タングラム法律事務所

トレントの意見照会・示談は誰に頼めるか|弁護士・司法書士・行政書士

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トレントの意見照会・示談は誰に頼めるか|弁護士・司法書士・行政書士

トレントの意見照会・示談は誰に頼めるか|弁護士・司法書士・行政書士

トレントの意見照会・示談は誰に頼めるか|弁護士・司法書士・行政書士

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月19日 最終更新日:2026年10月19日

BitTorrent(トレント)を理由とする意見照会書が届き、誰かに対応を頼みたいと考えたとき、依頼先の候補は弁護士だけとは限りません。インターネットで調べると、司法書士や行政書士の事務所、さらには「示談を代行します」「示談金を減らします」とうたう業者の案内が目に入ることもあり、どこに頼めばよいのか迷われる方は少なくありません。

この記事では、意見照会書への回答、開示命令事件への関与、開示後の示談交渉、訴訟への対応という段階ごとに、弁護士・司法書士・行政書士・資格のない業者がそれぞれ何をできるのかを、弁護士法・司法書士法・行政書士法の条文と最高裁判所の判断に沿って整理します。依頼先を選ぶ際の確認点もあわせて、横浜の弁護士の立場から説明します。

結論から述べると、報酬を得て他人の法律上の紛争に関する交渉や代理を行うことは、法律に別段の定めがない限り弁護士・弁護士法人にしか認められていません(弁護士法72条)。司法書士は、法務大臣の認定を受けた司法書士に限り、140万円以下の紛争の示談交渉や簡易裁判所の手続を代理できますが、地方裁判所の手続である発信者情報開示命令事件などは対象外です。行政書士や資格のない業者には、権利者との示談交渉を代理する権限はありません。

トレントの意見照会・示談は「法律事務」に当たるのか

弁護士法72条は、弁護士または弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で、訴訟事件・非訟事件・行政庁に対する不服申立事件「その他一般の法律事件」に関して、鑑定・代理・仲裁・和解その他の法律事務を取り扱うこと、またはその周旋をすることを業とすることを禁じています(ただし、弁護士法または他の法律に別段の定めがある場合を除きます)。違反した者には、2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が定められています(同法77条3号)。

どのような案件が「その他一般の法律事件」に当たるかについて、最高裁判所平成22年7月20日第一小法廷決定(刑集64巻5号793頁)は、ビルの賃借人らとの立ち退き交渉を報酬目的で請け負った事案で、立ち退きの合意の成否や立ち退き料の額をめぐって「法的紛議が生ずることがほぼ不可避である」案件であったことを重視し、72条違反の成立を認めています。

トレントの案件に当てはめると、意見照会の段階では発信者情報を開示すべきかどうかが争われ、開示後は損害賠償の有無や額が争われます。いずれも権利者との間で法的な対立が前提となる場面であり、回答書の作成や示談交渉を第三者が報酬を得て代わりに行うことは、一般に「法律事件に関する法律事務」に当たり得ると考えられます。

段階ごとにみる「誰が何をできるか」

トレントの案件は、意見照会から示談・訴訟まで段階的に進みます。各段階で関与できる範囲を条文に沿ってまとめると、次のとおりです。

段階弁護士認定司法書士行政書士・資格のない業者
意見照会書への回答(理由回答書の作成)代理人として作成・提出できる対応できる範囲に解釈の幅がある(後述)代理・代筆による対応はできないと考えられる
発信者情報開示命令事件・異議の訴え(地方裁判所)代理できる代理できない代理できない
開示後の示談交渉金額の制限なく代理できる請求額が140万円以下のものに限り代理できる代理できない
訴訟・支払督促代理できる簡易裁判所の140万円以下の事件に限り代理できる代理できない

