送信防止措置依頼書の書き方|自分で削除依頼を送る手順を弁護士が解説
送信防止措置依頼書の書き方|自分で削除依頼を送る手順を弁護士が解説
インターネット上に自分や自社を誹謗中傷する投稿を見つけたとき、「弁護士に頼まず、まずは自分で削除してもらえないか」と考える方は少なくありません。実際、投稿の削除を求める最初のステップである「送信防止措置依頼」は、本人が行うことも可能です。その際に使うのが「送信防止措置依頼書」と呼ばれる書面です。
この記事では、送信防止措置依頼書とは何か、テレサ書式を使った書き方、サイト運営者への送り方、必要書類、そして自分で行う場合の限界までを、横浜でネット誹謗中傷対応を扱う弁護士がわかりやすく解説します。
送信防止措置依頼書とは?削除依頼の法的な位置づけ
「送信防止措置」とは、サイト運営者やプロバイダが問題のある投稿を削除したり、閲覧できないようにしたりする措置のことです。送信防止措置依頼書は、権利を侵害された人が運営者に対して「この投稿を削除してほしい」と求める書面をいいます。
この仕組みの根拠は、2025年(令和7年)4月1日に施行された「情報流通プラットフォーム対処法」(旧・プロバイダ責任制限法。以下「情プラ法」)にあります。情プラ法3条2項は、運営者が投稿を削除しても、一定の要件を満たせば投稿者(発信者)に対する損害賠償責任を負わないという「免責」の枠組みを定めています。具体的には、運営者が発信者に削除に同意するか照会し、7日以内に反対の申し出がなければ削除しても責任を問われない、という規定です。
この免責の枠組みがあるため、運営者は権利侵害が明らかなケースでは任意に削除に応じやすくなっています。送信防止措置依頼書は、この任意の削除を促すための書面だと理解するとわかりやすいでしょう。
テレサ書式(モデル書式)とは
送信防止措置依頼書には、法律で定められた決まった様式があるわけではありません。もっとも、一般社団法人テレコムサービス協会などが参加する「プロバイダ責任制限法 名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン等検討協議会」が、ガイドラインとあわせてモデル書式を公表しています。これが実務で広く使われている通称「テレサ書式」です。
テレサ書式は権利侵害の類型ごとに用意されており、名誉毀損・プライバシー侵害に関するものは「侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書(名誉毀損・プライバシー)」という表題になっています。運営者側もこの書式に沿った依頼を想定していることが多いため、自分で削除依頼をする場合も、このモデル書式に沿って作成するのが確実です。
書式そのものは法務省や協議会関連のサイトで公表されているため、最新版を確認したうえで利用してください。
送信防止措置依頼書の書き方——記載する項目
テレサ書式(名誉毀損・プライバシー用)には、おおむね次の項目を記載します。空欄を埋めていく形式ですが、内容の正確さと具体性が削除の成否を左右します。
| 記載欄 | 書く内容 |
|---|---|
| あて先(役務提供者名) | 削除を依頼する相手。サイトの運営会社名やプロバイダ名を記載します。 |
| 権利を侵害されたと主張する者 | 依頼する本人の住所・氏名・連絡先(電話番号・メール等)。 |
| 掲載されている場所(URL) | 問題の投稿が表示されているページのURL。投稿を特定できるよう正確に記載します。 |
| 掲載されている情報 | 削除を求める投稿の内容そのもの。該当箇所を正確に引用します。 |
| 侵害されたとする権利 | 名誉権、プライバシー権など、侵害された権利の種類。 |
| 権利が侵害されたとする理由 | なぜその投稿が違法なのかを具体的に説明する、最も重要な欄です。 |
「侵害されたとする理由」の書き方がカギ
運営者は、依頼書だけを見て削除するかどうかを判断します。したがって「権利が侵害された理由」の欄では、単に「不快だ」「嘘だ」と書くのではなく、次のように整理して書くことが大切です。
- その投稿が、自分に関するものだと特定できること(同定可能性)
- 投稿によってどのような社会的評価の低下やプライバシー侵害が生じているか
- 投稿内容が事実に反すること、または正当な論評の範囲を超えていること
名誉毀損か侮辱か、事実の摘示か意見・論評かによって、違法性の説明の仕方は変わります。感情的な表現を避け、事実に基づいて淡々と記載するほど、運営者に伝わりやすくなります。
