BitTorrentの意見照会書の回答書の書き方|不同意の理由と注意点
BitTorrentの意見照会書の回答書の書き方|不同意の理由と注意点
執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月18日 最終更新日:2026年10月18日
プロバイダから届いた「発信者情報開示請求に係る意見照会書」。BitTorrent(トレント)で動画を共有したとして、著作権者があなたの氏名・住所の開示を求めているという内容です。同封の回答書には「開示に同意する・しない」の欄と理由を書く欄がありますが、何をどこまで書けばよいのか分からず、期限だけが迫ってくる——そんな状況の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、BitTorrent事案の回答書について、回答書がどのように扱われるのか、「同意しない理由」として検討される観点、裁判例から見える有効な書き方と避けるべき書き方を、発信者側の立場から解説します。
結論から言えば、BitTorrent事案の回答書で「同意しない」とだけ書いても、それだけで開示が止まることは期待できません。発信者の同意は開示命令の要件ではなく、裁判所は具体的な事情が示されているかを見ています。家族との回線共用や調査結果との食い違いなど、自分の事情に即した具体的な理由を、不利な事実を不用意に認めない形で書くことが重要です。
BitTorrentの意見照会書と回答書の法的な位置づけ
意見照会書は、情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法。旧プロバイダ責任制限法)6条1項に基づくものです。開示請求を受けたプロバイダは、原則として発信者の意見を聴かなければならず、開示に応じるべきでないとする場合にはその理由も聴くこととされています。
ただし、これはプロバイダの義務であって、発信者の同意が開示の条件になるわけではありません。東京地方裁判所令和8年3月24日判決(令和7年(ワ)第70593号)も、BitTorrent事案の開示命令に対する異議の訴えで、この点を明確にしています。不同意と回答した後の手続についてはBitTorrent意見照会に不同意回答した後の流れで詳しく解説しています。
回答書の基本構成と3つの選択肢
回答書の書式はプロバイダごとに異なりますが、おおむね次の構成です。
| 回答 | その後の展開 |
|---|---|
| 開示に同意する | プロバイダが任意に開示し、権利者から損害賠償請求(示談の提案)が届くのが通常 |
| 開示に同意しない(理由を記載) | プロバイダは任意開示を控えるのが通常。権利者が裁判所に開示命令を申し立てるかを判断する |
| 回答しない | 意見を述べる機会を失ったまま手続が進む |
不同意の理由欄は自由記載であることが多く、ここに何を書くかが回答書の中心になります。
「同意しない理由」として検討される5つの観点
BitTorrent事案で開示が認められるには、権利侵害が明らかであること(情プラ法5条1項1号)と、開示を受ける正当な理由があること(同項2号)が必要です。不同意の理由も、この要件に沿って整理します。
- 発信者性——記載の日時に回線を使っていたのは誰か。家族・同居人・来客との共用、Wi-Fiの設定状況など
- 調査の正確性——記載のIPアドレス・タイムスタンプが自分の利用状況と整合するか
- 侵害行為の内容——対象ファイルのピースを実際に保有・送信できる状態にあったといえるか
- 権利の帰属——請求者が本当にその作品の著作権者か
- 正当な理由——開示を受ける必要性があるか
裁判例を見ると、大阪地方裁判所令和5年6月29日判決(令和4年(ワ)第1840号)は、監視ソフトの記録の一部にプロバイダ側のログと対応しないものがあったことや、保有していたピースの量が不明であることなどから、権利侵害が明らかとはいえないとして開示請求を棄却しました。
一方、知的財産高等裁判所令和6年6月26日判決(令和5年(ネ)第10095号)は、ピースは元のファイルを復元するシステムの一環として送受信されるものであり、個々のピース単独で再生できなくても公衆送信権(送信可能化権)の侵害を認めるべきだとして、開示を命じました。監視ソフトの正確性を争う主張も、抽象的なものにとどまるとして退けています。現在の実務では、ピースの共有であっても開示が認められる方向にあると考えておくべきでしょう。
