タングラム法律事務所

損害賠償条項・責任制限条項の書き方|契約書の注意点を弁護士が解説

損害賠償条項・責任制限条項の書き方|契約書の注意点を弁護士が解説

損害賠償条項・責任制限条項の書き方|契約書の注意点を弁護士が解説

損害賠償条項・責任制限条項の書き方|契約書の注意点を弁護士が解説

損害賠償条項・責任制限条項の書き方|契約書の注意点を弁護士が解説

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月22日 最終更新日:2026年10月22日

取引先から届いた契約書のひな形に「損害賠償の額は、本契約の委託料を上限とする」「当社は間接損害・逸失利益について責任を負わない」といった条項が入っていて、このまま署名してよいのか迷った経験はないでしょうか。反対に、自社のサービスでトラブルが起きたとき、どこまで賠償しなければならないのか不安に感じている経営者の方も少なくありません。

この記事では、損害賠償条項・責任制限条項の類型、責任制限が効かなくなる場面、違約金の注意点、立場別の交渉ポイントを、横浜の弁護士が中小企業・IT企業の実務に沿って解説します。

結論として、損害賠償条項・責任制限条項は、契約書の中でも万一のときの金額に直結する最重要の条項です。上限額や対象となる損害の範囲は当事者の合意で定められますが、故意・重過失の場合には責任制限が適用されないとした最高裁判決・裁判例があり、消費者向けの契約では消費者契約法8条により無効となる条項もあるため、自社の立場に応じて文言を設計することが重要です。

契約書の損害賠償条項とは|民法の原則との関係

契約に定めがなくても、相手方の債務不履行に対しては民法415条1項に基づき損害賠償を請求できるのが原則です(債務者の責めに帰することができない事由による場合を除きます)。

賠償の範囲は民法416条により、通常損害に加え、当事者が事情を予見すべきであった特別損害にも及びます。2020年4月1日施行の改正民法により、416条2項の文言は「予見し、又は予見することができたとき」から「予見すべきであったとき」に改められました。

これらは任意規定と解されており、契約書で上限額や損害の種類を定めれば、原則としてその合意が優先されます。逆にいえば、何も定めずに契約すると、思わぬ高額の賠償を負う可能性があるということです。

責任制限条項の主な類型と書き方

責任制限条項の典型的な類型は次のとおりで、実際にはこれらを組み合わせて用います。

類型条項の例注意点
上限額型「賠償額は、損害発生の直前12か月間に受領した委託料の総額を上限とする」上限の基準(総額か月額か、既払額か)を明確にする
損害の種類限定型「直接かつ現実に生じた通常の損害に限り賠償する」「逸失利益は除く」「直接損害」「間接損害」は民法上の用語ではないため、意味が争いになりやすい
請求期間制限型「損害の発生を知った日から1年以内に請求しなければならない」期間の起算点を明確にする
免責型「天災その他不可抗力による損害については責任を負わない」全部免責の条項は、消費者契約では無効となる場合がある

「誰が」「どの原因で」「どの範囲の損害を」「いくらまで」負担するのかを、一義的に分かる文言にすることが大切です。「本契約に関して生じた損害」か「本契約の債務不履行により生じた損害」かで、不法行為に基づく請求にも上限が及ぶかの解釈が分かれる余地があります。

クラウドサービスの約款に多い責任制限条項の確認点は、SaaS利用契約で導入企業が確認すべき条項の記事でも解説しています。

故意・重過失がある場合は責任制限が適用されない?|判例・裁判例

責任制限条項があっても、責任を負う側に故意又は重大な過失(重過失)がある場合には、そのとおりの効力が認められないことがあります。

最高裁平成15年2月28日判決(ホテルの宿泊約款)

ホテルの宿泊約款には、宿泊客が持ち込んだ物品等の滅失・毀損について、事前に種類・価額の明告がない場合の賠償額を15万円までとする定めがありました。最高裁は、ホテル側に故意又は重大な過失がある場合にまでこの責任制限の定めを適用することは、衡平を害し、当事者の通常の意思にも合致しないとして、そのような場合には適用されないと判断しました。

東京地裁平成26年1月23日判決(SQLインジェクションによる情報流出)

ウェブサイトの受注システムがSQLインジェクション攻撃を受け、顧客のクレジットカード情報等が流出した可能性があるとされた事案です。裁判所は、賠償額を契約金額の範囲内に制限する特約は受託者に故意又は重過失がある場合には適用されないとし、経済産業省やIPAが対策を注意喚起していたこと等から重過失を認めました(発注者側にも3割の過失相殺)。

