した場合に成立する犯罪です(刑法231条)。現在の法定刑は「一年以下の拘禁刑若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」と定められています。

2022年7月7日に施行された刑法改正の前は、侮辱罪の法定刑は拘留(30日未満の身体拘束)または科料(1万円未満の金銭罰)のみでした。インターネット上の誹謗中傷が深刻な社会問題となったことを受けて、懲役・禁錮(2025年6月1日からは拘禁刑に一本化)と罰金が加えられ、公訴時効も1年から3年に延びました。厳罰化の経緯や刑罰の種類は、侮辱罪の刑罰と2022年厳罰化の解説記事で詳しく紹介しています。

刑の種類内容
拘禁刑1年以下(2022年改正で追加)
罰金30万円以下(2022年改正で追加)
拘留1日以上30日未満の身体拘束
科料1,000円以上1万円未満の金銭罰

法務省の検討会とは|厳罰化から3年後の検証

2022年の改正法の附則では、施行後3年を経過したときに施行状況を検証することが定められていました。これを受けて法務省は「侮辱罪の施行状況に関する刑事検討会」を設置し、2025年9月12日から2026年2月9日まで計7回の会議を開きました。検討会では、侮辱罪がインターネット上の誹謗中傷に適切に対処できているか、表現の自由を不当に制約していないかが議論され、第1回会議では事件処理状況の統計と、確定した173件の事例集が配布資料として公表されています。

ネットの侮辱罪の罰金はいくらか|科刑状況の統計

検討会資料「侮辱罪の事件処理状況」では、2022年7月7日以降に犯行に及び、侮辱罪のみで処断されて2025年6月30日までに裁判が確定した人(延べ人員)について、科された刑の内訳が示されています。

科された刑インターネット事案(104人)非インターネット事案(70人)
科料19人(18%)37人(53%)
罰金10万円未満3人(3%)2人(3%)
罰金10万円以上20万円未満74人(71%)30人(43%)
罰金20万円以上30万円未満3人(3%)1人(1%)
罰金30万円5人(5%)0人

インターネット事案では罰金10万円以上20万円未満が約7割を占め、対面での暴言など非インターネット事案に比べて重い傾向がうかがえます。事例集を見ると、掲示板に被害者を名指しして中傷した事案で罰金10万円、罵倒する語句を長く連ねた書き込みで公判請求のうえ罰金30万円とされた例などが掲載されています。一方、173件の事例はすべて罰金または科料で、取りまとめ報告書も「自由刑はほとんど利用されていない状況にある」と述べています。

統計は延べ人員で集計されたもので、侮辱罪と他の罪(名誉毀損罪・脅迫罪など)が併せて処断された事案は含まれていません。個別の事案でどの程度の刑となるかは、表現の内容・回数・期間などによって異なります。

ネット事案の半数超は不起訴|処理状況と処理までの期間

同じ資料によると、侮辱罪のみで処理されたインターネット事案(延べ305人)の内訳は、公判請求6人(2%)、略式命令請求105人(34%)、家庭裁判所送致29人(10%)、不起訴165人(54%)でした。起訴された事案の大半は、書面審理で罰金・科料を科す略式手続によるものです。

また、確定したインターネット事案について犯行から事件処理までの期間を見ると、6か月以内は15%にとどまり、1年を超えたものが半数近くを占めています。投稿者の特定や証拠の確認に時間を要することがうかがえ、告訴をしてもすぐに結果が出るとは限らない点は理解しておく必要があります。警察での対応が進まない場合については、被害届が受理されない理由と対処法もご参照ください。

検討会の結論|法定刑の引上げは見送り

2026年2月の取りまとめ報告書は、改正法について「インターネット上の誹謗中傷対策として一定の効果があったと評価することができる」としました。そのうえで、法定刑の更なる引上げ、インターネット上の誹謗中傷を重く処罰する加重類型の新設、公然性のない誹謗中傷の処罰については、いずれも直ちに更なる措置を講じるべきとの結論には至りませんでした。

あわせて報告書は、侮辱罪の適用が改正の趣旨と異なる方向に拡大して表現の自由の不当な制約となるおそれにも触れ、状況を注視する必要があるとしています。政府に対しては、民事上・行政上の施策の効果も踏まえて、刑事上の在るべき対応を不断に検討するよう求めています。

