相続財産の調査方法|預貯金・不動産・株式の調べ方と隠し財産への対処法を横浜の弁護士が解説
相続財産の調査方法|預貯金・不動産・株式の調べ方と隠し財産への対処法を横浜の弁護士が解説
「故人がどんな財産を持っていたのか、まったく分からない」——相続が発生した直後、多くのご家族がこの問題に直面します。被相続人が財産の全体像を明かしていなかったケースは珍しくなく、通帳の在り処や証券口座の存在すら把握していないという状況もよく見られます。さらに、他の相続人が財産を隠しているのではないか、生前に預金を使い込んでいたのではないかという疑いがある場合には、正確な財産調査は自らの法的権利を守るための重要な出発点となります。
本記事では、預貯金・不動産・株式などの財産種別ごとの具体的な調査手順と、隠し財産が疑われる場合の対処法、そして弁護士照会の活用法について解説します。相続財産の調査は遺産分割協議の前提であり、遺留分侵害額請求の計算においても不可欠な作業です。ぜひ最後までお読みいただき、適切な手順をご確認ください。
なぜ相続財産の調査が必要なのか
相続財産の全体像を把握することは、遺産分割のあらゆる場面で必要となります。財産の種類・金額が確定しなければ、法定相続分や遺留分の計算はできませんし、分割方法の話し合い(遺産分割協議)も前に進みません。仮に財産調査が不十分なまま遺産分割協議書を作成・署名してしまった場合、後から新たな財産が発覚すると協議のやり直しが必要になることもあります。
また、遺留分侵害額請求を行う場合は、被相続人の相続財産に生前贈与分(原則として相続開始前10年以内のもの、民法第1044条)を加算した「みなし相続財産」を算定する必要があります。このためには、プラスの財産だけでなく、被相続人の負債(マイナスの財産)も把握しなければなりません。相続放棄を検討している場合も同様に、借金の有無や金額を調べることが重要です。
まず手元の資料を集める
調査の第一歩は、被相続人の遺品や自宅に残された書類の確認です。次のような資料が財産調査の手がかりになります。
- 預金通帳・キャッシュカード・印鑑:利用していた金融機関を特定する基本資料
- 証券会社からの取引報告書・口座開設書類:株式・投資信託等の存在を把握
- 固定資産税納付通知書:所有不動産の所在地・地番・家屋番号を確認できる
- 郵便物・メール:銀行・証券会社・消費者金融等からの通知が届いていないか確認
- 確定申告書(過去3〜5年分):不動産収入・配当所得・事業所得など財産の手がかりになる
- スマートフォン・パソコン:ネット銀行や証券口座のアプリ・ブックマークを確認(ログイン情報の取得には注意が必要)
預貯金・金融資産の調査方法
金融機関への全店照会(名寄せ)
特定の金融機関に口座が存在する可能性がある場合、その金融機関の窓口で「全店照会(名寄せ)」を申請することができます。全店照会とは、その金融機関の全支店を対象として、被相続人名義の口座(普通預金・定期預金・投資信託等)の有無と残高を一括で調査する手続きです。戸籍謄本など相続人であることを証明する書類と、被相続人の氏名・生年月日・住所などの情報が必要になります。
ゆうちょ銀行については「貯金事務センター」への照会が窓口となります。なお、金融機関によっては全店照会に応じないところや、手数料が必要なところもあります。口座が特定できたら、過去の取引明細書(可能であれば10年分程度)も合わせて取り寄せることをお勧めします。不自然な高額出金がある場合、他の相続人による使い込みの証拠になる可能性があります。
ネット銀行・電子マネーの確認
近年は、ネット銀行や電子マネーを利用している方も増えています。通帳が存在しないこれらのサービスは見落としが生じやすく、スマートフォンのアプリや登録メールアドレスを手がかりに口座の存在を探る必要があります。ログインに必要なパスワードが分からない場合は、金融機関に相続人として照会を申し入れることが考えられます。
不動産の調査方法
名寄帳(なよせちょう)の取得
名寄帳とは、市区町村が固定資産税課税台帳をもとに、特定の所有者が保有するすべての不動産を一覧化した書類です。市区町村の役場(税務課・資産税課等)で相続人が申請することができ、その市区町村内に存在する不動産を把握できます。ただし、名寄帳は申請した市区町村内の不動産しか記載されないため、複数の市区町村に不動産がある場合は、それぞれの役場に個別に申請する必要があります。
所有不動産記録証明制度(2026年2月運用開始)
2026年2月から、法務局において「所有不動産記録証明制度」の運用が始まりました(不動産登記法第119条の2、令和4年不動産登記法改正)。この制度を利用すると、全国のいずれかの法務局に申請するだけで、全国に分散している被相続人名義の不動産を一括で照会することが可能となりました。名寄帳では把握しきれなかった遠方の不動産なども発見しやすくなるため、積極的に活用することをお勧めします。
登記事項証明書の取得
不動産の存在が判明したら、法務局(登記所)で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得することで、所有者・抵当権の有無・地積・床面積などの詳細を確認できます。法務局の窓口のほか、オンライン(登記・供託オンライン申請システム)でも申請が可能です。
