BitTorrent意見照会書で開示に同意したらどうなる?同意後の流れ
BitTorrent意見照会書で開示に同意したらどうなる?同意後の流れ
執筆:弁護士 安藤 一章(タングラム法律事務所/神奈川県弁護士会所属) 公開日:2026年9月26日 最終更新日:2026年9月26日
プロバイダから届いた「発信者情報開示請求に係る意見照会書」。BitTorrent(トレント)の利用に心当たりがあり、「素直に開示に同意したほうが早く終わるのではないか」「同意したら、その後どうなるのか」と迷っている方は少なくありません。すでに同意の回答書を返送してしまい、不安になって調べている方もいるでしょう。
この記事では、意見照会書で開示に同意した場合に何が起きるのかを、法律(情報流通プラットフォーム対処法)と、プロバイダ実務の指針である開示関係ガイドラインに沿って整理します。不同意との違い、同意が「侵害を認めた」ことになるのか、撤回できるのかについても解説します。
結論として、意見照会書で開示に同意すると、プロバイダは裁判所の判断を待たずに契約者の氏名・住所等を権利者側に開示するのが通常で、その後、権利者側から損害賠償や示談を求める書面が届く流れになります。同意それ自体は侵害や賠償額を認めることとは別ですが、回答書の書き方次第で不利な資料になり得るうえ、いったん開示されると取り消せません。回答する前に、回線の利用者や作品の件数などの事実関係を確認しておくことが重要です。
意見照会書の「同意」「不同意」とは何か
意見照会書は、プロバイダが法律上の義務に基づいて送る書面です。情報流通プラットフォーム対処法(2025年4月1日にプロバイダ責任制限法から名称変更)6条1項は、プロバイダが開示の請求を受けたときは、発信者と連絡できない場合などを除き、「当該開示の請求に応じるかどうかについて当該発信者の意見(当該開示の請求に応じるべきでない旨の意見である場合には、その理由を含む。)を聴かなければならない」と定めています。
回答書で求められているのは、開示に同意するか、しないかという意見です。
回答期間について、業界団体の「情報流通プラットフォーム対処法 発信者情報開示関係ガイドライン」(第10版・令和7年5月)の書式では、照会書の受領日から2週間以内の回答を求める形になっており、期間内に回答がない場合はプロバイダが開示要件の判断を進めることとされています。意見照会書そのものの読み方や、同意・不同意の判断基準は、意見照会書が届いたときの対処法(同意・拒否の判断基準)で詳しく解説しています。
開示に同意した場合のその後の流れ
同意した場合の一般的な流れは、次のとおりです。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1. 回答書の返送 | 「開示に同意する」にチェックし、署名等をして返送します。 |
| 2. プロバイダによる開示 | ガイドラインは、発信者から同意があった場合は、プロバイダ等は「速やかに」発信者情報を開示するとしています。 |
| 3. 権利者側からの書面 | 開示された氏名・住所あてに、権利者(またはその代理人弁護士)から、損害賠償の請求や示談の提案を記載した書面が届きます。 |
| 4. 交渉・示談または訴訟 | 示談に応じるか、金額を交渉するか、争うかを判断します。交渉がまとまらなければ、訴訟等に進む可能性があります。 |
裁判外の請求ではなく、裁判所の手続(発信者情報開示命令)の中で照会が届いた場合でも、同意があれば、プロバイダが裁判所の決定を待たずに開示に応じることがあります。
同意と不同意で何が変わるのか
不同意の場合でも、開示の要件(権利侵害が明らかであること等)を満たすと判断されれば開示されます。違いを整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 同意した場合 | 不同意の場合 |
|---|---|---|
| 開示の判断 | 同意を受けてプロバイダが開示するのが通常 | プロバイダまたは裁判所が要件を判断 |
| 開示までの時間 | 早まる傾向 | 判断の分だけ時間がかかる |
| 開示の通知 | 法律上の通知義務の対象外 | 開示命令の場合は通知義務あり(6条2項) |
| 回答書の記載 | 理由の記載は求められない | 理由を記載する |
不同意の回答をした後にどのような手続が進むのかは、BitTorrent意見照会に不同意回答した後の流れで解説しています。
同意すると「侵害を認めた」ことになるのか
開示への同意は、あくまで「プロバイダが契約者情報を請求者に伝えること」を認める意思表示です。それ自体が、著作権侵害の成立や、請求された賠償額を認めたことを意味するものではないと考えられます。
