相続で遺言書があるか調べる方法|公証役場・法務局の検索を弁護士が解説
相続で遺言書があるか調べる方法|公証役場・法務局の検索を弁護士が解説
執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年10月9日 最終更新日:2026年10月9日
親が亡くなり、きょうだいで遺産の話を始めようとしたところ、「遺言はないはずだ」と言う相続人と「生前、遺言を書いたと聞いた」という相続人で話が食い違う――。相続の相談では、そもそも遺言書があるのかどうかが分からないまま話し合いが進み、後になって問題が大きくなるケースが少なくありません。
この記事では、相続で遺言書があるか調べる方法として、公証役場の「遺言検索システム」と法務局の「遺言書保管事実証明書」の使い方、自宅などで遺言書を見つけたときの検認、そして他の相続人が遺言書を隠しているのではないかと疑われる場合の考え方を、横浜の弁護士が条文に沿って解説します。
結論として、遺言書の有無は「公証役場の遺言検索(無料)」と「法務局への遺言書保管事実証明書の請求(1通800円)」の2つを行い、あわせて自宅・貸金庫などを確認することで、相当程度まで調べることができます。いずれも遺言者の死亡後に相続人等が請求でき、遺産分割の話し合いを始める前に済ませておくことが、後のトラブル防止につながります。
相続で遺言書の有無を最初に調べるべき理由
遺言書があれば、遺産の分け方は原則としてその内容に従って決まります。遺言の存在を知らないまま遺産分割協議を成立させてしまうと、後から遺言書が見つかった場合に、協議の効力をめぐって相続人同士の対立が生じることがあります。
また、相続には期限のある手続が多くあります。たとえば、遺留分侵害額請求権は、相続の開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年で時効により消滅します(民法1048条)。相続税の申告が必要な場合は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に申告しなければなりません(相続税法27条1項)。遺言の内容が分からなければ、これらの判断の前提が定まりません。相続税の具体的な取扱いについては、税理士または税務署にご確認ください。
遺言書の種類ごとの調べ先
遺言書の調べ方は、遺言の種類と保管場所によって異なります。代表的なものを整理すると次のとおりです。
| 遺言の種類・保管場所 | 調べる先 | 方法・費用 |
|---|---|---|
| 公正証書遺言 | 公証役場 | 遺言検索システムで検索(無料)。原本は作成した公証役場で保管 |
| 自筆証書遺言(法務局で保管) | 法務局(遺言書保管所) | 遺言書保管事実証明書の請求(1通800円) |
| 自筆証書遺言(自宅等で保管) | 自宅・貸金庫・関係者 | 遺品の確認、金融機関・知人・専門家への確認 |
公証役場の検索では法務局に保管された遺言は分からず、逆に法務局の証明書では公正証書遺言は分かりません。遺言は複数作成されていることもあるため、どちらか一方で見つかった場合でも、両方を確認しておくのが安全です。
公証役場の遺言検索システムで公正証書遺言を調べる
日本公証人連合会の案内によれば、平成元年以降に作成された公正証書遺言は、遺言情報管理システムで全国の公証役場の情報が管理されており、遺言検索は全国どこの公証役場でも申し出ることができます。検索の申出は無料です。
申し出ることができる人と必要書類
遺言者の死亡後は、相続人等の利害関係人が申し出ることができます(遺言者の生前は、遺言者本人のみ)。主な必要書類は次のとおりです。
- 遺言者の死亡を証明する書類(除籍謄本等)
- 申出人が遺言者の相続人であることを証明する戸籍謄本
- 申出人の本人確認書類(顔写真付きの公的身分証明書、または実印と発行後3か月以内の印鑑登録証明書)
遺言が見つかった後の謄本請求
検索の結果、遺言が見つかった場合は、その遺言を保管している公証役場に謄本を請求して内容を確認します。日本公証人連合会の案内では、謄本の請求は郵送でも可能とされ、所定の手数料がかかります。公正証書遺言は家庭裁判所の検認が不要です(民法1004条2項)。
法務局で自筆証書遺言の保管を調べる
2020年7月から、自筆証書遺言を法務局(遺言書保管所)で保管する制度が始まっています。制度の概要は法務局の遺言書保管制度の解説記事もご覧ください。相続人の側で利用する主な請求は次の3つです(手数料は法務省の公表による)。
| 請求の種類 | 分かること | 手数料 |
|---|---|---|
| 遺言書保管事実証明書 | 自分に関係する遺言書が保管されているかどうか | 1通800円 |
| 遺言書情報証明書 | 遺言書の内容(画像情報等) | 1通1,400円 |
| 遺言書の閲覧 | 遺言書の内容(モニター/原本) | 1回1,400円/1,700円 |
遺言書保管事実証明書は、何人も、自分が関係相続人等に当たる遺言書の保管の有無について請求することができ(法務局における遺言書の保管等に関する法律10条1項)、実際に遺言書を保管している保管所以外の遺言書保管所にも請求できます(同条2項・9条2項)。一方、閲覧は遺言書を保管している保管所に請求する必要があります(同法9条3項)。
また、相続人等の一人が遺言書情報証明書の交付を受けたり閲覧したりすると、法務局から他の相続人等にも遺言書が保管されている旨が通知されます(同法9条5項)。遺言者が保管申請時に希望していれば、死亡が確認された時点で指定された人(2023年10月以降は最大3名)に通知が届く仕組みもあります。なお、法務局で保管された自筆証書遺言は検認が不要です(同法11条)。
