チケット転売が会社にばれるか|勤務先に知られる場面と知られない場面
チケット転売が会社にばれるか|勤務先に知られる場面と知られない場面
チケット転売について意見照会書が届いた。金額のことよりも、まず頭に浮かぶのが「これは会社に知られるのだろうか」という不安だ——ご相談で最初に尋ねられることの多い質問です。
この記事では、発信者情報開示の手続そのものに勤務先へ通知する仕組みがあるのか、実際に会社に知られ得るのはどのような場面か、そして知られる筋道を減らすために何ができるのかを、横浜の弁護士が整理します。
手続の中に、勤務先へ通知する仕組みはない
まず結論から申し上げると、意見照会書も、開示された後の通知書や内容証明も、すべて本人宛に送られます。勤務先に照会が行く、あるいは会社に通知されるという仕組みは、この手続の中にありません。
意見照会書を送ってくるのは、回線を提供している通信事業者です。事業者が把握しているのは契約者の氏名・住所・連絡先であって、勤務先ではありません。開示される情報の範囲はチケット流通センター・チケジャムの出品者情報はどこまで開示されるかで整理しています。
したがって、通常の進み方をたどる限り、会社に知られる場面はありません。問題は、通常でない場面がいくつかあることです。
会社に知られ得る4つの場面
1. 会社名義の回線・端末から出品していた場合
これが最も現実的な経路です。出品時に使っていた回線の契約者が会社であれば、意見照会書は会社宛に届きます。社用のスマートフォン、社内のWi-Fi、貸与されたパソコン——いずれの場合も、通信事業者から見た契約者は法人です。
この場合、書面は総務や情報システムの部署が受け取ることになります。手続の入口の時点で知られることになりますので、心当たりのある方は、書面が届く前提で対応を考える必要があります。誰の回線から出品したかが分からない場合の考え方は家族名義の回線に意見照会書が届いた場合もあわせてご覧ください。
2. 刑事事件になった場合
逮捕され、報道されれば、当然に知られる可能性があります。もっとも、この分野で公表が確認できる検挙事案は限られており、興行主の告訴や捜査協力が端緒として必要です。実際の状況はチケット転売の逮捕事例にまとめました。
3. 判決後に給与を差し押さえられた場合
ここは正確に押さえておく必要があります。給与の差押えは、判決などの債務名義を得たうえで、裁判所に申し立てて行うものです。請求を受けた段階や交渉の段階で、いきなり給与が差し押さえられることはありません。
民事執行法第145条第3項は、差押命令を「債務者及び第三債務者に送達しなければならない」と定めています。給与債権の差押えでは、この第三債務者が勤務先にあたります。つまり、この段階に至れば勤務先に裁判所から書類が届きます。
なお、給与の全額が差し押さえられるわけではありません。民事執行法第152条第1項第2号は、給料等について「その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分」は差し押さえてはならないと定めています(一定額を超える場合は政令で定める額)。
4. ご自身から話した場合
意外に多いのがこの経路です。同僚に相談した、上司に事前に伝えておこうとした、といったケースです。守秘義務のある弁護士と違い、社内の相談相手には情報を保持する義務がありません。
副業禁止規定との関係
「継続的に転売していた場合、副業禁止に触れるのではないか」というご質問をいただくことがあります。この点は、就業規則の定め方と、実際の行為の態様によります。一律の答えはありません。
ただ、実務的に重要なのは、会社が知る筋道がなければ、この問題は生じないということです。就業規則の解釈を心配する前に、まず上記の1〜4のうち、ご自身の事案にどれが当てはまるのかを確認してください。
知られる筋道を減らすためにできること
- 使っていた回線を確認する:会社名義の回線・端末を使っていたかどうかを、まず思い出してください
- 期限内に対応する:放置して訴訟・差押えに進むことが、最も会社に近づきます
- 連絡方法を調整する:弁護士に依頼した場合、書面の送付先や連絡の時間帯をご希望に応じて調整できます
- 社内で相談しない:守秘義務のない相手に話すことは、経路を自分で作ることになります
この段階の取扱いは当事務所の意見照会対応のページ、弁護士に依頼した場合の取扱いの範囲と費用はチケット転売の発信者情報開示請求への対応のページにまとめています。判断の基準は弁護士に依頼する費用と判断基準で整理しました。
よくある質問
弁護士に依頼したことが、会社に伝わることはありますか。
ありません。弁護士には守秘義務があり、依頼された事件の内容を第三者に伝えることはありません。書面の送付先や連絡方法についても、ご希望に応じて調整することが可能です。
社用のスマートフォンから出品していました。もう手遅れですか。
会社宛に書面が届く可能性は高いといえます。もっとも、届いてからの対応と、届く前に整理しておくことでは、選べる手が違います。使用していた回線と出品の内容を確認したうえで、早めにご相談ください。
示談で解決すれば、会社に知られませんか。
交渉と示談は当事者間の手続であり、勤務先に通知される仕組みはありません。訴訟や差押えに進まずに終えられるという意味では、示談は会社に知られる筋道を減らす方向に働きます。
給与を差し押さえられたら、全額持っていかれるのですか。
いいえ。民事執行法は、給料等について支払期に受けるべき給付の4分の3に相当する部分は差し押さえてはならないと定めています(一定額を超える場合は政令で定める額)。もっとも、勤務先に裁判所から書類が届くこと自体は避けられません。
まとめ
- 意見照会書も通知書も本人宛であり、手続の中に勤務先へ通知する仕組みはない
- 知られ得るのは、①会社名義の回線から出品、②刑事事件化、③判決後の給与差押え、④自分から話す、の4場面
- 給与差押えには債務名義が必要で、交渉段階でいきなり行われることはない
- 民事執行法上、給料の4分の3相当部分は差押えが禁じられている(一定額を超える場合は政令の額)
- 放置して訴訟・差押えに進むことが、最も会社に近づく経路である
ご自身の事案がどの経路に当たるのか、判断がつかない段階でも構いません。書面が届いている場合は、記載された期限の日付をお知らせいただければ、対応の可否をその場で判断しやすくなります。横浜のタングラム法律事務所まで、オンラインで全国からご相談いただけます。
チケット転売を理由とする発信者情報開示請求について、対応の流れと弁護士費用はチケット転売の意見照会対応の詳細をご覧ください。
勤務先に知られたくない方へ
タングラム法律事務所(横浜・山下公園)は、チケット転売を理由とする発信者情報開示請求について、意見照会書への回答書の作成・内容確認から、開示後の損害賠償請求への対応・示談交渉まで取り扱っています。オンラインで全国からご相談いただけます。書面の送付先や連絡方法のご希望も、あわせてお知らせください。
法律相談の予約はこちら※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。