タングラム法律事務所

写真集・グラビアのトレント共有と著作権|写真の著作物と意見照会書

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写真集・グラビアのトレント共有と著作権|写真の著作物と意見照会書

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月22日 最終更新日:2026年10月22日

BitTorrent(トレント)を理由とする意見照会書の対象が、写真集やグラビアのファイルだった――。「写真に著作権があるのか」「動画ではなく静止画でも開示請求の対象になるのか」「照会者がカメラマンではなく出版社になっているのはなぜか」と疑問に思われる方は少なくありません。

この記事では、写真集・グラビア写真が著作権法上どのように保護されているのか、誰が権利者として照会者になり得るのか、写真集ファイル特有の論点(写真の枚数と著作物の数、保護期間など)、そして意見照会書を受け取ったときに確認すべき点を、発信者側の立場から解説します。

結論として、写真集やグラビア写真は「写真の著作物」として保護され、商業写真であっても著作物性が否定されるとは考えにくいため、「写真だから著作権侵害にならない」という主張は通りにくいといえます。照会者は撮影者のほか、権利の譲渡を受けた会社や出版権者である出版社であることもあるため、照会者の立場と対象ファイルの範囲を確認したうえで、回答の方針を決めることが大切です。

写真集・グラビアは「写真の著作物」として保護される

著作権法は、著作物の例として「写真の著作物」を挙げています(10条1項8号)。また、「写真の著作物」には「写真の製作方法に類似する方法を用いて表現される著作物を含む」とされており(2条4項)、フィルム写真に限らずデジタルカメラで撮影された写真も対象となります。

写真の創作性がどこに表れるかについて、知的財産高等裁判所は、写真は被写体の選択・組合せ・配置、構図・カメラアングルの設定、光線・陰影、背景などの多様な要素が組み合わさった表現であると述べたうえで、広告用に商品を撮影した写真についても著作物性を認めています(知財高判平成18年3月29日・平成17年(ネ)第10094号)。この裁判例は創作性の程度を「極めて低い」としつつも、写真をそのまま複製した行為を侵害と判断しました。

被写体のポーズや衣装、ロケーション、照明を作り込んで撮影されるグラビア写真や写真集は、商品写真と比べても撮影者の個性が表れやすいものです。そのうえ、BitTorrentでの共有はファイルをそのまま送信できる状態に置くものですから、「創作性が低いから侵害にならない」という主張が認められる場面は限られると考えられます。

照会者は誰か――撮影者・会社・出版社

写真集やグラビアの意見照会書では、照会者が個人の撮影者ではなく会社になっていることがよくあります。主な理由は次のとおりです。

照会者の立場権利の根拠確認したい点
撮影者本人写真の著作者としての著作権撮影者として表示されている者との一致
制作会社・事務所など著作権の譲渡(61条1項)、職務上の撮影による法人著作(15条1項)譲渡や法人著作の根拠が添付資料で示されているか
出版社(電子書籍の写真集など)出版権の設定(79条1項。電子出版を含む)著作権者か出版権者か、どの範囲の権利を主張しているか

電子書籍として配信される写真集では、出版社が出版権者として権利を主張することがあります。出版権は設定行為で定める範囲で認められる権利であるため、照会者がどの立場で、どの範囲の権利を主張しているのかを添付資料で確認しておくことが、後の示談で当事者と清算の範囲を考える際にも役立ちます。

グラビア動画(イメージビデオ)は「映画の著作物」

グラビアでも、静止画ではなく動画の作品は、映画の効果に類似する視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され物に固定されていれば、「映画の著作物」として扱われます(2条3項・10条1項7号)。写真集と動画がセットになったファイルでは、写真と映像の双方について権利が主張される可能性があります。

被写体のモデルの権利はどうなるのか

写真の著作権は撮影者などに帰属し、被写体となったモデルの方が持つのは、著作権ではなく肖像権やいわゆるパブリシティ権です。最高裁は、氏名・肖像等を無断で使用する行為は、肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する場合など、「専ら氏名,肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合」にパブリシティ権を侵害し違法となると判断しています(最判平成24年2月2日・民集66巻2号89頁)。

もっとも、BitTorrentの意見照会書では、写真の著作権(公衆送信権)の侵害を理由とするのが一般的です。発信者情報の開示を請求できるのは、侵害されたと主張する権利を持つ者であるため(情報流通プラットフォーム対処法5条1項)、照会書に記載された「侵害されたとする権利」の欄で、どの権利が主張されているのかを確認してください。

写真集ファイル特有の論点――写真の枚数・巻数と著作物の数

写真集は1つのファイルに数十枚から数百枚の写真が含まれていることが多く、動画の作品とは違った論点があります。

  • 写真1枚ごとに独立した写真の著作物となり得る一方、写真の選択や配列に創作性があれば、写真集全体が編集著作物として保護されることもある(12条1項)
  • 複数の写真集や複数の巻をまとめたファイルでは、収録されている作品ごとに権利者が異なる場合がある
  • 同じ写真集について、異なる時期の観測を理由に照会書が別々に届くことがある

まとめファイルや複数の照会が届いた場合の考え方は「トレントの意見照会書が複数届いたら|作品ごと・回数ごとの対応」で整理しています。

損害賠償額は、作品の性質や販売価格、ファイルに含まれる作品の数、共有していた期間、照会の件数などを踏まえて個別に検討されるもので、写真集だから一律にいくら、という基準があるわけではありません。算定の考え方は「トレントの示談金はどう決まるのか|損害賠償額の算定要素を解説」をご覧ください。

