タングラム法律事務所

相続で貸金庫を開けたい|相続人が同意しない場合の対処法を弁護士が解説

相続で貸金庫を開けたい|相続人が同意しない場合の対処法を弁護士が解説

相続で貸金庫を開けたい|相続人が同意しない場合の対処法を弁護士が解説

相続で貸金庫を開けたい|相続人が同意しない場合の対処法を弁護士が解説

相続で貸金庫を開けたい|相続人が同意しない場合の対処法を弁護士が解説

執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年9月30日 最終更新日:2026年9月30日

「亡くなった父が銀行の貸金庫を借りていたことがわかった。中に何が入っているのか確認したいのに、銀行からは相続人全員の同意が必要だと言われた。ところが、兄が書類に署名してくれない」。このように貸金庫の開扉をめぐって相続手続が止まってしまうご相談は少なくありません。

この記事では、相続で貸金庫を開けるときの流れと、他の相続人が同意しない場合の方法を、横浜の弁護士が解説します。遺言書が見つかった場合や相続放棄を検討している場合の注意点にも触れます。

結論から言うと、被相続人の貸金庫を開けるには、原則として相続人全員の同意が求められます。一部の相続人が協力しない場合でも、遺言執行者による開扉、公証人が立ち会う事実実験公正証書による内容確認、遺産分割調停の中での解決などの方法があります。中身を持ち出す前に、遺言書の検認や相続放棄への影響を確認しておくことが大切です。

相続で貸金庫を開けるには相続人全員の同意が必要な理由

貸金庫は、金融機関と利用者との間の貸金庫契約に基づいて利用されています。最高裁平成11年11月29日第二小法廷判決(民集53巻8号1926頁)は、貸金庫の内容物について、利用者の銀行に対する貸金庫契約上の「内容物引渡請求権」を差し押さえる方法で強制執行ができると判断しています。

利用者が亡くなると、この貸金庫契約上の地位は相続人全員に承継されます。一部の相続人だけに開扉を認めると、金融機関が後で他の相続人から責任を問われるおそれがあるため、実務上は相続人全員の同意(金融機関所定の書類への署名・押印と印鑑証明書の提出)を求める扱いが一般的です。

開扉の一般的な流れ

  • 金融機関に契約者が亡くなったことを連絡する
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等、相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書、貸金庫の鍵やカードなどをそろえる
  • 金融機関所定の依頼書に相続人全員が署名・押印する
  • 予約した日時に相続人(または代理人)が立ち会って開扉し、内容物を確認する

必要書類は金融機関ごとに異なるため、事前に確認してください。貸金庫の存在は、通帳の利用料の引落しや自宅に残された鍵から判明することがよくあります。財産全体の調べ方は、相続財産の調査方法の解説記事で紹介しています。

他の相続人が同意しない場合の4つの方法

全員の同意がそろわない場合には、次のような方法が考えられます。

方法概要注意点
遺言執行者による開扉遺言で遺言執行者が指定されていれば、遺言執行者が開扉を求める遺言の内容や金融機関の判断により対応が異なる
事実実験公正証書公証人が開扉に立ち会い、内容物を点検・確認して公正証書に記録する金融機関の協力が前提。中身の取出しまではできないことが多い
弁護士を通じた交渉同意しない理由を確認し、立会いの方法などを調整する感情的な対立が背景にあることが多い
遺産分割調停・保全処分調停の中で開扉や内容物の扱いを協議し、必要に応じて保全処分を検討する時間と手間がかかる

遺言執行者がいる場合

遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します(民法1012条1項)。遺言で遺言執行者が指定されていれば、他の相続人の同意がなくても、遺言執行者が開扉を求められる場合があります。特に、遺言に貸金庫の開扉・内容物の取出し・解約の権限が明記されていると、手続が円滑に進みやすいとされています。

事実実験公正証書を利用する

事実実験公正証書とは、公証人が自ら見聞きした事実を記録して作成する公正証書です。日本公証人連合会も、相続人の嘱託を受けて、相続財産の把握のために被相続人名義の銀行の貸金庫を開披し、その内容物を点検・確認する事実実験公正証書を作成する例を紹介しています。

中立の公証人が内容物を記録するため、金融機関が一部の相続人による開扉に応じる根拠となることがあり、後日の争いの防止にも役立ちます。もっとも、内容の確認・記録のための方法で、中身の持ち出しまで当然に認められるわけではありません。利用の可否は金融機関の判断によるため、事前に金融機関と公証役場に相談してください(公証人の手数料がかかります)。

遺産分割調停の中で解決する

貸金庫の中身も遺産ですから、話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所の遺産分割調停の中で、開扉の方法や内容物の分け方を協議することになります。

