タングラム法律事務所

不貞慰謝料は離婚訴訟で一緒に請求できる?併合の可否を弁護士が解説

不貞慰謝料は離婚訴訟で一緒に請求できる?併合の可否を弁護士が解説

不貞慰謝料は離婚訴訟で一緒に請求できる?併合の可否を弁護士が解説

不貞慰謝料は離婚訴訟で一緒に請求できる?併合の可否を弁護士が解説

不貞慰謝料は離婚訴訟で一緒に請求できる?併合の可否を弁護士が解説

配偶者の不貞行為をきっかけに離婚を決意したとき、「離婚の裁判と慰謝料の請求は、別々に起こさなければならないのか」という疑問にぶつかる方は少なくありません。家庭裁判所と地方裁判所は別の裁判所ですから、手続が二本立てになるのかと不安になるのも当然です。

結論として、離婚とその原因である不貞行為から生じた慰謝料は、一つの訴えでまとめて請求することが法律上認められています。この記事では、その根拠となる人事訴訟法の規定を確認したうえで、不倫相手への請求を同じ家庭裁判所で扱ってもらえるのか、「離婚慰謝料」と「不貞慰謝料」はどう違うのか、調停前置主義や訴訟費用との関係はどうなるのかを、横浜の弁護士が実務に即して整理します。

離婚訴訟と不貞慰謝料は一つの訴えで請求できる(人事訴訟法17条1項)

離婚の訴えは「人事に関する訴え」であり、人事訴訟法4条1項により、身分関係の当事者の普通裁判籍を有する地を管轄する家庭裁判所の専属管轄とされています。他方、慰謝料請求は民法709条・710条に基づく財産上の請求であり、本来は地方裁判所や簡易裁判所が扱う一般の民事事件です。

この点、人事訴訟法17条1項は、「人事訴訟に係る請求と当該請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求とは、民事訴訟法第百三十六条の規定にかかわらず、一の訴えですることができる」と定め、さらに、その家庭裁判所が損害賠償請求についても自ら審理及び裁判をすることができると規定しています。

不貞行為は民法770条1項1号の法定離婚事由であると同時に、慰謝料請求の原因事実でもあります。離婚請求と不貞慰謝料請求は「原因である事実」を共有しており、まさにこの条文が想定する場面にあたります。

不倫相手への慰謝料も同じ家庭裁判所で請求できるか

不倫相手(第三者)は離婚という身分関係の当事者ではありませんから、離婚請求そのものの被告にはなりません。もっとも、人事訴訟法17条2項は、「人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求を目的とする訴えは、前項に規定する場合のほか、既に当該人事訴訟の係属する家庭裁判所にも提起することができる」と定めています。この規定は請求の相手方を配偶者に限定していないため、不倫相手に対する慰謝料請求訴訟も、離婚訴訟が係属している家庭裁判所に提起することができると解されています。

すでに地方裁判所や簡易裁判所に不倫相手への訴訟を起こしている場合も同様です。人事訴訟法8条1項は、その訴訟が係属する第一審裁判所は相当と認めるときは申立てにより家庭裁判所へ移送できると定め、同条2項は、移送を受けた家庭裁判所は両事件について口頭弁論の併合を命じなければならないとしています。

不倫相手だけに請求するか、配偶者と併せて請求するかによって、その後の求償の問題や示談の組み立て方が変わります。この点は不倫相手だけに不貞慰謝料を請求できるかを解説した記事で詳しく扱っています。

「離婚慰謝料」と「不貞慰謝料」は別のもの——最高裁平成31年2月19日判決

併合を検討するうえで必ず押さえたい区別があります。慰謝料には、①不貞行為そのものによって婚姻共同生活の平和が侵害されたことに対する慰謝料(不貞慰謝料)と、②離婚をやむなくされたこと自体に対する慰謝料(離婚慰謝料)という二つの側面があるという点です。

最高裁判所第三小法廷平成31年2月19日判決(民集73巻2号187頁)は、夫婦の一方は、他方と不貞行為に及んだ第三者に対して、その第三者が夫婦を離婚させることを意図して婚姻関係に不当な干渉をするなどして離婚のやむなきに至らせたという特段の事情がない限り、離婚に伴う慰謝料を請求することはできないと判断しました。離婚をするか否かは本来夫婦自身が決めるべき事柄である、というのがその理由です。

この判決以降、不倫相手に請求できるのは原則として①の不貞慰謝料であり、②を上乗せして不倫相手に負わせることは特段の事情がない限り難しいと理解されています。一方、配偶者に対しては①②の双方を含む慰謝料を請求し得ます。誰にどちらの性質の慰謝料を求めるのかを訴状の段階で整理しておくことが、結論を左右します。

