興行主から内容証明が届いた|チケット転売の損害賠償請求への対応
興行主から内容証明が届いた|チケット転売の損害賠償請求への対応
厚みのある封筒が届き、開けてみると「内容証明郵便」と書かれた書面と、代理人弁護士の名前、そして請求金額が並んでいる。チケット転売を理由とする発信者情報の開示が済んだ後、この段階でご相談に来られる方が多くいらっしゃいます。
この記事では、内容証明とは何を証明する制度なのか、届いた書面のどこを読めばよいのか、なぜわざわざ内容証明で送られてくるのか、そして期限までに何をすべきかを、弁護士が順に整理します。
内容証明が証明していること・していないこと
まず、書面の重みを正しく理解しておく必要があります。日本郵便の説明によれば、内容証明とは「いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって当社が証明する制度」です。
そして同社は、証明するのは内容文書の存在であり、文書の内容が真実であるかどうかを証明するものではないと明記しています。つまり、内容証明で届いたからといって、そこに書かれた金額が確定した債務になるわけではありません。
届いた書面のどこを読むか
不安な状態で読むと、金額だけが目に入ります。しかし、その後の対応を決めるうえで重要なのは、次の項目です。書面を手元に置いて、一つずつ確認してください。
| 確認する項目 | なぜ重要か |
|---|---|
| 差出人と代理人 | 興行主本人か、代理人弁護士か。以後の連絡先はどこか |
| 請求の根拠 | 不法行為か、不当利得か。どの法律構成で請求しているか |
| 対象の出品 | 公演名・出品日時・件数。意見照会書に書かれていたものと一致するか |
| 金額と内訳 | 総額だけか、項目ごとに分けてあるか。内訳がなければ争う余地がある |
| 回答期限 | 2週間程度が多い。何日消印か、いつ届いたかも控える |
| 支払方法の指定 | 振込先が書かれている場合、期限までの入金を求める趣旨か |
意見照会書のときの記載と照らし合わせることを、必ず行ってください。対象の出品が増えている、日時が違うといったことがあれば、それ自体が確認すべき点になります。
なぜ内容証明で送られてくるのか
相手方が内容証明を選ぶ理由は、主に2つあります。
第一に、請求したという事実と、その日付を残すためです。民法第150条第1項は、催告があったときは、その時から6か月を経過するまでの間は時効が完成しないと定めています。時効の完成が迫っている事案では、この効果を確実にするために内容証明が使われます。
第二に、訴訟の準備としてです。請求書を送ったが応答がなかった、という経緯を作っておくことは、その後の手続を進めるうえで意味を持ちます。届いた時点で訴訟が始まっているわけではありませんが、その一歩手前の段階だと考えたほうが実態に合っています。
時効そのものの考え方(いつから何年か)はチケット転売で氏名・住所が開示された後で解説しています。
期限までにしてはいけないこと
この段階での対応の巧拙は、最終的な負担額に直結します。次の3つは避けてください。
1.とりあえず一部を入金する
誠意を示すつもりの一部入金が、請求されている債務を認めたものとして扱われることがあります。時効の関係でも、金額の交渉の場面でも不利に働き得ます。支払うのであれば、金額と条件を合意し、書面にしてから行うのが原則です。
2.電話で事情を説明してしまう
書面に電話番号が書かれていると、まず電話で説明しようとする方がいます。しかし、口頭でのやり取りは記録が残らず、こちらが述べた内容だけが相手方のメモに残ります。この段階のやり取りは、書面で行うのが基本です。
3.受け取らない・放置する
受け取りを拒否しても、請求は消えません。送付した記録は相手方に残り、こちらの言い分を伝える機会だけが失われます。放置した場合に何が起きるかは、後述します。
期限までにすべきこと
逆に、期限内に行っておきたいのは次のことです。
- 封筒と書面を保存する:消印の日付が分かる形で、封筒も残しておきます
- 資料を揃える:出品時の画面、取引履歴、入金記録。定価以下だったこと、単発だったことを示せる資料は特に重要です