注意が必要なのは、回答書に書く内容です。同意欄にチェックするだけでなく、自由記載欄に「自分がダウンロードしました」「申し訳ありません」などと書き込むと、その記載が後の示談交渉や訴訟で不利な資料として扱われる可能性があります。回答書の記載内容は、後に請求者側の目に触れる可能性もあることを前提に考えるべきです。
また、開示されるのは回線契約者の情報です。家族や同居人、来訪者が回線を使っていた可能性がある場合、契約者本人が侵害行為をしたとは限りません。事実関係を確認しないまま同意や記載をすることは避けましょう。
同意を撤回できるか・すでに返送してしまった場合
一度送った同意の回答を撤回する手続を定めた法律の規定はありません。開示前であれば、直ちにプロバイダに連絡して意見を改めたい旨を伝えることは考えられますが、受け付けられるとは限りません。開示が済んだ後は、取り消すことはできません。
すでに同意して返送した場合は、権利者側からの書面が届くことを前提に、次の準備をしておきましょう。
- 意見照会書・回答書の控え(コピーや写真)を保管する
- 照会書に記載された作品名・日時・IPアドレス等を確認し、利用状況を整理する
- 書面が届いても無視せず、記載された期限を確認する
- 支払いや合意書への署名の前に、金額や条件が妥当かを検討する
損害賠償請求権の消滅時効は、原則として損害および加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年です(民法724条)。放置すれば済むとは限らないため、書面が届いた段階で対応を検討してください。示談金の考え方はBitTorrentの示談金相場と減額交渉のポイントで解説しています。
同意を決める前に確認したいこと
同意するかどうかは、照会を受けた方ご自身が判断することです。回答前に、少なくとも次の点を確認しておくことをおすすめします。
- 照会書に記載された日時に、自分がBitTorrentを使っていたか(家族等の利用の可能性はないか)
- 照会の件数(作品や権利者が異なる複数の照会が届いていないか)
- 回答期限と、回答書の記載欄(自由記載欄に何を書くか、書かないか)
- 開示後の損害賠償請求にどう対応するか、費用も含めた見通し
意見照会の段階から弁護士が関与すると、回答書の内容を整えたうえで、開示後の示談交渉まで一貫した方針で対応しやすくなります。当事務所の対応内容は意見照会対応(発信者情報開示の意見照会書が届いた方へ)のページでご案内しています。BitTorrentの意見照会書に特化した対応は、BitTorrent著作権侵害の意見照会対応の特設ページにまとめています。
よくある質問
開示に同意すると、損害賠償を支払う義務を認めたことになりますか?
開示への同意は、プロバイダが契約者情報を請求者に伝えることを認める意思表示であり、それ自体が著作権侵害や賠償額を認めたことを意味するものではないと考えられます。ただし、回答書に「自分がダウンロードした」などと記載した場合、その記載が後の交渉や訴訟で不利な資料となる可能性があります。
同意の回答書を送った後で、撤回することはできますか?
撤回の手続を定めた法律の規定はありません。開示前であれば、直ちにプロバイダに連絡して意見を改めたい旨を伝えることは考えられますが、受け付けられるとは限らず、すでに開示された後は取り消すことができません。
同意した場合、開示されたことはプロバイダから通知されますか?
情報流通プラットフォーム対処法6条2項の通知義務は、開示に応じるべきでない旨の意見を述べた発信者を対象としています。同意した場合は、開示の時期について改めて通知が届かないこともあり、権利者側からの書面で初めて開示を知るケースも考えられます。
まとめ
- 意見照会書は、情報流通プラットフォーム対処法6条1項に基づき、開示に応じるかどうかについて発信者の意見を聴くための書面
- 同意すると、プロバイダは速やかに開示するのが通常で、その後、権利者側から損害賠償・示談を求める書面が届く
- 同意は侵害や賠償額を認めることとは別だが、回答書の記載内容は不利な資料になり得る
- 撤回の手続は法律に定めがなく、開示後は取り消せない
- 回線の利用者・照会の件数・回答書の記載内容を確認してから回答することが重要
同意は「早く終わらせるための選択」に見えますが、その後の示談交渉の出発点でもあります。横浜のタングラム法律事務所では、回答前のご相談から開示後の交渉まで、弁護士が一貫して対応しています。
意見照会書への回答を迷っている方は、BitTorrent著作権侵害の意見照会対応の詳細はこちらをご覧ください。
BitTorrentの意見照会書が届いた方へ
横浜のタングラム法律事務所では、BitTorrent(トレント)に関する発信者情報開示の意見照会対応・示談交渉に継続して取り組んでいます。回答書を返送する前に、同意・不同意の判断や記載内容についてご相談ください。
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