タングラム法律事務所

遺言書に書かれていない財産が見つかったら?分け方を弁護士が解説

遺言書に書かれていない財産が見つかったら?分け方を弁護士が解説

遺言書に書かれていない財産が見つかったら?分け方を弁護士が解説

遺言書に書かれていない財産が見つかったら?分け方を弁護士が解説

遺言書に書かれていない財産が見つかったら?分け方を弁護士が解説

遺言書があるから手続は済んだ——そう思っていた矢先に、遺言書に一言も触れられていない預金口座や、名義がそのままになっていた土地が出てくる。相続の現場では珍しくない出来事です。「誰のものになるのか、どう決めればいいのか」と手が止まってしまう方は少なくありません。遺言書の内容に納得がいっていない相続人がいる場合には、この一件をきっかけに関係がこじれてしまうこともあります。

この記事では、横浜で相続紛争を取り扱う弁護士が、遺言書に記載のない財産(記載漏れの財産)が見つかったときの法律上の扱い、誰がどの割合で取得するのか、遺産分割協議がすでに終わっていた場合はどうなるのかを、条文と裁判例をもとに整理します。

遺言書に書かれていない財産は「遺産分割の対象」になる

結論からいえば、遺言書に記載のない財産は、遺言による処分がされていない財産として、相続人全員による遺産分割の対象になります。共同相続人は、被相続人が遺言で分割を禁じた場合などを除き、いつでも協議で遺産の全部または一部の分割をすることができるとされているためです(民法907条1項)。

そもそも遺言は、財産の全部について作らなければならないものではありません。民法964条は「遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる」と定めており、一部の財産だけを対象とする遺言も有効です。したがって、遺言書に書かれていない財産があること自体は、遺言の効力を左右しません。書かれていない部分をどう分けるか、という問題として処理することになります。

実務でよく見かけるのは、遺言書の作成後に取得した不動産・預金があるケース、被相続人が家族に伝えていなかった別の金融機関の口座が判明したケース、先代名義のまま放置されていた土地・建物が出てきたケース、そして単純に作成時の書き漏らしです。

まず確認すべき3つのポイント

「記載がない=当然に遺産分割」と即断するのは早計です。次の3点を確認してから進めてください。

① 包括条項(「その余の財産」条項)があるか

遺言書の末尾に「本遺言に記載のない一切の財産は、長男○○に相続させる」といった条項が置かれていることがあります。この種の包括条項がある場合、個別に列挙されていない財産もこの条項によって承継されるのが原則で、改めて遺産分割協議をする必要は基本的にありません。まずは遺言書の全文を最後まで読み直してください。

ただし、条項の文言があいまいで、どこまでが対象なのかがはっきりしないこともあります。遺言の解釈について最高裁昭和58年3月18日第二小法廷判決は、特定の条項のみを切り離して文言を形式的に解釈するのでは足りず、遺言書の全記載との関連、作成当時の事情および遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探究すべきである、という考え方を示しています。文言だけで決着がつかない場合、この解釈をめぐって争いになります。

② 包括遺贈が含まれていないか

遺言に「財産の3分の1をAに遺贈する」といった包括遺贈が含まれている場合、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有します(民法990条)。記載漏れの財産を分けるには、相続人だけでなく包括受遺者も加えて協議をしなければなりません。

③ 遺言執行者が指定されているか

遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します(民法1012条1項)。もっとも、その権限は遺言の対象となっている財産に及ぶものであり、記載のない財産の分け方まで遺言執行者が決められるわけではありません。この部分は、相続人(および包括受遺者)が自ら協議する必要があります。

「甲土地を長男に相続させる」のように特定の財産を特定の相続人に承継させる条項は特定財産承継遺言(民法1014条2項)にあたり、最高裁平成3年4月19日判決の考え方によれば、遺贈と解すべき特段の事情がない限り、被相続人の死亡時に直ちにその相続人に承継されます。詳しくは特定財産承継遺言(「相続させる」旨の遺言)と遺贈の違いをご覧ください。

分ける割合はどう決まるのか

記載漏れの財産を遺産分割で分ける場合、その基準となる割合が問題になります。整理すると次のとおりです。

遺言の内容記載漏れ財産の扱い
包括条項(「その余の財産は○○へ」)があるその条項に従って承継される。原則として遺産分割は不要
相続分の指定(民法902条1項)がある指定された相続分を基準に分けるのが原則。ただし遺言の解釈による
特定の財産についてのみ定めがある相続人全員の協議で分ける。合意ができなければ調停・審判へ
一部の相続人の相続分のみ定めがある他の相続人の相続分は法定相続分による(民法902条2項)

注意していただきたいのは、遺産分割協議は「法定相続分どおりに分けなければならない」というものではない点です。相続人全員が合意すれば、どのような分け方でも構いません。法定相続分や指定相続分は、合意ができずに家庭裁判所の手続に進んだ場合の基準として意味を持ちます。

また、特定の財産を一部の相続人に多く取得させる遺言があるとき、その遺言が相続分の指定を伴うものと解釈されるのか、遺産分割方法の指定にとどまるのかによって、残りの財産の分け方が変わり得ます。遺言の文言と作成の経緯を丁寧に読み解く必要がある部分です。

遺産分割協議が終わった後に財産が見つかった場合

すでに遺産分割協議を成立させ、協議書に署名押印まで済ませた後で新たな財産が判明することもあります。この場合、原則として、その財産についてだけ改めて協議をすれば足ります。既に成立した協議そのものが当然に無効になるわけではありません。遺産の分割は相続開始の時にさかのぼって効力を生じるとされており(民法909条本文)、成立済みの分割の効力は維持されるのが通常です。

