タングラム法律事務所

遺言と異なる遺産分割はできる?相続人全員の合意と注意点を弁護士が解説

遺言と異なる遺産分割はできる?相続人全員の合意と注意点を弁護士が解説

遺言と異なる遺産分割はできる?相続人全員の合意と注意点を弁護士が解説

遺言と異なる遺産分割はできる?相続人全員の合意と注意点を弁護士が解説

遺言と異なる遺産分割はできる?相続人全員の合意と注意点を弁護士が解説

亡くなった方が遺言書を残していた場合でも、「遺言のとおりに分けると、かえって公平でない」「相続人みんなで話し合った結果、別の分け方にしたい」と考える場面は少なくありません。遺言書があると、その内容に必ず縛られてしまうように感じるかもしれませんが、実は一定の条件を満たせば、遺言と異なる内容で遺産分割を行うことも可能です。

この記事では、遺言と異なる遺産分割ができる要件、遺言執行者や受遺者がいる場合の注意点、贈与税や相続登記に関する留意点までを、横浜の弁護士が整理して解説します。相続人間で分け方を見直したいと考えている方の判断材料としてお役立てください。

遺言があっても異なる遺産分割はできるのか

結論として、相続人全員が合意していれば、遺言と異なる内容で遺産分割協議を行うことは可能と解されています。遺言は被相続人の最終意思を尊重する制度ですが、相続財産を実際に取得する相続人全員が「別の分け方にしよう」と一致しているのであれば、その合意を尊重してよいと考えられているためです。

民法907条は、共同相続人は、被相続人が遺言で分割を禁じた場合などを除き、いつでも協議で遺産の全部または一部を分割できると定めています。遺言の内容に沿わない分割であっても、相続人全員の意思の合致があれば、遺産分割協議として有効に成立し得ます。

ただし、「相続人全員が合意すればよい」というのは大前提にすぎず、実際には次に述べる複数の条件をすべて満たす必要があります。一人でも反対する相続人がいれば、遺言と異なる分割はできません。

遺言と異なる遺産分割ができる4つの要件

遺言と異なる遺産分割を行うには、一般に次の4点を確認する必要があります。

要件内容
①相続人全員の合意遺産を取得する相続人全員が、遺言と異なる分割に同意していること。一人でも反対すれば成立しない
②受遺者の同意相続人以外に遺贈を受ける人(受遺者)がいる場合、その受遺者が遺贈を放棄するか、分割内容に同意していること
③遺言執行者の同意遺言執行者が選任されている場合、その同意を得ていること(民法1013条)
④分割禁止期間でないこと遺言で遺産分割が禁止されている期間中でないこと(民法908条)

これらのうち一つでも欠けると、遺言と異なる分割が無効とされたり、後日の紛争や課税リスクにつながったりするおそれがあります。以下、特に問題になりやすい②〜④を詳しく見ていきます。

遺言執行者がいる場合の注意点

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために選任される人で、遺言書で指定されている場合や、家庭裁判所が選任する場合があります。遺言執行者がいるときは、遺言と異なる分割を行う際に特に注意が必要です。

民法1013条1項は、「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない」と定めています。2019年(令和元年)7月施行の改正で新設された同条2項は、この規定に違反した行為は無効としつつ、これを善意の第三者に対抗することはできないとしています。

もっとも、遺言執行者がいる場合であっても、相続人全員に加えて遺言執行者自身が同意していれば、遺言と異なる遺産分割を行うことは可能と扱われるのが実務の一般的な理解です。遺言執行者の職務は遺言の実現にありますが、利害関係人である相続人全員と遺言執行者が納得しているのであれば、あえて当初の遺言どおりに執行する必要性が乏しいと考えられるためです。無用なトラブルを避けるため、協議に入る前に遺言執行者の同意を得ておくことが望ましいといえます。

相続人以外への遺贈がある場合

遺言で、相続人ではない第三者(内縁のパートナー、孫、友人、法人など)に財産を与える「遺贈」がされている場合には、相続人だけで分割内容を決めることはできません。受遺者は相続人ではないため、相続人全員が合意しても、受遺者の権利を一方的に変更することはできないからです。

この場合、受遺者が遺贈を放棄するか、または受遺者を含めた全員が新たな分け方に同意して初めて、遺言と異なる処理が可能になります。遺贈の仕組みや放棄の方法については、遺贈とは?特定遺贈・包括遺贈の違い・手続き・遺留分との関係を弁護士が解説もあわせてご確認ください。

「相続させる」旨の遺言(特定財産承継遺言)は、遺贈とは法的性質が異なり、相続開始と同時に指定された相続人へ権利が移転すると解されています。この場合でも相続人全員の合意による別段の分割は可能と解されますが、すでに移転した権利を戻す形になるため、登記や税務の処理に注意が必要です。詳しくは特定財産承継遺言(相続させる旨の遺言)とはの記事もご参照ください。

遺言で分割が禁止されている場合

民法908条1項により、被相続人は遺言で、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて遺産分割を禁止することができます。遺言書に「相続開始から○年間は分割を禁止する」といった定めがある場合、その期間中は、遺言と異なる分割はもちろん、遺言に沿った分割協議もできません。

もっとも、禁止期間は最長でも相続開始から5年です。期間が経過すれば、通常どおり相続人全員の協議によって分割できるようになります。遺言書に分割方法だけでなく分割禁止の定めが含まれていないか、まずは条項を丁寧に確認することが大切です。

