タングラム法律事務所

不倫慰謝料の肩代わりはできる?配偶者が代わりに払う効果と注意点

不倫慰謝料の肩代わりはできる?配偶者が代わりに払う効果と注意点

不倫慰謝料の肩代わりはできる?配偶者が代わりに払う効果と注意点

不倫慰謝料の肩代わりはできる?配偶者が代わりに払う効果と注意点

不倫慰謝料の肩代わりはできる?配偶者が代わりに払う効果と注意点

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月22日 最終更新日:2026年10月22日

不倫が発覚して慰謝料を請求されたとき、交際相手から「慰謝料は自分が払うから心配しないで」と言われた。あるいは、不倫をした夫(妻)から「相手の分も自分が払うから、相手には請求しないでほしい」と頼まれた。不倫慰謝料の「肩代わり」はよくある場面ですが、誰の支払義務がどこまで消えるのかは意外と知られていません。

この記事では、不倫慰謝料を配偶者や親族が肩代わりした場合の法的な効果、求償権の扱い、夫婦の家計から支払われる場合の問題点、示談書に残しておくべき条項について、請求する側・請求された側の双方の視点から横浜の弁護士が解説します。

結論として、不倫慰謝料は不倫をした配偶者と不倫相手が連帯して負う責任のため、配偶者が代わりに払うことは法律上可能で、支払われた範囲で不倫相手の支払義務も消滅します。ただし、夫婦の家計から支払われると請求した側には実質的に慰謝料が入らないことがあり、また肩代わりした側から後で求償や返還を求められることもあるため、誰が何を負担するのかを示談書で明確にしておくことが重要です。

不倫慰謝料の「肩代わり」とは?よくある3つの場面

不倫慰謝料の肩代わりとして相談が多いのは、次のような場面です。

場面誰が・誰の代わりに払うか
交際相手による肩代わり既婚者である交際相手(不貞をした配偶者)が、慰謝料を請求された不倫相手の代わりに払う
配偶者からの申し出不倫をした夫(妻)が、被害を受けた配偶者に「相手の分も自分が払う」と申し出る
親族による肩代わり不倫相手の親やきょうだいが、本人の代わりに慰謝料を払う

いずれも「誰の責任を、誰の財布から、どの範囲で支払ったか」が結論を左右します。

不倫慰謝料は二人の「連帯」責任|肩代わりの法的な位置づけ

不貞行為は、不倫をした配偶者と不倫相手の二人による共同不法行為と考えられており、二人は各自が損害の全額について連帯して賠償する責任を負います(民法709条、710条、719条1項)。請求する側は、どちらか一方にも、双方にも請求できます。

このため、不倫をした配偶者が慰謝料を支払うことは、「他人の借金を代わりに払う」というよりも、自分自身も負っている責任を弁済するという意味を持ちます。そして、一方が支払えば、その金額の範囲で他方の支払義務も消滅します。同じ損害について二重に受け取ることはできない、という点は不貞慰謝料の二重取りはできるかの記事でも解説しています。

なお、不倫相手の親など、責任を負っていない第三者が支払うこともできます(民法474条1項)。正当な利益のない第三者は債務者本人の意思に反して弁済できないのが原則ですが(同条2項)、本人から頼まれた通常の肩代わりで問題になることは多くありません。

配偶者が支払った場合の効果と求償権

不倫相手の支払義務はどこまで消えるか

たとえば、慰謝料として妥当な額が150万円の事案で、不倫をした夫が妻に150万円を支払えば、損害は填補されたことになり、妻は不倫相手に重ねて請求することはできなくなると考えられます。夫の支払いが50万円にとどまれば、残りの100万円については、不倫相手に請求できる可能性が残ります。

肩代わりした配偶者は不倫相手に「求償」できる

共同不法行為者の一方が自分の負担部分を超えて支払った場合などには、他方に対して、その負担部分に応じた支払い(求償)を求められる可能性があります(民法442条1項参照)。負担部分は、一般に、不貞関係を主導したのはどちらか、既婚者側の責任の重さなどを踏まえて決まります。求償の仕組みは不貞慰謝料における求償権の基礎知識で詳しく解説しています。

最高裁平成10年9月10日判決(民集52巻6号1494頁)は、共同不法行為者の一人との訴訟上の和解で被害者が残債務を免除した場合に、他の共同不法行為者の残債務も免除する意思が認められるときは、その効力が他の者にも及び、求償額は和解での支払額を基準に責任割合に応じて算定すべきと判断しました。誰の債務をどこまで免除する合意なのかが、求償の範囲にも影響するということです。

交際中は「全部自分が払う」と言っていた配偶者が、関係が終わった後で求償を求めてくることもあります。実際に求償を求められた場合の対応は、不倫相手から求償請求をされた場合の対応をご覧ください。

請求する側から見た肩代わりの問題点

被害を受けた配偶者が注意すべきなのは、支払いが夫婦の家計(共有の預貯金など)から出ている場合です。婚姻生活を続けるなら家計の中でお金が移動しただけで、実質的には慰謝料を受け取っていないのに、不倫相手への請求ができなくなるおそれがあります。

