不貞慰謝料の調停を自分で申し立てる方法|申立書と費用を弁護士が解説
不貞慰謝料の調停を自分で申し立てる方法|申立書と費用を弁護士が解説
配偶者の不貞行為が発覚し、不倫相手に慰謝料を請求したい。けれど、いきなり訴訟を起こすのはハードルが高い——。そう考えている方の選択肢のひとつが「民事調停」です。裁判所という中立の場で調停委員を交えて話し合う手続で、訴訟よりも費用が安く、非公開で進められます。
この記事では、不貞慰謝料の請求を自分(本人)で調停を申し立てたい方に向けて、申立先の裁判所、申立書の書き方、手数料の目安、当日の流れ、合意成立・不成立それぞれの効果までを、裁判所の公式情報をもとに横浜の弁護士が解説します。あわせて、本人で進める場合の限界にも触れます。
不貞慰謝料の「調停」とは?訴訟との違い
民事調停は、裁判官(または民事調停官)1名と、一般から選ばれた調停委員2名以上で構成される「調停委員会」が間に入り、双方の言い分を聞きながら話し合いによる解決を目指す手続です。勝ち負けを裁判所が判断する訴訟とは異なり、当事者の合意による解決を目指す点が最大の特徴です。
不貞慰謝料の場面で調停を選ぶメリットには、次のような点があります。
- 費用が安い:申立手数料は訴訟の半額です。
- 非公開:非公開の部屋で当事者が交互に事情を聞かれるため、相手と直接顔を合わせずに進めやすい運用です。
- 柔軟な解決:金額だけでなく、分割払いや接触禁止など、実情に応じた条件を決められます。
- 合意には強い効力:成立した合意は、裁判上の和解と同一の効力を持ちます。
一方で、調停はあくまで話し合いですから、相手方が出頭しない、合意に応じない場合には成立しません。判決で決着をつけられる訴訟との大きな違いです。
どこに申し立てる?民事調停と家事調停の区別
まず押さえておきたいのが、「誰に請求するか」で利用する手続と裁判所が変わる、という点です。
| 請求の相手 | 手続の種類 | 申立先 |
|---|---|---|
| 不倫相手(第三者)への慰謝料 | 民事調停 | 原則、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所 |
| 配偶者への慰謝料(離婚を伴う) | 家事調停(夫婦関係調整調停など) | 相手方の住所地を管轄する家庭裁判所 |
不倫相手だけに慰謝料を請求するケースでは、簡易裁判所の民事調停を利用します。申立先は、原則として相手方(不倫相手)の住所地を管轄する簡易裁判所ですが、当事者間の合意があれば、別の簡易裁判所に申し立てることもできます。管轄裁判所は、裁判所ウェブサイトの「各地の裁判所」で調べられます。
これに対し、配偶者と離婚したうえで慰謝料も求めたいという場合は、家庭裁判所の家事調停で慰謝料を含めて話し合うのが一般的です。離婚調停と慰謝料を一緒に進めたい方は、離婚調停と不貞慰謝料請求を同時に進める方法も参考になります。以下では、不倫相手に対する民事調停を前提に説明します。
申立てに必要な書類と費用
必要な書類
東京簡易裁判所の案内などによると、民事調停の申立てには一般に次のものが必要です(裁判所により細部が異なる場合があります)。
- 調停申立書の正本および副本:正本1通と相手方の人数分の副本が必要です。書式は裁判所ウェブサイトの「民事調停で使う書式」からダウンロードでき、汎用の書式・記載例も公開されています。
- 資料(証拠)の写し1部:不貞の事実や請求額の根拠となる資料の写しを添えます。
- 収入印紙:申立手数料として正本に貼付します。
- 郵便切手:連絡用として、手数料とは別に納めます。
申立ては裁判所の窓口に持参するほか、郵送で行うこともできます。印鑑は認め印で足りますが、各ページの余白に捨印を押しておくと、軽微な訂正に対応しやすくなります。
申立書に書く主な内容
汎用の民事調停申立書には、おおむね次のような事項を記載します。
- 申立人・相手方の氏名、住所
- 「申立ての趣旨」(求める内容。例:慰謝料として○○円の支払いを求める)
- 「紛争の要点(申立ての理由)」(いつ・どのような不貞行為があり、どのような経緯で請求に至ったか)
紛争の要点は、感情的な記述に終始せず、時系列に沿って事実を簡潔に整理することが大切です。提出できる資料(メッセージ、写真、報告書など)があれば、その存在にも触れておくとよいでしょう。
手数料(収入印紙)の目安
民事調停の申立手数料は、請求する金額(訴額)に応じて決まり、訴訟を起こす場合の半額とされています。裁判所の「手数料額早見表」による目安は次のとおりです。
| 請求額 | 調停の申立手数料 | (参考)訴訟の手数料 |
|---|---|---|
| 100万円 | 5,000円 | 10,000円 |
| 150万円 | 6,500円 | 13,000円 |
| 200万円 | 7,500円 | 15,000円 |
| 300万円 | 10,000円 | 20,000円 |
このほかに連絡用の郵便切手が別途必要で、金額と内訳は当事者の人数や裁判所によって異なるため、申立先の簡易裁判所に確認するのが確実です。なお、不貞慰謝料の相場は離婚に至らない場合で50万〜150万円程度、離婚に至る場合で150万〜300万円程度が一つの目安とされますが、婚姻期間や不貞の態様によって幅があります。
調停申立てから解決までの流れ
