タングラム法律事務所

トレントの意見照会書が元夫・元恋人の行為なら|回線契約者の対応

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トレントの意見照会書が元夫・元恋人の行為なら|回線契約者の対応

トレントの意見照会書が元夫・元恋人の行為なら|回線契約者の対応

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年11月2日 最終更新日:2026年11月2日

離婚した元配偶者や、同棲を解消した元交際相手と暮らしていた頃の回線について、プロバイダから意見照会書が届いた――。自分はBitTorrent(トレント)を使ったことがないのに、なぜ自分の名前で届くのか。もう関わりたくない相手に確認しなければならないのか。そう戸惑われる方は少なくありません。

この記事では、すでに別れて同居していない相手の行為が疑われる場合に、回線契約者としてどう事実を確認し、回答書に何をどこまで書くのか、相手に連絡すべきか、離婚時の取決めは請求に影響するのかを、発信者側の立場から解説します。

結論として、回線の契約者であることと、実際に共有をした「発信者」であることは別の問題です。ただし、「元配偶者(元交際相手)がやったはずです」と述べるだけでは足りず、記録された発信日時と同居していた期間を照らし合わせたうえで、確認できた事実を具体的に示す必要があります。相手の氏名や住所をどこまで書くかは慎重に判断し、回答期限内に回答することが大切です。

別れた後でも、なぜ回線契約者に意見照会書が届くのか

プロバイダが把握できるのは、記録された発信日時にそのIPアドレスを割り当てられていた回線の契約者です。その回線を世帯の誰が使っていたかまでは分かりません。そのため、実際の利用者が別にいる可能性があっても、意見照会は契約者宛てに届きます(情報流通プラットフォーム対処法6条1項)。同居が解消されていても、発信日時に自分が回線の名義人だったのであれば、書面が自分に届くことに不思議はありません。

情報流通プラットフォーム対処法2条5号の「発信者」は、情報を記録または入力した者を指すものであり、回線契約者と同じ意味ではありません。もっとも、裁判例では、割当てを受けていた回線の契約者が発信者であると事実上推認する考え方が示される傾向にあります。家族・同居人が使っていた場合の基本的な考え方は、家族・同居人が使っていた場合の発信者性の否認の記事で解説しています。同居中の場合と比べ、別れた相手の場合には、本人に事情を確認しにくく、当時の機器も手元に残っていないことが多いという難しさがあります。

まず「発信日時」と同居期間を照らし合わせる

最初に行うべきは、意見照会書や添付資料に記載された発信日時と、相手と同居していた期間との照合です。日時はUTC(協定世界時)で記載されていることがあり、日本時間とは9時間ずれるため、UTC/JST換算の記事も参考に、正確に換算してください。照合の結果によって、検討すべきことが変わります。

発信日時考えられる状況確認すること
同居中相手が自宅の回線で利用していた可能性がある相手のパソコン等の有無、その頃の在宅状況、他に回線を使える人がいたか
相手の退去後「相手の行為」という説明は成り立ちにくい相手の機器が残っていなかったか、Wi-Fiのパスワードを変えたか、他の利用者や端末がないか
別れた時期の前後で判然としない退去日が曖昧で、どちらとも言えない転居の記録やメッセージなどで、退去日をできる限り特定する

発信日時が相手の退去後であれば、残された機器が自動で動いていた、退去後も回線に接続できたといった事情がない限り、相手の行為だとする説明には無理が生じます。「元の相手のせいだ」と思い込んで回答する前に、この照合を落ち着いて行ってください。逆に、発信日時が複数ある場合は、すべてについて確認します。

相手の行為と考える根拠をそろえる

「自分は使っていない」という否認が意味を持つのは、具体的な事情を伴う場合です。無理のない範囲で、次のような資料や事情を整理します。

  • 同居の開始・終了の時期が分かるもの(住民票の異動、賃貸借契約、転居の記録など)
  • 発信日時に自分が自宅にいなかったことが分かるもの(勤務記録、出張や旅行の記録など)
  • 相手が使っていた端末や、自分の端末の状況(自分の端末にトレントソフトが入っていないことなど)
  • 相手がトレントや対象の作品に触れていたことをうかがわせる、当時のやり取り
  • 回線の契約者情報、ルーターの設定や接続機器の履歴(残っている場合)

離婚や別れの経緯そのものは、詳しく書く必要はありません。回答書に求められているのは、発信者かどうかに関わる事実であり、相手への不満や夫婦間のトラブルを書いても説得力は増しません。また、ご自身で確信できないことを断定しないことも重要です。後に事実と異なることが分かると、回答全体の信用を失うおそれがあります。

回答書に相手の氏名や住所を書くべきか

悩ましいのが、回答書に相手の氏名を書くかどうかです。業界の書式では、回答書の理由や証拠が請求者(権利者)側に伝わることを前提とした注記が置かれており、相手方にとって発信者を特定し得る情報は黒塗り等で隠すよう求められています。書いた内容は権利者の目に触れ得ると考えて記載を組み立てる必要があります。

