タングラム法律事務所

複数人からの誹謗中傷は共同不法行為?対処法を弁護士が解説

複数人からの誹謗中傷は共同不法行為?対処法を弁護士が解説

複数人からの誹謗中傷は共同不法行為?対処法を弁護士が解説

複数人からの誹謗中傷は共同不法行為?対処法を弁護士が解説

複数人からの誹謗中傷は共同不法行為?対処法を弁護士が解説

SNSや掲示板で複数の人から一斉に誹謗中傷を受けると、「一人ひとりに立ち向かうのは無理だ」「これだけ大勢に書かれたら、もう泣き寝入りするしかないのか」と感じてしまうかもしれません。集団による攻撃は、一つひとつの投稿以上に深刻な精神的苦痛と被害の拡大をもたらします。

しかし法律には、複数人が関与した不法行為について定めた「共同不法行為」(民法719条)という規定があります。この記事では、複数人・集団からのネット誹謗中傷が法的にどう扱われるのか、全員に慰謝料を請求できるのか、そして現実にどう対処すればよいのかを、横浜の弁護士が整理して解説します。

複数人からの誹謗中傷は法的にどう扱われるか

ネット上の誹謗中傷は、その内容が他人の社会的評価を低下させる場合、民事上は不法行為(民法709条)にあたり、加害者は被害者が受けた精神的損害を賠償する責任を負います。損害の中心となるのは慰謝料ですが、投稿者を特定するためにかかった発信者情報開示の費用(調査費用)なども、相当因果関係の認められる範囲で損害として請求できるのが実務です。

加害者が一人であれば話は比較的シンプルですが、複数人が関与している場合には、それぞれの投稿を個別の不法行為として扱うのか、それとも全体を一つの「共同の不法行為」として扱うのかが問題になります。ここで登場するのが、民法719条の共同不法行為です。この違いは、誰にいくら請求できるのかに直結する重要なポイントです。

共同不法行為(民法719条)とは

民法719条1項前段は、「数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う」と定めています。さらに同項後段では、共同行為者のうち誰が損害を加えたのかを知ることができないときも同様に連帯責任を負うとされ、同条2項では、行為者を教唆した者・幇助した者も共同行為者とみなすとされています。

ポイントは「連帯して」という部分です。共同不法行為が成立すると、加害者それぞれが損害の全額について責任を負い、被害者はそのうちの誰に対しても損害全額の賠償を請求できます。加害者の一人が資力に乏しくても、他の加害者から回収できるという点で、被害者にとって有利な仕組みといえます。

共同不法行為が成立する典型例としては、あるブログ記事やスレッドと、それに続くコメント・レスが同一の対象者に向けられ、全体として一連の攻撃を構成しているようなケースが挙げられます。裁判例では、各投稿が客観的に関連し合っているかどうかが重視される傾向にあります。

成立するために必要な「関連共同性」

もっとも、複数人が同じ人物を中傷していれば当然に共同不法行為になる、というわけではありません。裁判例の考え方によれば、共同不法行為が成立するには、①各投稿がそれぞれ独立して不法行為の要件(名誉毀損・侮辱など)を満たすことに加えて、②投稿相互に客観的な関連共同性があることが必要と解されています。関連共同性の判断では、投稿の時期・場所・内容の連続性や、投稿者どうしの呼応関係の有無などが考慮されます。

「別々の投稿」は各自の責任にとどまることも

この関連共同性が認められない場合、たとえば、まったく無関係な人が別々のタイミングで単発の中傷を書き込んだにすぎないようなケースでは、共同不法行為(連帯責任)ではなく、各投稿者が自分の投稿によって生じた損害の範囲でそれぞれ責任を負うにとどまると判断されることがあります。

この違いは実務上とても重要です。連帯責任であれば加害者の一人に全額を請求できますが、各自責任にとどまる場合は、投稿ごとに損害を割り付けて請求していく必要があります。どちらの構成で請求するかは、投稿の内容・関連性・時系列を丁寧に分析したうえで判断すべき事柄であり、誹謗中傷事案の経験がある弁護士に相談する意義が大きい部分といえます。名誉毀損そのものの成立要件については、当事務所の別記事「名誉毀損が成立しない場合|真実性・公共性・公益目的の3要件」もあわせてご覧ください。

誰に・いくら請求できるのか

連帯責任が認められる場合、被害者は加害者の誰に対しても損害全額を請求できます。慰謝料の金額は、投稿の内容の悪質性、拡散の範囲、被害者の受けた不利益の程度などを総合して個別に判断されるもので、一律の相場があるわけではありません。集団による攻撃で被害が拡大したという事情は、慰謝料を検討するうえで被害者に有利に働き得る要素です。慰謝料の増減に関わる要素については「誹謗中傷の慰謝料を左右する「増額要素」と「減額要素」」で詳しく解説しています。