抽象的な不同意理由は採用されにくい
前述の令和8年3月24日判決では、プロバイダが発信者の不同意回答を証拠として提出しましたが、回答者が侵害者でないことを示す具体的事情はないとして、採用されませんでした。
「身に覚えがない」「BitTorrentを使ったことはない」と書くだけでは、判断材料として重視されにくいということです。たとえば、記載の日時は出張中で自宅に誰もいなかった、同居家族の端末にソフトが入っていた、ルーターのパスワードを設定していなかったなど、確認できる具体的事実を挙げられるかどうかが分かれ目になります。心当たりがない場合の考え方はBitTorrent開示請求に心当たりがない時の対処法もご覧ください。
回答書を書くときの注意点
- 不利な事実を不用意に書かない——「以前ダウンロードしたことはある」「すぐ削除した」などの記載は、後の損害賠償請求で侵害を認めた資料として使われるおそれがあります
- 事実に反することは書かない——客観的な資料と矛盾すれば、回答全体の信用性を失います
- 複数届いた場合は内容をそろえる——作品ごとに説明が食い違うと、いずれの回答も信用されにくくなります
- 期限内に返送し、控えを残す——回答期限は2週間程度とされることが多く、提出した内容は今後の対応の前提になります
- 権利者に直接連絡しない——自ら名乗り出ることになり、開示手続を経ずに身元を知られる結果になります
なお、実際にダウンロード・共有をしていた場合、不同意で時間を稼ぐことが常に得策とは限りません。開示後の示談交渉を見据えて方針を決めることも選択肢です。当事務所の意見照会対応のページでは、こうした方針の立て方も紹介しています。
自分で書く場合の限界と弁護士に依頼するメリット
回答書は自分で書くこともできます。基本的な構成は意見照会書の回答書を自分で書く方法でも解説していますが、BitTorrent事案では、調査方法やピースの扱いといった技術的な論点と、開示後の示談交渉を見越した書き方の判断が求められます。
弁護士に依頼すれば、事情を聴き取ったうえで、書くべきことと書くべきでないことを整理した回答書を作成し、開示された場合の示談交渉まで一貫して対応できます。BitTorrentの意見照会書への対応の流れは、BitTorrent著作権侵害の意見照会対応の特設ページでもまとめています。
よくある質問
回答書に「同意しない」とだけ書いて返送してもよいですか。
返送すること自体はできますが、理由が書かれていない、または抽象的な理由だけの回答は、開示の可否の判断で重視されにくいと考えられます。自分の事情に即した具体的な理由を記載することが望ましいでしょう。
回答書の内容は権利者に知られますか。
開示命令の手続で、プロバイダが回答書を裁判所に提出することがあり、その場合は権利者側の目に触れる可能性があります。権利者に読まれても不利にならない内容かを意識して書くことが大切です。
ピースを共有しただけでも開示は認められますか。
認められる可能性があります。知的財産高等裁判所令和6年6月26日判決は、個々のピースが単独で再生できなくても、元のファイルを復元するシステムの一環として送受信されている以上、送信可能化権の侵害を認めるべきだと判断しています。
回答期限に間に合わない場合はどうすればよいですか。
期限内にプロバイダへ連絡し、延長が可能か確認する方法があります。延長が認められるとは限らないため、届いたらできるだけ早く準備を始めてください。
まとめ
BitTorrentの意見照会書に対する回答書は、発信者が自分の言い分を伝えられる重要な機会ですが、同意しないと書くだけで開示が止まるわけではありません。発信者性や調査結果との食い違いなど、具体的な事情を、不利な事実を不用意に認めない形で書くことが大切です。
どこまで争うべきか、開示を前提に示談を見据えるべきかは、事情によって異なります。回答書を出す前に、横浜のタングラム法律事務所など、BitTorrent事案を扱う弁護士に相談することをおすすめします。
BitTorrentの意見照会書が届いた方へ
タングラム法律事務所(横浜)では、BitTorrentによる著作権侵害を理由とする発信者情報開示請求の意見照会対応について、豊富な取扱い実績を有しております。回答期限が迫っている場合も、お早めにご相談ください。
法律相談の予約はこちら※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。