タングラム法律事務所

誹謗中傷の慰謝料が高すぎる|請求された側の減額要素を弁護士が解説

誹謗中傷の慰謝料が高すぎる|請求された側の減額要素を弁護士が解説

誹謗中傷の慰謝料が高すぎる|請求された側の減額要素を弁護士が解説

誹謗中傷の慰謝料が高すぎる|請求された側の減額要素を弁護士が解説

誹謗中傷の慰謝料が高すぎる|請求された側の減額要素を弁護士が解説

投稿について発信者情報が開示され、相手方の代理人弁護士から届いた通知書を開くと、そこに数百万円という数字が書かれている。自分がした投稿は数行の書き込みだったのに、なぜこの金額になるのか。横浜の当事務所にも、この段階でのご相談が数多く寄せられます。

結論から申し上げると、請求書に書かれた金額は、相手方が主張する金額であって、裁判所が認める金額とは別のものです。この記事では、実際にどの程度の額が認められているのかを公的な調査結果に基づいて示したうえで、金額を押し上げる事情と押し下げる事情、そして支払う前に確認すべきことを整理します。

まず、請求額の内訳を分ける

通知書に書かれた金額は、多くの場合いくつかの費目の合計です。総額だけを見て高いか安いかを判断しても意味がありません。内訳を分けると、おおむね次の3つになります。

費目内容検討の視点
慰謝料投稿によって生じた精神的損害投稿の内容・拡散の程度に照らして相当か
調査費用(開示請求等費用)相手方が投稿者を特定するために支出した弁護士費用等損害として認められる範囲は裁判例が分かれる
弁護士費用相当額損害賠償請求そのものに要する弁護士費用のうち加害者に負担させる部分認容額の一定割合とされるのが一般的

請求額が高く見える事案では、慰謝料そのものより調査費用の比重が大きいことがあります。内訳が示されていない場合には、その開示を求めるところから交渉が始まります。

実際に認められている慰謝料の水準

法務省民事局は、令和8年4月に「インターネット上の名誉権侵害等の損害賠償額等に関する調査報告書」を公表しています。令和4年・5年の事案161件と平成24年・25年の事案42件、合計203件の裁判例を分析したもので、認容額の実態を知るうえで最も信頼できる資料の一つです。

項目数値
認容された慰謝料額の中央値30万円
同じく平均値64.5万円
同じく最大値600万円
インターネット上の媒体による事案のうち30万円未満の割合46.6%
ソーシャルメディアによる事案の平均値45.5万円
マスメディアによる事案の平均値161.0万円

SNSや掲示板への書き込みが問題となる事案では、認められる額は決して高額ではないことが分かります。もっとも、これは判決に至った事案の集計であり、示談交渉の場で提示される金額とは性質が異なります。交渉では相手方が上限に近い額から出発することも珍しくありません。

なお、投稿が「死ね」「消えろ」といった短い罵倒にとどまる場合には、名誉毀損(社会的評価の低下)ではなく名誉感情の侵害として扱われ、認められる額の水準がさらに異なってきます。この点は名誉感情侵害による開示・削除の可否を扱った記事で整理しています。

金額を押し上げる事情

前掲の報告書は、慰謝料額を増額する方向で考慮された事情も集計しています。件数の多い順に、次のとおりです。

  • 不特定多数の者が認識した(認識し得た)——67件(33.0%)
  • 表現内容の権利侵害性が強度・悪質である——62件(30.5%)
  • 社会的評価の低下(の可能性)が大きい——42件(20.7%)

言い換えれば、どれだけの人が実際に読み得たか、表現がどれだけ強いものか、対象者の評価がどれだけ下がったかが、金額を左右する中心的な要素だということです。フォロワー数が数万単位に及ぶアカウントによる投稿を増額方向に考慮した裁判例が多く見られたことも、同報告書で指摘されています。

金額を押し下げる事情

反対に、減額する方向で考慮された事情は次のとおりです。請求を受けた側にとっては、こちらが検討の出発点になります。

減額方向に考慮された事情件数割合
内容に具体性がない18件8.9%
謝罪・事後的対応がある16件7.9%
不特定多数の者が認識していない14件6.9%
社会的評価の低下が大きくない14件6.9%
権利侵害性が強度・悪質でない11件5.4%

最も多いのが「内容に具体性がない」である点は、実務上重要です。抽象的な悪口や短い罵倒は、読んだ人に具体的な事実として受け取られにくく、社会的評価を下げる程度も限られると評価されやすいためです。閲覧数が伸びていないこと、投稿が短期間で削除されていること、書き込まれた場所が限られた範囲にとどまることも、同じ方向に働き得ます。