離婚する場合は、共有財産から支払われた事情が財産分与(民法768条)で考慮される可能性もありますが、扱いは個別の事情によります。不倫相手の責任を問いたいのであれば、配偶者の申し出に応じる前に次の点を確認しておきましょう。

  • 支払いの原資は配偶者固有の財産か、夫婦の共有財産か
  • 受け取る金額は「不倫相手の分」を含む全額の趣旨か、配偶者自身の分だけの趣旨か
  • 不倫相手への請求を放棄(免除)する合意になっていないか

請求された側(不倫相手)から見た注意点

交際相手から「代わりに払う」と言われても、請求者がそれに同意しない限り、あなた自身の支払義務はなくなりません。交際相手が結局支払わなければ、訴訟を起こされるリスクはあなたに残ります。

また、肩代わりが「贈与」か「立替え(貸付け)」かが曖昧なままだと、関係が終わった後に「返してほしい」と求められ、二度目のトラブルになりかねません。親族に肩代わりしてもらう場合も、返済の要否を明確にしておくべきです。

当事務所では、慰謝料を請求する側・請求された側のいずれの立場でもご相談をお受けしています。取扱いの内容は不貞慰謝料請求の取扱分野ページでご紹介しています。

肩代わりで解決するときの示談書のポイント

肩代わりによって解決する場合は、請求者・不倫をした配偶者・不倫相手の三者で合意し、次のような点を示談書に明記しておくことが望ましいといえます。

条項記載しておくべき内容
支払者と支払う債務誰が、誰のどの責任について、いくらを支払うのか
求償権の扱い肩代わりした側が不倫相手に求償しない(求償権を放棄する)のか、求償の余地を残すのか
当事者間の精算肩代わりが贈与か立替えか、返済が必要か
清算条項三者の間で、本件についてほかに債権債務がないことを確認する
接触禁止条項など不倫相手と配偶者が今後接触しないことなど、金銭以外の約束

二者間の示談書だけで済ませると、後で肩代わりした側と不倫相手との間で求償の問題が残ることがあります。

よくある質問

不倫相手の慰謝料を、既婚者である交際相手が代わりに払うことはできますか?

できます。不貞行為をした配偶者と不倫相手は、共同不法行為者として各自が損害の全額について連帯して責任を負うと解されているため(民法719条1項)、配偶者が支払うことは自分自身の責任の弁済にあたります。請求者が受け取った金額の範囲で、不倫相手の支払義務も消滅します。

夫が慰謝料を支払った場合、不倫相手にはもう請求できないのですか?

夫の支払いによって損害が全額填補されたと評価されれば、不倫相手に重ねて請求することはできません。一部の支払いにとどまる場合は、残額を請求できる可能性があります。ただし、夫婦の家計から支払われた場合は実質的な填補になっていないこともあるため、受け取る前に支払いの意味を確認することが大切です。

交際相手が「自分が払う」と言っていますが、請求者は私に払えと言っています。どうなりますか?

交際相手との間で「代わりに払う」と約束しても、請求者がそれに同意しない限り、あなた自身の支払義務はなくなりません。交際相手が実際に請求者へ支払えば、その範囲であなたの義務も消滅しますが、支払われなかった場合のリスクはあなたに残ります。

肩代わりしてもらった後で、交際相手から「お金を返して」と言われました。返す必要がありますか?

肩代わりが贈与だったのか、立替え(貸付け)だったのか、求償権を放棄する合意があったのかによって結論が変わります。負担割合に応じた求償を求められる可能性もあるため、肩代わりを受ける時点で書面に残しておくことが重要です。

まとめ

  • 不倫慰謝料は不倫をした配偶者と不倫相手の連帯責任であり、配偶者が代わりに払うことは法律上可能
  • 支払われた範囲で、不倫相手の支払義務も消滅する
  • 肩代わりした側は、負担部分に応じて不倫相手に求償できる可能性がある
  • 夫婦の家計から支払われると、請求した側には実質的に慰謝料が入らないおそれがある
  • 三者で合意し、支払者・求償権の扱い・贈与か立替えか・清算条項を示談書に明記する

肩代わりは円満な解決に見えますが、支払いの原資や合意の範囲が曖昧なままだと、後で求償や返還をめぐる新たな紛争の火種になります。弁護士に依頼すれば、三者の関係を整理したうえで、誰が何を負担するのかを明確にした示談書を作成できます。横浜を拠点とするタングラム法律事務所では、慰謝料を請求する側・請求された側の双方からのご相談に対応しています。

不倫慰謝料の肩代わりや示談の進め方でお悩みの方へ

タングラム法律事務所では、不貞慰謝料の請求する側・請求された側の双方について、示談交渉から訴訟まで数多くの事件を取り扱っております。配偶者や交際相手が支払いを申し出ている場合の対応や、示談書の内容について、お早めにご相談ください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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