ゲームソフトのトレント共有と著作権|プログラムの著作物と意見照会
ゲームソフトのトレント共有と著作権|プログラムの著作物と意見照会
執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月16日 最終更新日:2026年10月16日
BitTorrent(トレント)を理由とする意見照会書を確認したところ、対象は映画やアニメではなく、パソコン用やゲーム機用のゲームソフトのファイルだった――。「持っているゲームのバックアップのつもりだった」「もう販売されていない古いゲームなのに」「クラック版を入れただけで、共有しているつもりはなかった」と、戸惑いながらご相談に来られる方もいます。
この記事では、ゲームソフトにどのような権利が認められているのか(プログラムの著作物・映画の著作物)、BitTorrentでの共有が問題とされる理由、「バックアップ」「販売終了」「クラック版」といった事情が法的にどう評価されるのか、そして照会書を受け取ったときの確認点を、発信者側の立場から解説します。
結論として、ゲームソフトは、プログラムの著作物として保護されるほか、映像・音楽・キャラクターなどを含む全体が映画の著作物として扱われることもあり、BitTorrentで他の利用者が取得できる状態に置けば、送信可能化権の侵害を理由に開示請求を受ける可能性があります。正規に購入したソフトのバックアップや、販売が終了した古いゲームであっても、それだけで共有が正当化されるわけではありません。照会書に記載された権利の種類・ファイルの内容・発信日時を確認し、事案に即して回答方針を検討することが大切です。
ゲームソフトにはどのような著作権があるのか
ゲームソフトには、性質の異なる複数の保護が重なっているのが通常です。
| 保護の対象 | 内容 | 主な根拠 |
|---|---|---|
| プログラムの著作物 | ゲームを動かすための指令の組合せとして表現されたもの | 著作権法2条1項10号の2、10条1項9号 |
| 映画の著作物 | 映像が連続して表示されるゲーム全体が、映画の効果に類似する視聴覚的効果を生じさせるものとして扱われることがある | 著作権法2条3項、10条1項7号 |
| 個々の素材 | キャラクターの絵、BGM、シナリオの文章など | 美術・音楽・言語の著作物等 |
著作権法は、「プログラム」を「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」と定義し(2条1項10号の2)、プログラムの著作物を著作物の例として挙げています(10条1項9号)。なお、保護が及ぶのは表現であり、プログラム言語・規約・解法そのものには及びません(10条3項)。
また、映画の著作物には「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物」が含まれます(2条3項)。最高裁判所平成14年4月25日第一小法廷判決(平成13年(受)第952号等)は、家庭用テレビゲーム機用のソフトが映画の著作物に当たることを前提に、その複製物の譲渡に関する権利の範囲を判断しました。照会書の「権利の種類」欄に、プログラムの著作物と書かれている場合も、映画の著作物と書かれている場合もあるのは、このためです。
職務上作成されたプログラムは、別段の定めがない限り法人等が著作者となるため(15条2項)、照会者は開発会社や販売会社であることが一般的です。
BitTorrentでのゲーム共有が問題とされる理由
著作権者は、著作物を公衆送信する権利を専有し、自動公衆送信の場合にはその送信可能化も含まれます(23条1項)。送信可能化とは、インターネットに接続された機器にデータを記録するなどして、公衆からの求めに応じて自動的に送信し得る状態にすることをいいます(2条1項9号の5)。
ゲームのファイルは容量が大きく、BitTorrentでダウンロードを完了するまでに長い時間がかかることがあります。BitTorrentのクライアントソフトは、通常、ダウンロード中であっても取得済みのデータの断片(ピース)を、同じファイルを求める他の利用者に送信する仕組みになっているため、その間ずっと送信可能化の状態が続いていたと評価される可能性があります。ゲームのインストール用ファイル、ディスクイメージ、いわゆるリパック版など、ファイルの形式が違っても、この点は基本的に変わりません。
なお、違法にアップロードされたものと知りながらプログラムを含む著作物をダウンロードする行為も、令和2年の改正(2021年1月1日施行)により、一定の場合は私的使用目的の複製の例外から除かれています(30条1項4号。ただし、重大な過失により知らなかった場合は含まれません〔同条2項〕)。もっとも、BitTorrentの開示請求で主に問題とされるのは、ダウンロードではなく送信可能化のほうです。
「持っているゲームのバックアップ」は通用するか
著作権法47条の3第1項は、プログラムの著作物の複製物の所有者が、自らコンピュータで実行するために必要と認められる限度で複製することを認めています。いわゆるバックアップの根拠となる規定です。
しかし、この規定が認めるのは、所有者が自ら実行するための複製に限られます。BitTorrentでファイルを他の利用者が取得できる状態に置くことは、自分で実行するための複製とはいえず、送信可能化の問題は残ります。また、正規に購入したソフトを持っていることは、BitTorrentで入手したファイルの共有を正当化する事情にはなりにくいと考えられます。正規購入と私的複製の関係は「正規に購入した作品でもトレント共有は侵害か|私的複製の範囲と意見照会」で詳しく解説しています。
中古ソフトの売買について前記の最高裁判決が示したのは、適法に譲渡された複製物を再び譲渡する場面での権利の範囲であり、インターネット上での送信可能化に関するものではありません。「中古で買ったソフトだから自由に扱える」とは言えない点にも注意が必要です。
クラック版・ライセンス認証の回避という別の論点
BitTorrentで流通するゲームのファイルには、正規のライセンス認証や複製防止の仕組みを無効化する改変(いわゆるクラック)が加えられているものがあります。