税金・登記で気をつけるべきこと

贈与税の取扱い

「遺言でいったん自分に来た財産を、話し合いで他の相続人に渡すと、贈与になって贈与税がかかるのでは」と心配される方がいます。この点について国税庁は、タックスアンサーNo.4176において、特定の相続人に全部の遺産を与える旨の遺言書がある場合に相続人全員で遺言と異なる遺産分割をしたときは、受遺者である相続人が遺贈を事実上放棄し、共同相続人間で遺産分割が行われたとみるのが相当であり、相続人間で贈与があったものとして贈与税が課されることにはならないとの見解を示しています(根拠法令等として相続税法11条の2、民法907条が挙げられています)。

一方で、相続人以外の受遺者を含めて分割をやり直すような場合には、贈与税や譲渡所得税など別の課税関係が生じ得ます。税務上の取扱いは財産の内容や分割の経緯によって変わるため、実際の申告にあたっては必ず税理士や所轄の税務署にご確認ください。

相続登記の取扱い

不動産について、遺言と異なる遺産分割を行った場合、登記の原因や手続の進め方が通常の遺産分割と異なることがあります。特に「相続させる」旨の遺言があるケースでは、いったん遺言に基づく権利移転が生じていると解されるため、登記実務上の処理に注意が必要です。2024年4月から相続登記が義務化されており、正当な理由なく期限内に登記をしないと過料の対象となり得ますので、分割方針が固まったら早めに登記手続を進めることが望まれます。

遺言と異なる分割がトラブルになりやすいケース

相続人全員が納得していれば円満に進められる一方、次のような場面では紛争に発展しやすく、注意が必要です。

  • 一部の相続人が「遺言どおりにすべきだ」と主張し、全員の合意が得られないケース
  • 遺言執行者や受遺者の同意を得ないまま分割を進めてしまい、後から効力を争われるケース
  • 合意はしたものの、口約束にとどまり、後日「そんな話はしていない」と蒸し返されるケース
  • 遺留分を侵害する内容の遺言について、異なる分割で解決しようとして条件が折り合わないケース

こうしたトラブルを防ぐには、合意内容を明確な遺産分割協議書にまとめ、相続人全員が署名押印しておくことが欠かせません。合意が成立した後にやり直しを主張された場合の考え方については、遺産分割協議が成立した後にやり直せる?無効・取消し・合意解除の違いと注意点を弁護士が解説もご参照ください。

弁護士に相談するメリット

遺言と異なる遺産分割は、「全員が合意すればよい」とはいっても、受遺者や遺言執行者の同意、分割禁止の有無、税金や登記への影響など、確認すべき点が多岐にわたります。判断を誤ると、せっかくまとまった合意が無効になったり、思わぬ課税を受けたりするおそれがあります。

弁護士に相談すれば、遺言書の条項を法的に読み解いたうえで、誰の同意が必要か、どのような手順で協議書を作成すべきかを整理できます。相続人間の意見が対立している場合には、代理人として交渉や調停を進めることも可能です。横浜の当事務所でも、紛争性のある相続案件について数多くのご相談に対応しています。

よくある質問

遺言があっても相続人全員が合意すれば異なる遺産分割はできますか?

相続人全員が合意すれば、遺言と異なる内容で遺産分割協議を行うことは可能と解されています。ただし、相続人以外の受遺者がいる場合はその同意、遺言執行者がいる場合はその同意も必要になり、遺言で一定期間の分割が禁止されているときはその期間中は協議ができません。

遺言執行者がいる場合はどうなりますか?

民法1013条は、遺言執行者がある場合に相続人が遺言の執行を妨げる行為をすることを禁じています。実務上は、相続人全員に加えて遺言執行者の同意があれば、遺言と異なる遺産分割は可能と扱われています。トラブルを避けるため、あらかじめ遺言執行者の同意を得ておくことが望ましいといえます。

遺言と異なる遺産分割をすると贈与税がかかりますか?

国税庁の見解(タックスアンサーNo.4176)によれば、相続人全員で遺言と異なる遺産分割をした場合、受遺者である相続人が遺贈を事実上放棄し共同相続人間で分割が行われたとみられ、相続人間で贈与税が課されることにはならないとされています。税務上の取扱いは事案により異なるため、必ず税理士や所轄の税務署にご確認ください。

「相続させる」旨の遺言でも異なる分割はできますか?

「相続させる」旨の遺言(特定財産承継遺言)がある場合でも、相続人全員の合意があれば異なる分割は可能と解されています。ただし相続開始と同時に権利が移転しているため、登記や税務の処理に注意が必要で、専門家への確認が望ましいケースです。

遺言に「遺産分割を禁止する」と書かれている場合は?

民法908条により、被相続人は遺言で、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて遺産分割を禁止することができます。禁止期間中は、その定めに反する遺産分割協議はできません。期間経過後は、通常どおり相続人全員の協議で分割できます。

まとめ

遺言書があっても、相続人全員が合意すれば、遺言と異なる内容で遺産分割を行うことは可能と解されています。もっとも、そのためには相続人全員の合意に加え、受遺者や遺言執行者の同意、分割禁止期間でないことといった条件を満たす必要があり、贈与税や相続登記への影響も見落とせません。合意が成立したら、必ず遺産分割協議書を作成し、後日の紛争を防ぐことが重要です。判断に迷う場合や相続人間で意見が対立している場合は、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

遺言と異なる遺産分割でお悩みの方へ

タングラム法律事務所では、遺産分割や遺留分をめぐる紛争性のある相続案件について豊富な実績を有しております。遺言書があるケースでの分割方針の見直しや相続人間の交渉についても、横浜の弁護士がサポートいたします。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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