チケット転売の逮捕事例|公表された検挙ケースと立件の分かれ目
チケット転売の逮捕事例|公表された検挙ケースと立件の分かれ目
「チケット転売 逮捕事例」と検索すると、断定的な見出しは多く出てくるものの、実際にどのような事案が立件されたのかは意外と分かりません。公にされている検挙事例は、報道と興行主の公表を合わせても限られた数にとどまります。
この記事では、公表が確認できる検挙事案を挙げたうえで、条文に照らして何が処罰の対象になるのか、なぜ立件される件数が限られるのか、そして刑事で立件されなくても民事の請求は別に進むという構造を、横浜の弁護士が整理します。
公表が確認できる検挙事案
宝塚歌劇は、2026年3月26日付の公式サイトで「チケット不正転売禁止法違反による検挙事案について」として、宝塚歌劇公演チケットの高額転売について警視庁が同日1名を検挙したことを公表しています。同社は、転売ウェブサイト等への出品者や転売業者に対して厳正な措置をもって転売対策に取り組むとともに、警察の捜査へ全面的に協力していく方針を明らかにしています。
条文上、何が処罰の対象になるのか
チケット不正転売禁止法(特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律)は、禁止行為を2つ定めています。
| 条文 | 禁止されている行為 |
|---|---|
| 第3条 | 何人も、特定興行入場券の不正転売をしてはならない |
| 第4条 | 何人も、特定興行入場券の不正転売を目的として、特定興行入場券を譲り受けてはならない |
そして第9条第1項は、第3条または第4条に違反した者を「一年以下の拘禁刑若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と定めています。
ここでいう「特定興行入場券の不正転売」は、第2条第4項で「興行主の事前の同意を得ない特定興行入場券の業として行う有償譲渡であって、興行主等の当該特定興行入場券の販売価格を超える価格をその販売価格とするもの」と定義されています。要件を分解すると、次のようになります。
- 興行主の事前の同意がないこと
- 業として行う有償譲渡であること
- 興行主等の販売価格を超える価格であること
この3つがそろって初めて、刑事の対象になります。要件の詳細はチケット転売はどこから違法か|不正転売禁止法の要件を条文で整理で解説しています。
なぜ立件される件数が限られるのか
1. 「業として」の壁
文化庁のQ&Aは、「業として」を「繰り返し転売する反復継続性の意思が伺える」ことと説明しています。1回の出品でも、繰り返す意思がうかがえる場合には該当し得るとされていますが、その意思を捜査機関が立証する必要があります。回数の少ない事案では、この点が壁になります。
2. 定価以下の譲渡は対象外
同じくQ&Aは、「定価や定価以下で転売したからと言って、ただちにチケット不正転売禁止法違反となるわけではありません」としています。手数料の扱いを含めた線引きはチケットを定価以下で譲るのは違法かで整理しました。
3. 捜査の端緒が必要
この類型は、興行主の告訴や捜査協力が起点になります。宝塚歌劇が「警察の捜査へ全面的に協力してまいります」と述べているのは、この構造を示しています。興行主が動かなければ、そもそも捜査は始まりません。
刑事にならなくても、民事の請求は別に進む
ここが最も誤解されやすいところです。刑事で立件されないことと、民事の請求を受けないことは別の問題です。
近年、興行主側が力を入れているのは、むしろ民事の手続です。株式会社STARTO ENTERTAINMENTは、転売サイトに対する発信者情報開示請求を2024年の299件から2025年2月末までに4,342件へと拡大し、2026年3月13日付の公表では出品者に対して2,000万円を超える損害賠償を求める訴訟を提起したとしています。経緯はSTARTO社のチケット転売対策にまとめました。
つまり、逮捕されるかどうかを気にしている間に、通信事業者から意見照会書が届くという順序で事態が動きます。刑事事件になる場合とならない場合の切り分けはチケット転売で逮捕されるのかで解説しています。
書面が届いた方が、まず確認すること
意見照会書が届いている段階であれば、刑事のリスクを検討する前に、回答期限を確認してください。期限は2週間程度に設定されていることが多く、郵便の到達日から数えると検討できる日数はさらに短くなります。
届いた書面の全体像はチケット転売で意見照会書が届いたら、回答書の記載事項は意見照会書の回答書を自分で書く方法にまとめています。この段階の取扱いは当事務所の意見照会対応のページ、弁護士に依頼した場合の取扱いの範囲と費用はチケット転売の発信者情報開示請求への対応のページにまとめています。
よくある質問
逮捕されるとしたら、どの段階ですか。
この類型では、興行主の告訴や捜査協力を端緒として捜査が始まるのが通常です。転売サイトへの出品がそのまま逮捕に直結するわけではありません。もっとも、出品の態様によっては捜査の対象になり得ますので、「逮捕されていないから問題ない」と考えるのは適切ではありません。
前科がつくのですか。
有罪判決を受ければ前科として記録されます。第9条第1項は一年以下の拘禁刑または百万円以下の罰金と定めており、併科もあり得ます。もっとも、実際にどのような処分になるかは事案の内容によります。
買った側も処罰されますか。
第4条は「不正転売を目的として」譲り受けることを禁止しています。自分で行くために買った場合は、この条文の対象ではありません。詳しくはチケット不正転売禁止法は買う側にも適用されるかで整理しています。
刑事にならなければ、お金の請求も来ませんか。
そうとは限りません。刑事と民事は別の手続です。実際、この分野で件数が伸びているのは民事の開示請求と損害賠償請求のほうです。
まとめ
- 公表が確認できる検挙事案として、宝塚歌劇が2026年3月26日に警視庁による1名の検挙を公表している
- 処罰の対象は第3条(不正転売)と第4条(不正転売目的の譲受け)。第9条は一年以下の拘禁刑または百万円以下の罰金、併科もあり得る
- 「不正転売」は、興行主の同意がなく、業として、販売価格を超える価格での有償譲渡である
- 立件が限られるのは、「業として」の立証と、興行主の告訴・捜査協力という端緒が必要なためである
- 刑事で立件されなくても、民事の開示請求と損害賠償請求は別に進む
すでに書面が届いている方は、刑事のリスクよりも先に回答期限をご確認ください。期限の日付をお知らせいただければ、対応の可否をその場で判断しやすくなります。横浜のタングラム法律事務所まで、オンラインで全国からご相談いただけます。
チケット転売を理由とする発信者情報開示請求について、対応の流れと弁護士費用はチケット転売の意見照会対応の詳細をご覧ください。
チケット転売について書面が届いた方へ
タングラム法律事務所(横浜・山下公園)は、チケット転売を理由とする発信者情報開示請求について、意見照会書への回答書の作成・内容確認から、開示後の損害賠償請求への対応・示談交渉まで取り扱っています。オンラインで全国からご相談いただけます。回答期限がある場合は、その日付をお知らせください。
法律相談の予約はこちら※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。具体的な事案についてのご判断は、弁護士にご相談ください。