著作権法は、技術的利用制限手段(ライセンス認証のように、権利者の意思に基づかずにプログラムを実行等することを制限する仕組み。2条1項21号)の回避を行う行為を、著作権者等の利益を不当に害しない場合を除き、著作権等を侵害する行為とみなしています(113条6項)。また、技術的保護手段や技術的利用制限手段の回避を機能とする指令符号を公衆送信する行為なども、侵害とみなされます(同条7項)。
クラック版の共有は、送信可能化の問題に加えて、こうした論点が付け加わる可能性があります。「改変済みのファイルを入れただけで、自分で回避したわけではない」といった事情は、事案によって評価が分かれ得るため、回答書で安易に説明しないほうがよい場面もあります。
販売終了した古いゲームなら問題にならないのか
販売や配信が終了しているゲームであっても、著作権が消滅しているとは限りません。映画の著作物の著作権は、原則として公表後70年を経過するまで存続します(54条1項)。家庭用ゲーム機やパソコン用のゲームの歴史を考えると、市販のゲームソフトの多くは、まだ保護期間内にあると考えられます。
「入手できないゲームだから権利者に損害はない」という考え方も、侵害の成否とは別の問題であり、侵害自体を否定する理由にはなりにくいと考えられます。
会社や仕事用のパソコンで使っていた場合
違法に複製されたプログラムを業務上コンピュータで使用する行為は、その複製物の使用の権原を取得した時に違法な複製物であることを知っていた場合に限り、著作権の侵害とみなされます(113条5項)。BitTorrentで入手したソフトを仕事用のパソコンで使っていた場合には、送信可能化とは別に、この点が問題となる可能性があります。業務での使用が疑われる事情がある場合は、回答の内容を特に慎重に検討する必要があります。
ゲームの意見照会書が届いたときの確認点
ゲームを対象とする照会書を受け取ったら、まず次の点を確認してください。
- 照会者(請求者)と、主張されている権利の種類(プログラムの著作物か、映画の著作物か)
- 対象のファイル名・ハッシュ値と、記載されたゲームの内容(本編か、追加コンテンツか、改変ファイルか)
- 発信日時・IPアドレス・ポート番号と、その時間帯に回線を利用できた人
- 回答期限と、回答書の提出方法
添付資料の読み方は「トレント意見照会書の添付資料の読み方|ハッシュ値・IPアドレスの確認」で整理しています。権利者側の調査システムの信用性は、作品の種類を問わず争点となり得るもので、裁判例の中には、調査システムの記録の正確性が立証されていないとして開示請求を棄却したもの(東京地方裁判所令和5年3月24日判決・令和3年(ワ)第32897号)もあります。
刑事責任が心配な方は「トレントで逮捕される可能性はあるのか|著作権法の罰則と親告罪」もご覧ください。いずれにしても、「バックアップだった」「古いゲームだから」といった説明を回答書に書くと、利用の事実を認めたものと受け取られ、後の交渉で不利になるおそれがあります。何を書き、何を書かないかは、事案ごとの判断が必要です。横浜の当事務所の意見照会段階での考え方は意見照会対応のページでもご紹介しています。BitTorrentの意見照会書への具体的な対応の流れや弁護士費用は、BitTorrent著作権侵害の意見照会書が届いた方向けの特設ページでご案内しています。
よくある質問
ゲームのトレント共有で、なぜゲーム会社から意見照会が来るのですか。
ゲームソフトは、プログラムの著作物として保護されるほか、ゲーム全体が映画の著作物として扱われることもあり、その著作権者には送信可能化を含む公衆送信権(著作権法23条1項)があるためです。BitTorrentでゲームのファイルを他の利用者が取得できる状態に置くと、この権利の侵害を理由に開示請求がされることがあります。
正規に購入したゲームのバックアップのつもりでした。それでも侵害になりますか。
著作権法47条の3は、プログラムの複製物の所有者が自ら実行するために必要な限度での複製を認めていますが、BitTorrentで他の利用者が取得できる状態に置くことまでは認めていません。正規に購入していたことは、送信可能化の問題を解消する事情にはなりにくいと考えられます。
販売終了した古いゲームでも、開示請求の対象になりますか。
なり得ます。販売や配信の終了と著作権の存続は別の問題であり、映画の著作物の著作権は原則として公表後70年を経過するまで存続します(著作権法54条1項)。市販のゲームソフトの多くは、まだ保護期間内にあると考えられます。
クラック版のファイルだった場合、何か違いはありますか。
送信可能化の問題に加えて、ライセンス認証などの技術的利用制限手段の回避(著作権法113条6項)や、回避を機能とする指令符号の公衆送信(同条7項)が問題となる可能性があります。事案によって評価が分かれ得るため、回答書に記載する前に弁護士にご相談ください。
まとめ
ゲームソフトは、プログラムの著作物として、また映画の著作物として保護されることがあり、BitTorrentでの共有は送信可能化権の侵害を理由とする開示請求の対象となり得ます。バックアップ目的、販売終了、中古購入といった事情は、それだけで共有を正当化するものではなく、クラック版や業務上の使用では別の論点が加わる可能性もあります。
照会書に記載された権利の種類・ファイルの内容・発信日時を一つずつ確認したうえで、回答の方針を決めることが大切です。横浜の当事務所では、全国の方からのBitTorrent事案のご相談に、弁護士がオンラインで対応しています。
ゲームソフトの意見照会書が届いて戸惑っている方へ
タングラム法律事務所では、BitTorrent(トレント)による著作権侵害を理由とする意見照会書への対応から、開示後の損害賠償請求・示談交渉まで数多く取り扱っております。照会書と添付資料を確認し、対象のファイルや事情を伺ったうえで、回答の方針をご説明します。BitTorrentの意見照会に関するご相談に限り、オンライン(20分程度)で無料のご相談を承っています(その他の分野のご相談は対象外です)。
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