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遺言執行者とは?選任の方法・権限・トラブルを防ぐポイントを弁護士が解説

遺言執行者とは?選任の方法・権限・トラブルを防ぐポイントを弁護士が解説

遺言執行者とは?選任の方法・権限・トラブルを防ぐポイントを弁護士が解説

2026/04/30

遺言執行者とは?選任の方法・権限・トラブルを防ぐポイントを弁護士が解説

「遺言書を作成したいが、自分が亡くなった後に確実に内容を実現してもらえるか心配だ」「親が遺言書を残しているが、遺言執行者という言葉が出てきて意味がわからない」——そのようなお悩みを抱える方は少なくありません。相続が発生すると、遺言書の内容を実際に「実行」する手続きが必要になりますが、その役割を担うのが「遺言執行者」です。

本記事では、遺言執行者の役割・権限・選任の方法・義務・報酬の目安・解任の手続きまでをわかりやすく解説します。また、遺言執行者に関してよくあるトラブルと、それを防ぐためのポイントについても弁護士の視点からご紹介します。

遺言執行者とは何か?その役割を理解する

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う権限と義務を持つ者をいいます。民法第1012条第1項は、「遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する」と定めています。

遺言書には、不動産の名義変更、預貯金の払い戻し・解約、株式の名義書換えなど、さまざまな手続きが含まれます。これらを遺族が自力で行うのは大きな負担であり、相続人間で意見が対立していると手続きが止まってしまうことがあります。遺言執行者は、こうした場面で中立的な立場から遺言の内容を実現するための実務を担う存在です。

【ポイント】遺言執行者が選任されると、相続人は「相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為」をすることができなくなります(民法第1013条第1項)。これにより、相続人が勝手に財産を処分・隠匿することを防ぐことができます。

遺言執行者になれる人・なれない人(資格要件)

遺言執行者は、未成年者および破産者を除いて、誰でも就任することができます(民法第1009条)。つまり、特別な資格は必要なく、相続人が遺言執行者になることも法律上は可能です。実際に、長男や配偶者を遺言執行者に指定するケースも見られます。

ただし、相続人が遺言執行者になると、中立性を保つことが難しくなり、他の相続人から偏りがあると疑われるリスクがあります。また、相続手続きには専門知識が必要な場面が多く、相続人・親族が担うと実務上の困難が生じることも少なくありません。そのため、弁護士や司法書士などの専門家を遺言執行者に指定することが実務上は多い傾向にあります。

遺言執行者になれる人 遺言執行者になれない人
成年に達した者(親族・相続人を含む) 未成年者
弁護士・司法書士・行政書士・信託銀行等の専門家 破産者(破産手続き中の者)
法人(弁護士法人・信託会社等)

遺言執行者の選任方法は3つある

遺言執行者を選任する方法は、大きく分けて次の3つがあります。

① 遺言書による指定

最も一般的な方法は、遺言者が遺言書の中で「〇〇を遺言執行者に指定する」と記載しておく方法です。公正証書遺言であれば、公証人との打合せの中で遺言執行者の選定も行うことができます。就任予定者の事前承諾は必要ありませんが、実務上は事前に了解を得ておくことが望ましいとされています。

② 第三者への指定の委託

遺言書の中で、誰に遺言執行者を決めてもらうかを第三者(たとえば信頼できる知人や顧問弁護士等)に委ねることも可能です(民法第1010条後段)。遺言者が亡くなる時期に誰が適切かを事前に確定しにくい場合に活用されます。

③ 家庭裁判所への選任申立て

遺言書に遺言執行者の指定がなかった場合や、指定された者が死亡・就任拒否・辞任などで欠けた場合は、利害関係人(相続人や受遺者など)が家庭裁判所に対して遺言執行者の選任を申し立てることができます(民法第1010条前段)。家庭裁判所は、申立てを受けて適切な者を選任します。

【実務上のアドバイス】遺言書を作成する段階で、遺言執行者を誰にするかを決めておくことが理想的です。特に財産が多い場合や相続人間の関係が複雑な場合は、弁護士など専門家を遺言執行者に指定しておくと、スムーズな遺言執行が期待できます。

2019年民法改正で拡大した遺言執行者の権限

2019年(令和元年)7月1日に施行された改正民法により、遺言執行者の権限は大幅に明確化・拡大されました。主な改正点は以下のとおりです。

(1)地位の明確化

改正前の民法第1015条は「遺言執行者は相続人の代理人とみなす」と規定していましたが、遺言は必ずしも相続人全員の利益に沿った内容ではないため、「相続人の代理人」という表現は適切でないとの批判がありました。改正後は「遺言執行者はその任務を行うにあたっては、相続人のためにこれをする」(民法第1015条)とされ、遺言者の意思を実現する立場であることが明示されました。

(2)特定財産承継遺言における権限の明確化

「相続させる」旨の遺言(特定財産承継遺言)が行われた場合に、遺言執行者が対抗要件を具備する行為(登記申請など)を行うことができることが明文化されました(民法第1014条第2項)。改正前は実務上争いがありましたが、改正後は明確に権限が認められています。

