無断欠勤が続く社員への対応|音信不通・解雇の手順を弁護士が解説
無断欠勤が続く社員への対応|音信不通・解雇の手順を弁護士が解説
執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月1日 最終更新日:2026年10月1日
「社員が連絡もなく出社しなくなった」「電話にもLINEにも反応がない」——横浜の当事務所にも、中小企業の経営者や人事担当者からこのようなご相談が寄せられます。「もう解雇してしまいたい」と考えるのは自然なことです。
しかし、手順を誤ると、後に解雇無効を主張され、未払い賃金を請求されるおそれがあります。この記事では、無断欠勤・音信不通の社員への対応を、初動から解雇・退職手続まで順を追って解説します。
結論として、無断欠勤が続く社員には、まず安否確認と書面による出勤督促を行い、その経過を記録に残すことが出発点です。そのうえで、欠勤の理由(特にメンタル不調の可能性)を確認し、就業規則に基づいて解雇や退職の手続を進めます。連絡がつかず解雇通知が届かない場合に備え、就業規則の規定や公示による意思表示の利用も検討しておく必要があります。
無断欠勤が始まったら最初にすべきこと|安否確認と記録
無断欠勤が始まった直後に会社が最優先すべきなのは、解雇の検討ではなく本人の安否確認です。急病や事故の可能性もあるためです。
- 本人の携帯電話・メール・社内チャット等へ連絡する
- 入社時に届け出のあった緊急連絡先・身元保証人に連絡する
- 必要に応じて複数名で自宅を訪問する
- 安否が強く懸念される場合は、家族とも相談のうえ警察への相談を検討する
あわせて、いつ・誰が・どの方法で連絡し、どのような結果だったかを時系列で記録しておきます。この記録は、後に解雇の有効性が争われた場合や、解雇予告除外認定を申請する場合に重要な資料となります。
出勤督促は書面で|メール・内容証明郵便の活用
次に出勤を求める督促を行います。電話だけでは証拠に残りにくいため、メールと書面の両方で行うのが望ましいといえます。
| 督促の方法 | 特徴・注意点 |
|---|---|
| メール・SMS・社内チャット | 送信日時が残る。既読の有無も参考になる |
| 内容証明郵便(配達証明付き) | 送付した文面と配達日を証明できる。解雇の前段階で特に有効 |
督促書面には、無断欠勤の事実、出勤または欠勤理由の連絡の期限、連絡がない場合は就業規則に基づき処分を検討することを明記します。期限を区切った督促に応じなかった経過が、後の判断の重要な根拠になります。
無断欠勤を理由とする解雇・懲戒解雇の要件
解雇には「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には無効となります(労働契約法16条)。懲戒解雇の場合はさらに、就業規則に懲戒の種別と事由が定められ、周知されていることが前提となり(最高裁平成15年10月10日判決・フジ興産事件)、懲戒権の濫用に当たらないことが求められます(労働契約法15条)。懲戒処分全般の手順は懲戒処分の進め方と無効にならない注意点でも解説しています。
「何日で解雇できるか」に法律上の決まりはない
無断欠勤が何日続けば解雇できる、という明文の規定はありません。実務上の目安とされているのが、労働基準監督署長の解雇予告除外認定に関する行政基準(昭和23年11月11日基発第1637号、昭和31年3月1日基発第111号)で、労働者の責めに帰すべき事由の例として「原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合」が挙げられています。
もっとも、これは予告手当なしの即時解雇の可否に関する基準であり、2週間経過すれば当然に解雇が有効になるわけではありません。
メンタル不調が疑われる場合は特に慎重に
無断欠勤の背景に精神的な不調があるケースは珍しくありません。参考になるのが最高裁平成24年4月27日判決(日本ヒューレット・パッカード事件)です。
この事件で最高裁は、精神的な不調が原因と考えられる欠勤について、会社は精神科医による健康診断を実施するなどしたうえで、治療を勧め、休職等の処分を検討してその後の経過を見るなどの対応をとるべきであったとして、無断欠勤を理由とする諭旨退職処分を無効と判断しました。
したがって、メンタル不調の兆候があった場合には、懲戒処分を急がず、受診の勧奨や休職制度の適用を先に検討することが重要です。
音信不通で解雇通知が届かない場合の「退職」の扱い
意思表示は、その通知が相手方に到達した時から効力を生じます(民法97条1項)。そのため、本人が行方不明で解雇通知が届かない場合、解雇の効力が生じないという問題が起こります。
