不貞慰謝料と財産分与は別々に請求すべき?2026年改正を弁護士が解説
不貞慰謝料と財産分与は別々に請求すべき?2026年改正を弁護士が解説
配偶者の不貞行為をきっかけに離婚を考え始めると、「慰謝料」「財産分与」「養育費」「年金分割」といったお金の話が一度に押し寄せてきます。とくに不貞慰謝料と財産分与は、どちらも離婚の場面で問題になるため、「まとめて多めにもらえばよいのでは」「片方をもらうともう片方は請求できないのでは」と混乱してしまう方が少なくありません。
結論から言えば、不貞慰謝料と財産分与は根拠も性質も異なる別の権利であり、原則として両方を請求できます。ただし、両者が重なり合う「慰謝料的財産分与」という考え方があり、受け取り方を誤ると請求できる金額が実質的に目減りすることもあります。この記事では、両者の違い、別々に請求すべきかの判断ポイント、2026年4月に施行された民法改正で財産分与の請求期間が5年に延びたこと、時効との関係を、横浜の弁護士が解説します。
不貞慰謝料と財産分与はまったく別の権利
まず押さえておきたいのは、不貞慰謝料と財産分与は、法律上の根拠も目的もまったく異なるということです。財産分与は、民法768条に定められた制度で、夫婦が婚姻中に協力して築いた財産を、離婚に際して清算・分配するものです。協議離婚をした一方は相手方に財産の分与を請求でき、協議が調わないときは家庭裁判所に処分を求めることができます(民法768条1項・2項)。分与の対象や割合は、夫婦が協力して得た財産の額その他一切の事情を考慮して定められます(同条3項)。
これに対して不貞慰謝料は、不貞行為という不法行為によって生じた精神的損害の賠償です。配偶者や不倫相手に対し、民法709条・710条を根拠として請求します。財産分与が「夫婦の財産の清算」であるのに対し、不貞慰謝料は「不法行為による損害の賠償」であり、目的も相手方も異なります。
| 項目 | 不貞慰謝料 | 財産分与 |
|---|---|---|
| 法的根拠 | 民法709条・710条(不法行為) | 民法768条 |
| 目的 | 不貞による精神的損害の賠償 | 夫婦が築いた財産の清算等 |
| 請求できる相手 | 配偶者・不倫相手(双方または一方) | 配偶者のみ |
| 期間制限 | 時効(民法724条/3年・20年) | 離婚の時から原則5年(2026年4月施行の改正法) |
「慰謝料的財産分与」とは何か
両者は別の権利であるものの、実務では重なり合う場面があります。財産分与には、大きく分けて次の3つの要素があると理解されています。婚姻中に協力して築いた財産を清算する「清算的財産分与」、離婚後の生活を支える「扶養的財産分与」、そして精神的損害の賠償の性質を帯びる「慰謝料的財産分与」です。
この点について最高裁判所は、財産分与と慰謝料の関係を整理しています。最高裁昭和46年7月23日判決は、財産分与がなされても、それが損害賠償を含める趣旨と解されないか、または分与の額および方法が請求者の精神的苦痛を慰謝するに足りないと認められるときは、別に慰謝料を請求できると判断しました。裏を返せば、財産分与に慰謝料を含める趣旨で十分な額が分与された場合には、重ねて慰謝料を請求できないことがあるということです。
実務上は、清算的財産分与を中心に金額を算定し、不貞慰謝料は別枠で合意するのが一般的です。「解決金」などの名目でまとめて授受すると、後から慰謝料分がいくらだったのかが不明確になり、トラブルの原因になることがあります。
不貞慰謝料と財産分与は別々に請求すべきか
ケースにもよりますが、金額の内訳を明確にしておくという観点からは、両者を区別して整理しておくことにメリットがあります。
区別して整理するメリット
不貞慰謝料と財産分与を分けて算定・記載しておくと、それぞれの金額の根拠がはっきりします。とくに不倫相手にも慰謝料を請求する場合、配偶者との間の財産分与とは相手方が異なるため、金額を分けておかないと後の求償や清算の場面で混乱が生じます。
「二重取り」と評価されないための注意
注意が必要なのは、財産分与として受け取ったものに慰謝料が含まれていると評価される場合です。前述の最高裁判決のとおり、財産分与で精神的苦痛を慰謝するに足りる額を受け取ったと判断されると、別に慰謝料を請求できないことがあります。逆に、財産分与はあくまで財産の清算として行い、慰謝料は別途合意すると明記しておけば、両者を分けて確保しやすくなります。示談書や離婚協議書に、金額の名目・内訳と清算条項の範囲を丁寧に書き分けておくことが大切です。
お金の名目による扱いの違いについては、不貞慰謝料と解決金・手切れ金の違いの記事もあわせてご覧ください。離婚するかしないかで相場の考え方が変わる点は、不貞慰謝料の相場は離婚するかしないかで変わる?で解説しています。
2026年の民法改正:財産分与の請求期間が「5年」に延長
財産分与について、2026年に大きな制度変更がありました。令和6年(2024年)に成立した「民法等の一部を改正する法律」(令和6年法律第33号)により、家庭裁判所に財産分与を請求できる期間が、従来の「離婚の時から2年」から「離婚の時から5年」へと延長されました。この改正は2026年4月1日に施行されています。