ただし、見つかった財産が遺産全体に占める割合が大きく、その存在を知っていれば別の合意をしていたといえる場合には錯誤取消しが、一部の相続人が財産の存在を知りながら隠していた場合には詐欺による取消しが、それぞれ主張されることがあります。協議書に「本協議書に記載のない財産が判明した場合は○○が取得する」といった条項が置かれているときは、その条項の解釈が争点になります。

逆にいえば、協議書にあらかじめ後日発見財産の帰属を定める条項を入れておけば、こうした紛争の多くは避けられます。協議書の作成時の注意点は遺産分割協議書の書き方の記事で、成立後の見直しについては遺産分割協議のやり直し・無効・取消しの記事で解説しています。

見落としを防ぐための財産調査

記載漏れの財産をめぐるトラブルは、財産の全体像を早い段階で確定させておけば、かなりの部分を防ぐことができます。主な調査手段は次のとおりです。

  • 預貯金:金融機関への全店照会。相続人は単独で残高証明書や取引履歴の開示を求められます
  • 不動産:市区町村の名寄帳、固定資産税の課税明細書。2026年2月に運用が始まった所有不動産記録証明制度も有力な手段です
  • 株式・投資信託:証券保管振替機構(ほふり)への登録済加入者情報の開示請求

具体的な手続や必要書類は相続財産の調査方法の記事で解説しています。他の相続人が資料の開示に応じないなど、ご自身での調査に限界がある場合には、弁護士会照会(弁護士法23条の2)の活用を検討することになります。相続全般のご相談は当事務所の相続・遺産分割に関する取扱分野のページもご覧ください。

期限との関係に注意する

財産が後から見つかった場合、次の期限との関係を意識しておく必要があります。

手続期限根拠
相続税の申告・納付相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内相続税法27条1項
相続登記の申請所有権を取得したことを知った日から3年以内不動産登記法76条の2
特別受益・寄与分の主張相続開始から10年を経過すると原則として主張できない民法904条の3

とくに不動産が後から見つかった場合、相続登記の義務との関係が問題になります。遺産分割がまとまらないまま期限が迫るときは、相続人申告登記(不動産登記法76条の3)を利用して、いったん義務を履行したものとする方法もあります。相続税については、申告後に財産が判明して税額に不足が生じるときは修正申告が必要になることがあります。加算税・延滞税の取扱いを含め、税額の計算や手続の要否については、税理士または所轄の税務署にご確認ください。

よくある質問

Q1.遺言書に「その他一切の財産は長男に相続させる」と書かれている場合はどうなりますか?

いわゆる包括条項があり、その内容が有効であれば、個別に列挙されていない財産もその条項に従って承継されるのが原則です。この場合、記載漏れの財産について改めて遺産分割協議を行う必要は基本的にありません。ただし、条項の文言があいまいで対象範囲がはっきりしない場合は、遺言全体の記載や作成当時の事情から遺言者の真意を探る解釈の問題となり(最高裁昭和58年3月18日判決)、相続人間で争いになることがあります。

Q2.後から見つかった財産だけを先に分ける協議をしてもよいですか?

民法907条1項は遺産の「全部又は一部」の分割ができると定めており、一部分割は認められています。ただし、一部だけを切り離して分けると、残りの財産の分け方や特別受益・寄与分の評価に影響が及び、後の協議がかえって難しくなることがあります。全体の見通しを立ててから進めることが望ましいといえます。

Q3.遺言書に書かれていない財産は遺留分の計算に影響しますか?

影響します。遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始時に有していた財産の価額に一定の贈与の価額を加え、債務の全額を控除して算定されます(民法1043条1項)。遺言に書かれていない財産も相続開始時の財産である以上、この基礎財産に含まれます。したがって、財産が新たに見つかると遺留分侵害額の計算結果が変わる可能性があります。

Q4.相続税の申告後に財産が見つかったらどうすればよいですか?

申告した相続税額に不足が生じる場合には、修正申告が必要になることがあります。申告期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内。相続税法27条1項)を過ぎてからの手続となるため、加算税や延滞税の取扱いも含めた確認が必要です。税額の計算や手続の要否については、税理士または所轄の税務署にご確認ください。

まとめ

遺言書に書かれていない財産が見つかったときの要点を整理します。

  • 記載漏れの財産は、原則として相続人全員による遺産分割の対象になる(民法907条1項)。遺言の効力自体には影響しない(民法964条)
  • まず「その余の財産」条項の有無、包括遺贈の有無(民法990条)、遺言執行者の有無(民法1012条1項)を確認する
  • 分ける割合は、相続分の指定(民法902条)があればそれを基準とし、なければ法定相続分による。相続人全員の合意があればどのような分け方でもよい
  • 協議成立後に財産が見つかった場合、その財産についてだけ改めて協議すれば足りるのが原則
  • 相続税10か月、相続登記3年、特別受益・寄与分の10年という期限を意識して進める

記載漏れの財産をめぐる紛争は、金額そのものよりも、「なぜ知らせてくれなかったのか」という不信感から深刻化することが多いのが実情です。遺言の解釈が絡む場面では、条項の読み方ひとつで取得できる財産が大きく変わることもあります。他の相続人との話し合いが難しいと感じたら、早い段階で弁護士にご相談ください。

遺言書に書かれていない財産のことで、お困りではありませんか

タングラム法律事務所では、遺産分割・遺留分侵害額請求など、紛争性のある相続案件を数多くお取り扱いしております。遺言書の解釈、財産調査、他の相続人との交渉まで、横浜の弁護士がご事情を伺ったうえで対応方針をご提案します。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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