(3)預貯金に関する権限の明確化

預貯金について特定財産承継遺言がなされた場合、遺言執行者は単独で預貯金の払い戻し・解約申入れ・対抗要件具備行為(通知・承諾)を行うことができます(民法第1014条第3項)。

(4)復任権の緩和

改正前は、遺言執行者は自ら任務を行うことが原則で、第三者に任せることは原則禁止でした。改正後は、遺言者が禁止の意思を示していない限り、自己の責任のもとで第三者(復受任者)にその任務を行わせることが可能となりました(民法第1016条)。

遺言執行者の義務と報酬

遺言執行者には、法律上のいくつかの義務が課されています。主なものとして、①就任後速やかに相続財産の目録を作成して相続人に交付する義務(民法第1011条第1項)、②相続人から遺言執行に関する状況について請求があった場合の報告義務、③任務終了後の計算・報告義務などが挙げられます。これらを怠ると、損害賠償責任を負う場合があります。

遺言執行者の報酬については、遺言書に報酬額の定めがある場合はその額に従い、定めがない場合は家庭裁判所が遺産の状況などを考慮して定めます(民法第1018条)。専門家(弁護士・司法書士等)を遺言執行者とした場合の報酬の目安は、遺産総額の1〜3%程度とされることが多い傾向にありますが、財産の種類・複雑さ・業務量によって異なります。

遺言執行者に関するよくあるトラブルと対処法

① 遺言執行者が職務を怠っている・連絡が取れない

遺言執行者が遺言執行の手続きを長期間放置する、連絡に応じないといったケースがあります。この場合、相続人や受遺者は家庭裁判所に対して遺言執行者の解任を申し立てることができます(民法第1019条第1項)。「その任務を怠ったとき」その他正当な事由がある場合、家庭裁判所は遺言執行者を解任することができます。

② 遺言執行者の中立性への疑念

特定の相続人が遺言執行者となっている場合、他の相続人から「自分に有利な扱いをしているのではないか」と疑われることがあります。遺言執行者は中立・公正な立場で職務を行う義務があります。疑念が拭えない場合は、弁護士などの専門家への引継ぎを含め、家庭裁判所での解任申立ても検討されます。

③ 相続人による妨害行為

前述のとおり、遺言執行者が選任されると、相続人は遺言執行を妨げる行為をすることができません(民法第1013条)。にもかかわらず、相続人が勝手に預貯金を引き出したり不動産を処分したりしようとする場合、遺言執行者はこれを阻止し、無効を主張することが可能です。横浜をはじめ各地で、こうした紛争が弁護士を通じて解決されるケースが見られます。

④ 遺言の有効性・内容をめぐる紛争

遺言の有効性や解釈をめぐって相続人間で争いが生じることがあります。この場合、弁護士が遺言執行者であるときは、特定の相続人の代理人として他の相続人と争うことは利益相反となるため、遺言執行者と代理人の両立ができない場合があります。相続人が遺言について争う場合は、別途弁護士に相談することが必要です。

弁護士を遺言執行者に指定するメリット

実務上、弁護士を遺言執行者に指定することには多くのメリットがあります。第一に、相続人間の感情的な対立を避けながら、中立的な立場で迅速に手続きを進めることができます。第二に、不動産登記・預貯金の解約・株式の名義書換えなど、専門的な手続きをミスなく行うことができます。第三に、手続きの過程で相続人から異議申立てや問い合わせがあった場合にも、適切に対処することができます。

一方で、専門家報酬がかかる点はデメリットといえます。ただし、相続人間でトラブルが発生した場合の解決コストや精神的負担を考えると、専門家を活用することは長期的にみて合理的な選択といえる場合が多いでしょう。

まとめ:遺言執行者の選定は遺言書作成時から慎重に

遺言執行者は、遺言者の最後の意思を確実に実現するために欠かせない存在です。適切な遺言執行者が選ばれていれば、相続手続きはスムーズに進み、相続人間のトラブルを防ぐ大きな力になります。逆に、遺言執行者の選定が不適切であったり、遺言書に遺言執行者の記載がない場合は、手続きが滞ったり紛争が長期化したりするリスクがあります。

遺言書を作成する際は、遺言執行者を誰にするかについても、相続の専門家である弁護士に相談したうえで慎重に検討されることをおすすめします。すでに相続が発生し、遺言の執行に関してトラブルが生じている場合も、早期に横浜の弁護士など専門家へ相談することが問題解決への近道です。

遺言執行者の選定・遺言書作成・相続トラブルについてのご相談はタングラム法律事務所へ

タングラム法律事務所では、相続や遺留分侵害額請求の事案について豊富な実績を有しております。遺言執行者の選任・遺言書の作成から、遺言執行をめぐるトラブル対応まで、横浜の弁護士が丁寧にサポートいたします。初回のご相談はお気軽にご予約ください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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