また、遺産分割の審判や調停の申立てがあった場合において、財産の管理のため必要があるときは、家庭裁判所は財産の管理者を選任するなどの保全処分をすることができます(家事事件手続法200条1項)。事案によっては、こうした手続の活用を検討する余地もあります。調停の申立て方法は、遺産分割調停を自分で申し立てる方法の解説記事をご覧ください。

貸金庫から遺言書が見つかった場合の注意点

貸金庫の中から遺言書が見つかることは珍しくありません。自筆証書遺言などを保管している人や発見した相続人は、遅滞なく家庭裁判所に提出して検認を請求しなければなりません(民法1004条1項。公正証書遺言は検認不要〔同条2項〕)。

さらに、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人またはその代理人の立会いがなければ開封できません(同条3項)。家庭裁判所外で開封すると、5万円以下の過料に処せられます(民法1005条)。中身が気になっても、その場で封を切らないようにしてください。検認の流れは、遺言書の検認手続きの解説記事で詳しく説明しています。

相続放棄を考えている場合は中身の持ち出しに注意

被相続人に借金がある可能性があり、相続放棄を検討している場合は、貸金庫の扱いに注意が必要です。相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなされ(民法921条1号)、相続放棄ができなくなるおそれがあります。

中の現金を使ったり貴金属を売却したりすれば、処分と評価される危険があります。迷っている段階では、確認と記録にとどめ、取出しや換金は控えるのが安全です。

税務上の注意:貸金庫に保管されていた現金・貴金属・有価証券なども相続財産であり、相続税の課税対象となります。相続税の申告が必要な場合、その期限は原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です(相続税法27条1項)。中身の評価や申告の要否については、税理士または税務署にご確認ください。

貸金庫の開扉を弁護士に依頼するメリット

弁護士に依頼すれば、同意しない相続人との交渉、金融機関や公証役場との調整、開扉への代理人としての立会い、さらに遺産分割調停・審判までを一貫して任せることができます。当事務所の相続事件への対応は、遺産相続・遺留分の取扱分野のページでもご案内しています。

よくある質問

相続人の一人だけで、亡くなった親の貸金庫を開けられますか?

貸金庫契約上の地位は相続人全員に承継されるため、金融機関は原則として相続人全員の同意(所定の書類への署名・押印と印鑑証明書)を求めます。一人の相続人だけの依頼では、開扉に応じてもらえないのが一般的です。遺言執行者がいる場合や、公証人が立ち会う事実実験公正証書を利用する場合には、全員の同意がなくても開扉や内容確認ができることがありますが、対応は金融機関によって異なります。

貸金庫から遺言書が出てきたら、その場で開封してよいですか?

封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人またはその代理人の立会いのもとでなければ開封できません(民法1004条3項)。また、公正証書遺言などを除き、遺言書は家庭裁判所の検認を受ける必要があります(同条1項・2項)。家庭裁判所外で開封すると5万円以下の過料の対象となるため(民法1005条)、開封せずに検認を申し立ててください。

相続放棄を考えていますが、貸金庫を開けても大丈夫ですか?

中身を確認するだけで直ちに相続を承認したことになるとは限りませんが、中の現金や貴金属を持ち出して使ったり処分したりすると、相続財産の処分として単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがあります(民法921条1号)。相続放棄を検討している場合は、開扉や取出しの前に弁護士に相談することをおすすめします。

他の相続人が生前に貸金庫の中身を持ち出した疑いがある場合はどうすればよいですか?

まずは開扉して現在の内容物を記録し、あわせて金融機関に貸金庫の開閉の記録の開示を求めることが考えられます(開示の可否や範囲は金融機関の判断によります)。持ち出しが疑われる場合は、遺産の使い込みと同様に、不当利得返還請求や、遺産分割の中での調整を検討することになります。

まとめ

  • 被相続人の貸金庫の開扉には、原則として相続人全員の同意が求められる
  • 同意がそろわない場合は、遺言執行者による開扉、事実実験公正証書による内容確認、遺産分割調停などの方法がある
  • 貸金庫から見つかった遺言書は開封せず、家庭裁判所で検認を受ける(封印のある遺言書の無断開封は過料の対象)
  • 相続放棄を検討中なら、中身の持ち出しや換金は単純承認とみなされるおそれがあるため控える

貸金庫の中身がわからないままでは遺産分割も相続放棄の判断も進みません。他の相続人が協力しない場合は、早めに弁護士へご相談ください。

相続で貸金庫が開けられずお困りの方へ

タングラム法律事務所は、横浜・山下公園に事務所を構え、相続人間で対立の生じた遺産分割・遺留分の事案について、交渉から調停・審判まで一貫して対応しております。貸金庫の開扉をめぐる他の相続人との交渉や、遺産の調査からお手伝いします。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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