このうち司法書士・行政書士の範囲は、次の節で条文に即して説明します。

司法書士に依頼できる範囲——「認定司法書士」と140万円

司法書士法3条1項6号・7号は、簡易裁判所における民事訴訟・支払督促・民事調停等の手続の代理(訴訟の目的の価額が裁判所法33条1項1号に定める額を超えないもの)と、簡易裁判所の民事訴訟の対象となる民事紛争で紛争の目的の価額が同じ額を超えないものについての相談・裁判外の和解の代理を、司法書士の業務として定めています。裁判所法33条1項1号の額は140万円です。そして、これらの業務は、法務大臣が指定する研修を修了し、法務大臣の認定を受けた司法書士(いわゆる認定司法書士)に限って行うことができます(司法書士法3条2項)。

140万円を超えるかどうかの判断基準について、最高裁判所平成28年6月27日第一小法廷判決(民集70巻5号1306頁)は、債務整理の事案で、認定司法書士が裁判外の和解を代理できる範囲は「個別の債権ごとの価額を基準として定められるべき」と判断し、140万円を超える債権について和解を代理したことは違法であるとして、受け取った報酬相当額の損害賠償義務を認めています。

トレントの案件では、次の点に注意が必要です。

  • 開示命令事件は簡易裁判所の手続ではない:発信者情報開示命令事件は地方裁判所が扱う非訟事件であり、司法書士法3条1項6号の「簡易裁判所における手続」に含まれません。開示命令に対する異議の訴えも地方裁判所に提起されます
  • 請求額によって途中で代理できなくなることがある:権利者からの請求額が作品ごと・請求ごとに140万円を超えると、その請求については代理できません。複数の作品について照会や請求が重なる場合や、訴訟で控訴された場合などに、依頼先を変更しなければならなくなる可能性があります
  • 認定を受けていない司法書士は交渉を代理できない:司法書士であっても、認定を受けていなければ、示談交渉や簡易裁判所での代理はできません

なお、意見照会書への回答は、プロバイダに対する回答であって裁判所の手続ではありません。回答の対象となる紛争の価額をどう考えるかには解釈の幅があり、照会の段階では請求額自体が明らかでないことも多いため、司法書士に依頼する場合は、どの範囲まで対応できるのかを事前に確認しておくことが大切です。

行政書士・示談代行業者に頼む場合の問題点

行政書士は、官公署に提出する書類などの作成を業とする資格ですが、行政書士法は、書類の作成であっても他の法律で業務が制限されているものは行うことができないと定め(行政書士法1条の3第2項)、官公署に提出する書類の提出手続の代理などの業務からも、弁護士法72条に規定する法律事件に関する法律事務に該当するものを除いています(同法1条の4第1項1号)。プロバイダへの回答書や権利者との示談は官公署への手続ではなく、行政書士が代理人として回答したり、示談交渉を行ったりすることはできないと考えられます。

資格のない「示談代行」「減額交渉」をうたう業者についても同様です。報酬を得て権利者と交渉することは、弁護士法72条に抵触するおそれがあります。こうした業者に依頼した場合には、次のような不利益が考えられます。

  • 権利者側(多くは代理人弁護士)が、代理権のない者との交渉に応じない
  • 回答書や示談書の内容に法的な検討が及ばず、不利な事実を認める記載や、清算の範囲が不十分な示談書になる
  • 業者に支払った費用が無駄になり、改めて弁護士に依頼する費用と時間がかかる
  • 相談のために伝えた氏名・住所・利用状況などの情報が、どのように扱われるか分からない

示談書でどのような点に注意すべきかは、トレントの示談交渉を自分で行う場合の注意点の記事で解説しています。

ご自身で対応する場合と、依頼先を選ぶ際の確認点

弁護士法72条が制限しているのは、他人の法律事件を報酬目的で業として扱うことです。ご本人が自ら回答書を作成したり、権利者と交渉したりすることは制限されていません。自分で回答書を作成する場合の記載事項と限界は、理由回答書を自分で書く場合の記事にまとめています。

