タングラム法律事務所

誹謗中傷の証拠を公正証書で残す方法|事実実験公正証書の費用と手順

誹謗中傷の証拠を公正証書で残す方法|事実実験公正証書の費用と手順

誹謗中傷の証拠を公正証書で残す方法|事実実験公正証書の費用と手順

誹謗中傷の証拠を公正証書で残す方法|事実実験公正証書の費用と手順

誹謗中傷の証拠を公正証書で残す方法|事実実験公正証書の費用と手順

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月22日 最終更新日:2026年10月22日

ネット上の誹謗中傷の証拠としてスクリーンショットを保存したものの、「画像は加工できるのだから、相手に『捏造だ』と言われたらどうなるのか」「投稿が消される前に、もっと確実な形で残しておけないか」と不安に感じている方は少なくありません。

この記事では、横浜の弁護士が、公証人に誹謗中傷の書き込みを直接確認してもらい公文書として残す「事実実験公正証書」について、スクリーンショットとの違い、2025年10月改正後の手数料、依頼の手順、利用を検討すべき場面を、一次情報に沿って整理します。

結論として、事実実験公正証書は、公証人が自ら見聞きした事実を記載する公文書であり、民事訴訟では真正に成立した公文書と推定されるため、証拠の信用性を高める手段になります。一方で、1時間ごとに1万3000円の手数料がかかり、公証人が確認する時点で投稿が残っている必要があるため、通常はスクリーンショット等による保存を基本とし、証拠の真否が争われそうな事案で併用を検討するのが現実的です。

誹謗中傷の証拠保全で「事実実験公正証書」が使われる理由

事実実験公正証書とは、公証人が五感で直接体験した事実に基づいて作成する公正証書です。日本公証人連合会は、事実実験公正証書には「証拠保全の効果が十分期待できる」と説明しており、特許権侵害の状況や土地の境界の状況、株主総会の議事進行など、権利に関係する幅広い事実が対象になるとしています。

インターネット上の書き込みも対象になり得ます。たとえば京橋公証役場は、事実実験公正証書の利用場面として「インターネットや携帯電話を利用した違法な行為があった場合、その画面をアウトプットしたり、写真撮影して証拠保全する場合」を挙げています。公証人が画面に表示された投稿を自ら確認し、その内容や確認の方法を公正証書に記載する、という使い方です。

誹謗中傷の証拠をどう保存するかの基本は、誹謗中傷の証拠保全|スクリーンショットの正しい撮り方と注意点で解説しています。事実実験公正証書は、その基本的な保存に「第三者である公証人の確認」を上乗せする方法と考えるとわかりやすいでしょう。

スクリーンショットとの違い|証拠としての強さ

民事訴訟では、証拠として提出する文書は、その成立が真正であること(作成者とされる人が本当に作成したこと)を証明しなければなりません(民事訴訟法228条1項)。ただし、「その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきとき」は、真正に成立した公文書と推定されます(同条2項)。公証人が作成する公正証書はこの公文書にあたり、原本は公証役場に保存されます。

比較項目スクリーンショット・画面印刷事実実験公正証書
作成者被害者本人など公証人(公務員)
成立の真正争われた場合は、撮影の経緯などを立証する必要がある公文書として真正な成立が推定される(民事訴訟法228条2項)
費用ほぼかからない1時間ごとに1万3000円(休日・夜間は加算)
時間見つけたその場で保存できる事前の打合せと日程調整が必要
投稿が消えた後消える前に保存していれば証拠になる公証人が確認する時点で残っていなければ作成できない

注意したいのは、公正証書によって証明されるのは「公証人が、いつ、どの画面で、何を確認したか」という事実だという点です。書き込みの内容が名誉毀損にあたるか、誰が投稿したかまで公証人が判断するわけではありません。

事実実験公正証書の費用|2025年10月改正後の手数料

公証人の手数料は公証人手数料令で定められており、同令は令和7年政令第263号により改正され、2025年(令和7年)10月1日から施行されています。日本公証人連合会によれば、改正後の事実実験公正証書の手数料は次のとおりです。

  • 基本の手数料:事実実験に要した時間と証書作成に要した時間の合計について、1時間までごとに1万3000円(公証人手数料令26条)
  • 休日・夜間の加算:休日または午後7時から翌日午前7時までに行われたときは、通常の手数料にその2分の1の額が加算されます
  • その他:正本・謄本の交付手数料や、公証人に出張してもらう場合の日当・交通費などが別途かかることがあります

たとえば、確認と証書作成に合計2時間を要した場合、基本の手数料は2万6000円になります。確認する投稿の数が多い場合や、動画・スレッド全体を確認する場合は時間が長くなりやすいため、事前の打合せで見込みを確認しておくと安心です。改正前の金額(1時間ごとに1万1000円)を掲載したウェブサイトもあるため、最新の金額は公証役場で確認してください。

