タングラム法律事務所

不倫慰謝料の公正証書を求められたら?応じる前の注意点を解説

不倫慰謝料の公正証書を求められたら?応じる前の注意点を解説

不倫慰謝料の公正証書を求められたら?応じる前の注意点を解説

不倫慰謝料の公正証書を求められたら?応じる前の注意点を解説

不倫慰謝料の公正証書を求められたら?応じる前の注意点を解説

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年11月2日 最終更新日:2026年11月2日

不倫の慰謝料を請求され、示談の話が進んできたところで、相手方から「公正証書にしてほしい」と言われた。「断ったら裁判になるのでは」「作ったら給料を差し押さえられるのでは」と不安になっている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、請求された側に向けて、応じる義務の有無、強制執行認諾の意味、署名前の確認点、委任状の注意点、費用、交渉の進め方を解説します。

結論として、不倫慰謝料の公正証書の作成に応じるかどうかは、原則として当事者の合意によって決まり、法律上当然に応じる義務があるわけではありません。ただし、強制執行認諾文言が入った公正証書を作成すると、支払が滞った場合に訴訟を経ずに差押えを受ける可能性があるため、内容を確認せずに応じることは避けるべきです。

不倫慰謝料の公正証書に応じる義務はあるのか

公正証書は、当事者の依頼に基づいて公証人が作成する文書です。不倫慰謝料の示談で公正証書を作成するかどうかは、基本的に当事者間の話し合いで決まります。相手方から求められたという理由だけで、当然に作成義務が生じるものではありません。

ただし、次の2点には注意が必要です。

  • 既に約束している場合:示談書や合意書に「公正証書を作成する」と書かれている場合は、その約束をどう扱うかが問題になります。署名済みの書面があるときは、断る前に内容を確認しましょう。
  • 交渉への影響:相手方が交渉を打ち切り、訴訟などに進む可能性はあります。

相手方の目的は、多くの場合、支払が止まったときの回収手段の確保です。作成する側から見た仕組みは「不貞慰謝料の公正証書を作成するメリットと手続き」でも解説しています。

示談書と公正証書の違いは「強制執行認諾」

請求された側が最も注意すべき点は、公正証書そのものよりも、強制執行認諾文言が入るかどうかです。これは「支払わないときは直ちに強制執行に服する」という趣旨の陳述で、金銭の一定額の支払を内容とする公正証書にこの陳述が記載されると、民事執行法22条5号の執行証書として、強制執行の根拠になり得ます。

書面支払わなかった場合の一般的な流れ
当事者間の示談書相手方は訴訟などで判決等を得てから強制執行を申し立てる
認諾文言なしの公正証書その書面だけでは強制執行できず、訴訟などが必要になる
認諾文言付きの公正証書訴訟を経ずに強制執行を申し立てられる可能性がある

認諾文言付きの公正証書では、裁判官が言い分を聞いて判決を出す段階を経ずに差押えへ進む可能性があり、将来争う機会が大きく狭まります。

公正証書を作ると給与や預金は差し押さえられるのか

認諾文言付きの公正証書があり、支払を怠った場合、預貯金や給与などの差押えを受ける可能性があります。給与については、民事執行法152条1項と同法施行令2条により、原則として手取額の4分の3に相当する部分(月払いの場合で33万円を超えるときは33万円)が差押禁止とされています。言い換えれば、原則として手取額の4分の1程度が差押えの対象になり得ます。賞与も同様で、退職手当は4分の1が対象になり得ます。

給与が差し押さえられると、裁判所からの書面が勤務先に届くため、不倫の問題が会社に知られるきっかけになるおそれがあります。

勤務先の情報を裁判所を通じて取得する手続(民事執行法206条1項)は、養育費等の請求権や、生命・身体の侵害による損害賠償請求権の債権者が対象とされており、一般的な不倫慰謝料の債権者は対象外と考えられます。一方で、相手方が勤務先を既に知っている場合は、この手続がなくても差押えを申し立てられます。また、同法197条の要件を満たせば、公正証書に基づく財産開示手続が申し立てられる可能性もあります。

署名前に確認すべき条項

公正証書の案文が届いたら、次の点を確認しましょう。

確認事項見るべきポイント
金額・支払方法合意した金額か、無理なく支払える分割額か
期限の利益喪失1回の遅れで残額全額の一括払いになる定めではないか
遅延損害金利率が合意どおりか、高すぎないか
違約金接触禁止や口外禁止の違反に過大な金額が定められていないか。認諾文言の対象に含まれるか
求償権放棄を求められていないか。放棄するなら減額に反映されているか
清算条項他に債権債務がないことの確認が入っているか
事実関係の記載認めていない不貞の時期や回数が書かれていないか