送信防止措置依頼書を送る手順
自分で削除依頼を行う場合の一般的な流れは、次のとおりです。
ステップ1:証拠を保全する
依頼書を送る前に、必ず投稿の証拠を保存してください。削除依頼をきっかけに投稿が消えると、後から発信者情報開示請求で損害賠償を求めたいと思っても、権利侵害を立証できなくなるおそれがあります。URL、投稿日時、投稿本文がわかる形でスクリーンショットを撮り、可能であればページ全体を保存しておきましょう。証拠保全の具体的な方法はネット誹謗中傷の初動対応を解説した記事もあわせてご覧ください。
ステップ2:送付先(依頼相手)を確認する
まず削除依頼を「誰に」送るかを確認します。多くの場合、投稿が掲載されているサイトの運営者(コンテンツプロバイダ)が窓口です。運営者の会社名や連絡先は、サイトの「運営者情報」「特定商取引法に基づく表記」「お問い合わせ」ページ等で確認できます。大手プラットフォームでは、専用の削除申請フォームが用意されていることも多く、その場合はフォームからの申請が優先されます。
ステップ3:本人確認書類・証拠資料を用意する
ガイドラインでは、送信防止措置依頼にあたって、本人確認資料(個人は公的な身分証明書の写し、法人は登記事項証明書など)と、権利侵害を示す証拠資料の同封が求められています。なりすましによる不正な削除依頼を防ぐための運用です。フォーム申請の場合も、本人確認を求められることがあります。
ステップ4:依頼書を送付する
書面で郵送する場合は、後日「送った・受け取っていない」という争いを避けるため、内容証明郵便や特定記録郵便など送付の記録が残る方法を使うと安心です。フォーム申請の場合は、申請完了画面や受付メールを保存しておきましょう。内容証明郵便を使った請求の書き方は内容証明郵便で削除・謝罪を求める方法の記事で詳しく解説しています。
ステップ5:運営者の対応を待つ
運営者は依頼を受けて、削除するかどうかを判断します。前述のとおり、発信者に意見照会を行い、7日以内に反対がなければ削除する、という運用がとられることがあります。数日から数週間で結論が出ることが多いですが、対応には幅があります。
自分で削除依頼をする場合の限界と注意点
送信防止措置依頼は本人でも行えますが、次のような限界やリスクがあることを理解しておく必要があります。
| 項目 | 自分で行う場合の注意点 |
|---|---|
| 削除の確実性 | 削除は運営者の任意判断。違法性の説明が不十分だと応じてもらえないことがある。 |
| 投稿者への情報伝達 | 意見照会を通じて依頼内容の一部が投稿者に伝わる場合がある。 |
| 証拠の消失リスク | 証拠保全をせずに削除されると、後の開示請求・損害賠償が困難になる。 |
| 拒否された後の手続 | 任意削除に応じない場合、仮処分など裁判手続が必要で、専門知識を要する。 |
| 投稿者の特定 | 削除だけでは投稿者は特定できない。特定には別途、発信者情報開示請求が必要。 |
特に注意したいのは、「削除」と「投稿者の特定・損害賠償」は別の手続だという点です。削除依頼で投稿を消せても、誰が書き込んだのかを知り、慰謝料を請求するには発信者情報開示請求という別の手続が必要になります。しかも開示請求にはログの保存期間という時間的な制約があり、削除を優先して時間を費やすうちに投稿者を特定できなくなることもあります。削除の次に何を目指すのかは、投稿者特定後の損害賠償請求の流れを解説した記事も参考に、早い段階で方針を決めておくことをおすすめします。
SNSや掲示板でのなりすまし・誹謗中傷への対応については、こちらの特設ページでも削除と発信者情報開示の両面から解説しています。
弁護士に依頼した場合の違い
弁護士に依頼すると、違法性の主張を法的に組み立てて依頼書を作成できるため、運営者に削除の必要性が伝わりやすくなります。任意の削除に応じてもらえない場合も、そのまま投稿削除の仮処分や発信者情報開示請求へ切れ目なく移行でき、削除と投稿者特定を並行して、証拠が消える前に手を打てる点が本人対応との大きな違いです。投稿者に氏名・住所を知られたくない、相手が身近な人物で対応に不安があるといった場合も、弁護士が窓口となることで直接のやり取りを避けられます。横浜のタングラム法律事務所でも、削除から発信者情報開示、損害賠償までを一貫してお引き受けしています。
よくある質問
送信防止措置依頼書は自分で送っても効果はありますか?