自宅などで自筆証書遺言を見つけたときの注意点
自宅の金庫や書斎、銀行の貸金庫などから自筆の遺言書が見つかった場合、保管者(保管者がいなければ発見した相続人)は、相続の開始を知った後、遅滞なく家庭裁判所に提出して検認を請求しなければなりません(民法1004条1項)。封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人又はその代理人の立会いがなければ開封できません(同条3項)。
検認を経ずに遺言を執行したり、家庭裁判所外で開封したりすると、5万円以下の過料の対象となります(民法1005条)。なお、検認は遺言書の状態を確認・保存する手続であり、遺言が有効かどうかを判断するものではありません。手続の流れは遺言書の検認手続きの解説記事で詳しく説明しています。
他の相続人が遺言書を隠していると疑われる場合
「同居していた兄が遺言書を持っているはずなのに出してこない」といった相談も少なくありません。民法は、相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者は相続人となることができないと定めています(民法891条5号・相続欠格)。
もっとも、最高裁平成9年1月28日判決は、遺言書の破棄・隠匿が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、相続欠格者に当たらないと判断しています。隠匿の事実や目的を立証するのは容易ではなく、相続欠格を主張する場合は証拠の確保が重要です。
まずは上記の公証役場・法務局での調査を行い、そのうえで遺産分割調停などの場で遺言書の有無を確認していく方法も考えられます。相続人間で対立がある場合の進め方は、当事務所の相続・遺産分割の取扱分野ページもあわせてご覧ください。
遺産分割の後に遺言書が見つかった場合
遺産分割協議の成立後に遺言書が見つかった場合、協議が当然に無効になるわけではありません。ただし、遺言で受遺者や遺言執行者が定められている場合や、相続人が遺言の内容を知っていれば協議に応じなかったといえる場合などには、協議の効力が問題となることがあります。また、日付の異なる遺言が複数ある場合、前の遺言が後の遺言と抵触する部分は、後の遺言で撤回したものとみなされます(民法1023条1項)。
相続人全員が遺言の内容を知ったうえで、協議の結果を維持することに合意できる場合もあります。協議のやり直しの考え方は遺産分割協議のやり直しと無効・取消しの解説記事をご覧ください。
相続の遺言書調査に関するよくある質問
親が生きているうちに、子が遺言書の有無を調べることはできますか?
公証役場の遺言検索は、遺言者の生前は遺言者本人しか申し出ることができません。法務局の遺言書情報証明書や遺言書保管事実証明書も、遺言者が死亡した後に関係相続人等が請求する仕組みです。生前に子が調べることは基本的にできません。
公正証書遺言と法務局保管の遺言は、両方とも調べたほうがよいですか?
はい。公証役場の遺言検索では法務局に保管された自筆証書遺言は分からず、法務局の証明書では公正証書遺言は分かりません。遺言は複数作成されることもあり、日付の新しい遺言が優先される場面もあるため、両方を確認しておくことをおすすめします。
自宅で封のされた遺言書を見つけました。開けて中身を確認してもよいですか?
封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人又はその代理人の立会いがなければ開封することができません(民法1004条3項)。家庭裁判所外で開封すると5万円以下の過料の対象となり得ます(民法1005条)。開封せずに家庭裁判所へ検認を申し立ててください。
遺産分割協議が終わった後に遺言書が見つかった場合、協議はやり直しになりますか?
一律にやり直しになるわけではありません。遺言の内容、受遺者や遺言執行者の有無、相続人が遺言の内容を知っていれば協議に応じなかったといえるか等によって、協議の効力が問題となることがあります。相続人全員が遺言の内容を知ったうえで協議の結果を維持することに合意できる場合もあるため、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ|遺言書の調査は遺産分割の前に
- 公正証書遺言は、全国どこの公証役場でも遺言検索ができる(平成元年以降作成分・無料)
- 法務局保管の自筆証書遺言は、遺言書保管事実証明書(1通800円)で保管の有無を確認できる
- 自宅等で見つけた自筆証書遺言は開封せず、家庭裁判所で検認を受ける
- 遺言書の隠匿が疑われる場合は、相続欠格の問題も含めて証拠の確保が重要
- 遺留分侵害額請求(1年)など期限のある手続もあるため、調査は早めに行う
遺言書の有無や内容をめぐって相続人間の意見が対立している場合、調査の結果を踏まえて、遺言の有効性や遺留分、遺産分割の進め方を検討する必要があります。早い段階で弁護士に相談することで、期限を見落とさずに方針を立てやすくなります。
遺言書の有無や内容をめぐって相続人ともめている方へ
タングラム法律事務所は、横浜・山下公園に事務所を構え、相続人間で対立の生じた遺産分割・遺留分の事案について、交渉から調停・審判・訴訟まで一貫して対応しております。遺言書の調査結果を踏まえた遺留分侵害額請求や遺産分割の方針づくりをお手伝いします。
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