「見ただけ」「少ししか持っていない」は通用するか

BitTorrentでは、ダウンロードの途中から、取得したデータを他の利用者へ送信できる状態になるのが通常の仕組みです。そのため、意見照会書で問題とされるのは「見たこと」ではなく、写真のデータを公衆送信できる状態に置いたこと(送信可能化を含む公衆送信権の侵害。23条1項)です。「閲覧しただけ」「途中でやめた」という事情がどこまで意味を持つかは、「「ダウンロードしただけ」は通用するか|トレント開示請求と送信可能化権」で解説しています。

なお、令和3年1月1日に施行された改正により、写真などの静止画を含む侵害コンテンツについても、違法にアップロードされたものと知りながらダウンロードすることが、一定の場合に私的使用目的の複製の例外から外れることになりました(30条1項4号)。

古い写真集なら保護期間が切れているのか

写真の著作物の保護期間は、現在は他の著作物と同じく、原則として著作者の死後70年です(51条2項)。昭和45年に制定された現行著作権法では、写真の著作物は公表後50年とする特別の定めがありましたが(制定時の55条1項)、平成8年の改正で死後起算に改められました。

そのため、撮影から長い年月が経っている写真集でも、保護期間が残っていることは珍しくありません。保護期間の計算は撮影・公表の時期や改正の経過によって複雑になるため、「古い写真だから大丈夫」と自己判断して回答書に書くのは避けたほうがよいでしょう。

写真集・グラビアの意見照会書が届いたときの確認点

照会書を受け取ったら、まず次の点を確認してください。

  • 照会者は誰か(撮影者か、制作会社か、出版社か、連名か)
  • 侵害されたとする権利(著作権・出版権など)と、その根拠を示す添付資料
  • 対象のファイル名・ハッシュ値と、含まれている写真集・巻・動画の範囲
  • 発信日時・IPアドレス・ポート番号と、その時間帯に回線を利用できた人
  • 回答期限と回答書の提出方法

回答書に「写真なので著作権はないと思った」「全巻持っている」などと書くと、利用の事実や認識を自ら認めたものと受け取られ、後の交渉で不利になるおそれがあります。横浜の当事務所が意見照会段階でどのように対応しているかは意見照会対応のページでもご紹介しています。BitTorrentの意見照会書への具体的な対応の流れや弁護士費用は、BitTorrent著作権侵害の意見照会書が届いた方向けの特設ページでご案内しています。

よくある質問

グラビア写真のような商業写真にも著作権はありますか。

写真は著作物の例として法律に明記されており(著作権法10条1項8号)、被写体の選び方や構図、カメラアングル、光線などに撮影者の個性が表れていれば、著作物として保護されます。裁判例では、商品を撮影した広告用の写真についても著作物性が認められたものがあり、グラビア写真や写真集の写真が保護されないと考えるのは難しいといえます。

写真集の照会者が出版社になっているのはなぜですか。

写真の著作者は原則として撮影者ですが、著作権は譲渡でき(著作権法61条1項)、法人の業務として撮影された写真は一定の要件のもとで法人が著作者となることもあります(同法15条1項)。また、電子書籍の写真集では、出版社が電子出版を含む出版権の設定を受けている場合があります(同法79条1項)。照会者がどの立場で権利を主張しているかは、照会書と添付資料で確認します。

被写体のモデル本人から請求されることはありますか。

写真の著作権は撮影者などに帰属し、被写体の方が持つのは肖像権やいわゆるパブリシティ権です。BitTorrentの意見照会書では著作権(公衆送信権)の侵害が主張されるのが一般的ですが、どの権利が主張されているかは照会書の記載で確認する必要があります。

古い写真集なら、著作権は切れていますか。

写真の著作物の保護期間は、現在は他の著作物と同じく原則として著作者の死後70年です(著作権法51条2項)。かつては公表時から起算する定めがありましたが、平成8年の改正で死後起算に改められました。保護期間の計算は撮影時期や改正の経過により複雑になるため、自己判断は避けたほうがよいでしょう。

まとめ

写真集やグラビア写真は写真の著作物として保護され、商業写真であっても著作物性が否定されるとは考えにくいものです。照会者は撮影者に限らず、権利の譲渡を受けた会社や出版権者である出版社であることもあります。写真集ファイルでは、収録されている写真集・巻の範囲や照会の件数が後の示談の範囲にも関わるため、照会書と添付資料を一つずつ確認したうえで回答の方針を決めましょう。

横浜の当事務所では、全国の方からのBitTorrent事案のご相談に、弁護士がオンラインで対応しています。

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写真集・グラビアの意見照会書が届いて戸惑っている方へ

タングラム法律事務所では、BitTorrent(トレント)による著作権侵害を理由とする意見照会書への対応から、開示後の損害賠償請求・示談交渉まで数多く取り扱っております。照会書と添付資料を確認し、照会者や対象のファイルについて事情を伺ったうえで、回答の方針をご説明します。BitTorrentの意見照会に関するご相談に限り、オンライン(20分程度)で無料のご相談を承っています(その他の分野のご相談は対象外です)。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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