提供側にとっても、故意・重過失の場合は責任制限の対象外と明記しておくのが、紛争予防上無難な設計といえます。

損害賠償額の予定・違約金条項の注意点

民法420条1項は、当事者が債務の不履行について損害賠償の額を予定することができると定めています。秘密保持義務違反など損害額の立証が難しい場面では、「違反1件につき○○円」といった違約金条項がよく用いられます。また、違約金は賠償額の予定と推定されます(同条3項)。

改正前の420条1項後段には「裁判所は、その額を増減することができない」との定めがありましたが、2020年4月1日施行の改正で削除されました。もっとも、改正前から、著しく過大な予定額は公序良俗(民法90条)違反として一部無効とされる余地があると解されていました。

なお、改正法の経過措置として、施行日(2020年4月1日)前にされた損害賠償額の予定の合意については、改正前の規定が適用されます(平成29年法律第44号附則17条4項)。

消費者向け契約では消費者契約法8条に注意

ECサイトなど一般消費者を相手にする事業では、消費者契約法8条により次の条項は無効とされます。

  • 事業者の債務不履行・不法行為による損害賠償責任の全部を免除する条項(8条1項1号・3号)
  • 事業者側の故意又は重大な過失による場合に、責任の一部を免除する条項(同項2号・4号)

さらに、令和4年法律第59号による改正で8条3項が新設され、2023年6月1日から施行されています。軽過失の場合の一部免除条項であっても、重大な過失を除く過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていないものは無効とされます。「法律上許される限り」といった留保文言だけの条項(いわゆるサルベージ条項)が典型です(消費者庁の逐条解説)。

利用規約を定型約款として用いる場合も、信義則に反して相手方の利益を一方的に害する条項は合意をしなかったものとみなされます(民法548条の2第2項)。消費者契約法の全体像は消費者契約法による契約取消・不当条項の無効と事業者の対応の記事をご覧ください。

立場別の交渉ポイントとチェックリスト

損害賠償条項は、自社が提供側か受領側かで望ましい内容が正反対になります。

確認項目提供側(受託者・ベンダー)受領側(委託者・発注者)
上限額委託料相当額など、受領する対価に見合う上限を設ける上限が低すぎないか、保険でカバーできるかを確認する
損害の範囲逸失利益・特別損害を除外する情報漏えい時の調査費用や顧客対応費用が対象外にならないか確認する
故意・重過失除外を明記して有効性を確保する除外規定がない場合は追記を求める

IT企業では、契約不適合責任と損害賠償の上限の関係も確認が必要です。契約不適合責任の基本は納品物の不備への対応と通知期間の記事で解説しています。

当事務所の企業法務の取扱内容は、企業法務(契約書レビュー・労務・法改正対応)のページで紹介しています。

損害賠償条項・責任制限条項に関するよくある質問

Q1. 契約書に損害賠償の上限がない場合、賠償額に制限はないのですか?

賠償の範囲は民法416条により限定されますが、金額の上限はないため、取引額に比べて大きな賠償責任を負う可能性があります。

Q2. 「間接損害は賠償しない」という条項は有効ですか?

事業者間の契約では、原則として有効と考えられます。ただし「間接損害」は民法上の用語ではなく範囲が争いになりやすいため、逸失利益など除外する損害を具体的に書くほうが紛争を防ぎやすいでしょう。

Q3. 相手方に重大な過失があっても、上限額までしか請求できませんか?

故意・重過失がある場合に責任制限の定めの適用を否定した最高裁判決や裁判例があります。もっとも、何が重過失にあたるかは個別の事情によって判断されるため、具体的な事案は弁護士にご相談ください。

Q4. 違約金の額が高すぎる場合、減額されることはありますか?

著しく過大な違約金や賠償額の予定は、公序良俗(民法90条)違反として一部無効とされる可能性があります。消費者契約では、契約の解除に伴う違約金等のうち平均的な損害の額を超える部分を無効とする消費者契約法9条の規定にも注意が必要です。

まとめ|損害賠償条項は契約書のリーガルチェックで最優先の確認事項

  • 契約書で上限額や損害の範囲を定めることができ、文言は一義的にする
  • 故意・重過失の場合は責任制限が適用されないとした判例・裁判例がある
  • 過大な違約金は公序良俗違反として減額される余地がある
  • 消費者向け契約では消費者契約法8条(2023年6月施行の3項を含む)に注意する

適切な条項は取引の規模や自社の立場によって異なり、トラブルが起きてから見直しても手遅れになりがちです。横浜の弁護士として多くの契約書を確認してきた経験からも、重要な取引の前や一方的なひな形を提示されたときは、早めに弁護士のリーガルチェックを受けることをおすすめします。

契約書の損害賠償条項・責任制限条項のチェックはお任せください

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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