これらは、投稿の内容と掲載状況を具体的に主張して初めて考慮されるものです。何も主張しなければ、減額方向の事情は自動的には斟酌されません。

開示にかかった費用は、全額払うことになるのか

相手方が投稿者を特定するために支出した弁護士費用を、損害として加害者に負担させることができるかについては、裁判例の判断が分かれています。開示手続は損害賠償請求のために必要不可欠な費用であるとして全額を認めた例がある一方、実費がそのまま損害額になるわけではないとして一部にとどめた例、損害賠償請求訴訟の準備費用にすぎないとして認めなかった例もあります。

前掲の調査報告書でも、開示請求等費用について、全部認容・一部認容・棄却のいずれの結論も現れており、一部にとどめた事案が最も多くなっています。請求額のうち調査費用の比重が大きい事案では、この部分に検討の余地があるということです。

「高すぎる」と感じたときの進め方

してはいけないこと

この段階で最も避けたいのは、検討を経ないまま支払いや支払いの約束をしてしまうことです。一部の支払いや分割の申出は、債務の承認と評価されることがあります。消滅時効を主張できたはずの事案で、自らその主張を封じてしまう結果になりかねません。

相手方の代理人と直接やり取りすることにも、慎重であるべき理由があります。交渉の場で述べたことが、そのまま前提として扱われることがあるためです。

確認すべきこと

  • 請求の内訳(慰謝料・調査費用・弁護士費用相当額)が示されているか
  • 対象とされている投稿が具体的に特定されているか(URL・投稿日時)
  • 投稿の内容が、そもそも違法と評価されるものか
  • 閲覧数や掲載期間など、拡散の程度を示す資料が示されているか

金額の前に、そもそも責任を負う立場にあるのかという検討が必要な場合もあります。摘示した事実が真実であるときや、意見・論評の表明にとどまるときは、違法性が阻却されることがあります。この点は名誉毀損が成立しない場合の3要件で解説しています。請求を受けた段階の対応全般は損害賠償請求対応のページにまとめました。

よくある質問

誹謗中傷の慰謝料は実際にはどのくらいの額が認められていますか?

法務省民事局が令和8年4月に公表した調査報告書によれば、対象とされた裁判例における認容額の中央値は30万円、平均値は64.5万円でした。インターネット上の媒体による事案では30万円未満が46.6%を占めています。ただしこれは判決に至った事案の集計であり、示談交渉で提示される金額とは別のものです。

請求書に書かれた金額は、そのまま支払わなければなりませんか?

請求額は相手方が主張する金額であり、裁判所が認める金額とは異なります。慰謝料のほかに調査費用や弁護士費用相当額が加算されていることも多く、その全部が損害として認められるとは限りません。まず内訳を分けて確認する必要があります。

投稿を削除したことは減額の理由になりますか?

前掲の調査報告書では「謝罪・事後的対応がある」ことが減額方向に考慮された裁判例が16件(7.9%)ありました。もっとも、削除したこと自体で責任がなくなるわけではなく、あくまで金額を検討する際の一事情として扱われます。

相手方が開示請求にかけた弁護士費用まで請求されています。支払う必要がありますか?

発信者情報開示に要した費用を損害として認めるかどうかは、裁判例の判断が分かれています。全額を認めた例、一部にとどめた例、認めなかった例のいずれもあり、前掲の調査報告書でも一部認容とされた事案が最も多くなっています。金額の当否を検討する余地がある部分です。

金額に納得できないまま、一部だけ支払ってもよいでしょうか?

検討を経ないまま一部を支払うことは避けてください。一部の支払いや分割の申出は債務の承認と評価されることがあり、消滅時効を援用できたはずの事案で、自らその主張を封じてしまう結果になりかねません。

まとめ

請求されている金額が事案に見合うものかどうかは、投稿の内容、どれだけの人が読み得たか、社会的評価がどの程度低下したかという具体的な事情を積み上げて初めて判断できます。公表されている統計は、その検討の出発点として役に立ちますが、それ自体が答えを出してくれるわけではありません。

減額方向に働く事情は、主張して初めて考慮されます。当事務所は横浜に事務所を置き、ネット上の権利侵害を理由に請求を受けた方の交渉をお引き受けしています。弁護士が資料の開示を求め、請求額の根拠を確認したうえで交渉にあたります。やり取りはオンラインで完結し、来所の必要はありません。

請求された金額に納得できない方へ

タングラム法律事務所では、インターネット上の権利侵害を理由に損害賠償請求を受けた方の対応を数多くお引き受けしています。支払いや分割の約束をする前に、まずは通知書をお持ちください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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