タングラム法律事務所

法人への誹謗中傷で損害賠償は請求できる?無形損害を弁護士が解説

法人への誹謗中傷で損害賠償は請求できる?無形損害を弁護士が解説

法人への誹謗中傷で損害賠償は請求できる?無形損害を弁護士が解説

法人への誹謗中傷で損害賠償は請求できる?無形損害を弁護士が解説

法人への誹謗中傷で損害賠償は請求できる?無形損害を弁護士が解説

「会社について事実無根の書き込みをされた」「口コミサイトに、やってもいない不正を書かれた」——法人・事業者のご相談で必ず出てくるのが、「会社が受けた被害を、お金で請求できるのか」というご質問です。個人であれば「慰謝料」と説明されますが、会社は人間ではなく、精神的苦痛を感じることはありません。法人は泣き寝入りするしかないのでしょうか。

そうではありません。法人であっても、名誉を毀損されたことによる損害の賠償を請求できる余地があります。ただし法律構成は個人と異なり、「無形の損害」という考え方を用います。この記事では、法人が請求できる損害の中身、立証のポイント、名誉毀損以外の法律構成を、横浜で発信者情報開示請求を扱う弁護士の視点から整理します。

法人も名誉毀損の被害者になり得る

刑法230条1項は名誉毀損罪の客体を「人」と定めていますが、この「人」には法人も含まれると解されています。民事上も同様で、法人の社会的評価が事実無根の投稿によって違法に低下させられたのであれば、民法709条の不法行為が成立し得ます。成立要件(公然性・事実の摘示・社会的評価の低下・違法性阻却事由の不存在)は、個人の場合と変わりません。

法人の事案で特に問題になりやすいのは「同定可能性」です。「○○駅前のあの塗装屋」といった書き方の場合、投稿を読んだ人が自社を指していると理解できるかが争点になり、スレッドの表題や掲載されている店舗ページなど、投稿が置かれた文脈とあわせて主張する必要があります。

法人に「慰謝料」は認められるのか——無形の損害という考え方

民法710条は、財産以外の損害に対しても賠償責任を負う旨を定めており、個人であればこれが慰謝料として機能します。しかし法人には精神的苦痛を観念しにくいため、かつては法人に710条の適用があるのかが争われました。

この点について最高裁昭和39年1月28日判決は、民法710条は損害の内容を限定しておらず、精神上の苦痛だけでなくおよそ無形の損害を意味すると読むべきであるとしたうえで、法人の名誉権侵害の場合にも金銭評価の可能な無形の損害が発生することは絶無ではなく、加害者に金銭で賠償させるのが社会観念上相当であるとして、法人についても民法710条の適用があることを認めました。

この判例により、実務では法人の請求を「慰謝料」ではなく「無形の損害」の賠償として構成します。立証の力点が「精神的なつらさ」ではなく「社会的・経済的な評価の低下」に置かれる点が、個人の事案との大きな違いです。

法人が請求できる損害の種類

ネット上の誹謗中傷について法人が請求を検討し得る損害は、おおむね次のように整理できます。

損害の種類内容立証の難易度
無形の損害社会的評価・信用の低下そのもの(民法709条・710条)財産的損害の立証は不要だが金額の評価が問題
営業損害売上減少、予約キャンセル、取引の打切り因果関係の立証が難しく認容範囲は限定的
調査費用投稿者の特定に要した実費・弁護士費用相当因果関係のある損害と考慮される傾向
対応費用削除依頼、取引先への説明対応の費用必要性・相当性の説明が必要
弁護士費用賠償請求訴訟の追行費用のうち一定割合認容額の一定割合が加算されることが多い

最も期待を持たれやすいのが営業損害ですが、ここが最も認められにくい部分でもあります。売上の減少は景気・季節変動・競合の出店など多数の要因の影響を受けるため、因果関係の立証が容易でないからです。逆に言えば、財産的損害の立証ができなくても請求の余地を残すのが無形の損害という枠組みです。請求できる損害の全体像は、ネット誹謗中傷で請求できる損害の解説記事もあわせてご覧ください。

無形の損害はどう立証するか

無形の損害は、金額が自動的に決まる損害ではありません。裁判所は、投稿内容の悪質性、摘示された事実の重大性、閲覧された範囲、掲載期間、被害法人の事業規模といった事情を総合して額を評価します。次のような資料を早い段階から確保しておくことが有効です。

  • 投稿の証拠(URL・投稿日時・投稿者名が写ったスクリーンショット)
  • 閲覧規模を示す資料(閲覧数、検索結果の表示順位、評価点の推移)
  • 投稿が第三者に届いた形跡(取引先・顧客からの問合せ、キャンセルや面接辞退の連絡)
  • 投稿内容が虚偽であることを示す社内記録・行政への確認結果
  • 掲載期間の記録(初回確認日から削除日まで)