依頼から作成までの手順

1.自分でも先にスクリーンショット等で保存する

公証役場との日程調整には時間がかかることがあります。その間に投稿が削除されると公正証書は作成できないため、まずはURL・投稿日時・投稿者のアカウントが分かる形で、自分でも保存しておきます。

2.公証役場に連絡し、事前に打合せをする

事実実験の実施方法や公正証書の内容は、事前に嘱託する公証人と十分に打ち合わせる必要があるとされています。確認してほしい投稿のURL、確認の順序、画面の印刷や撮影の方法、証書に添付する資料などを伝えます。全国の公証役場は日本公証人連合会のウェブサイトで検索でき、横浜市内にも公証役場があります。

3.公証人が画面を確認する

当日は、公証人が実際にウェブサイトやSNSの画面を閲覧し、表示された内容を確認します。ログインしないと見られない投稿やアプリ内の表示などは、どの端末・どのアカウントで確認するかによって証書の記載が変わるため、打合せの段階で相談しておくことが大切です。

4.公正証書が作成され、正本・謄本を受け取る

2025年10月1日の改正公証人法の施行により、公正証書の原本は原則として電子データ(電磁的記録)で作成されるようになりました。交付を受けた正本・謄本などを、裁判手続で証拠として提出することになります。

事実実験公正証書を検討すべきケース・不要なケース

誹謗中傷の削除請求や発信者情報開示請求・削除請求の実務では、URLや投稿日時が分かるスクリーンショット等の画面印刷を証拠として提出するのが一般的で、公正証書がなければ手続ができないわけではありません。費用と手間を考えると、次のように使い分けるのが現実的です。

  • 検討する価値があるケース:相手が「画像は加工されたものだ」と争ってくることが予想される、投稿者が近いうちに削除しそうで後から内容を争われるおそれがある、損害賠償請求訴訟で投稿の存在や内容自体が主要な争点になりそう、など
  • 通常は不要なケース:投稿がまだ公開されていて、URL・日時を含むスクリーンショットを保存できている、発信者情報開示の手続で投稿の存在そのものは争われにくい、など

裁判で証拠を提出する際の整理の仕方は、誹謗中傷の裁判で自分で証拠を出す方法|証拠説明書の書き方も参考にしてください。また、インスタグラムのストーリーのように一定時間で消える投稿は、公証人の確認を待つ余裕がないことが多いため、消える投稿の証拠の残し方で紹介している画面録画などの方法を優先します。

よくある質問

スクリーンショットだけでは裁判で証拠として認められませんか?

スクリーンショットや画面印刷も証拠として提出でき、実務上はそれで足りることが多いと考えられます。ただし、相手方が加工や捏造を主張して成立の真正を争った場合には、撮影の経緯などを説明する必要が生じます。そのような争いが予想される場合に、事実実験公正証書の併用を検討します。

すでに削除された投稿も公正証書にできますか?

できません。事実実験公正証書は、公証人が自ら見聞きした事実を記載するものだからです。削除された投稿については、削除前に保存したスクリーンショットや、第三者が保存したアーカイブなど、残っている資料で立証を検討することになります。

事実実験公正証書の費用はいくらかかりますか?

2025年10月1日施行の改正後の公証人手数料令では、事実実験と証書作成に要した合計時間について、1時間までごとに1万3000円です。休日や午後7時から翌日午前7時までに行われた場合は2分の1が加算され、正本・謄本の交付手数料や出張の日当・交通費が別途かかることがあります。

公正証書があれば、名誉毀損が認められますか?

公正証書によって証明されるのは、公証人が確認した時点で、その内容の投稿が表示されていたという事実です。その投稿が名誉毀損やプライバシー侵害にあたるか、誰が投稿したかは、別に主張・立証して裁判所が判断することになります。

まとめ|証拠保全は「まず自分で、必要なら公証人」

  • 事実実験公正証書は、公証人が自ら確認した事実を記載する公文書で、民事訴訟では真正な成立が推定されます
  • 2025年10月1日以降の手数料は、1時間までごとに1万3000円(休日・夜間は加算)です
  • 公証人が確認する時点で投稿が残っている必要があるため、まず自分でスクリーンショット等を保存します
  • 証拠の真否が争われそうな事案や、訴訟で投稿の内容自体が争点になりそうな事案で、併用を検討します

どの証拠をどこまで残しておくべきかは、削除請求・発信者情報開示請求・損害賠償請求のどの手続を見据えるかによって変わります。横浜のタングラム法律事務所では、弁護士が証拠の残し方から、削除・投稿者の特定・損害賠償請求までを見通して方針をご提案しています。

誹謗中傷の証拠の残し方でお悩みの方へ

タングラム法律事務所では、ネット誹謗中傷の削除請求・発信者情報開示請求から、損害賠償請求、刑事告訴まで、多数のご相談に対応してきました。投稿が消される前に何を残すべきか迷っている方は、お早めにご相談ください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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