- 争える点を洗い出す:内訳の合理性、因果関係、実際の利益額。ここが交渉の材料になります
- 期限内に何らかの応答をする:全面的に認める必要はありません。「検討しているので、いつまでに回答する」と伝えるだけでも、無回答とは扱いが変わります
まだ開示前の段階でこのページをご覧の方は、チケット転売で意見照会書が届いたらもあわせてご覧ください。
無視した場合に進む手続
回答をしないまま期限が過ぎると、相手方は次の段階に進むかどうかを判断します。訴訟の提起や、支払督促といった裁判所の手続に移行する可能性があります。
いずれの手続でも、書面が裁判所から届き、対応しなければ相手方の主張がそのまま通る形で終わることがあります。判決などが確定すれば、給与や預金の差押えという段階に進み得ます。
交渉の場に残っていることが、結果的に負担を軽くします。金額に納得できないのであれば、その理由を述べる。支払いが難しいのであれば、その事情を説明する。いずれも、応答してはじめて可能になります。
弁護士に依頼した場合に変わること
代理人を立てると、まず連絡の窓口が代理人に一本化されます。直接の連絡が止まることは、それ自体が負担の軽減になります。
そのうえで、請求の内訳の開示を求め、因果関係や利益額を争い、支払える条件を提示するという交渉を、書面のやり取りとして進めていきます。示談が成立する場合は、後日の追加請求を防ぐ条項を含めた書面を取り交わします。
当事務所の対応の範囲と費用はチケット転売の発信者情報開示請求への対応ページでご案内しています。オンラインで全国からご相談いただけます。
よくある質問
内容証明が届いた時点で、裁判が始まっているのですか。
始まっていません。内容証明は郵便のサービスであり、裁判所を通じた手続ではありません。もっとも、訴訟の前段階として送られることが多く、回答がないまま期限を過ぎると次の手続に進む可能性があります。届いた時点で対応を検討する価値は十分にあります。
受け取りを拒否すれば、請求はなかったことになりますか。
なりません。受け取らなくても請求そのものが消えるわけではなく、送付の記録は相手方に残ります。かえって、こちらの言い分を伝える機会を失い、訴訟に進んだときに事情を説明しにくくなります。受け取ったうえで内容を確認するほうが有利です。
とりあえず一部だけ支払っておけば、誠意が伝わりますか。
おすすめできません。一部の入金は、請求されている債務を認めたものとして扱われることがあり、時効や金額の交渉において不利に働き得ます。支払う場合は、金額と条件を合意し、書面にしたうえで行うのが原則です。
期限までに回答できそうにありません。どうすればよいですか。
書面に記載された代理人の窓口に連絡し、検討中である旨と、いつまでに回答できるかを伝えてください。連絡がある相手と、何の反応もない相手とでは、その後の進め方が変わります。無回答のまま期限を過ぎることは避けてください。
まとめ
- 内容証明が証明するのは文書の存在であって、書かれた内容が真実であることではない
- 読むべきは金額だけでなく、請求の根拠・対象の出品・内訳・回答期限・代理人の窓口
- 内容証明が使われるのは、催告の記録を残すため(民法第150条第1項)と、訴訟の準備のため
- 一部入金・電話での説明・放置は、いずれも不利に働き得る
- 期限内に何らかの応答をしておけば、交渉の余地が残る
請求書に書かれた金額は、相手方の主張です。内訳を検討し、事案の実態を示す資料を揃えることで、結論が変わる余地があります。書面が届いた方は、封筒と資料を保存したうえで、横浜のタングラム法律事務所までご相談ください。回答期限が迫っている場合は、その日付を最初にお知らせください。
内容証明で損害賠償を請求された方へ
タングラム法律事務所(横浜・山下公園)は、チケット転売を理由とする発信者情報開示請求について、意見照会書への回答書の作成・内容確認から、開示後の損害賠償請求への対応・示談交渉まで取り扱っています。オンラインで全国からご相談いただけます。回答期限がある場合は、その日付をお知らせください。
法律相談の予約はこちら※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。