不貞慰謝料の請求は行政書士に頼める?弁護士との違いを解説
不貞慰謝料の請求は行政書士に頼める?弁護士との違いを解説
不貞慰謝料を請求したい、あるいは請求されてしまった——そう考えて相談先を探すと、弁護士のほかに行政書士、司法書士、探偵(調査会社)といった肩書きが目に入ります。「内容証明を格安で作成します」「示談交渉までサポートします」といった広告を前に、どこに頼めばよいのか迷う方は少なくありません。
これらの専門職が扱える業務の範囲は、法律によってはっきりと線が引かれています。その線を越えた依頼をすると、費用を払ったのに手続が途中で止まるといった不利益が依頼者側に及ぶこともあります。この記事では「誰に何を頼めるのか」を、弁護士法72条をはじめとする現行の条文に沿って横浜の弁護士が整理します。
不貞慰謝料の相談先として挙がる4つの専門職
不貞慰謝料の事案でよく名前が挙がるのは、弁護士・司法書士・行政書士・探偵の4つです。それぞれが扱える業務は、おおむね次のように整理できます。
| 職種 | 事実の調査 | 書類の作成 | 相手方との交渉の代理 | 訴訟・調停の代理 |
|---|---|---|---|---|
| 弁護士 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 認定司法書士 | × | ○(裁判所提出書類等) | △(140万円以下) | △(簡易裁判所・140万円以下) |
| 行政書士 | × | ○(権利義務に関する書類) | × | × |
| 探偵(調査会社) | ○ | 調査報告書のみ | × | × |
表のとおり、金額を決める「交渉」と裁判所での手続を代理できるのは、原則として弁護士だけです。以下、その根拠を具体的に見ていきます。
交渉を代理できるのは弁護士だけ——弁護士法72条
弁護士法72条は、「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件……その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない」と定めています(他の法律に別段の定めがある場合を除きます)。
不貞慰謝料の請求は、当事者間に争いがある「法律事件」の典型です。慰謝料額や求償権の扱い、接触禁止条項を入れるかといった交渉は、同条にいう「代理」「和解」「その他の法律事務」にあたります。
同法77条3号は、72条に違反した者を2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金に処すると定めています。さらに最高裁昭和38年6月13日判決(民集17巻5号744頁)は、同条本文前段に抵触する委任契約は民法90条に照らして無効であると判示しました。
行政書士に依頼できること・できないこと
行政書士法1条の3は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することを業とすると規定しています。内容証明郵便や示談書は「権利義務に関する書類」にあたるため、その作成自体は行政書士の業務に含まれると解されています。
また同法1条の4第1項は、書類の作成を代理人として行うこと(3号)や、作成について相談に応ずること(4号)を掲げていますが、その柱書はただし書で「他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない」としています。ここで働くのが弁護士法72条です。
書面の作成と、その後の交渉は別物
「内容証明の文面を作ってもらう」ことと「相手方との窓口になって金額を詰めてもらう」ことは、法的に別の話です。後者は弁護士法72条にいう法律事務にあたり得るため、報酬を得て行うことはできないと解されています。
実務でよくあるのは、内容証明を送った後に相手方から反論が来た、相手方に弁護士がついた、という段階で対応の担い手がいなくなってしまうケースです。費用を抑えるためにご自身で書面を送る方法については、不貞慰謝料の内容証明を自分で作成・送付する方法の記事で手順を解説しています。
認定司法書士に依頼できる範囲は「140万円」が境目
法務大臣の認定を受けた司法書士(認定司法書士。司法書士法3条2項)は、同条1項6号・7号により、裁判所法33条1項1号に定める額=140万円を超えない範囲で交渉や訴訟の代理ができます。
- 簡易裁判所における訴訟・調停・支払督促などの手続の代理(3条1項6号)
- 紛争の目的の価額が140万円を超えない民事紛争についての相談、裁判外の和解の代理(3条1項7号)
不貞慰謝料は、事案によっては請求額が140万円を超えます。訴額が140万円を超える事件は地方裁判所の管轄となり、認定司法書士は訴訟代理人になれません。手続の選び方は不貞慰謝料の調停を自分で申し立てる方法の記事もあわせてご覧ください。