申立てから終了までの一般的な流れは次のとおりです。
1. 申立て・期日の指定
申立書を提出すると、裁判所が第1回の調停期日を指定し、当事者双方に呼出状が送られます。申立てから第1回期日までは、おおむね1か月前後が一つの目安です。
2. 調停期日での話し合い
期日には、調停委員会が申立人・相手方から交互に事情を聞き取り、双方の主張を整理しながら歩み寄りを促します。1回で終わることは少なく、2回、3回と期日を重ねて話し合いを進めるのが通常です。
3-A. 合意が成立した場合(調停成立)
話し合いがまとまると、その内容が調停調書に記載され、調停が成立します。調停調書は裁判上の和解と同一の効力を持ち、相手方が約束どおり支払わない場合には、あらためて訴訟を起こさなくても、これを債務名義として強制執行を申し立てることができます。慰謝料の分割払いや接触禁止条項などを盛り込むこともできます。
3-B. 合意に至らない場合
相手方が出頭しない、または条件が折り合わない場合には、調停は不成立として終了します。もっとも、裁判所が相当と認めるときは、民事調停法17条に基づき「調停に代わる決定(17条決定)」がなされることがあります。この決定は、告知を受けてから2週間以内に当事者から異議の申立てがなければ、裁判上の和解と同一の効力を持ちます。異議が出れば決定は効力を失い、調停は不成立となります。
本人で調停を進める場合の注意点と限界
民事調停は、書式や手続案内が公開されており、本人でも申立て・出席が可能な利用しやすい手続です。とはいえ、実際に進めると次のような場面で判断に迷うことが少なくありません。
- 適正額の見極めが難しい:慰謝料は事情により幅があり、相場より低い金額で合意すると、後から増額を求めるのは困難です。
- 合意内容(条項)の作り込み:清算条項、求償権の取扱い、接触禁止・違約金、口外禁止などの定め方で、後日のトラブルを防げるかが変わります。調停調書の文言は確定後の修正が難しくなります。
- 相手方に弁護士がついた場合:相手が代理人を立てると、交渉の力関係に差が生じやすくなります。
- 証拠の評価:手元の資料で不貞の事実を十分に示せるか、専門的な見極めが必要です。
調停が不成立となり訴訟に移行する可能性を見据えると、はじめから見通しを立てて臨むことが重要です。金額や条件で折り合いがつかない場合や相手方が争う姿勢を見せている場合には、早い段階で弁護士に相談することが、結果的に有利でスムーズな解決につながることがあります。反対に、慰謝料を請求された側で、既婚者と知らなかったなどの事情がある方は、当事務所の不倫慰謝料請求への対応(減額交渉)の特設ページもご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 不貞慰謝料の調停はどこに申し立てますか?
不倫相手(第三者)への慰謝料は、原則として相手方の住所地を管轄する簡易裁判所の民事調停を利用します。当事者間の合意があれば別の簡易裁判所でも可能です。配偶者との離婚に伴う慰謝料は、家庭裁判所の家事調停(夫婦関係調整調停)で扱われます。
Q2. 調停の申立てにかかる費用はいくらですか?
民事調停の申立手数料は訴訟の半額で、請求額に応じて収入印紙で納めます。裁判所の手数料額早見表では、請求額100万円で5,000円、200万円で7,500円、300万円で10,000円が目安です。このほかに連絡用の郵便切手が別途必要で、金額は裁判所や当事者の人数により異なります。
Q3. 相手が調停に来なかったらどうなりますか?
相手方が出頭せず合意も成立しない場合、調停は不成立として終了し、慰謝料を求めるには訴訟を検討することになります。不成立の通知を受けた日から2週間以内に訴えを起こすと、調停申立ての時に訴えを提起したものとみなされます。
Q4. 調停で合意した場合、その内容に強制力はありますか?
調停で当事者間に合意が成立し、その内容が調停調書に記載されると、裁判上の和解と同一の効力を持ちます。相手方が支払わない場合には、あらためて訴訟を起こさなくても、調停調書に基づいて強制執行を申し立てることが可能です。
Q5. 調停は自分だけで進められますか、弁護士は必要ですか?
民事調停は本人でも申立て・出席が可能で、書式や手続案内も裁判所ウェブサイトで公開されています。もっとも、適正額の見極めや証拠の整理、示談条項の作り込みには専門的な判断が必要です。相手方に弁護士がついた場合や条件で折り合いがつかない場合は、弁護士への相談を検討するとよいでしょう。
まとめ
不貞慰謝料の民事調停は、訴訟より費用が安く非公開で柔軟に話し合える手続で、書式も公開されているため本人でも申し立てられます。不倫相手への慰謝料は相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立て、手数料は請求額100万円で5,000円程度が目安です。合意すれば調停調書は裁判上の和解と同一の効力を持ち、不成立でも2週間以内に訴えを起こせば調停申立時にさかのぼって提訴したものとみなされます。もっとも、適正額の判断や合意条項の作り込みなど本人では限界がある場面も多く、方針をあらかじめ弁護士と確認しておくと、より納得のいく解決に近づけます。
不貞慰謝料の調停・請求でお悩みの方へ
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