刑事告訴と損害賠償請求は別の手続

侮辱罪で相手が罰金を科されても、その罰金は国に納付されるもので、被害者には支払われません。慰謝料などの支払いを求めるには、刑事手続とは別に民事上の損害賠償請求を行う必要があります。

  • 刑事告訴:相手の処罰を求める手続。侮辱罪は親告罪のため告訴が必要で(刑法232条1項)、犯人を知った日から6か月以内という期限があります(刑事訴訟法235条)。手続の流れは誹謗中傷で刑事告訴する方法で解説しています。
  • 損害賠償請求:精神的苦痛などの賠償を求める手続。匿名の投稿者に請求するには、まず発信者情報開示請求で氏名・住所を特定する必要があります。

刑事上は侮辱罪に当たるか微妙な表現でも、民事上は名誉感情の侵害として違法と判断される場合があり、反対に刑事事件として立件されなくても損害賠償が認められることもあります。どちらの手続を優先するか、両方を並行して進めるかは、投稿の内容や証拠の状況を踏まえて判断することになります。投稿者の特定から請求までの流れは、当事務所の発信者情報開示請求・削除請求のページで詳しくご案内しています。SNSのなりすましを伴う誹謗中傷については、SNSなりすまし・誹謗中傷への対応ページもご覧ください。

よくある質問

侮辱罪で告訴すれば、相手は必ず処罰されますか?

必ず処罰されるわけではありません。法務省の検討会資料によれば、2022年7月7日以降の犯行で2025年6月30日までに侮辱罪のみで処理されたインターネット事案(延べ305人)のうち、54%にあたる165人が不起訴でした。起訴されるかどうかは、表現の悪質性、投稿の回数や期間、反省や示談の有無などを踏まえて検察官が判断します。

侮辱罪の罰金は被害者に支払われますか?

支払われません。罰金や科料は刑罰として国に納付されるもので、被害者の損害を填補するものではありません。慰謝料などの金銭の支払いを求めるには、刑事手続とは別に、民事上の損害賠償請求(示談交渉や訴訟)を行う必要があります。

侮辱罪で刑務所に入ることはありますか?

法定刑には1年以下の拘禁刑が含まれていますが、法務省が公表した事例集(侮辱罪のみで処断され2025年6月30日までに確定した173件)はすべて罰金または科料であり、2026年2月の取りまとめ報告書も「自由刑はほとんど利用されていない状況にある」としています。もっとも、個別の事案でどのような刑が科されるかは事案によります。

侮辱罪の告訴に期限はありますか?

あります。侮辱罪は親告罪であり、告訴は犯人を知った日から6か月を経過するとできなくなります(刑事訴訟法235条)。また、公訴時効は3年です(刑事訴訟法250条2項6号)。匿名の投稿者を発信者情報開示請求で特定した場合は、特定できた時点から6か月の期間を意識する必要があります。

まとめ

  • 侮辱罪の法定刑は1年以下の拘禁刑・30万円以下の罰金・拘留・科料
  • 確定したネット事案104人のうち約7割が罰金10万円以上20万円未満、上限の30万円は5人
  • 確定事例に拘禁刑は見当たらず、ネット事案の半数超(54%)は不起訴
  • 2026年2月の検討会報告書は、法定刑の更なる引上げ等を直ちに行う結論には至らなかった
  • 罰金は被害者に支払われないため、被害回復には損害賠償請求を別途検討する

侮辱的な投稿への対応は、刑事告訴だけでなく、投稿の削除、発信者情報開示請求による投稿者の特定、損害賠償請求を組み合わせて考えることが大切です。告訴期間や開示請求に必要なログの保存期間には限りがあるため、早い段階で横浜・神奈川をはじめネット問題に取り組む弁護士に相談し、事案に合った手続を選ぶことをおすすめします。

ネット上の侮辱・誹謗中傷でお悩みの方へ

タングラム法律事務所では、SNS・匿名掲示板等の投稿について、削除請求・発信者情報開示請求の実績を多数有しております。刑事告訴を視野に入れたご相談も含め、投稿者の特定から損害賠償請求まで一貫してサポートいたします。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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