本人が送ることも可能です。テレサ書式に沿って必要事項と証拠を整えれば、サイト運営者やプロバイダが任意に削除に応じるケースもあります。ただし削除は運営者の任意判断であり、必ず応じてもらえるわけではありません。応じない場合は仮処分など裁判上の手続を検討することになります。
送信防止措置依頼書に決まった書式(ひな形)はありますか?
一般社団法人テレコムサービス協会などが参加する協議会が、プロバイダ責任制限法(現・情報流通プラットフォーム対処法)のガイドラインとともにモデル書式(通称テレサ書式)を公表しています。「侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書」がこれにあたり、名誉毀損・プライバシー用や著作権用など類型ごとに用意されています。
依頼書を送ると相手(投稿者)に自分の氏名や住所が伝わりますか?
運営者が送信防止措置を検討する際、投稿者に対して削除に同意するかを照会(意見照会)することがあります。この照会で依頼内容の一部が投稿者に伝わる場合があるため、氏名・住所を投稿者に知られたくない事情がある場合は、送付前に弁護士に相談することをおすすめします。
自分で削除依頼をすると発信者情報開示に不利になりますか?
削除依頼自体が開示に不利になるわけではありません。ただし削除を急ぐあまり証拠(URL・投稿日時・スクリーンショット等)を保存しないまま投稿が消えると、後日の発信者情報開示請求で権利侵害を立証しにくくなります。削除依頼の前に必ず証拠を保全してください。
送信防止措置依頼書を送っても削除されない場合はどうすればよいですか?
任意の削除依頼に応じてもらえない場合は、裁判所に投稿削除の仮処分を申し立てる方法があります。また投稿者を特定して損害賠償を求めたい場合は、あわせて発信者情報開示請求を検討します。これらの手続は要件審査が厳格なため、弁護士への相談が現実的です。
まとめ
送信防止措置依頼書は、誹謗中傷の投稿削除を求める最初のステップであり、テレサ書式に沿って作成すれば本人でも送ることができます。ポイントは、(1)送付前に必ず証拠を保全すること、(2)「権利が侵害された理由」を事実に基づいて具体的に書くこと、(3)本人確認書類と証拠資料を同封すること、そして(4)削除と投稿者特定は別の手続であると理解しておくことです。
もっとも、運営者が任意の削除に応じない場合や、投稿者を特定して損害賠償まで求めたい場合には、仮処分や発信者情報開示請求といった裁判上の手続が必要になり、専門的な判断を要します。自分で進めてみて難しいと感じたときや、証拠が消える前に確実に手を打ちたいときは、早めに弁護士へ相談することが、被害の拡大を防ぐ近道です。
削除依頼から投稿者の特定・損害賠償まで、横浜の弁護士にご相談ください
タングラム法律事務所では、ネット誹謗中傷に関する発信者情報開示請求・削除請求・損害賠償請求について、豊富な実績を有しております。ご自身での削除依頼が難しい場合や、削除に応じてもらえない場合も、削除と投稿者特定を一貫してサポートいたします。
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