なお、加害者の一人から損害全額の賠償を受けた後は、同じ損害について他の加害者から二重に受け取ることはできません。全額を支払った加害者は、他の加害者に対して各自の負担部分に応じた求償を行うことになりますが、これは加害者どうしの内部的な清算の問題であり、被害者が気にする必要は基本的にありません。請求できる損害の範囲については「ネット誹謗中傷で請求できる損害|慰謝料・治療費・休業損害」もご参照ください。

構成誰に請求できるか典型例
共同不法行為(連帯責任)加害者の誰にでも損害全額を請求できる同一スレッド・記事に呼応して連続する中傷
各自の不法行為各投稿者に、その投稿による損害の範囲で請求相互に無関係な単発の中傷

複数の投稿者を特定するための実務

加害者が複数いる場合でも、匿名の投稿者を特定するには、原則として投稿ごとに発信者情報開示の手続を進める必要があります。サイト運営者(コンテンツプロバイダ)からIPアドレス等の開示を受け、次に経由プロバイダから契約者の氏名・住所の開示を受けるという二段階の流れは、加害者が一人のときと基本的に同じです。書き込まれた側が投稿者の特定や削除を進める全体像は、発信者情報開示請求・削除請求のご案内ページでも解説しています。

対象となる投稿が多いほど、特定にかかる費用と時間は増えます。そのため実務では、すべての投稿を機械的に追うのではなく、悪質性が高く被害の中心となっている投稿を優先して特定を進めるなど、費用対効果を踏まえた戦略が重要になります。また、プロバイダが保有するアクセスログの保存期間には限りがあるため、対象の選別と証拠の保全は早い段階で行う必要があります。

証拠の保全を最優先に

集団による攻撃では、投稿が短期間に大量になされ、削除や編集も起こりやすいため、まずは対象となる投稿を証拠として確実に残すことが出発点になります。URL・投稿日時・投稿者名(ハンドルネーム)・投稿内容が一体でわかる形で保存し、スクリーンショットだけでなくページ全体の記録を残しておくと、後の手続で役立ちます。

よくある質問

複数人から誹謗中傷された場合、全員に慰謝料を請求できますか?

それぞれの投稿が名誉毀損・侮辱などの不法行為にあたる限り、各投稿者に慰謝料を請求できる可能性があります。投稿者どうしの行為に客観的な関連共同性が認められれば、民法719条の共同不法行為として各自が連帯して損害全額を賠償する責任を負うと解されています。ただし特定には投稿ごとの手続が必要です。

別々の人が別々に書き込んだ場合も「連帯責任」になりますか?

必ずしも連帯責任になるとは限りません。共同不法行為が成立するには、各投稿が独立に不法行為の要件を満たすことに加えて、投稿相互に客観的関連共同性があることが必要と解されています。相互に無関係な単発の投稿は、各投稿者がそれぞれの投稿による損害の範囲で責任を負うにとどまると判断されることがあります。

投稿を拡散・リポストしただけの人も責任を負いますか?

拡散やリポストが元の投稿の名誉毀損を助長したと評価される場合、民法719条2項の幇助として共同行為者とみなされ、責任を問われる可能性があります。もっとも、単なる引用や批判的な言及にとどまる場合など、個別の事情によって結論は異なります。

加害者の1人から全額回収できたら、他の加害者には請求できませんか?

連帯責任の場合、被害者は加害者の1人から損害全額の賠償を受けられます。全額の弁済を受けた後は同じ損害を二重に受け取ることはできません。全額を支払った加害者は他の加害者に求償することになりますが、これは加害者間の問題です。

何人もの投稿者を特定するのは費用がかかりすぎませんか?

投稿者ごとに手続が必要なため、対象が多いほど費用と時間はかかります。実務上は悪質性の高い投稿に絞って特定を進めることも多く、費用対効果を踏まえた対象の選別が重要です。ログの保存期間には限りがあるため、早めのご相談をおすすめします。

まとめ

複数人・集団からのネット誹謗中傷は、投稿相互に客観的な関連共同性が認められれば民法719条の共同不法行為となり、加害者それぞれが連帯して損害全額を賠償する責任を負い得ます。一方で、無関係な単発の投稿は各自の責任にとどまることもあり、どの構成で請求するかは投稿の内容・関連性・時系列の分析にかかっています。

大勢から攻撃されていても、法的に泣き寝入りする必要はありません。もっとも、複数の投稿者を効率よく特定し、連帯責任と各自責任を見極めながら請求を組み立てるには、専門的な判断が求められます。横浜のタングラム法律事務所では、集団による誹謗中傷への対応についてもご相談をお受けしています。まずは証拠を保全したうえで、早めに弁護士へご相談ください。

複数人・集団からの誹謗中傷でお困りではありませんか?

タングラム法律事務所では、ネット誹謗中傷・発信者情報開示請求について豊富な対応実績を有しております。複数の投稿者の特定や、連帯責任を踏まえた損害賠償請求の方針まで、横浜の弁護士がサポートいたします。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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