探偵(調査会社)は「事実」を扱い、「法律」は扱わない
探偵業法(探偵業の業務の適正化に関する法律)2条1項は、探偵業務を「他人の依頼を受けて、特定人の所在又は行動についての情報……を収集することを目的として面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務」と定義しています。探偵業を営むには都道府県公安委員会への届出が必要です(同法4条1項)。
つまり探偵が担うのは、あくまで事実の調査と報告です。集めた資料が不貞行為の立証に足りるか、慰謝料額としていくらが妥当かという判断は法律事務の領域にあたります。「調査から慰謝料回収までワンストップ」との説明を受けたときは、交渉を誰が担当するのかを必ず確認してください。報告書の証拠価値については、探偵の調査報告書は不貞の証拠になるかの記事で詳しく述べています。
状況別・相談先の選び方
請求する側の場合
証拠がそろい、相手方も事実を認め、金額にも争いがないのであれば、示談書の作成だけを専門職に頼む選択もあり得ます。しかし、相手方が不貞を否認している、金額に開きがある、婚姻関係が破綻していたと反論されている——このいずれかに当てはまる時点で、交渉は「法律事件」の性格を帯びます。当事務所の対応内容は不貞慰謝料請求の取扱いページにまとめています。
請求された側の場合
請求を受けた側は、そもそも支払義務があるのか、金額が過大でないか、消滅時効が完成していないかなど、検討すべき論点が多岐にわたります。請求書の振込期限に追われて安易に応じると、後から減額を求めることは困難です。費用対効果の考え方は不貞慰謝料を請求されたら弁護士に依頼すべきかの記事で整理しており、費用は弁護士費用のページでご確認いただけます。夜職・パパ活に関連する請求を受けた方向けには、夜職・パパ活の不倫慰謝料請求への対応の特設ページもご用意しています。
よくある質問
行政書士に不貞慰謝料の内容証明の作成を依頼できますか。
内容証明そのものの作成は、行政書士法1条の3にいう「権利義務に関する書類」の作成として行政書士の業務に含まれると解されています。もっとも、送付後に相手方との窓口となって金額を交渉することは、弁護士法72条にいう法律事務にあたり得るため、報酬を得て行うことはできないと解されています。
行政書士や司法書士が「相手と話をつける」と言っています。問題はありませんか。
報酬を得る目的で、資格の範囲を超えて示談交渉を代理することは弁護士法72条に違反する可能性があります。同法77条3号は違反者を2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金に処すると定めており、最高裁昭和38年6月13日判決(民集17巻5号744頁)は同条本文前段に抵触する委任契約を民法90条により無効としています。
認定司法書士に不貞慰謝料の請求を依頼できますか。
法務大臣の認定を受けた司法書士は、司法書士法3条1項6号・7号により、紛争の目的の価額が140万円(裁判所法33条1項1号)を超えない範囲で、簡易裁判所の手続や裁判外の和解を代理できます。不貞慰謝料は請求額がこの額を超えることも少なくなく、その場合は代理を依頼できません。
探偵に「慰謝料請求までサポートする」と言われました。依頼してよいですか。
探偵業務は、探偵業法2条1項により、特定人の所在または行動についての情報を実地の調査で収集し依頼者に報告する業務と定義されています。事実の調査は探偵の役割ですが、慰謝料額の算定や相手方との交渉は法律事務にあたり得るため、探偵が報酬を得て行うことはできないと解されています。
まとめ
不貞慰謝料をめぐる相談先の違いは、次の3点に集約されます。
- 交渉の代理と地裁・家裁での代理ができるのは弁護士だけ(弁護士法72条)
- 認定司法書士は140万円以下の紛争に限って交渉・簡裁代理ができる(司法書士法3条1項6号・7号)
- 行政書士は書類の作成、探偵は事実の調査を担い、いずれも交渉の代理はできない
不貞慰謝料の事案は、証拠の評価・金額の見通し・時効・示談書の条項が互いに絡み合っています。書面の作成だけを切り出して安価に済ませたつもりが、その後の交渉で不利な立場に立たされることもあります。まずは全体像を法律家に見てもらい、どの手続で解決を目指すのかを決めてから動くのが確実です。
不貞慰謝料の請求・対応でお困りの方へ
タングラム法律事務所では、横浜を拠点に、不貞慰謝料を請求する側・請求された側の双方について、交渉から訴訟まで一貫して対応しております。他の専門職に依頼したものの交渉が進まなくなったというご相談も承ります。
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