株式・有価証券の調査方法
ほふり(証券保管振替機構)への照会
上場株式の多くは「ほふり」(株式会社証券保管振替機構)に預けられています。相続人は「登録済加入者情報の開示請求」という制度を利用することで、被相続人が保有していた上場株式・投資信託の情報(口座を開設していた証券会社名など)を証明書形式で取得することができます。申請は書面で行い、費用は数千円程度です。開示情報をもとに各証券会社に照会を行うことで、保有銘柄・口座残高が確認できます。
非上場株式の確認
非上場株式(同族会社の株式など)の場合は、ほふりへの照会では発見できません。被相続人の確定申告書や取引書類を確認し、必要に応じて会社に対して直接照会を行います。非上場株式は評価方法が複雑なため(純資産価額方式・類似業種比準方式等)、税理士との連携が必要になることもあります。
負債(借金・保証債務)の調査方法
相続財産には、プラスの財産だけでなく、借金・未払金・保証債務といったマイナスの財産も含まれます(民法第896条)。負債の存在を把握せずに単純承認してしまうと、相続人が借金を引き継ぐことになります。負債の調査には、信用情報機関への開示請求が有効です。主な機関は以下の3つです。
| 機関名 | 主な対象情報 | 申請方法 |
|---|---|---|
| CIC(指定信用情報機関) | クレジットカード・割賦販売に関する情報 | 郵送・インターネット |
| JICC(日本信用情報機構) | 消費者金融・クレジットローンに関する情報 | 郵送・スマートフォンアプリ |
| 全国銀行個人信用情報センター(KSC) | 銀行ローン・奨学金に関する情報 | 郵送 |
相続人はこれらの機関に被相続人の情報の開示を請求することができます(死亡後も申請可能)。ただし、知人・親族間での借入や保証債務は信用情報機関には登録されていないため、郵便物や遺品の書類を通じて個別に確認する必要があります。
隠し財産・遺産隠しが疑われる場合の対処法
相続人の一人が被相続人の生前から預金を引き出していた、あるいは財産の存在を意図的に隠しているのではないかという疑いが生じることがあります。このような場合、以下の方法での対処が考えられます。
取引明細書による使い込みの調査
被相続人の口座について過去10年分の取引明細書を取り寄せ、不自然に高額な出金・振込がないかを確認します。生前に一人の相続人に対して繰り返し送金が行われていた場合、特別受益(民法第903条)の主張や、不当利得返還請求(民法第703条)・不法行為に基づく損害賠償請求(民法第709条)の根拠となりうる場合があります。ただし、請求の可否や立証の難易度はケースごとに異なりますので、弁護士に相談の上で判断することが重要です。
遺産分割調停の申立て
相手方が財産の開示に応じない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることが有効な手段の一つです。調停手続の中で調停委員を通じた話し合いを行い、必要に応じて各種書類の提出を求めることができます。調停で解決できない場合は審判へと移行し、裁判所が分割方法を決定します。
弁護士照会を活用した財産調査のメリット
弁護士に依頼した場合、「弁護士照会」(弁護士法第23条の2に基��く制度)を活用することが可能です。弁護士が弁護士会を通じて金融機関や各種機関に照会を行い、預金残高・取引履歴などの情報提供を求める制度です。相続人個人では応じてもらえない場合でも、弁護士照会によって対応してもらえるケースがあります。
横浜の弁護士に相続財産調査を依頼するメリットは、調査の網羅性・効率性だけではありません。財産調査の結果を踏まえて、遺産分割協議・調停・訴訟、あるいは遺留分侵害額請求へと円滑に移行できる点も大きな利点です。また、遺留分侵害額請求には「侵害を知った時から1年」という時効(民法第1048条)があるため、調査と請求を並行して進めることが重要であり、弁護士であれば時効管理も含めて一括して対応することが可能です。
まとめ|相続財産調査は遺産分割と権利保護の第一歩
相続財産の調査は、遺産分割協議・遺留分侵害額請求・相続放棄のいずれにおいても欠かせない前提作業です。預貯金の全店照会、名寄帳や所有不動産記録証明制度を活用した不動産の把握、ほふりによる株式の調査、信用情報機関による負債の確認と、財産の種類ごとに適切な方法があります。調査に漏れがあると、後から財産が発覚して遺産分割のやり直しが必要になることもありますし、他の相続人による使い込みや遺産隠しが見過ごされるリスクもあります。
もし相続財産の調査方法に迷っていたり、他の相続人が財産を隠しているのではないかと感じていたりする場合は、早めに弁護士に相談されることをお勧めします。時間の経過とともに証拠が散逸するおそれや、時効の問題も生じることがある点にご注意ください。
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