併合して請求するメリットと注意点

観点併合した場合別々に進めた場合
審理共通の争点を一度の証拠調べで判断してもらえる同じ証拠を二つの裁判所に別々に提出することになる
判断の統一不貞の有無や婚姻関係の破綻時期について判断が食い違いにくい裁判所ごとに評価が分かれる可能性が残る
解決までの道筋離婚条件と金銭の清算をまとめて和解できる一方が終わっても他方が続き、清算が長引くことがある
手続の負担期日が一本化され、出頭の負担が減りやすい期日が重複し、日程調整の負担が大きくなりやすい

注意点もあります。争点が増えれば審理の回数も増えるため、離婚だけを急ぎたい事案では、かえって離婚の成立が遅れることがあります。また、不倫相手を同じ手続に引き込むことで、配偶者と不倫相手が防御方針をそろえ、婚姻関係の破綻を主張してくる展開も想定されます。方針を決める前に不貞慰謝料請求の取扱分野ページもご参照ください。

前提となる手続——調停前置主義と管轄

離婚訴訟を起こすには、原則として先に家庭裁判所の調停を経る必要があります。家事事件手続法257条1項は、調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家事調停の申立てをしなければならないと定めています。調停を申し立てずに訴えを提起した場合、裁判所は職権で事件を家事調停に付さなければなりませんが(同条2項本文)、調停に付することが相当でないと認めるときはこの限りでないとされています(同項ただし書)。

他方、不倫相手に対する慰謝料請求は一般の民事事件であり、調停前置主義の対象ではありません。そのため、離婚は調停から始め、不倫相手には早期に交渉や訴訟を進めるという時間差が生じやすくなります。調停段階からの進め方は離婚調停と不貞慰謝料請求を同時に進める方法の記事で、離婚手続全般は離婚問題の取扱分野ページで扱っています。

訴訟費用(手数料)はどうなるか

裁判所に納める手数料は、訴訟の目的の価額(訴額)に応じて決まります。離婚の訴えは財産権上の請求ではないため、民事訴訟費用等に関する法律4条2項により訴額は160万円とみなされます。そして同条3項は、「一の訴えにより財産権上の請求でない請求とその原因である事実から生ずる財産権上の請求とをあわせてするときは、多額である訴訟の目的の価額による」と定めています。

つまり、二つの訴額を単純に足すのではなく、多い方を基準にすることになります。慰謝料の請求額が160万円以下であれば手数料は離婚のみの場合と変わらず、160万円を超える場合はその慰謝料額が基準になるという関係です。なお、不倫相手への請求を併せて提起する場合の扱いは被告が異なることから事案により判断が分かれ得ますので、提訴前に管轄の家庭裁判所へ確認するのが確実です。費用全体の見通しは不貞慰謝料の裁判にかかる期間と費用の記事で整理しています。

よくある質問

離婚が成立した後でも、不貞慰謝料だけを別に請求できますか?

離婚後に不貞慰謝料だけを請求すること自体は可能です。ただし、離婚時の協議書や調停調書に清算条項が入っていると、その効力が及ぶ範囲では請求できなくなる可能性があります。民法724条の消滅時効(損害及び加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年)にも注意が必要です。

離婚訴訟に不倫相手を被告として加えることはできますか?

不倫相手は離婚という身分関係の当事者ではないため、離婚請求そのものの被告にはなりません。もっとも、人事訴訟法17条2項により、不貞行為によって生じた損害賠償請求の訴えは、既に離婚訴訟が係属している家庭裁判所にも提起することができます。実務上はこの規定により、不倫相手への慰謝料請求を同じ家庭裁判所で審理してもらう運用が行われています。

慰謝料を併せて請求すると、訴訟の手数料は高くなりますか?

配偶者に対して離婚と慰謝料を一つの訴えで請求する場合、民事訴訟費用等に関する法律4条3項により、多額である方の訴訟の目的の価額によります。離婚の訴えは同条2項で160万円とみなされるため、慰謝料が160万円以下であれば手数料は増えません。不倫相手への請求を併せて提起する場合の扱いは、提訴前に管轄の家庭裁判所へ確認するのが確実です。

まとめ

不貞を理由とする離婚と慰謝料請求は、人事訴訟法17条1項により一つの訴えでまとめて家庭裁判所に提起できます。不倫相手への慰謝料請求も同条2項により同じ家庭裁判所に提起でき、既に他の裁判所に係属している場合には8条の移送と弁論の併合という手当てが用意されています。

もっとも、併合が常に得策とは限りません。最高裁平成31年2月19日判決が示したとおり、不倫相手に離婚慰謝料まで請求できる場面は限られており、誰に対してどの性質の慰謝料を求めるのかという設計を誤ると、請求額の大部分が認められない結果にもなりかねません。弁護士に依頼すれば、証拠の評価を踏まえて請求の相手方と金額を設計し、調停・訴訟の順序や併合の要否まで含めた方針を立てることができます。

不貞慰謝料と離婚の手続でお悩みの方へ

タングラム法律事務所では、横浜を拠点に、不貞慰謝料請求について請求する側・請求された側の双方のご相談に対応しております。離婚訴訟との併合の要否や請求額の設定など、方針を決める段階でのご相談も承ります。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。

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