意見照会の段階では、「発信日時当時、私以外に同居していた者がいた」「その者はすでに転居している」といった書き方でも、自分が発信者でないという主張は伝えられます。相手の氏名や現住所を積極的に書くことは、相手のプライバシーに関わるうえ、推測に基づく場合には、後に相手との間で紛争になるおそれもあります。一方で、開示後の交渉や訴訟の段階では、実際の行為者についてより具体的に説明を求められることもあります。どの段階で何を明らかにするかは、事案に応じて判断が必要であり、横浜の当事務所でもご相談の多い点です。書き方に迷う場合は、意見照会対応のページや、BitTorrentの意見照会書が届いた方向けのご案内もご覧のうえ、弁護士にご相談ください。

なお、開示されるのは原則として契約者であるご自身の情報であり、回答書に相手の名前を書いたからといって、その情報が当然に開示されるわけではありません。

元配偶者・元交際相手に連絡すべきか

事実確認のために相手へ連絡すること自体は禁じられていません。ただし、次の点に注意が必要です。

  • 連絡は必須ではありません。相手の回答がなくても、自分が確認できた事実の範囲で回答書は作成できます。
  • 安全を最優先にしてください。相手からの暴力やつきまといがあった場合、住所を隠している場合には、連絡によって居所を知られるなどの危険があるため、ご自身で接触しないでください。
  • 記録の残る方法で、事実の確認にとどめます。相手を責める内容や、支払いを迫る内容は、新たなトラブルの原因になりかねません。
  • 回答期限を優先します。相手の返事を待つうちに期限を過ぎないよう、返事がなくても回答できるように準備を進めます。

相手が事実を認めた場合は、そのやり取りを保存しておきます。認めない場合や返事がない場合でも、それだけで自分の回答ができなくなるわけではありません。

離婚時の取決めは権利者に主張できるのか

離婚協議書や別れる際の合意に「今後互いに一切請求しない」といった清算条項があっても、それは当事者の間の取決めです。権利者は合意の当事者ではないため、そのような条項があることを理由に権利者からの請求を拒むことは難しいと考えられます。また、婚姻中の行為であっても、配偶者だからという理由だけで不法行為の責任を当然に負うものではありません。この点は、妻・家族に示談金の支払い義務はあるかの記事で解説しています。

損害賠償の責任を負うのは、著作権を侵害する行為をした者です(民法709条)。したがって、自分が行為をしていないことを具体的に示せれば、回線契約者というだけで当然に賠償責任を負うことにはなりません。ただし、相手の利用を知りながら回線を使わせていたなどの事情があれば、別途検討が必要です。

相手の代わりに示談金を支払った場合には、相手に返還を求められる場合もありますが、相手が任意に応じなければ請求の手続が必要となり、回収できるとは限りません。「早く終わらせたい」という理由で、自分の行為でないものを認める前に、その影響を検討する必要があります。清算条項があるときは、その請求に影響しないかも確認します。

よくある質問

元配偶者の名義の回線を自分が使っていた場合はどうなりますか。

意見照会書は回線の契約者である相手に届きます。相手から連絡を受けた場合は、回答期限があるため早めに対応を検討する必要があります。自分が利用していた場合の対応は状況によって異なるため、弁護士に相談して進め方を整理することをおすすめします。

もう解約した回線でも、請求の対象になりますか。

解約済みでも、発信日時に契約者であり、プロバイダに記録が残っていれば、意見照会が届く可能性があります。解約したことで手続が止まるわけではありません。発信日時と契約期間を確認してください。

相手の現住所が分かりません。回答書は書けますか。

書けます。相手の現住所を調べて記載する必要はありません。発信日時当時の同居の状況など、ご自身で確認できた事実を記載します。

相手の行為だと断定できないときは、どう書けばよいですか。

確認できた事実と推測を分けて書きます。たとえば、自分は利用していないこと、当時ほかに同居人がいたこと、確認できなかった点を明らかにします。推測を断定として書くと、後に事実と異なった場合に回答全体の信用を損なうおそれがあります。

まとめ

元配偶者や元交際相手の行為が疑われる場合でも、意見照会書は発信日時当時の回線契約者に届きます。まず発信日時と同居期間を照らし合わせ、確認できた事実を根拠とともに整理してください。相手の氏名や住所をどこまで書くか、相手に連絡するかは、安全やプライバシー、その後の手続への影響を考えて判断します。回答書の内容は権利者に伝わり得るため、提出前に弁護士に相談することをおすすめします。

横浜の当事務所では、全国の方からのBitTorrent事案のご相談に、弁護士がオンラインで対応しています。

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別れた相手の行為が疑われる意見照会書でお困りの方へ

タングラム法律事務所では、BitTorrent(トレント)による著作権侵害を理由とする意見照会書への対応から、開示後の損害賠償請求・示談交渉まで数多く取り扱っております。発信日時や当時の同居の状況を伺い、回答書の書き方を含めて対応の方針をご説明します。BitTorrentの意見照会に関するご相談に限り、オンライン(20分程度)で無料のご相談を承っています(その他の分野のご相談は対象外です)。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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