就業規則の「行方不明時の退職」規定
実務上よく用いられるのが、就業規則に「行方不明となり、〇日以上連絡が取れないときは、その期間が満了した日をもって退職とする」といった自然退職の規定を置く方法です。この規定があれば、解雇の意思表示を到達させなくても、所定の期間経過により退職として扱う根拠になります。規定の周知と期間の合理性が前提となるため、早めに整備しておくべきでしょう。
公示による意思表示
規定がない場合には、相手方の所在を知ることができないときに利用できる公示による意思表示(民法98条)があります。相手方の最後の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立て、裁判所の掲示等による公示を行うと、所定の期間(現行法では官報への掲載等から2週間)の経過により、意思表示が到達したものとみなされます。公示の方法はIT化に伴う法改正で見直される予定があるため、利用時は裁判所に確認するのが確実です。
退職・解雇が確定した後の事務手続
退職・解雇の扱いが確定したら、次の事務手続を漏れなく行います。
| 手続 | 期限・ポイント |
|---|---|
| 健康保険・厚生年金保険の資格喪失届 | 事実発生から5日以内に年金事務所等へ提出(日本年金機構) |
| 雇用保険の資格喪失届・離職証明書 | 被保険者でなくなった日の翌日から10日以内にハローワークへ提出 |
| 最終賃金の支払い | 働いた分の賃金は支払う。本人の請求があれば7日以内に支払う(労働基準法23条)。欠勤日は原則として賃金不発生 |
| 貸与品の返却・私物の扱い | 会社が勝手に処分せず、返送・引取りを書面で求める |
なお、本人が後日、退職代行業者を通じて連絡してくることもあります。その場合の対応は退職代行を使われた会社側の対応を参考にしてください。
問題社員への対応や就業規則の見直しについては、企業法務(顧問・労務・契約書)の取扱分野ページもご覧ください。
無断欠勤・音信不通の社員に関するよくある質問
Q1. 無断欠勤が何日続けば解雇できますか?
法律で「何日で解雇できる」と定めた規定はありません。解雇予告除外認定の行政基準では「原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合」が例示されているため、実務では2週間程度を一つの目安とすることが多いですが、日数だけでなく督促の有無や欠勤理由などを踏まえて解雇の相当性が判断されます。
Q2. 連絡がつかない社員に解雇通知を送っても届かない場合はどうなりますか?
解雇の意思表示は相手方に到達して初めて効力を生じます(民法97条1項)。届かない場合に備え、就業規則に「行方不明のまま一定期間を経過したときは退職とする」旨の規定を置いておく方法や、所在が分からない場合に簡易裁判所の手続を通じて行う公示による意思表示(民法98条)を利用する方法があります。
Q3. 無断欠勤している社員にも給与を支払う必要がありますか?
欠勤した日の賃金は、ノーワーク・ノーペイの原則により支払う必要はないのが通常です。ただし、すでに働いた日の賃金は支払わなければならず、損害と一方的に相殺することは労働基準法24条の賃金全額払いの原則に反するおそれがあります。
Q4. 無断欠勤の原因がメンタル不調だった場合も懲戒処分できますか?
慎重な判断が必要です。最高裁平成24年4月27日判決(日本ヒューレット・パッカード事件)は、精神的な不調が原因と考えられる欠勤について、精神科医による健康診断の実施や休職等の処分の検討をせずに諭旨退職処分としたことを無効と判断しました。まずは受診の勧奨や休職制度の適用を検討することが重要です。
まとめ|無断欠勤への対応は「記録」と「手順」が鍵
- まずは安否確認を最優先し、連絡の経過を時系列で記録する
- 出勤督促は期限を区切って書面(内容証明郵便等)で行う
- 解雇の可否は日数だけで決まらない。2週間は解雇予告除外認定の目安にすぎない
- メンタル不調が疑われる場合は、受診勧奨・休職の検討を先行させる
- 音信不通に備え、就業規則に行方不明時の退職規定を整備しておく
無断欠勤への対応は、一つひとつの判断が後の紛争リスクに直結します。対応に迷われたときは、早い段階で労務に詳しい弁護士にご相談いただくことで、解雇無効や未払い賃金の請求といったリスクを抑えながら進めることができます。横浜をはじめ神奈川県内の中小企業の皆さまからのご相談をお受けしています。
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