特に、不貞の事実や既婚者であることの認識を争う余地がある場合は、署名前に立ち止まることが重要です。夜職やパパ活の関係で「既婚者と知らなかった」という事情があるときは、夜職・パパ活の不倫慰謝料請求への対応もご参照ください。署名前の確認事項全般は「不貞慰謝料の示談書にサインする前の確認点」でも整理しています。

委任状と代理人に関する注意点

日本公証人連合会の案内によれば、遺言などの例外を除き、公正証書は本人の委任状を持った代理人によって作成できます。相手方から委任状と印鑑証明書の提出を求められた場合は、特に慎重な対応が必要です。

  • 白紙委任状は渡さない:同連合会は、委任状には委任内容の記載が必要で、白紙委任状は認められないとしています。
  • 実印と印鑑登録証明書の重み:代理人による作成では、実印を押した委任状と印鑑登録証明書が求められます。内容を理解しないまま渡すことは避けましょう。
  • 相手方側の人を代理人にしない:民法108条1項は、相手方の代理人や双方の代理人としての行為を、本人があらかじめ許諾した場合等を除き、無権代理とみなしています。同連合会も、双方の代理を一人で行うことは原則としてできないと案内しています。

相手方と顔を合わせたくない場合は、弁護士を自分の代理人とする方法があります。

公正証書の手続の流れと費用

一般的には、示談内容の確定、公証役場への案文提出、公証人との調整、作成当日の内容確認という順に進みます。

2025年10月1日の公証人法改正により、法務大臣が指定する公証人が作成する公正証書は、原則として電子データで作成されることになりました。嘱託人の申出があり、他の嘱託人に異議がなく、公証人が相当と認める場合には、ウェブ会議による作成も可能とされています(タブレットやスマートフォンは利用不可)。利用の可否は公証役場に確認しましょう。

公証人の手数料は、公証人手数料令に基づき、目的の価額に応じて定められています。

目的の価額手数料
50万円超100万円以下5,000円
100万円超200万円以下7,000円
200万円超500万円以下13,000円
500万円超1,000万円以下20,000円

このほかに費用が加わる場合もあるため、総額は事前に公証役場へ確認してください。誰が費用を負担するかも交渉の対象です。

公正証書を断りたいときの交渉の進め方

相手方の目的が回収の確保であれば、次のような提案が考えられます。

  • 一括払いにする、または頭金を増やす
  • 認諾文言のない公正証書や示談書にとどめる
  • 認諾文言の対象を慰謝料本体に限定し、違約金を外す
  • 公正証書に応じる代わりに、減額や分割条件の緩和を求める

分割の設計については「不貞慰謝料を分割払いにする方法と注意点」も参考になります。ただし、「公正証書にします」「支払います」といった回答は、債務の承認(民法152条1項)と評価されるおそれがあり、時効との関係でも不利に働く場合があります。争う余地があるときは、回答の前に内容を検討しましょう。

既に作成してしまった場合でも、請求権の存在や内容、公正証書の成立に異議があるときは、請求異議の訴え(民事執行法35条1項)を検討する余地があります。もっとも、訴えを起こしただけで強制執行が当然に止まるわけではありません。差押えの通知が届いたら、早めに弁護士へご相談ください。不貞慰謝料事案の対応全般は、不貞慰謝料の取扱分野ページをご覧ください。

不倫慰謝料の公正証書に関するよくある質問

公正証書の作成を断ると、すぐに裁判を起こされますか?

すぐに訴訟になるとは限りません。ただし、交渉が決裂すれば、相手方が訴訟などの手続に進む可能性はあります。断る場合は無視せず、一括払いへの変更など代わりの案を書面で示すことが考えられます。

公証役場には本人が行かなければなりませんか?

原則として、委任状を持った代理人による作成が可能です。日本公証人連合会は、白紙委任状は認められないとしています。また、相手方の関係者を代理人にする提案には慎重な検討が必要です。

公正証書の作成費用は誰が負担しますか?

法律で一律に決まっているわけではなく、当事者の合意で決めるのが通常です。相手方の求めで作成する場合は、負担割合も交渉の対象になります。

まとめ:公正証書は内容を確認してから判断を

  • 不倫慰謝料の公正証書は、原則として合意に基づくもので、当然に応じる義務があるわけではありません
  • 強制執行認諾文言があると、支払が滞った場合に訴訟を経ずに差押えを受ける可能性があります
  • 白紙委任状を渡さず、断る場合も無視せず代替案を示すことが考えられます

公正証書は、一度作成すると覆すことが難しい書面です。弁護士に相談すれば、金額や認諾文言の可否、交渉条件を事案に即して検討できます。横浜で不倫慰謝料の請求を受けてお困りの方は、署名や委任状の提出の前にご相談ください。

公正証書の作成を求められてお困りの方へ

タングラム法律事務所では、不貞慰謝料の請求への対応について豊富な実績を有しております。公正証書の案文の確認から相手方との交渉まで、横浜の弁護士が対応いたします。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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