とりわけ、Googleマップの口コミのように店舗ページに固定表示される投稿は、掲載期間が長く、見込み客の意思決定に直接影響するため、被害の説明が組み立てやすい類型です。事実無根の口コミへの対応は、Googleマップ口コミ・低評価の削除に関する特設ページでもご案内しています。

名誉毀損以外の法律構成——信用毀損と不正競争防止法

法人に対する攻撃は、「社会的評価の低下」だけでなく「経済的な信用の低下」という側面を持つことが多く、別の法律構成が使える場合があります。

刑事——信用毀損罪・業務妨害罪

虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて人の信用を毀損し、または業務を妨害した者は、刑法233条により3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処せられます。名誉毀損罪(刑法230条)が社会的評価一般を保護するのに対し、信用毀損罪は経済的な評価を保護するものと解されています。両者の違いは、信用毀損・業務妨害と名誉毀損の違いを解説した記事で整理しています。

民事——不正競争防止法による差止め

投稿者が競合他社である場合には、不正競争防止法2条1項21号の信用毀損行為(競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、または流布する行為)に該当する可能性があります。同法では差止請求(3条)や損害賠償請求(4条)が可能であり、一般の不法行為による場合よりも請求を組み立てやすくなることがあります。詳しくは競合他社・元取引先による営業誹謗への対処法の記事をご覧ください。

なお、民法723条により「名誉を回復するのに適当な処分」(謝罪広告等)を求める余地もありますが、実務上認められる場面は限られています。

投稿者がわからないときは発信者情報開示請求から

匿名の投稿である場合、損害賠償を請求する前提として、投稿者を特定しなければなりません。2025年4月1日に施行された情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法。旧・プロバイダ責任制限法)に基づき、サイト運営者に対する開示と、判明したIPアドレスをもとにした通信事業者に対する開示という二段階の手続きを踏みます。任意開示に応じる事業者は限られるため、実際には発信者情報開示命令の申立てを行うことが多くなります。

法人の事案に固有の注意点として、開示が認められるには権利侵害が明らかであることが必要であり、単に否定的な評価が書かれているだけでは足りません。批判や感想の域にとどまるのか、虚偽の事実の摘示にあたるのかという線引きが最初の関門になります。手続きの全体像・費用・期間は、発信者情報開示請求・削除請求の取扱分野ページにまとめています。

また、通信事業者が保有する通信記録には保存期限があり、時間の経過とともに投稿者を特定できなくなります。売上への影響を見極めてから動く、という進め方では手遅れになることがあります。

よくある質問

法人でも名誉毀損の被害者になれますか。

なれると解されています。刑法230条1項は名誉毀損罪の客体を「人」と定めていますが、この「人」には法人も含まれると解されており、民事上も、法人の社会的評価が違法に低下させられた場合には損害賠償請求の対象になり得ます。

法人に慰謝料は認められますか。

法人には精神的苦痛を観念しにくいため、個人と同じ意味での「慰謝料」としては説明されません。もっとも最高裁昭和39年1月28日判決は、金銭評価が可能な無形の損害が生じたときは民法710条の適用があるとしており、実務上は「無形の損害」の賠償として請求します。

売上が落ちたことを証明できなければ請求できませんか。

財産的損害を立証できない場合でも、無形の損害の賠償を求める余地があります。ただし賠償額は事案ごとの評価によるため、投稿の内容・拡散の程度・取引先からの問合せなど、信用低下をうかがわせる資料を具体的に集めておくことが重要です。

誹謗中傷に対する損害賠償請求に期限はありますか。

不法行為に基づく損害賠償請求権は、民法724条により、損害および加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で消滅時効にかかります。投稿者の特定に時間を要することも多く、時期の管理が必要です。

まとめ

法人であっても、事実無根の投稿によって社会的評価を低下させられた場合には、損害賠償を請求できる余地があります。個人のような「慰謝料」ではなく、最高裁昭和39年1月28日判決が認めた「無形の損害」という枠組みを用いる点が、法人の事案の特徴です。売上減少の立証ができなくても請求の余地が残される一方、賠償額は投稿の悪質性・拡散の程度・掲載期間といった事情の総合評価で決まるため、初動で証拠をどれだけ厚く固められるかが結果を左右します。

相手が競合他社であれば不正競争防止法の構成が、経済的信用への攻撃であれば信用毀損罪の告訴が、それぞれ選択肢に加わります。会社の信用に関わる投稿を見つけたときは、削除を急ぐ前にまず証拠を保全したうえで、早い段階で弁護士に方針を相談されることをおすすめします。

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タングラム法律事務所では、インターネット上の誹謗中傷について、削除請求・発信者情報開示請求・損害賠償請求を数多く取り扱っております。横浜・山下公園の事務所で、対応方針からご相談を承ります。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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