ただし、この5年が適用されるのは、施行日である2026年4月1日以後に成立した離婚に限られます。改正法の附則による経過措置により、施行日前に離婚が成立している場合は、従来どおり離婚の時から2年以内に請求する必要があります。
この期間内に家庭裁判所へ調停や審判の申立てを済ませておくことが重要です。年金分割にも請求期限がありますので、離婚時のお金全体の整理については不貞慰謝料と年金分割の関係もあわせてご確認ください。
不貞慰謝料の時効は財産分与とは別(民法724条)
財産分与の請求期間とよく混同されるのが、不貞慰謝料の時効です。両者は別の制度であり、期間も起算点も異なります。
不貞慰謝料は不法行為に基づく損害賠償であり、消滅時効は民法724条によります。具体的には、被害者が「損害および加害者を知った時」から3年、または不法行為の時から20年で時効にかかるのが原則です。不貞の事実と相手方を知ってから3年という短い期間が問題になりやすく、財産分与の請求期間(離婚から5年)とは別にカウントされます。
「離婚から5年あるから慰謝料も5年大丈夫」と誤解すると、慰謝料の時効を過ぎてしまうおそれがあります。時効の起算点や完成を防ぐ方法は事情により変わるため、期限が気になる場合は早めに弁護士へ相談されることをおすすめします。
請求の進め方と横浜の弁護士に相談するメリット
不貞を理由に離婚する場合、通常は離婚協議や離婚調停の中で、財産分与・慰謝料・養育費・年金分割などを一括して話し合います。このとき、金額の内訳を明確にし、清算条項の範囲を正しく設定できるかが、後の紛争を防ぐうえで重要です。名目を曖昧にしたまま合意すると、その金額に慰謝料が含まれていたのかをめぐって争いになりかねません。
弁護士に依頼すると、財産分与の対象財産の調査・評価、慰謝料の相場に照らした金額設定、示談書・離婚協議書の条項作成までを一貫して任せられます。時効・請求期間の管理も含め、見落としを防ぎやすくなります。
よくある質問
財産分与で多めに受け取れば、不貞慰謝料は別に請求できないのですか?
財産分与が慰謝料を含む趣旨でなされ、その額が精神的苦痛を慰謝するに足りると認められる場合には、別に慰謝料を請求できないことがあります。もっとも、財産分与が財産の清算のみを目的としたと評価される場合には、別途請求できると判断される傾向があります(最高裁昭和46年7月23日判決)。名目や趣旨を明確にしておくことが重要です。
離婚が成立した後でも、財産分与と不貞慰謝料を請求できますか?
いずれも離婚後に請求できる場合があります。財産分与は、2026年4月1日施行の改正民法により、離婚の時から原則5年以内に家庭裁判所へ請求できます(施行日前の離婚は2年)。不貞慰謝料は、損害および加害者を知った時から3年で時効にかかる点に注意が必要です(民法724条)。期間の起算点や長さが異なるため、混同にご注意ください。
不倫相手に対して財産分与を請求することはできますか?
できません。財産分与は夫婦間の財産関係を清算する制度であり、請求できる相手は配偶者に限られます(民法768条)。不倫相手に対しては、不法行為に基づく慰謝料(民法709条・710条)を請求することになります。請求の相手方と法的根拠が異なる点に注意が必要です。
財産分与の請求期間が5年になったのはいつからですか?
令和6年(2024年)に成立した民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)により、2026年4月1日以後に成立した離婚については、財産分与の請求期間が離婚の時から2年から5年に延長されました。施行日前に離婚した場合は、従来どおり2年以内です(改正法附則)。
まとめ
不貞慰謝料と財産分与は、根拠も目的も異なる別の権利であり、原則として両方を請求できます。ただし、財産分与には慰謝料的な要素が含まれ得るため、受け取り方や名目を誤ると、慰謝料分が実質的に目減りしたり、別途請求できなくなったりするおそれがあります。金額の内訳を明確にし、清算条項の範囲を正しく設定することが大切です。
また、2026年4月施行の民法改正で財産分与の請求期間は離婚から5年に延長されましたが、これは施行日以後に離婚した場合に限られ、施行日前の離婚は従来どおり2年です。さらに、不貞慰謝料の時効(民法724条/3年・20年)は財産分与の請求期間とは別にカウントされ、期間管理を誤ると請求の機会を失いかねません。離婚に伴うお金の整理でお悩みの際は、早めに弁護士へご相談ください。
離婚に伴う慰謝料と財産分与の整理は、横浜のタングラム法律事務所へ
タングラム法律事務所では、不貞慰謝料請求の事案について豊富な実績を有しております。財産分与・慰謝料・養育費・年金分割を含む離婚時のお金の問題を総合的に整理し、あなたにとって適切な解決を一緒に検討します。
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