他方、誰かに依頼する場合は、次の点を確認するとよいでしょう。

  • 資格と登録:相手が弁護士であれば、所属する弁護士会と氏名を確認できます。司法書士であれば、法務大臣の認定を受けているかを確認します
  • 対応できる範囲:意見照会への回答だけか、開示命令事件・示談交渉・訴訟まで一貫して対応できるか。途中で依頼先を変える必要が生じないか
  • 費用の内訳:着手金・報酬金・実費の内訳と、照会書が追加で届いた場合の扱い。費用倒れになるかどうかの考え方は、トレント開示請求の弁護士費用と費用倒れの判断基準の記事で解説しています
  • BitTorrentの仕組みへの理解:ハッシュ値・IPアドレス・ポート番号・発信日時など、照会書の添付資料を技術面から検討できるか

意見照会段階の対応の全体像は、当事務所の意見照会対応のページでご案内しています。BitTorrentに特化した対応の流れは、BitTorrent著作権侵害の意見照会書が届いた方向けの特設ページにまとめています。

よくある質問

司法書士にトレントの意見照会への対応を依頼することはできますか。

法務大臣の認定を受けた司法書士は、紛争の価額が140万円以下の範囲で、相談や裁判外の和解の代理を行うことができます(司法書士法3条1項7号・2項)。ただし、地方裁判所の手続である発信者情報開示命令事件や異議の訴えは代理の対象外であり、請求額が140万円を超えると示談交渉も代理できません。依頼する前に、どの段階まで対応できるかを確認することが大切です。

行政書士に理由回答書を作ってもらうことはできますか。

行政書士法は、書類の作成であっても他の法律で制限されている業務は行えないと定め、代理業務からも弁護士法72条の法律事件に関する法律事務を除いています(行政書士法1条の3第2項・1条の4第1項1号)。開示の可否が争われる意見照会への回答は、権利者との紛争を前提とするものであり、行政書士が代理人として回答書を作成・提出したり、権利者と交渉したりすることはできないと考えられます。

「示談金を減額します」という業者に依頼しても問題ありませんか。

弁護士・弁護士法人でない者が報酬を得て示談交渉を代わりに行うことは、法律に別段の定めがない限り弁護士法72条に抵触するおそれがあり、違反には2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が定められています(同法77条3号)。権利者側が交渉に応じない、示談書の内容に不備が生じるといった不利益も考えられるため、依頼先の資格を必ず確認してください。

弁護士に頼まず、自分で対応してもよいのでしょうか。

ご本人が自ら回答書を作成し、権利者と交渉することは法律上制限されていません。ただし、回答書の記載が後の示談交渉や訴訟で不利に扱われることもあるため、少なくとも回答書を提出する前や示談書に署名する前に、弁護士の意見を聞いておくことをおすすめします。

まとめ|依頼先は「最後まで対応できるか」で選ぶ

トレントの意見照会・示談は、権利者との法的な対立を前提とする場面であり、報酬を得てこれを代理できるのは、原則として弁護士・弁護士法人です。認定司法書士は140万円以下の紛争や簡易裁判所の手続に限って代理でき、地方裁判所の開示命令事件などは対象外です。行政書士や資格のない業者には、回答や示談交渉を代理する権限はありません。

意見照会から開示命令事件、示談交渉、訴訟までは一連の手続であり、途中で依頼先を変えると、方針の一貫性が損なわれたり、費用や時間が余計にかかったりすることがあります。依頼先は、資格と対応できる範囲を確認したうえで、最後まで対応できるかどうかを基準に選ぶことが大切です。横浜の当事務所では、全国の方からのご相談にオンラインで対応しています。

BitTorrent著作権侵害の意見照会対応の詳細はこちら

トレントの意見照会書が届き、依頼先に迷っている方へ

タングラム法律事務所では、BitTorrent(トレント)による著作権侵害を理由とする意見照会書への対応を数多く取り扱っております。弁護士が、意見照会書への回答から開示後の示談交渉、訴訟まで一貫して対応します。BitTorrentの意見照会に関するご相談に限り、オンライン(20分程度)で無料のご相談を承っています(その他の分野のご相談は対象外です)。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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